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雑誌目次

雑誌文献

病院18巻12号

1959年11月発行

雑誌目次

特集 医事業務

医事業務の現状と進路

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.859 - P.860

I
 終戦後のわが国の病院の中に,医事業務が一つの独立した業務として形成され,急速に発展して来た経過は,今にして思えば,病院管理の分野の進展と,そのままその歩みを一にしたように思われる。いわば,医事業務は新しい病院管理方式の申し子とも言えよう。
 わが国に於ける新しい病院管理法の研究とその応用は,その発足以来10年を経て,今やようやく,一定の方向を得て普遍的姿をとろうとしている。そして,其処に於ける最も基本的課題の一つは,機能或は業務の所謂「中央化」ということである。そして医事業務は,医療又は患者に関する事務の中央化されたものとして,そうした病院管理法の発展途上においてわが国の病院業務体制の中に新に形成されて来たのである。医事業務は,その意味では病院業務中のいわば新興業務だということが出来る。今でこそ,医事業務の重要性を疑う病院人は余りないであろうが,それが少しずつ形をとりはじめた発生時代に於いては,医事業務とは一体何をするものだろうかという,その業務内容自体すら定かには理解されなかつたのである。否,医事業務とは何ぞやということは,この業務が既に大いに普及していると思われる現在においてすら,必ずしも明かであるとは言えない。現に,医事業務として行われている業務の内容又は範囲は,それぞれの病院によつて,実にまちまちである。従つて,現在,医事職員の定数程病院により異同の大きいものはない。

入院診療伝票制度実施に伴う病棟内部事務の改善について

著者: 高橋元吉

ページ範囲:P.861 - P.876

 病院管理会計の合理化の手段として現在診療収入伝票制度が最も適したものとして多くの病院で採用され,実施されている。そしてこれが実施手続について,既にいくつかの病院で研究された方法が発表されているが,病棟内部事務即ち医師,看護婦,看護助手,クラークの行う具体的な帳票の取扱い,業務の分担,及びこれに伴う単位事務の流れ等については,病棟内部の問題として事務部以外の診療部の人々の手に委ねられており,この面において事務量の問題とか,伝票をキル問題とか,手続の繁雑さ等のいろいろの問題があつて本制度自体が行き悩み当初の計画にくずれを生じたりしている事は,数多く見聞しているところである。
 私も国立東京第一病院勤務当時昭和26年本制度の実務研究を命ぜられ,守屋現副院長のお手伝いをしたのであるが,この制度については同副院長が昭和28年「病院」9巻4号にて実施手続を発表され,これは伝票制度の体系立つたものとして各方面においてもしばしば引用されている。本虎の門病院においても開院と同時に従来の手続原則に従つてこの制度の実施を計画し,実施したところ病棟内部の事務のステップ,業務分担,事務量等事務工程手続上に於て欠点が生じたので,現状分析の結果数種の改善をなし,今日その成果を得たので,病棟内部における本制度実施手続の一方法として,改善経過の実態を紹介すると共に実施手続の概要を参考迄に以下述べて見たいと思う。

入退院業務の機械化

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.877 - P.881

日本の病院では収入の大部分が診療料金でまかなわれておゆ,更に診療料金の半分以上が入院収入で占められるのが病院の一般的な在り方である。私の病院の最近3力年の例を見ると,(入院収入)(外来収入)昭和31年61.2%38.8%昭和32年67.5%32.5%昭和33年67.7%32.3%
 これらの数字が示す様に,入院収入は診療収入の大体70%前後となる。その上,毎年入院収入の比率が増大する傾向が見られる。従つて,あらましの日本の病院は診療収入以外に財源を持たないから,勢い,病院経済を入院収入に強く依存せざるを得ないのが現状であろう。

医事統計

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.883 - P.889

はじめに
 病院がその目的を忠実に追求してゆくためには,経営が常に健全な状態に置かれなければならない。病院経営の健全な状態とは,いかなる状態かと言えば,それぞれの経営主体により,病院の種別により異なるものである。ただ日本の病院においては,経営に要する費用は原則的に,患者の診療収入をもつてまかなつている。社会保険診療報酬も,その計算方式に幾多の難点は見いだされるが,経営に要する費用に見合うように計算することを建前としている。経営に要する費用の内容については,いずれ別の機会に述べることとするがこのような言わば自収自営の企業として性格づけられていることは否定できない。
 このような日本の病院経営のあり方から,健全な経営とは,一応その病院の維持,運営に必要な費用を診療報酬によつてまかない得る状態を言うものであり,経営の合理化が要求されてくる経営の合理化は,病院の診療圏内において可能な限り,経営上適切な規模を持ち,収入の増加をはかることと,費用を切りつめること,無駄をはぶくことの両面が含まれなければならない。

低圧電気湯タンポについて

著者: 阿部英作

ページ範囲:P.891 - P.894

 近代的設備を完備せる病院,療養所は論外として日本の医療施設の半数以上が,寒さを身に感ずる頃となつて来ると,病棟の暖房設備に頭を痛めているものと思われる。
 わたくしが国立長野療養所に於いて関係職員の協力を得て昭和32年度,33年度の2年間に実施した"労力のいらない,安全な個人暖房で,経済的である"低圧電気湯タンポについて概況を報告し,諸賢の御批判を賜りたい次第である。

