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雑誌目次

雑誌文献

病院17巻7号

1958年06月発行

雑誌目次

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病院内に発生する赤痢に対する考察

著者: 山形操六

ページ範囲:P.479 - P.482

はしがき
 病院,療養所等の患者収容施設内における伝染性疾患の流行は,従来より多くの報告があり,その疾患の種類も多岐にわたつている。病院という特殊施設の状況から世人の関心事となり,新聞紙上にもしばしば報道されるので当局者及び患者家族にとつてもゆるがせに出来ない問題である。
 病院自体は患者の収容施設,看護婦生徒の寄直等共同生活を営み,また伝染性疾患患者の世話及び病原微生物を取扱う関係上,絶えず伝染病感染のchanceにさらされているため他の事業場,会社等に比してより一層の注意と関心が要求されるべきである。

新手術室のAirconditioner(Electric airfilter付)使用による空氣淨化について

著者: 菅野元雄

ページ範囲:P.485 - P.491

I.緒言
 近代的手術室においては,気温,気湿,換気,採光,細菌浄化などの環境衛生条件を良好に保たなければならないことはいうまでもないが,1952年R.A.Phelps6)は手術室の備うべき条件として1)細菌数0,2)気温75〜80°F (24〜26.6℃),3)気湿50〜55%,4)必要にして,充分な換気,5)冷白光照明などを必要とすると主張している。
 更に,最近においてはCyclopr-opaneなどの爆発性の麻酔ガスを用いるようになつたため,静電放電による爆発の危険防止のため,石山氏1)は上記の条件の一部を気湿60〜65%及び充分な換気と修飾しているが,やはり細菌数が0であるべきことを第1条件としている点においては変りはない。手術室内空気の細菌浄化法については,古くからJoseph Lister以来Billroth, Mikulicz, Lucas-Championiere, Cuyon & Albarran, Kocher, Paget, Horseley, Gr-oss, Agnew, Senn & Halstedなどの業績があるが,近年上述の諸条件を自働的に調整出来るAirconditionerが普及し,これに関する研究が,本邦においては,石山1),高木4),平野3),長田12),及び北村5)の諸氏によつて発表されている。

扇型構造を取り入れた病院の設計

著者: 安田幸男

ページ範囲:P.525 - P.529

1.円型病院の批判
 円型建築は近来建築界で新しい関心が持たれて来ましたが此の形式を病院建築に採用したものも可なりあり其の代表的なものに(1)豊岡公立病院診療棟(2)松江赤十字病院病棟(3)武蔵野赤十字病院内伝染病棟を掲げる事が出来ます。此等の3つの病院(第1図)は一口に円型病院と云つても用途建築構造に於てそれぞれ特色があり構造に於ては(1)(3)が円筒型で(2)が環型でありますし用途では(1)が診療棟で(2)(3)が病棟であります。然し此の形式を採用した主な理由は何れも敷地面積,建築費の制約と管理の合理化の為とされて居ります。然らば果して此の構造採用により所期の目的が充分達せられて居るかと考える時未だ多くの疑問が残されて居る事が解ります。例えば(2)の環型病棟は長方形病棟を丸く接続したものであり同じ利用面積の長方形又は工字型病棟と其の所要敷地面積及び建築面積を較べれば両者共殆んど同じ面積を必要とし何んの節約にもならずむしろ廊下が曲線である事と空間が扇形である事による交通や空間利用上の損失の方が大きく浮び上つて来て強いて此の形式を採用された理由の判断に苦しみます。又(1)の円型診療棟は大した欠点もない替りに大した利点もなく唯面白い建築と云うに止ります。(3)の円型病棟に於て始めて幾つかの利点が認められますが其れと同程度の欠点を有する事は次の通りであり其の得失の何れが大きいか簡単に結論が出ない状態であります。

勤務医生活25年をかえりみて

著者: 成内穎三郎

ページ範囲:P.537 - P.540

 人間の考え方は其の人の置かれた環境と時代によつて変る事は,云う迄もない事であるが,1人の医師が其の4分の1世紀を,勤務医として送り,其の間に過去を顧み,又現在を見,更に従来に対して,どのように考えるかを,書き綴つて,先輩諸兄の御批判を乞いたいと願うものであります。
 大学の医局より,満鉄に赴任した当時は,満州事変の直後で,日本の国運は,隆々とし,国策会社としての満鉄が,回生の運命に見舞われ,日本の要求によつて,一大飛躍を,なさんとする時代であつて,満鉄の歴史の中でも,最も活気にあふれた頃であつた。

