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雑誌目次

雑誌文献

病院18巻3号

1959年03月発行

雑誌目次

特集 税と病院

医療法人と税問題

著者: 荘寛

ページ範囲:P.163 - P.166

 医療法人は昭和25年の春すなわち第7国会を通過して医療法第4章として制定された。国会に上提された当時の状況については省略し,只医療法人の生れた最も主要なる理由を申し述べますと,第一に従来の私立病院又は私的医療機関は,院長が死亡するか又は他の事由によつて後継者に財産の殆んど全部を譲らなければならない場合は非常に莫大な相続税又は贈与税を課税されるので,実際問題として医業の継続が殆んど不可能の状態におかれるのであります。相続税は累進課税でありまして,今日多少改正され軽減されておりますが,当時は1000万以上の資産に対しては約65%という課税率でありましたので,到底換金して納税するという事が困難な状況で一度相続すると病院経営は不可能となるのであります。したがつて此等の私的医療機関に法人格を取得させる事によつて医業の永続をはかり,その病床を保護することが出来ますのは,ひいては国民の健康を確保する当時の医療国策の線に沿うゆえんであります。第二には個人で近代的施設を有する病院の建設は仲々困難でありますので,数名が互に出資して共同の病院を建設することが出来ますように社団法人の制度もありまして,即ち資本の集積を容易ならしめたと云うことであります。

医療行為における患者の同意について—医療と法制の研究(2)

著者: 高橋正春

ページ範囲:P.185 - P.190

緒言
 現在,多くの医療機関においては,手術などの医療行為を施行する際に,その実施にさきだつて予め患者もしくはその保護者からいわゆる承諾(同意)書を徴しているのが,一般の慣行のよう,である。このような承諾書については,その徴取を義務づけている法令の規定もなければ,これに関する行政上の指導も行われていない。しかしながら患者の承諾(以下同意という)が,医療行為における医師の法律的立場についてきわめて重要な関係をもつものであるということは,近時,医療行為に際して,医師と患者との間に発生した民事もしくは刑事の諸問題の多くに照してみても,肯定される一事である。本稿においては,医療行為における患者の同意の意義についての大様を述べるとともに,その問題点の2,3について考察を試みるものである。

税と事務長

著者: 安田幸男

ページ範囲:P.203 - P.212

税を考える前に
 税務は研究すればする程難かしく興味ある問題であり経営規模によつては専門の税理士を必要とする程重要な事項でありますが細部に亘つてはそれぞれの専門家にお願するとして事務長としては其の大綱を知り自分の病院に最適な財務構想を立てて置く必要があります。
 税金は企業運営上に大きな負担を与えるものでありますが此の税金を合理的に納める事を研究する目的は余剰金を企業に蓄積せず専ら非生産的な消費部門に費消してしまう為でなく最終的には企業を安全に且つ継続して発展させる為以外のものでない事は申すまでもありません。此の様な観点から私等は税務対策を云々する前に病院経営の真の目的が何であるか更に広くは企業経営の本質が何んであるかを見極める事が必要でありその基盤の上に立つて高所から総合的対策を建てねばならないと考えます。単に目先的に税務対策を建てても決して完全なものである筈はなく場合によつては反つて経営内部の混乱を招き角をいためて牛を殺す結果になり兼ねません。

座談会

病院と課税

著者: 吉田幸雄 ,   井上勇 ,   片山弘 ,   中村文次 ,   守屋博 ,   荘寛

ページ範囲:P.168 - P.183

 吉田 病院にはいろいろの種類の病院があるわけでございますけれども,課税の対象となる病院とそうでない病院とございます。従つて,課税の対象となる病院は同じ診療報酬のもとでそれだけの負担をしていらつしやるわけで,この問題をどういうふうに整理して考えるか。またこれを有利に展開していくにはどうしたならばいいか,こういうようなことが課税の対象になります病院の大きな問題であると思うのです。
 その点については,日本病院協会あるいは医療法人協会ていろいろ御研究,御努力していらつしやるところでありますけれども,一つ,きようは,そういう関係のお方,それから,税理士であられる井上先生,また,病院全体の問題として守屋先生にもお集りを頂きまして,今申し上げたような内容についてお話合いをして頂きたいと思います。

グラフ

個人病院—その経営合理化の動き

ページ範囲:P.195 - P.201

 経営合理化の研究「病院」誌上にこの1年間,矢継ぎ早やに「私の病院の試み」欄に樋口病院の現地報告が登載されたことは注目に値する.同院安田事務長は言う.「施設,作業,人事の極度の合理化と診療科目の単純化から生ずる時間と費用とを患者処遇へ還元したい.施設面の不足を,官公立病院では不足勝ちの奉仕によつて補うことが私的病院の社会奉仕の唯一の通である」カメラは主として作業動線の短縮を捉えて33床の樋口病院の経営合理化の実際を目で見ることにしたい.