医療過誤の医事法制的考察—とくに医師の過失責任について(その1)

著者: 高橋正春

ページ範囲:P.905 - P.912

I.緒言
 医療過誤の問題が医学の領域におけるのみならず,法律学や社会的領域においてもまた極めて重大な意義をもつものであるということは,医師と患者との間における民事もしくは刑事事件や社会問題が近時その発生の頻度を増している一事に照らしても,容易に肯かれるところである。更にこのような事象は,今日では医療過誤が発生した場合に,それが単に医学的事実として評価されるにとどまらず,法律的あるいは社会的事実としての評価をうけることがさけられなくなつて来たことをも意味している。そしてこのような評価が正当に行われなければならないということは,その結果がただに患者側に利益をもたらすというためばかりでなく,法律生活としての医業の学と術と法との重層構造を深化せしめるためにも,更には医学医術の進歩を促し,ひいては医の倫理の一指標を確立するためにも必要な一事である。このような見地にたつて,拙論はそれらの一連の諸問題のうち,特に範域を医療過誤における医師の民法上の過失に限定して,若干の考察を試みようとするものである。

グラフ

農業地帯の或る綜合病院

ページ範囲:P.897 - P.903

 四囲山獄にとりかこまれ,縦貫する信濃川の両岸に僅かに開ける盆地,川添えに通ずる鉄道,国道が唯一の交通路である陸の孤島は,世界有数の豪雪地でもある.ここに,10万の住民が,農業,織物業を営む.ここは積雪日数百日余り,10万の住民の健康を守るために設立された208床の新潟県立十日町病院の使命は誠に大きい.医業医より日本医療団へ,さらに新潟県立となり,その歴史は,日本の医療機関の変遷そのままと云えよう.戦後,日本の医療機関荒廃のときに,新潟の病院人は立ち上つて,新潟県病院復興会議を起し,本院は率先大活動を行つて,今日の基礎を作るに至つた.診療内容の向上,設備の充実,サービスの強化に,そしてその基礎付をなす経営合理化によつて,より良き病院へと,その努力は,休みなく続けられている.

病院長プロフイル・67

西崎省三氏—大阪・聖バルナバ病院長

ページ範囲:P.904 - P.904

 先ず,聖バルナバ病院の紹介であるが,場所は大阪市の東部に当る天王寺区細工谷町にあり,附近一帯には,大阪日赤,桃山,警察,逓信の各病院が集中している,いわば,病院地区である.
 聖バルナバ病院の名称の起源は古く,明治6年にささやかな綜合病院として,元の居留地だつた川口町に,エピスコパル,チヤーチ・ミツシヨンの宣教師等によつて,キリスト教主義に基ずく病院として設立されたのが最初である.

私の病院の試み

医事—その業務と分析

著者: 江本邁夫

ページ範囲:P.913 - P.917

I.はしがき
 "窓口"と一口に言つてみても,その意味はいろいろある。広義にいえば"医事係"全体が窓口であるわけだ。で,この"窓口"--医事係の仕事は何だろうか。今まで部分的にしかとりあげられていないこの問題を本質的に究明してみたいと思う。

固定欄

診療,他

著者:

ページ範囲:P.919 - P.930

わか国における医療用放射線照射装置の利用の現況と放射線防護の問題について
1.利用の現況
 この一文を草するにあたつて,先ず放射線照射装置なるものの定義を試みてみよう。「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令」第2条第1号は,放射線照射装置とは一定の目的の下に物体に放射線を照射する機器であつて装備している放射性同位元素の数量が100ミリキュリーをこえるものをいい,医療用であると工業用であるとを問わないとしている。医療法施行規則でいう「ガンマ線照射装置」は,ここでいう医療用放射線照射装置と一致すると考えてよいだろう。
 医療用のものは,工業用として使用されている非破壊検査装置とは異り装備しているアイソトープのキュリー数が大きく,20キュリーから2,000キュリーまでのものが使用されており,エックス線深部治療装置と比較しその透過力においてはるかに優れており治療効果もあがつている。而も使用の方法が簡便であることから,昭和27年大量線源用として,170キュリーの60Coが始めて我国に輸入され,同年国立東京第二病院に27キュリーを装備した東芝RIT−1型が設置されて患者の悪性腫瘍の治療にあたつて以来,急速にその利用はひろまり,昭和34年9月1日現在においては全国で実に160余りの医療用放射線照射装置が設置されており,各都道府県を通じてその無いところは殆んど無いと云つてよい右様である。

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あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.931 - P.931

 いよいよ晩秋です。寒さは一歩々々近づいて来ます。寒冷地の病院では既に越冬の用意を完了されたことでしよう。
 さて本号は,「医事業務」の特集号としました。そしてこの方面の開拓者でありエキスパートである方々に執筆を願いました。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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