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雑誌目次

雑誌文献

病院18巻13号

1959年12月発行

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特集 病院建築

精神病院の設計

著者: 伊藤誠 ,   栗原嘉一郎 ,   野村東太 ,   小林健司

ページ範囲:P.939 - P.956

I.はじめに
 従来の精神病院の多くが「病院」というよりはむしろ「収容所」と呼ぶにふさわしいものであつたことは,既にしばしば指摘されている。最近は医学の進歩にともなつて,病院についての考え方も改まつてきたことと,組織だつた管理がひろく発展してきたこととによつて,その姿も急速にかわつてきた。しかし,いまだに200畳とか300畳とかいう大部屋の片隅に,ふとんを山のように積み上げて,何十人という患者が落着く場所もなくあちらこちらにうずくまつているような例がみられることから考えれば,まだまだ相当に問題が残つているのではないかと思われる。第一,このように殺風景な大空間が,かりそめにも病室と呼べるのだろうか。「このような大部屋があれば,映画会や演芸会ができて大変都合がよい。」などといつた意見の基調をなすものは,まつたく収容所としての認識以外の何ものでもない。
 しかし貧弱も度を越して余りにもひどいこのような施設をもつて事足れりとする思想はもはや姿を消そうとしている。むしろ厳しい制約条件をも乗り越えて,少しでもレベルを改善向上させようとする努力が各方面で地道に進められつつある。だが,ここで問題になるのは,従来の努力を施設的・建築的な面に限つてみた場合,やや本質をはずれた些末なことがらにとらわれすぎていた傾ぎがなかつたかということである。

臨床病理検査部のエレメントプランについて

著者: 小川健比子 ,   小酒井望 ,   諸根信雄 ,   富沢東洛

ページ範囲:P.959 - P.977

 本研究の主目的は,成可く早急に臨床検査部のエレメントプランを作成するにあつた。恐らくその最短距離を通るにしても,少くともこれだけの検討は必要であろうと思われるが,特に各部の構成,設備の観点から考察を進め,これを特大A'(300Bed以上),大A (300〜200Bed),中B (200〜100Bed),小C (100〜50Bed以下)病院各規模に応じて,そのエレメントプランの試案を作成してみたので御参考に供する.

厨房の設計について

著者: 野村東太

ページ範囲:P.979 - P.999

I.まえがき
 我国の古い建築物をふりかえるとき,表玄関や客の出入りするところには力を注ぎながら,俗に勝手口まわりと呼ばれるところはおろそかにしがちであつた。病院建築においてもこの例にもれず,表看板ともいうべき診療・看護などの部門にくらべて,厨房・洗濯場・ボイラー室・変電工作室などのいわゆるサービス部門とよばれるところはあまりかえりみられなかつた。従来,サービス部門といえば間接的にしか収益に関係のないところから,また国民一般の衣食水凖の低さなどから,病院建築のなかでも一番進歩のおくれた部門だつたのである(写真1.2)。
 近年,病院の近代化にともない,とくに戦後規凖看護などとともに規凖給食・規凖寝具が病院として欠くべからざる要素と考えられるようになり,また給食などが病院収入の一翼をになうようになつてから,サービス部門にも次第に目がむけられはじめてきた。厨房を例にとつても,あちこちの病院で増改築が行われているし,新しい厨房にはタイルがはられたり,ガラスがふんだんにつかわれたりして,一見したところずいぶん明るく美しくなつてきた。しかし,その内容をよくみると,依然として室内に蒸気がたちこめ,床は水びたしの状態といつたところがほとんどで,近代的な給食サービスの機能に応じた管理方式,厨房内部の計画,近代化した厨房設備の使用といつた根本的な点では一昔前と大差ないのである。

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あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.1002 - P.1003

 いよいよ1959年も,あと旬日で終りをつげます。今年をふりかえるといろいろと御苦労が思いだされる事とお察ししますが,健保診療報酬の値上げでどうにか一応一息つかれたことと思います。しかし本年の後半から一般産業は再び好景気となり,労働者の賃金の引上げ,物価の値上りが徐々にあらわれて来たようで,改めて病院経営に暗影がさして来るようです。少くともこの暮の一般のボーナス景気からは病院職員は見はなされているようです。社会保険の奉仕機関だからしかたがないともいえるかも知れないが,社会に代つて病人の苦悩を相手としてつとめている病院職員の労苦に対して,何らか社会的感謝の意志表示があつてもよいと思います。病院のクリスマスも病院職員の犠牲によつて行われています。これで良いでしようか。社会保障は経済的相互扶助だけでは割り切れません。社会の人に代つて気の毒な人のお世話をしている機関の人々の精神的労苦の価値を忘れてはならないと思います。病院の開設者や院長先生方いかがでしよう。年末位いは地域の有志の援助によつて,1年間の病院職員のこの労苦に精神的慰安を与える組織を考えて上げられないでしようか。--年末の所感。

「病院」 第18巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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