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雑誌目次

雑誌文献

病院18巻2号

1959年02月発行

雑誌目次

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医療機関における被用者の不法行為に基づく使用者の責任について—医療と法制の研究(1)

著者: 高橋正春

ページ範囲:P.89 - P.96

緒言
 わが民法はその第715条において,「或事業ノ為メニ他人ヲ使用スル者ハ被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス但使用者カ被用者ノ選任及ヒ其事業ノ監督ニ付キ相当ノ注意ヲ為シタルトキ又ハ相当ノ注意ヲ為スモ損害ヲ生スヘカリシトキハ此限ニ在ラス(第1項)」と規定している。
 本条に規定されている不法行為は,民法第714条(責任無能力者の監督者の責任)や同第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)などの規定におけるそれと同じく,いわゆる特殊不法行為の慨念に包含されるものの一つであつて,不法行為に際して加害者自身がその損害賠償義務を負う一般的不法行為とはその成立要件を異にするものである。すなわち本条規定は他人を使用する者をして,とくにその被用者の加害行為についての賠償責任を負わしめようとするものであつて,このように他人の行為についての責任を負うべきであるとする理念は,現代社会における企業者の責任を論ずる上において,極めて重要な意義を有するものである。

医療機関の現状と精神衛生対策

著者: 加倉井駿一

ページ範囲:P.99 - P.109

医療機関の現状
 文化が進むにつれて精神神経症が増加しつつあることは世界的な趨勢であり,これに伴つて精神障害者に対する社会の認識も深くなりつつある。一方ではこの状勢に呼応して精神医学も新たな方向に進んでいるが,わが国の医療機関はどのような現状にあるかを分析し,来るべき状勢に対処する施策が如何にあるべきかについて考察を加えて見たい。

医師と看護婦の関係—とくに診療介助について

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.119 - P.128

 病院管理の発展にともない,病院の中に新風も吹きこまれてきたが,一面そのあおりをくつて淀んでいた問題が浮かび上つてきたものも少なくない。医師と看護婦の関係もその一つである。
 医師と看護婦の間の問題としては,病棟管理の変化と看護婦のいわゆる診療介助といわれるものの内容とがしばしば論議の的となつている。今回は後者について問題点を整理してみようと思う。

国立療養所の熱管理の推進

著者: 尾崎嘉篤 ,   清水釤太郎

ページ範囲:P.139 - P.145

緒言
 施設の運営経費を節約しようとする場合,その経費のうちで占める比率のなるべく大きなもので,しかも節約の実施容易なものに手をつけることが効果的であるのは云うまでもない。
 医療機関の経営費では,人件費が最も大きな部分を占め,これをどの位に抑えるかで経営の赤字黒字が決定せられる位であつて,これに第一に手をつくべきであるが,国立機関などでは,その圧縮は必ずしも容易に実行出来るとは云えない。人件費に次ぐものは施設によつて多少順位の変更はあろうが,医療費,食糧費,燃料費等である。国立療養所のこれらの比率を示せば第1図の如くである。ところで前二者は,経費の性質からして節約は仲々困難であり,たかだか購入方法の改善,不明確な使用の防止程度しか実施できない。従つて経費節約の焦点はこれまで野放しの状況におかれていた燃料費ということになる。

研修所だより

著者: 岩佐

ページ範囲:P.158 - P.158

 暮から正月にかけて当研修所も冬休み状態でしたが1月22日から本年最初の研修会が開かれました。これは最初の試みとして病院内の医長を対象としたものです。これまで院長,事務長に対する研修会は可成りの回数繰返されて大病院の院長,事務長で当所の研修会を受けられた方も甚だ多くなりましたが,病院管理を実施する上には実際に診療の責任を持つ医長先生方が管理上の諸問題を理解して協力することが是非必要と思われますので今回この医長研修会を開催することになつたわけです。これまで1カ月の長期研修科には医長で参加される方も多くありましたが,激職にある医長方に1カ月の出席を望むことはなかなか困難が多いと医いますのでこの特殊コースを設けたわけです。始めでのことであるのに33名もの多数の応募がありましたのでその成果を期待しています。
 今年は厚生省でも医療制度調査会を設けて5カ年計画で我が国今後の医療体制の根本的あり方について研究を始める年です。医療制度のなかで病院の占める役割は年と共に増大しているのですから我々病院関係者の任務がますます大きくなる様に思います。当研修所はこの調査会に全面的に協力して研究の援助をする予定にしていますが,時あたかも今年は当研修所の創立10周年にも当りますので,過去の仕事を反省すると共に覚悟を新にして講習の面でも研究の面でももつと能率をあげてゆきたいと思います。