病院長プロフイル・62

国立療養所清瀬病院長 島村喜久治氏

ページ範囲:P.202 - P.202

 昭和12年に東大を卒業した連中の中には随分変り種が多いというのが定評のようになつているが,氏もまたその1人である.
 かつて氏が同窓石垣純二氏について語つたところによると,石垣氏の頭はすばらしいもので,彼は本屋に行くと本棚の右から左に一列にそつくり買込んでかえる.それを一夜のうちに片つぱしから読破するのだが,いわば斜読みのすごいスピードだというのである.氏が石垣氏と中支に軍医見習士官でいつしよにいたとき,石垣氏は点呼にさえでたことがないにも拘わらず,実地,学科ともにいつも一番だつたという.つまり氏は石垣氏の頭の良さに感嘆しているのだが,その石垣氏が島村の頭がすごいというのだから,島村氏のできのよさが見当がつく.

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中央手術場の運営に関する一試案

著者: 青地修

ページ範囲:P.213 - P.220

 今回わが府立医大においても新しく一ビルディングが建設せられ,ここに近代的な中央手術室及中央材料室が設けられた事は誠に慶賀の至りである。茲にわが大学病院の発展を心から祈りつつ,米国における経験を基にして且つわが大学の実情を考慮して,ささやかなるその運営に対する一私案を述べ,当事者の参考に供したいと思う。

滅菌温度の確認剤について

著者: 大島虎之助

ページ範囲:P.223 - P.225

I.緒言
 以前よく小児の臍帯乾燥の目的に白陶土が賞用されたものであるが,殺菌不完全なために破傷風病を惹起した報告があつた。
 これは明らかに白陶土滅菌法の不適確な結果に起因したものであるが,薬品,ホウ帯などの材料を完全に殺菌するということはそう簡単なことではない。

フランスにおける病院組織(1)

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.227 - P.229

はしがき
 いくつかの辞書の中から"病院とは貧しい患者を無料で看護する施設である"という定義を読みとることができる。
 しかしこの定義は過去の遺物に向けらるべきものであつて,現在では無効であることを断言した方がいい。

研修所だより

著者: 岩佐

ページ範囲:P.235 - P.237

 1月22日から開かれた第1回医長研修会については前回もちよつとふれましたが,大きな成功のうちに1月29日終了しました。実際の診療責任を持つ医長先生が1週間留守にするのは,病院としても大きな犠牲であったと思いますが,多数の参加があり,その全員が非常に熱心に最後まで受講されたことは我々の大きな喜びでした。それで特に紙面をさいて,出席者の名前とその施設名とをのせておきます。
 最近またぽつぽつオープン・システムのことが議論にのぼつていますが,フルタイムの勤務医をかかえる我が国の病院の現状では診療管理ということが諸外国とは異つた重要さを持つています。診療管理のなかでは医長の役割が大きなものとなります。医長と院長の関係並びに医長と医局員との関係は病院によつて色々です。医師法医療法上もチーム診療という概念が明確でないので,診療責任の所在について色々の問題があります。我々は今後各病院の先生方と共に,これ等の点についてもつと深くメスを切りこんでいきたいと思つています。

待たされること—病院は時代遅れ—まぎれもない事実である

著者:

ページ範囲:P.236 - P.237

 私は彼等にすすけた刑務所の門から出て来るようだと話した。彼等とは心臓病をなおしてもらおうと,あらゆることを我慢している外来患者なのである.而も殆ど大半のものが同じことを私に話してくれる。うんざりする程長い間待たされると。
 30分以内というのは僅かに2人で,大部分が1時間或はそれ以上であつた。

あとがき

ページ範囲:P.239 - P.239

 愈々3月を迎え,春は南から上つて来ました。今年の冬は暖かで患者さんも職員も大変楽な冬越しでしたネ。
 緒,3月で新診療報酬の試験期が終ります。結局病院にとつては,甲表が有利であつたことはほぼ確実になつたようです。改訂を要する点はあるとしても,病院には甲表が得策でしよう。

固定欄

診療,他

著者:

ページ範囲:P.231 - P.234

新生児の位置
 最近帰朝した岩佐潔氏が持つていた写真が目についたので,ここに掲げる。これはサンフランシスコ病院における新生児の扱い方の例である。そこで改めて,新生児を母親と別にしておくか,一緒にしておくかをまとめてみよう。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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