ヨーロツパの病院をみて

著者: 近藤駿四郎

ページ範囲:P.541 - P.545

 ドイツに出かける直前,いろいろなその道の権威の方々にお目にかかつてヨーロツパの病院では何を見てくるべきであるかということについて御相談した。その内に「もう大きな立派な近代的な病院のことは沢山の人々がよくみてきているから分つている。それよりも中小病院をみてきて欲しい。」という意見があつて私は成程と思つた。ところでヨーロツパに行つてみると独仏英何れも病院の設備の近代化には大変な力瘤の入れ方であり,また私もやつぱりそういう新しい設備をしている病院に目移りがしてしまつたのは止むを得なかつたが,前記の忠告があつたために,ある程度時間を割いて一応ヨーロツパ各地の中小都市の中小病院,個人開業医の診療所なども見ることができた。ヨーロツパで各種の病院をみている内に私はいろいろのことを考えさせられた。医学教育のあり方,将来の医療はどういう方向に進むべきであるのか,これに附随して医療社会化の問題,病院のあり方等である。それで以下これらの問題について病院見学を中心として私の旅行見聞記を書いてみようと思う。
 ヨーロツパの立派な病院といえばスエーデンのストツクホルムの病院を第1に挙げることになつているらしいが私はこの病院は見学しなかつた。ドイツでは大学の病院などは全体的にいつてその建物は決して立派なものではない。Münchenの大学の外科などは爆撃を免れた為か依然として古い建物を使つている。

研修所だより

著者: 今村

ページ範囲:P.554 - P.554

研修計画
 一括申込みについて研修科(長期)及び研修会(短期)の受講については,従来は毎回希望者を募集しておりました。これはいろいろの事情で1年間の研修日程を年度はじめに作りにくかつたためですが,そのために衛生部その他にお手数をかけていました。
 本年度は思い切つて1年間の研修計画を作り,すでに御承知のように4月に各病院から年間の受講希望を求めました。

あとがき

ページ範囲:P.555 - P.555

 赤痢の集団発生が随所に起き始める季節になりました。伝染病は,一般的には非常に少くなつたのですが,赤痢だけは減少しません。この点,日本の文化の基底の低さを物語るものなのでしよう。然し,特に病院に集団発生するということは全くお恥しい限りだと思います。私の病院は大丈夫と思つていても,文化の基底の低い集団を,病院という環境の中にとり込んでいるのですから,八方細心の管理が不断になされねばなりません。その意味で,山形氏の論文を警告としてお受け下さい。
 暑夏を迎えて,改めて手術室の冷房を願わないものはありません。——術者にとつても,患者にとつても…。特に最近のように長時間に亘る手術が行われるということになると,手術の成果に直接関係のある条件として当然考えねばならない必須問題です。唯,幸い空気調節の装置が出来て,冷暖房自在の環境が出来ることになつても,空気浄化がはたしてどうであるか知り度いところでその管理は充分に考えて使わねばなりません。菅野氏の実験報告は,その間の事情を明にするもので,有難く参考にさせて頂きましよう。

座談会

英・米・独のAssistant Doctor

著者: 本間道 ,   守屋博 ,   今村栄一 ,   西本達治 ,   熊取敏行 ,   吉田幸雄

ページ範囲:P.493 - P.508

 守屋 簡単に自己紹介をお願いします。
 西本 日本のインタンは東一でお世話になりまして,それが終りまして,バージニア大学で外科のStraight internのコースを1年取り,2年目はFirstyear Residenceのコース取り,それが終つて,フイラデルフイアのテンプル大学に行きまして,3カ月,Dr.ベーコンのところで勉強しました。