あとがき

ページ範囲:P.159 - P.159

 酷寒の季節ですが,皆様御元気に活躍の事と存じます。特に寒冷地方では,毎日雪との戦い御苦労に存じます。一般に,積雪地方は,社会一般の活動はにぶり勝ちですが,老人,小児等の重症の多い季節で,御苦労の多い事と思います。

新春放談・下

看護管理・医療保障・公衆衛生

著者: 吉田幸雄 ,   曾田長宗 ,   橋本寿三男 ,   尾崎嘉篤 ,   守屋博 ,   橋本寛敏 ,   塩沢総一 ,   尾村偉久

ページ範囲:P.110 - P.118

——巨大病棟出現は何を意味するか——
 吉田 それでは,外来については問題が残りましたが,こんど看護の問題を取り上げたいと思いますが,まず最初に,ナーシングユニツトが非常に最近大きくなり,50床,60床,70床,80床と,最近では90床という巨大ユニツトが現われて来たことですが,これでいいのか,一体ナースはどこの階層で責任を持とうとしているのかわからない。これは逆行した姿が出てきている姿を表わすのではないか。ナース自体の自覚が足りないのか,あるいは病院の院長,経営者が病院にそういう大ユニツトを輸入しているのか。採算の問題と三交代の人員割ふりとが関係しているのでしようが,こういう80床,90床のナーシングユニツトは一体どういう意味なのか,まずこの問題ですが,橋本先生,おききになつていらつしやるんでしよ。
 橋本(寛) 看護業務の内容というものはなんだという問題に帰するんですよ。看護婦に何をさせるかということについて,はつきりしたお考えのない方があるんです。それで従来,日本では看護婦というものは,手術場においては実に有能な看護婦として働いたけれども,病室においては,ただポリスだけやつている。監督だけしてやつている,こらこらと,家から人がきたりしていた時には,どんなに単位を多くたつてできますよ,交番のように,パトロールして,こらこらとやつていればいいので,そうすればいくら患者が多くてもいい。

研究会

診療と看護—看護婦を専門化するか,ロテイシヨンがよいか

著者: 小野田敏郎 ,   橋本寛敏 ,   林塩 ,   湯本きみ ,   小橋新 ,   浅井一太郎 ,   岡村道一 ,   村田三千彦 ,   中島克三 ,   室賀不二男 ,   平賀稔 ,   内田郷子 ,   八板作子 ,   高橋俊 ,   佐々木のぶ ,   岩佐潔 ,   山本修 ,   石渡忠太郎 ,   堀内光 ,   中村兼次 ,   神崎章雄 ,   吉田幸雄

ページ範囲:P.129 - P.137

 日本病院協会診療管理部会は昨年7月に発足して以来,病院の診療管理にについての諸問題をとりあげて討議している。出席者は文中司会者の発言にもあるごとく東京都内大病院の院長,副院長,診療部長,医長であるが,同10月にとりあげられた首題が看護に関係したものであるのでとくに林看護協会長及聖ルカ国際病院の総婦長,教育主任,その他の方々が参加された他,病院研修所吉田主事,同岩佐技官も加わられての討議であつて,一般の読者にも興味ぶかいものがあるので,その速記を掲載することとした。

私の病院の試み

病院外来における患者待合時間短縮の方策(薬局編)

著者: 佐々木照政

ページ範囲:P.147 - P.150

1.目的
 病院管理研修所が行いました「病院外来における待時間の研究」の冒頭に,調査の目的として次のように記されております。
 すなわち"患者は身体を,そして時には心をも患つている者である。われわれは,病院の診療業務に従事する者として,われわれの対象がそうした患者であることを常に念頭におかねばならない。患者を患者として取扱うこと,すなわち行き届いた心遺いや真心こもつた親切やいたわりを忘れずに患者に接するということは,最善の診療を与えるという最終目標の実現に向つてのわれわれの努力の過程において逸することのできない前提条件である。

固定欄

診療,他

著者:

ページ範囲:P.153 - P.157

医師の指示と伝票
指示は文書で
 医師の指示は文書でなされねばならないということは,戦後口やかましく言われて来た。しかし実際にはなかなか徹底しにくいものがあるようである。
 医師の指示に限らず,指示というものは本来文書で行うことによつて,次のような利点がある。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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