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雑誌目次

雑誌文献

病院18巻9号

1959年08月発行

雑誌目次

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病類別入院期間の統計的指標と分布構造の分析

著者: 一條勝夫

ページ範囲:P.631 - P.638

 患者について全治なり軽快なりに至るまでの治療期間を予測することは,診療にたずさわる医師であれば常に行つていることであろうが,実際にあたつてみると,患者の体質や疾病の軽重などの個人差や,医療の条件なども影響して,なかなか正確を期すことがむつかしいようである。
 元来が疾病は千差万別で,医療の効果も主治医の予測しかたもいろいろであろうから,たとえ診断があやまりなくついたとしても,予測した治癒期限というものはその場その場にしか通用しない大まかな見当といつたものに過ぎないのであろう。

入院診療圏の構造に関する考察

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.641 - P.652

I.緒言
1.診療圏の定義と研究の目標
 「診療圏とは,受診活動が他の範囲と場所的に区劃されて,同質的な共通性を持つて行われている範囲である。」1)と定義できると思われる。即ち,それは本質的には,生活圏や経済圏と類似の,利用者中心の総括的な地域概念である。
 同質的な共通性という条件を,ある一病院の利用という特定条件に限つた場合には,その病院が患者を集める勢力圏,あるいはその病院の市場地域となり,病院中心の概念として把握することができる。これまで診療圏とは「診療機関について,これを利用する人々の空間的分布の状態をいいあらわす言葉」2)であるとか,あるいは「各々の病院はそれを利用する患者が分布している地域を持つている。それを診療圏と名づける。」3)といつているのは,このように考えることによつて,第一の定義に包括させることができる。

西独の旅から

著者: 松山善三

ページ範囲:P.661 - P.662

 その日の朝,私は西独のボンを出発してベルギーのブラツセルに向う予定であつた。羽虫でも飛びこんだのではないかと思われるような,耳鳴りと痛みがはじまつたのは午前5時,出発の11時近くには,もう私の耳の奥には驟雨のような稲光りと雷鳴がひつきりなしに轟いて,私はホテルのベツトに寝たまま動けなくなつていた。ボン在住の友人で私達の通訳にもなつてくれていたS氏が驚いてすぐにかかりつけの医師へ往診の電話をかけてくれたが,先方からは,11時に約束があるし,それに今日は土曜日だから来週の月曜日にしてくれないかという至極のんびりした返事だ。こちらから11時半に出向くからと,無理に顔をきかせてもらつて,私は痛む耳をおさえてS氏の車に乗つた。
 その医師の家は,私のホテルから車で10分程のところにあつた。日本とちがつて"何々医院"とか"××病院"とかいう都市の美観をそこねるような看板は何処にも見当らない。医師の家はアパートメントの1室で,その表に「ドクトル・×××」と名刺大の表札が1枚かかつているだけであつた。約束の11時30分ぴつたりに医師は待合室に顔を見せた。S氏が私を紹介する。「私はドクトル・×××です」と,彼は自分で名のつて,太い大きな手を私に差しのばしてきた。

成人病対策における病院の役割(第2報)—高血圧・心臓病対策

著者: 山形操六

ページ範囲:P.665 - P.670

I.はしがき
 前報において,著者は,最近における諸外国並びにわが国の成人病の動向を報じ,わが国でも国民死亡の高位を占める疾病が,結核に代つて心・血管系の疾病あるいは癌等の悪性新生物によつて占められて来た現状をしるし,さらにこれらの対策として,昨今医療機関殊に総合病院の採用しつつある診療センターまたは人間ドツクの組織化及びその運営上の注意事項を参考としてあげた。
 脳卒中を中心とする高血圧症及び心臓病の心・血管系疾病と癌を主とする悪性新生物とでは,その成因,診断,治療をはじめとして健康管理等の予防面の方策も根本的に異なるので,両者を二分して論ずることにする。

国立療養所福岡厚生園における2食制の研究(第2報)—2食の延び食餌内容の向上,給食業務の能率化

著者: 赤星一郎

ページ範囲:P.673 - P.680

まえおき
 2食の試みとして,希望者に2食を,その他に3食を出して比較観察した結果は本誌5月号第18巻第5号に報告した第1報の通りである。
 すなわち,同じ質で1日量も同じ食餌を,一方は2食,他方は3食としてその摂取量,体重の変動などを比べてみると,2食の方が数字の上では体重の増し方が良いようにさえ見受けられた。

フランスにおける病院組織(4)

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.693 - P.699

第4章財務機能(Le fonctionnement financier)
第1節公的病院及びHospiceの財源
これば,次の3つの異つた財源から構成される,——補助金(Subvention)——充用外寄付財産收入(Les revenus de la dotation non affectée)——本来の病院收益(Les produits hospitaliers proprement dits)

