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雑誌目次

雑誌文献

病院18巻4号

1959年04月発行

雑誌目次

特集 農村病院

ソ連邦の病院

著者: 軽部弥生一

ページ範囲:P.245 - P.250

 ソ連で見て来た病院を説明するようにとのことである。一見しただけではソ連の病院も特別なこともなさそうに見える。外来があつて,収容病棟があつて,薬局があつてと。併しよくよくこれをみると,登録室があつたり,物療関係の施設が多過ぎたり,やたらにポスターや模型が並んでいたり,女医さんが目立つて多かつたりして来る。そして病室では患者がみんな同じ模様のパジヤマを着て,馬鹿馬鹿しく大きな枕で,ベッドは舷々相摩して混み合つているなどと気がつき始める。
 しかしソ連の病院はこのような外見よりもその与えられた機能に従つた在り方の方が遙かに興味深い。そしてこの病院の在り方は,ソ連の保健対策に基礎がおかれていること勿論である。それでソ連では保健行政の上で病院がどのような立場にあるのか,そのような形で説明書を書いた方がいいように思う。

Hill-Burton法と一農村病院

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.251 - P.258

1.序論
 民主社会において政府がどの程度ある事業に介入すべきかと云う問題は20世紀に課せられた試錬であつて,各国がそれを如何様に解決するかと云う点がひいては社会主義か資本主義かと云う世界史の課題に解答を与える鍵となると思われる。この一般的課題は医療制度の面においてもいろいろな様相をもつて各国政府の具体的時策として現われている。同じ自由主義的な国々のうちでも,イギリスの様に医療国営を実施している国もあるし,医療自体は殆んど自由企業にまかせているがその医療費負担の機構において政府が強力な関与をしている国もある。
 ところでアメリカ合衆国は,これ等医療制度の面においても最も自由主義的な傾向を持つ国の代表の様に考えられているけれども,仔細にその制度を調べてみると必ずしもそうではなく,政府,特に連邦政府が直接関与しその責任において事をはこんでいる面が多数あることに気がつく。

医療施設の使われ方—愛知県農村地域に於ける実態調査報告

著者: 吉武泰水 ,   浦良一 ,   福田常男 ,   柳沢忠

ページ範囲:P.261 - P.271

まえがき
 これは私共が一昨年に行つた研究の報告概要でありますが,1〜4は調査の目的,方法,調査地域の諸条件,調査結果を順を追つて記述したので,読者の方々には先ず図や表を参照し乍ら5.調査結果の考察をお読み頂き,必要に応じて1〜4を御参照下さる様お願いいたします。

50床前後の公立農村病院の実状とその経営診断—特徴を異にする2つの病院について

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.283 - P.290

はじめに
 新国民健康保険法の実施にともない,待望の国民皆保険は,兎に角一応実現の見とおしが立つこととなつたが,この制度を真に実効あるものとする為の医療機関の普及とその内容の整備については現在未だしの感が深い。このことは,今後特に農山漁村就中僻地医療対策の問題に施策の重点が移されなければならぬことを思わせる。その意味で,公立農村病院乃至国保直営医療機関の問題は最も重要な今日的問題の1つとして,今や真剣に取り上げられるべきものと思う。
 病院を経営管理して行く場合,その病院の所属種類,規模等により,それぞれ各種の困難が伴うことは事実であるが,それが,公立の一般病院で特に小規模の場合は,その困難性は,宿命的に且つ際立つた姿で現われて来るようである。ところが,公的農村病院や国保の直営病院は,そうした小規模病院が大部分であつて,その約8割が100床以下であり,半数以上が50床以下という実情である。これは,その地区病院としての性質上,必ずしも大きな規模を必要としない為であろうが然し一方,その公的性格上,機能水準だけは出来るだけ高いことが要求される。此処に,小さな規模に高い水準を盛るという非常な困難が生ずることになるのである。ただ,若し経済的事情さえ許すならば,或は,案外容易にそれも出来るかも知れないが,多くの場合,地方公共団体の経済的弱体性がそれを許さない。

農村病院としての佐久総合病院の活動—その地域活動の特殊性

著者: 若月俊一 ,   飯島貞司 ,   船崎善三郎

ページ範囲:P.291 - P.296

I.農村病院として--その環境と内容
 佐久総合病院は,信越線の小諸駅から,高原列車と呼ばれる小海線に乗りかえて,約45分,三反田駅で降りて,徒歩で約10分。千曲川上流の岸べに建つている。この川に沿つて南方の山岳地帯にむかい,佐久平のまさに尽きんとする所に,この病院の所在する南佐久郡・臼田町があるが,ここはもともと人口4,000。一昨年近隣の3カ村を合併しても現在17,000という小さな町。海抜約700メートル。北に浅間山,南に八ガ岳を望んで,病院はシラカバとカラマツで囲まれている。

我か病院の地域活動—北海道に於ける農村病院の一型

著者: 成田吉郎

ページ範囲:P.297 - P.298

 北海道の農村病院(漁村を含めて)の特色としては,常にその病院が医療担当機関として殆んど唯一の存在であること,更にその活動範囲の広大なることと相まつて,病院としての正常なる業務を行う余裕を持てない傾向にあることである。即ちベット数40以下の小病院が主であり,院長を含めて2〜3人の医師が多数の患者に忙殺され,広大なる範囲の往診に南船北馬のあげく消耗されて行くと言つた実情である。
 私の病院は,この本道小病院群の中では比較的に恵まれた環境にあり,この実態に触れるには不適当であるが,大,中病院との中間的存在となつているので,敢えてペンを執つた次第である。

