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雑誌目次

雑誌文献

病院18巻11号

1959年10月発行

雑誌目次

特集 診療管理

医療の社会化

著者: 橋本寬敏

ページ範囲:P.783 - P.784

 近年「医療の社会化」と云う言葉がよく使われるが,その定義については,誰もが同じことを考えているとは限らない。しかし,大体においてはこのように考えるのが普通ではないか。
 医学が進歩するにつれ,医療は必ずしも廉価には得られない。即ち,個人の負担に堪えかねることが屡々あるので,これを社会の連帯責任において処理して行こうと云うのが医療の社会化ではないか。衛生方面では個人個人が如何に注意しても病気を防ぎ健康を保つには充分でないので,社会の連帯責任において予防と保健とを実行するのが公衆衛生だろう。文化国家は公衆衛生の実現に努力するとともに,医療の社会化を目指して努力するのである。

日病診療管理部会1年のあゆみ

著者: 小野田敏郎

ページ範囲:P.785 - P.790

 病院管理の問題は数多い部門に亘つて検討がなされているが,病院の本来の任務ともいうべき診療の分野においてはその検討の跡が十分でないとみられている。もともと病院管理の学は欧米におこり,欧米の病院はそのなりたちからいつて医師団が病院より独立した部門をかたちづくるために,診療の管理というものがこの埓外におかれているという事実にも関係があるのであろう。
 日病橋本会長がかねてからこの点について注目されていたが,昭和33年5月,日本病院協会内に診療管理部会が設立せられ,わが国における病院診療の問題点と考えられるところより逐次検討が行なわれることとなつた。5月14日聖ルカ国際病院において第1回の会合がもたれてから1年の日がながれたので,この間に検討された諸問題の結論のあらましを記して,読者の御参考に資したい。

病院と病理

著者: グレンフランク

ページ範囲:P.792 - P.793

 病理学は診断の基礎となるものであります。診断さえ正確に下されれば,それから先の治療は簡単になります。患者が病院に送られる時には,仮りの診断がつけられているに過ぎませんが,入院させた患者をよく調べてみると,当初の診断が変つてくるものです。この診断を確立させる最も重要な手掛りは病理から得られるのであります。
 私が,ここで申上げる病理検査の内容には,次の四つのものが含まれます。第一は,一般の臨床病理検査があり,第二は,生検(Biopsy)の病理所見があり,第三は外科的に取出した臓器の病理であります。更に第四は,死亡した患者についての剖検による全般的の病理所見であります。病院の外科診療上には,以上の四つを併せて取扱う組織討議会(Tissue Conference)が重要な役を演じます。

—米国一流の外科医は語る(フランク・グレン談)—日本には専門医が欠けている—〔The Japan Times7月26日号より訳載〕

著者: 編集部

ページ範囲:P.794 - P.795

 日本の病院には,優秀な設備はあるが,充分修練をつんだ病院附専門医を欠いている。
 これがこの夏,東京の聖ルカ病院に外科顧問として招かれて,3週間専門医教育の指導をしたアメリカ第一流の外科医の卒直な意見である。

成人病対策における病院の役割—(第3報)癌対策

著者: 山形操六

ページ範囲:P.805 - P.810

I.はしがき
 高血圧・心臓病対策における医療機関特に病院の役割は重大であり,かつ,今後考慮されるべき多くの問題が残されていることについて論じ来たわけであるが,癌対策においては,疾病そのものの本質から或いは技術上の難点等から観て,さらに検討すべき幾多の課題が存在する。
 脳卒中死亡と異なり,悪性新生物による死亡は40歳台において国民死亡の第1位を占めている点は注目に値する。昨今わが国にも癌予防普及の民間機関が誕生し,各都道府県側が大学,医師会等協同のもとに対癌協会の組織を作ろうとする動きが活溌になつて来たことは喜ばしい。

簡便なX線Filmの在庫管理法

著者: 梅津正熈

ページ範囲:P.811 - P.815

 医学の進歩に伴ないX線写真の重要性も益々高まつて来ている。したがってX線Filmの使用量も急速に増加しつつあるが,診断上の重要性という点から,品切れとなることを恐れるあまり,使用量を遙かに上廻つてFilmを買い過ぎる傾向が見られる。X線Filmは単価も高く保管にも特別の設備や手数を要するので,病院の経営上からは品切れとならない範囲で最小限に買入れたい訳である。
 三楽病院で昭和33年1月から12月までの1カ年間(50週)にわたり各科入院外来を通じて使用されたFilm数量を各型別に週毎ダース単位に調査して見ると,それらの度数分布は第1〜5表の如く各型とも正規分布と見なして良いようである。第1表の大四切型についてx2検査により分布曲線の適合度を調べて見ると第6表に示す如くx2値は0.706となり,x2.95(3)=7.815より遙かに小さく,従つて良好な適合度を示す。大四切型以外の各型についても同様の計算により,第7表の如くいずれも正規分布曲線に対し良好な適合度を証明し得た。即ち大四切型を例にとれば,第1表の柱状図は第8表の如き正規分布曲線と考えて良い訳である。

レントゲン診断料簡易計算法

著者: 角田信三 ,   斎藤正

ページ範囲:P.817 - P.821

序言
 健康保険診療報酬に当つて,殊にレントゲン診断点数の計算が複雑ではなかろうか。専任の事務員では全要領を頭に置いて,計算も出来よう。甲表では,レントゲン診断が各項目に分離されているので,個々の症例で時に誤算ともなり,時に点数集計に或る程度の難渋さを伴う場合もあろう。
 私共は計算簡易化のため計算表を作製したので御批判を願いたい。

グラフ

新らしい病院の窓

ページ範囲:P.797 - P.802

 窓は建物の目である.その目つきは設計者の人柄を受継ぐせいか,険しい目,ドライな目,美しい目など病院の容貌となる.然し時代によつて美人の標準が変るように,病院の窓も亦変遷して行く.
 窓は建物の目である.人工の目であるから,その機能を巧みに採り入れた窓が見られる.