研修所だより

著者: 岩佐

ページ範囲:P.702 - P.703

 今年は例年よりひどい暑さのように感ぜられますが皆様お元気ですか。こちらでは事務長の受講申込者が多かつたので,7月16日(木)から7月23日(木)まで事務長対象のコースを1回追加して開催しました。この期間は本来は,医療監視員対象のコースを予定していたのですが,この方は9月に延期しました。
 冷房装置も普及して最近出来るビルには珍らしくない時代になりましたが,地味に勉強する我々の講堂にも是非そなえないものです。いかにも暑くてせつかくの出席者に申訳ないような気がしました。

あとがき

著者: 吉田

ページ範囲:P.704 - P.704

 今年は例年にくらべ,日本中暑さが酷しかつたようです。もつともこの暑さは世界的でしかも毎年上昇する傾向にあるということだそうです。そうなると唯暑いといつているだけの問題ではなく,病院もこれと真剣にとり組まねばならぬ時期が来ていると見るべきでしよう。健康の人でも,暑さのために健康を害したり,ノイローゼになります。まして病人にとつては暑さは重大です。病人をあずかり,環境的にも治療する病院は当然この問題に無関心ではない筈です。最近では,一般の家庭用のroom coolerさえ発売され,事務所,工場,映画館,国鉄特急列車などの冷房が常識になろうとして来ている時代に,病院の冷房などぜい沢であるという風潮が,病院内であるとしたならば,それは職務に忠実ではないだろう。手術室の冷房は大分普及して来たが,次は病室の冷房時代である。少くとも重症者,老人の部屋だけでも工夫したい。それと密閉された検査室,放射線室もとり上げねばならない。病人のため,また繊細な人間関係の必要な職員のために「病院は冷房さるべきである」ということが常識になるべきであろう。「暖房費さえ思うにまかせないのに,冷房などをいうことは不可能だ」という頭の持ち主が少くとも病院の管理職員の中にいないようにしたい。冷房問題は暖房問題と平行してその必要を主張すべきであろう。

グラフ

或るカソリック病院

ページ範囲:P.653 - P.659

看護歴史
 ルーテル以後,宗教看護が廃絶して,看護の暗黒時代となつた.聖ヴアンサン・ドポール(1576〜1660A.D.)はカトリツク教徒によるラザリスト会と愛徳姉妹会の2大修道会を創立し,看護の復興を図つたことが看史に輝いている.これをナイチンゲールの先駆者とすると歴史は強調している.

病院長プロフイル・66

岡崎喜一郎氏—国立嬉野病院長

ページ範囲:P.660 - P.660

 嬉野と云つても九州以外の人には至つて馴染みの薄い地名であろう.佐賀県の西部,長崎県境に近い山峡の一隅にある人口2万のわびしい温泉町なのである,温泉としての歴史は古く,神功皇后三韓征伐の途次比処に温泉を発見して傷病兵の治療に利用したと云う故事が伝わつている.戦前はひなびた淋しい湯治地に過ぎなかつたのが,昭和12年に佐世保鎮守府管下の海軍病院の誘置建設に成功し,更に戦後の観光ブームに乗つて宣伝した甲斐あつて急に発展してどうやら九州では名を知られる観光温泉地になつた.鉄道路線から離れては居るが,バスの発達のお蔭で交通の便は割に良く,佐世保線武雄(タケオ)駅及び大村線彼杵(ソノギ)駅から国鉄バスが30分間隔で往来し,嬉野迄約30分の道程である.初めて国立嬉野病院を目指して来る人は,山林,茶山,田畑の間を縫う田舎道を見ると,果してこの山峡の奥にベツト数600もの大病院があるだろうかと疑い車掌に念を押してみるそうだが,いざ着いてみると旅館の立並ぶ泉郷の町はずれ,緑したたる山麓に公園ともまがう程整然と手入れされた大庭園の中に赤瓦木造二階建の病棟が立並ぶのに2度びつくりするそうだ.
 国立嬉野病院は終戦によつて嬉野海軍病院が厚生省に移管されたものである.

座談会

中央検査室

著者: 橋本寛敏 ,   田中重太郎 ,   堀内光 ,   平賀稔 ,   稲垣克彦 ,   山本修 ,   高橋正直 ,   橘敏也 ,   塩沢総一 ,   宮崎達 ,   安倍弘昌 ,   内海邦輔 ,   小野田敏郎

ページ範囲:P.682 - P.692

 第8回日病診療管理部会は中央検査室を主題として2月24日東京厚生年金病院において開かれたが,検査室の中央化は冒頭橋本会長の発言にもあるごとく重要な問題であり,中央化の内容にもいくたの検討すべき事項が含まれるので,ここに当日の速記を掲げて読者の御参考に資したい。

固定欄

法制と統計

著者:

ページ範囲:P.701 - P.701

カナダにおける入院保険
 1957年4月12日成立したカナダの疾病保険は,病院業務に対する考え方を知る手掛りとして興味があるので,その一部を紹介してみたい。この法律は10章から成る簡単なもので,疾病保険の基本法ともいうべきものである。「各州の行つている入院保険及び診断を助ける検査室とその他のサービスを提供する計画に関しカナダ政府によつて承認される補助に関する法律」という。その構成は次の通りである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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