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雑誌目次

雑誌文献

病院17巻8号

1958年07月発行

雑誌目次

特集 看護

Hospital Nursing Service—時間が必要であり,訓練が必要である

著者: K.Lyman

ページ範囲:P.559 - P.565

 筆者はこの論文で,看護婦の変化のある職務及び現在看護婦が理想的な看護をすることを困難ならしめている病院内の幾つかの条件について論ずることにする。看護を改善するための方法について幾つか提案しよう。1つの典型的な病棟における看護婦の任務を,現在の規準を参照しながら記そう。1つの病院が看護学院に臨床経験を修得させる場合にはどのような規準が要望されるかについて考える必要がある,ということを述べる。最終的な提案は,結局時間,すなわち充分な人員,及び訓練に関してである。職員の看護婦には附加的な訓練が必要である。この訓練を施すには,総婦長と病棟婦長と主任看護婦が自分達の仕事について更に充分にのみ込んでいることが必要である。

保健婦助産婦看護婦法の10周年を迎えて

著者: 金子光

ページ範囲:P.567 - P.572

 面壁9年の修業をつめば,10年にして"悟"が開かれるということは古くからいわれているのですが,保健婦助産婦看護婦の新しい制度に向つて満10年,難行苦行をしましたが,まだ修業が足りないのでしよう未だに悟りきれず,さまざまな"ぼんのう"になやまされています。ただ1つ,自信をもつことが出来たことは,新しい制度がその目標としてすすめて来た"看護"のあり方は,間違つていなかつたということであります。自分の職業をよく知り,誇りをもち,仕事に打ちこんでいる若いナース達が,多くの人々の期待に応えて保健婦として,或は助産婦として,又は臨床看護婦として医学や公衆衛生の進歩発達に大いに役立つていくことを信じつつ,読者はそのためのよき指導者であり,Co-wokerでもあつて頂きたいと希いつつ10年の歩みをふりかえつてみることとします。周知の通り昭和20年の終戦後は,敗戦の憂目をみた日本はアメリカ軍の指揮する極東軍の占領下にあつたのですが,日本の一般教育制度の改革が行われると同時に,医療関係者の教育に関する再検討が行われ,看護関係も又その最も大きな課題の1つでありました。

精神病院と看護

著者: 井上正吾

ページ範囲:P.573 - P.584

1.はじめに
 私がこの題のもとに書こうとしているものは,私が管理している,精神病院の日常行われる,看護を通じ,色々の問題点を発見し,それをどのように改善して行くかという努力と,更に,近い将来,如何にあるべきかという事に重点を置きたいと考えている。

精神病看護の経験

著者: 羽生りつ

ページ範囲:P.585 - P.587

 精神科看護の実習に来る看護学生達と実習の最後の日に何時も懇談会をもつているが,その際ある学生が「患者の入浴介補をして,始めて男子患者の背中を流したり,着物を着せたりしたが,全員の入浴が終る頃,自分の抱いていた精神病患者に対する考えがまちがつているのに気付いた。裸の人間をお世話してみて,いわゆる気ちがい,と云われているものに対しての恐怖が除かれ,やつぱり一人の人間だということが心の底にしみこむように理解されてきた」と,またある学生は「精神病患者というものに対して,教室で教わつたなかで,特に甚だしい症状が印象に残つていたので,実習1日目は恐怖心でびくびくしていたが2日目に看護婦から患者のそばにいくようにさそわれて,おそるおそる話しかけてみたら,患者の方から「貴女達の口調は僕たちを精神病扱いにした口のきき方だ,失礼だ」と云われて,内心おおいに恥じ,またちがつたおそれを感じた」等,学生たちにとつては意外だつた経験談が多く語られた。私共では毎年数カ所の高等看護学院の臨床実習指導をお引受けしているが,その際いつも感じることは精神障害者に対する認識がいかに欠けているか,また精神病院は陰惨な暗い所だと印象づけられているということである。然し2週間の実習が終つて帰る学生の多くは,自分達が如何に精神障害者の実態をしらなかつたかということ,また患者との対人関係が如何に大切で,また困難かということを痛感しているようである。

看護の作業調査の検討

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.589 - P.595

 看護が病院機能の重要な部分を占めるようになつてきたことに付随して,看護職員のあり方,看護内容,看護婦数などが日常の問題となつてきた。
 そこで看護の実情を明らかにするために看護の作業時間調査(タイム・スタデイー)がしばしば行われている。しかしそれらの研究結果が実際にはどれくらい利用されてきたであろうか。単に実情を訴えるのみでとどまつてしまつたり,あるいはよい成果も個別的であるために力がなかつたりしていなかつただろうか。

グラフ

患者を安全に楽にするために

ページ範囲:P.597 - P.603

 兎角に,入院生活は不愉快だと多くの人は云う.病苦の人々を楽にする看護とその設備こそ病院には必要である.また病人を安全に預ることは病院の義務である.限りあるページであるが,それらの事柄をグラフにして集めた.