病院管理研修所で10周年記念式

ページ範囲:P.827 - P.828

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甲表は医事業務にどう影響したか

著者: 江本邁夫

ページ範囲:P.823 - P.826

1
 甲表を実施してはやくも相当の月日がたつた。最初,とかく,とまどいがちであつたこのシステムも,やつと軌道に乗り始めたというのがこの頃の我々現場関係者の本音ではあるまいか。
 医療の報酬体系合理化問題はさておき,はたして当初うたわれたように甲表実施に伴う医事業務は簡素化されたといえるだろうか。以下は私どもの実際に体験した第一線医事職員料金算定係としての苦心談である。

看護婦の勤務に関する2,3の調査とその考察

著者: 村山午朔

ページ範囲:P.829 - P.843

 病院の管理運営上,看護婦が全員寄宿舎に入居していて勤務することが最も望ましいことは申すまでもない。而して最初採用時には皆そうした話合で勤務するのであるが,やがて結婚問題が起ると従来は大体転退職することが普通のようであつた。然し近時結婚後も引続き勤務を希望するものが漸次多くなる傾向を示し,病院側もことが結婚という人生の重大問題でもあり,又補充難等のこともあつて簡単に退職させることは中々困難である。そして結婚は当然通勤問題となり,又産前産後の長期休養が起つてくる。この数が増すと勤務体制に大きな影響を及ぼし,この問題を一体どう取扱つたらいいか。通勤看護婦にも一般入居看護婦と勤務上何等差別を設けないとしても,夜間災害等非常事態の患者救出に際し患者の容態種別によつても異るが大体何パーセント位の宿舎入居確保を必要とするか。今仮りに何%まで通勤を認めると定めた場合,その満度に達した後の処理をどうしたらいいか。問題は中々容易でない。

看護/給食

著者:

ページ範囲:P.849 - P.855

外来診療棟の看護業務調査
 国立病院では,従来,病院の管理運営,業務の向上のために,種々の部門について医療業務従事者の共同研究班を組織し,毎年,異つたテーマに関して調査研究を行つている。昭和32年度の研究報告の内から,標題の調査に関する報告を広く,御紹介しようと思う。
 元来,看護業務の調査としては,主として,病棟におけるものが多く,手術室,外来診療等特殊部門に関してはあまりその結果報告をしていない。今回,国立病院の看護部門の共同研究としてとりあげられた外来診療棟の看護業務調査は,その結果において,いろいろ考えさせられ,今後の取扱いについて示唆を与えられるところがあると思うので,敢て発表するものである。

あとがき

著者: 吉田

ページ範囲:P.856 - P.856

 今年は引続き米の大豊作で,全国農民の生活は一応安定し,この農村の安定が,農村病院を多忙にしていることであると想像します。是非こういう際に,病院の衛生教育を働かせ,農民に正しい健康処理の知識を普及したいものです。
 偖,10月号は診療管理の特集号としてお手元にお送りします。巻頭には,橋本会長の「医療の社会化」に関するお考えを発表して頂きました。医療の社会化ということばがよく使われますが,いろいろの意味に使われるので,とかく誤解が生じます。しかし,この際指摘された問題については,同一の焦点ではないかと想像されます。すなわち,患者の経済的負担能力と施されるべき医療の内容との関係はいかにあるべきかという課題です。このことは,社会保険給付のあり方の根本的観念を規制するものでありますので,大いに論議が盡され,医療を受けるもの,医療を担当するものの間に,充分な理解と了解が成立つた上にはじめてこの制度の正しい運営ができるものと信じます。従来の社会保険は国民の一部を対策としたものから出発したものであるが,これが全国民を対策とするということになると,改めてこの問題は根本的に明確に解決して置く必要がある問題です。続いて日病参与の小野田氏に,日病の診療管理部会の1年の歩みについて御執筆を願いました。診療管理については,日本の病院管理が立遅れていました。しかし幸いこの1年間にこの方面の動きが活溌になつて来ました。

私の病院の試み

関東逓信病院における請負清掃について

著者: 吉川遼子

ページ範囲:P.845 - P.848

 先ず清潔で,美しく行とどいた病院にするための大半の責任が,病院ハウスキーパーの双肩にかかつているといつても,過言ではなく,それがたとえ新しくとも旧くとも,ともかく病院全般の環境を美しくして衛生的にするのが,ハウスキーパーの大きな任務でもある。病院のみならず,建物の内外を,すみずみまで清潔にすることは建物の保守管理,環境衛生上から重要である許りでなく,病院に来られる誰彼をとわず,とくに患者にとつて安心して任かせられる最上の場所として,大切なことはいうまでもない。殊に長い病床生活を送らねばならない入院患者に対しては,医療面,看護面は勿論,更に環境面にも,細心の注意をはらつてこそ,本当の立派な病院となるのであるから,その一部分である保清関係をなおざりに出来ないことは,今更いうまでもないことである。
 当関東逓信病院においては,電信電話公社の企業経営合理化対策の1つとして,事業要員の重点的活用を図るため,清掃用務の請負化を実施し,これによつて生ずる定員を現場生産面にふりむけることになつたのが根本の方針である。本社においては勿論,その附属機関である当院においても,その方針に従い,昭和29年の末期より先ず一部分の請負化を始め,漸次その範囲を拡めて,同32年以降は,全般にわたつて,請負化する段階に入つた。ただここに断つておかねばならぬことは,公社においては,純然たる請負ではなく,ある企業団体に委託の形をとつていることである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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