農村地帯国保病院としての水沢病院の保健活動

著者: 清水文敏 ,   中島達雄 ,   豊島鎌一

ページ範囲:P.299 - P.302

 水沢市は岩手県の稍中央,東北本線沿線で人口約47,000の農業都市である。水沢病院は昭和26年5月,水沢町他2町11カ村の国保組合の直営病院として発足し,昭和29年4月,水沢市(水沢町他5カ村合併)国保直営病院となり,4診療所を併せ運営している。現在内外児眼の4科を有し医師8名(診療所を除く)で,患者の利用状況は昭和32年度外来延52500名,入院2013件,収入約3,200万円である。われわれは地区住民のヘルスセンターとしての国保病院の立場からも診療面はもちろん,予防活動においても大いに活躍すべく努力しているが,市の財政上独立採算制がとられているため,病院及び診療所の経営に追われ,予防活動にまで積極的に手が出ない現状であるがこれまで行つた2,3の事項について述べてみたいと思う。

保健所と結ばれた僻地の公的病院

著者: 鈴木寛

ページ範囲:P.303 - P.306

 最近社会保障の前進,福祉国家の建設を要望する声が特に強く,憲法で保証された「健康で文化酌な生活」を営む国民の権利と「社会保障,福祉及び公衆衛生の向上」を計る国の義務の完全実現に対する期待が強い。特に日毎に国民医療に関する世論は昂まり,国民皆保険を目的として各種法令の改正,制定を見,医療完全化への途が開かれつつあるのは喜ばしい事である。
 併し現状では種々の事情に依り近代的医療は都市に集中し,かかる医療から全く取り残された所謂無医地区,僻地が余りにも多く,これが対策は急を要する問題である。我々の病院は斯る僻地医療の目的で地元住民,医師会の強い要望に依り開かれた県立病院であり,ここに当院の特徴と悩みがある。

県立黑木病院の地域活動

著者: 坂田義治

ページ範囲:P.307 - P.308

 農村病院よりも農山村病院と思われるが,県立黒木病院の状況を書くことにした。
 位置 福岡県八女郡黒木町大字今542
 開院 昭和28年10月10日
 診療科目 結核 内科 外科 産婦人科
 病床 結核30床,一般30床,伝染病15床

病院長プロフイル・63

国立中野療養所長 佐々虎雄氏

ページ範囲:P.273 - P.273

 先生の御経歴については,すでに見事に紹介されているところであり(日本医事新報No.1806),いまさらにくりかえすまでもない.これはただ,この10年間お傍ちかくつかえた不肖の弟子の描く佐々先生像である.
 先生はいたつてこまめである.

グラフ

農村病院向題と共に

ページ範囲:P.274 - P.280

I.財団法人キープ協会聖ロカ診療所
 八ツ岳山麓,清里は不毛の地,食糧生産にも,牧畜にも見放された貧しい無医村であつた.5人に1人の里人は結核やその他の胸の病気に犯され,乳離れの子供等には牛乳を与えることなどは夢想だにし得ないことであつた.

固定欄

診療,他

著者:

ページ範囲:P.311 - P.317

総合病院について
 医療法(以下法という)による総合病院とは,第4条によると,法に定める病院であつて,患者100人以上の收容施設を有し,診療科目中に,内科,外科,産婦人科眼科及び耳鼻いんこう科を含む必要があり,且つ設備内容としては,医師,歯科医師,看護婦その他の人員が,医療法の基準に従っている他,各科専門の診療室,手術室,処置室,臨床検査施設,エックス線装置,調剤所,消毒施設,給食施設,給水施設,暖房施設,洗たく施設汚物処理施設,診療に関する諸記録,分娩室,新生児入浴施設。(法第21条,規則第21条)を有するという病院としての設備基準の外,化学,細菌及び病理の検査施設,病理解剖室,研究室,講義室,図書室,救急用又は患者輸送用自動車,と更に細かい設備を有することが必要条件となつている。(法第22条,規則第22条)。
 この要件を具備し,所在地の都道府県知事の承認を受けると,他の病院が称することのできない「総合病院」という名称を付けることがてきるようになる。

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第6回2級臨床病理技術士資格認定試験実施要領(昭和34年度)

著者: 日本臨床病理学会

ページ範囲:P.310 - P.310

 臨床病理技術士資格認定制度により,昭和34年度の資格認定試験は下記のごとく実施する。
 1.試験期日昭和34年7月19日(日)前後約4日間の予定,正確な期日は受験票交付時に通知する。

あとがき

ページ範囲:P.319 - P.319

 1年中で最適の季節になりました。この陽春4月号は農村病院の特集としました。
農村病院が,全国的に,戦後急激に増加したことは,日本の農村にとつて非常に喜ばしいことです。しかし,そこには,農村側にも,病院側にも問題が山積しております。そこで,遅ればせ乍ら,この号を編集した訳です

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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