病院長プロフイル・57

江別市立病院長 佐川誠一氏

ページ範囲:P.604 - P.604

北海道病院界のホープ
 北海道の江別,といつても内地の人達はそれが北海道のどの辺にある町なのかすぐに答えられる人は多くあるまい.しかし本誌の読者ならば江別の所在は知らなくとも江別病院の名は記憶される方が少くないと思う.
 戦後の病院ブームは彼地北地の市町村に公立病院を林立させたが,江別病院もそうした戦後派病院の1つで,昭和26年に江別町立国保病院としてスタートした.

通信

病院組織

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.607 - P.613

病院と医師
 アメリカ社会にはこう云う第一原理があります。医師は何所においても医療を行う特権を与えられることが出来る。この意味は社会に病院があれば原則的に医師である限りそこを利用する権利があると云うことです。勿論要求されればそこの使用料金を支払わねばならないことは当然です。病院でなくMedical buildingと云うのも大都市にはよくあります。これは沢山の医師がその中にオフイスをもつて診療所を開設している所で,共用のX線や検査施設があります。これについても同じことで,ある医師がここを利用することを拒否することは原則的に出来ないわけです。
 この第一原理を忠実に履行すれば,すべての病院はOpen systemになるわけです。昭和30年秋,アメリカ病院協会長Dr. Crosbyが日本に来た時,このOpen systemとClosed Systemと云う言葉についていささか混乱をきたしたのですが,その時Crosby氏が説明した様にOpen systemというのは全く無制限にその地域にいる医師であれば誰れも来てその病院が利用出来ると云うこの第一原理を文字通りに実行している場合をさしています。所が次第に社会の医師が増えたことと,医師の内にも質の悪いのがあるので,ある病院を利用する医師仲間が自分達の組織をつくり,規約を定めてこの仲間に参加出来る医師の資格を制限することが今日では普通になつています。

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社会保險診療報酬以外に患者の負担となる諸経費の標準についての研究

著者: 大門繁雄

ページ範囲:P.615 - P.617

 病院の経営は,組織,機構,地域,規模の大小等により,一律に実施困難な事は屡々論議せられ,その標準を求めて,夫々の立場から標準に近い経営が理想であり,その収支範囲や,人件費,材料費,諸経費の標準等については学会其他で研究発表があり,又社会保険診療報酬は点数で規定せられ,患者の負担が判然として居るが,この診療報酬以外に患者の負担となつて居る,入院料の差額,光熱給水費,往診車代,下足預り料金其他については一定の標準のないまま,個々の決定により実施されて居るようなので,附近の病院その他の例を詳細に研究して,自己病院に応じたものを決定したいと努力中の処,一地方の現況に過ぎないのであるが,愛知県病院協会で調査された,県下,官,公,私立病院,100病院における現況を把握する資料を得たので,この資料を参考に,当院でも検討の上当院に応じたものを決定し,実施中であるが,該資料が従来余りにも表面に出なかつた事項なので,興味ある問題と存じ,次に掲載してお批判願い度いと存じます。

研修所だより

著者: 今村

ページ範囲:P.631 - P.631

研修
(1)研修会第83回研修会は主として150床以下の病院の事務長を対象として6月6日より13日まで行ないました。参加者は49名でした。
 討論の時間に次のような問題が提出されました。現在各病院で苦しんでいられる点と思いますので,参考までに主要なものを記してみます。

あとがき

ページ範囲:P.632 - P.632

 今年は,新看護婦制度発足10周年にあたります。そこで,今月号は,それを記念して「看護特集」としました。
 ひるがえつて見ると,終戦以来この10年間に,日本の病院は大きな変革をして来ました。今でこそ,病院と看護のあり方,考え方が常識的になつて来ましたが,終戦のあの大混乱の時代に,日本の従来の慣習に,大きなメスを入れられたときは,一同ビツクリしました。特に,先ず,この看護の問題から,ブツスリ,大きな手を加えられたときは,院長を初め,病院の医師達は,ろうばいした事は事実です。然し,その事が,矢張り病院本来の姿を実現するために,最も適切であつた事を認めないわけには行かないでしよう。振り返つて感激深い思いをされる院長先生が多い事と思います。

私の病院の試み

医薬品の計数管理について

著者: 宇佐見幸良

ページ範囲:P.619 - P.622

 医薬費が適正であることを計数的に証明出来るような医薬品管理の方法は,病院経営者並びに病院薬局長の多年の念願であつた。
 なぜなら医薬品は,病院経営に於ける変動費のうちでも大きな比率を占める上に又主要な生産材でもあるからである。

固定欄

診療,他

著者:

ページ範囲:P.623 - P.630

インターホーンからテレビへ
 これは診療より看護に関係深いものであるが,目新しいことなので紹介しておく。
 病棟の看護管理の機械化の1つとしてわが国でもインターホーンが急速に普及している。看護婦は看護婦室にいながらにして病室の患者と話ができる。これは患者にも便利であるが,看護能率上も有利である。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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