私の病院の試み

診療点数の簡便算出法について

著者: 中佐肇

ページ範囲:P.509 - P.515

 診療点数の算出は,煩わしい病院收入事務の1つである。日進月歩する新薬の出現,医療技術の進歩に伴う新しい治療方法の導入などによつて,診療点数算出の対象は常に動いている。ことに投薬注射に用いる薬品においては,巷間の広告,宣伝によつて知られるように次から次へと新しい薬名が登場している。これら薬品のことごとくが1つの病院や診療所において使用されていないことは勿論であるが,それら新薬のなかの1つや2つは従来用いられていた薬品に代替或は新規採用されるようになつている。
 患者の病態は,個々に相違しているものであり,かつ類似の症状であつても,診察する医師の診療方針によつて処方の内容が変つてくるものである。診療点数算定の対象範囲は患者数と医師数の相乗積に比例して拡大し,更に勤務医師の転出入の回数が重なるに従つて,外的な新薬の傾向とは別に病院の内的条件により変動するものである。

グラフ

壁に絵がある病院

ページ範囲:P.517 - P.523

 壁は物を云わない,考えもしない.自分のなかに自分の知らない自分があるという詩が,壁の場合にもあて嵌る.壁が絵で飾られるとき,壁画が描かれるとき,見る人の心の弦に響くとき,壁はやはり無心である.壁の評は,壁への評価ではなく,それを飾る人のセンスに対する礼讃であろう.

病院長プロフイル・56

佐田外科病院長 佐田正人氏

ページ範囲:P.524 - P.524

 病院グループのよきリーダーとしての先生の存在は大きい.県病院協会の創設に当り,私設病院の代表として,又官公立病院の立場のよき理解者として大きな支柱となり,今日迄副会長として勤めて貰つている.「病院協会が大資本を背景にした数百ベツドを擁する大病院の管理のみを対象とするならば,私設病院はそつぽを向くであろう.近代病院と云うのは何も大病院のみを指すものでなく,中小病院の管理方式にも近代化の必要がある.むしろわが国では中小病院の管理こそ重要ではないか。大病院の管理方式をそのまま中小病院の管理にあてはめてもこれは無理である.病院は最近大資本経営移行の傾向にあるが,大病院の良否はその病院機構に負う所が大である.中小病院では院長個人の頭脳によつて左右されることが多い.特に私設病院では今迄のやり方にも大いに反省研究しなくてはならない面がある様に思う.院長個人で管理出来る範囲も限度がある.どうしても病院の管理機構を考えて見る必要がある.新しい時代に沿つた病院経営と云う事は研究され,好い面はどしどし取入れるのにやぶさかであつてはならない.病院管理を目的とする協会がそう云う意味で,単に大病院,或は官公立病院の集りであつてはならない.中小病院特に私設病院も参加して共に研究して行つてこそ協会の意義もあるものと信ずる.」これは私設病院部会での先生の挨拶に述べられた事であつた.

通信

アメリカの医学校と病院及び病院管理

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.531 - P.535

学校と保健所
 私の居るthe School of Public Health and Admi-nistrative Medicineはこの前に書きました様にColum-bia-Presbyterian Medical Centerの一角で東北のすみにある7階建の1番少さい建物にあるのですが,これがまたNew York City Depertment of Healthと共有で——と云うよりN.Y.Depart of Healthの一部を間借りしている様な恰好で,5階と7階に教授達の部屋とそのほか小講堂があるだけで,地下の大講堂はN.Y.De-part of Healthのものを借りている始末です。
 このN.Y.Depart of Healthと云うのはマンハツタンを8地区に分けてその2地区を受持つている市の保健所です。結核,熱帯病,性病,栄養,小児,歯科等のクリニツクを持つていて保健婦の家庭訪問等を行つています。学校のスタツフの中にはこの保健所の職員を兼ねているものもありますが,あまりこの両者は密接な関係を持たない様です。余り近くにありすぎると尊敬もしないし協力もしにくくなるのではないでしようか。学校はその性格からして保健所での実習をしばしば必要とするのですが,この同居している保健所を利用せずに遠く離れた郊外のWestchester郡の保健所を利用しています。

固定欄

診療,他

著者:

ページ範囲:P.546 - P.553

リウマチセンター
 高血圧,心臓,癌に対するセンターが現在では最も普通であるが,これからはさらに特殊なものを2,3えらんでお伝えしよう。
 リウマチは古くからその対策に腐心しているが,老人病の増加並びに慢性リウマチが壮年期に発病するものが少くない上に,産業作業能率に及ぼす影響も極めて大きいので,外国では,はやくから専門施設や研究所を設立して治療及び予防に力を入れている。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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