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特集 病院建築
厨房の設計について
著者: 野村東太1
所属機関: 1東京大学工学部建築科吉武研究室
ページ範囲:P.979 - P.999
文献購入ページに移動我国の古い建築物をふりかえるとき,表玄関や客の出入りするところには力を注ぎながら,俗に勝手口まわりと呼ばれるところはおろそかにしがちであつた。病院建築においてもこの例にもれず,表看板ともいうべき診療・看護などの部門にくらべて,厨房・洗濯場・ボイラー室・変電工作室などのいわゆるサービス部門とよばれるところはあまりかえりみられなかつた。従来,サービス部門といえば間接的にしか収益に関係のないところから,また国民一般の衣食水凖の低さなどから,病院建築のなかでも一番進歩のおくれた部門だつたのである(写真1.2)。
近年,病院の近代化にともない,とくに戦後規凖看護などとともに規凖給食・規凖寝具が病院として欠くべからざる要素と考えられるようになり,また給食などが病院収入の一翼をになうようになつてから,サービス部門にも次第に目がむけられはじめてきた。厨房を例にとつても,あちこちの病院で増改築が行われているし,新しい厨房にはタイルがはられたり,ガラスがふんだんにつかわれたりして,一見したところずいぶん明るく美しくなつてきた。しかし,その内容をよくみると,依然として室内に蒸気がたちこめ,床は水びたしの状態といつたところがほとんどで,近代的な給食サービスの機能に応じた管理方式,厨房内部の計画,近代化した厨房設備の使用といつた根本的な点では一昔前と大差ないのである。
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