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雑誌目次

雑誌文献

病院19巻10号

1960年10月発行

雑誌目次

学会特別講演抄録

病院内感染の管理について

著者: 永沢滋

ページ範囲:P.711 - P.716

I.緒言
 院内感染症の問題は最近各方面の注目をあび,病院管理の面からも重要な問題となつてきた。1938年Sulfapyridineの発見以来,細菌に対する治療はいちじるしく進歩し,その後1941年Penicillinが臨床応用されて以来今日のような抗生剤の発達となつたのであるが,Penicillinが使用されるや,翌年はやくもその使用患者から耐性菌が証明され,これらの増加が警告された。これが院内感染の問題として追及されるようになつたのは1949年以降である。
 病院という環境はあらゆる病原菌が集中する場となることはやむをえないことであるが,微生物による感染について,種々な抗生物質の発見により細菌性感染が大幅に抑制された結果,病院自体いまだこの院内感染に無関心であるところに問題があった。すなわち感染一般の防止に対する誤つた安心感と無菌および隔離技術の厳重さの弛緩,また感染問題研究に対する興味の減退などをきたしたのであるが,その後抗生物質の不必要に近いほどの広汎な使用の結果,抗生物質に対する不関性および耐性菌特にブドウ球菌の出現によつてこの問題に大きな関心がもたれるようになつてきたのである。

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病院歯科と他科との関係について—院内照会用紙の内容から

著者: 小野進一郎 ,   加藤陽右

ページ範囲:P.719 - P.721

I.緒言
 病院歯科に勤務する者は病院の根本目的である科学的且適正な広汎な治療を行う事の一環として他科の疾患に対して或程度の知識を有し,診療上歯科専門の分野に於て連繋を保ち協力せねばならない。
 今回私共はその連繋の具体案を立てる参考に本院の各科より歯科に送られて来た照会用紙の昭和33年10月1日より本年3月末日迄1年6カ月間358枚の内容に就て分類集計し,検討を行つた。尤も本院では他科への照会は必ずしもこの用紙に依らなければならないのでなく口頭に依るものも若干あるので照会患者全部にこの用紙が使われていないが,他科との関係を端的に示すものと考え取上げた次第である。

入院患者の外出外泊

著者: 園田次郎

ページ範囲:P.723 - P.728

I.緒論
 入院患者の外出の際は主治医と患者との間に於いて,その都度話合の上適当に諾否を決定すべきは勿論である。即ち入院療養は多少の制約を受けることは止むを得ないものではあるが,療養の目的を了解すれば当然外出外泊は認めないという立前でなければならない。然しながら往々,われわれは無断外出外泊のケースを経験することがあり,その情況如何によつては断固たる態度に出る必要に迫られることがある。かかることの起らぬよう,即ちことを円満に運ぶ意味に於いて,その必要のあるときは事前に外出許可願を提出していただき,これを検討するように定めてある。此の度は昭和34年1月より12月に亘つて届けられたものを取りあげて考察して見た。

病院医師の勤務先への意見—病院医師の人事にかんする調査研究(V)

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.739 - P.745

 1゜勤務先の場所についての医師の不満は,主に研修,子弟の教育,及び文化的経済的生活の上での不便についてみられた。
 2゜経済的待遇に対する不満は,やはり給与額が低い点,及び個々の労働比例的手当にかんするものが多い。ほか,退職金制度,給与住宅支給など生活の保障を強く希望する意見がみられた。
 3゜研修上の便宜に対する不満は,主に研究時間,設備,研究費及び学会出張にかんするものが多い。
 4゜そのほかの勤務先に対する不満な点は,医師数不足と多忙であること,あるいは人事にかんするものが主であつた。

病院の医療事務について

著者: 永田信三

ページ範囲:P.747 - P.752

I.病院業務
 病院の使命は,患者を収容し,これに治療を加えることにあるから,業務の内容は,医療の提供がその全部である。従つて院内のあらゆる職場の全機能は悉く医療を焦点として集中することになる。勿論各職場の業務と医療との関係は,直接的と間接的との差はあるであろう。しかし医療に直接関係ある業務が重要で,間接関係しかない業務は重要でないと断定するわけには行かない。
 ところが実際上病院の内部に立ち入つて見ると,直接医療面に携わる医師や看護婦などは重要視せられ,待遇も可なり良いが,医療に間接的な関係しか有たない事務とか現場職員は,とかく冷遇され勝ちな傾向がある。というのは病院のトップクラスは殆んどが医師であり,そして従来の医師達は,医療関係者といえば,医師と看護婦だけとの先入主観に支配され,その他の職種の存在は認めなかつたのである。事実従前の自由診療時代は,小規模の病院ならば,医師と看護婦だけで,充分運営できたのである。

下足管理について—愛知,三重,岐阜,静岡4県下113病院の統計を基にして

著者: 角田信三

ページ範囲:P.769 - P.778

I.序言
 来院者が病院の玄関に立つた時,第一に下足のことであり,下足受付のことであり,下足のはきかえは面倒なことである。今回私どもは,愛知,三重,岐阜,静岡4県下160病院へ下足まわり運営について,照会状を発しお願いしたところ113病院からご回答を得たので,これを集計し種々考察を加えてみた。玄関,下足まわりを混乱に導く要素としては,1)出入りの来院者数2)玄関,土間の広さ,3)下足受付まわり,4)時間外の処理問題の4者であろう。入院部門,外来部門からなる病院機構上,入院部門の見舞客,外来部門の通院患者とその同伴者が相錯綜して,玄関の混雑を生じ,かてて加えて玄関の土間の広さ,下足受付まわりの広さなど,その如何によつては一層混雑と混乱を誘発するものである。
 113病院の入院数と外来数とから,各病院の様相を把握しようとするも,各病院の入院数と外来数とは,当然ながら一定の関係はみあたらない。伊藤誠氏が,「一般の総合病院では1日平均,ベッド数の約1.5〜2.5倍位の外来患者が来るのが普通で,病院によっては5倍程度にまで達することがある」と述べている。また他の諸統計においても,同様傾向を読みとることが出来る。私どもはy軸を外来数x軸を入院数とし,113病院の各外来数,入院数を配置した。

病院緑化の1例について

著者: 藤井常男

ページ範囲:P.779 - P.782

 特集号「病院と緑化」に実施の詳細について,のべられてあつたが,病院緑化のひとつの例として,勤先(白十字会,村山サナトリウム)における,ここ数年の実際の経験について,紹介してみよう。
 狭山丘陵の雑木林にかこまれた当院では,さいおい,緑化ということは,今更,考えないでも恵まれれた環境にあるといえるのであるが,外国の病院なみに,「公園の中にあるような」とまではゆかなくとも,ユキヤナギ,レンギヨウ,ヤマブキ,シバザクラ,イリスなどの栽培容易な花で,明るい環境をつくるように工夫してみた。

大阪赤十字病院外来本館について

著者: 太田幸雄

ページ範囲:P.783 - P.785

 大阪赤十字病院は明治42年創設,昭和2年以来大々的に鉄筋コンクリートの近代的建築に改築を行い,病舎,看護婦寄宿舎,研究科,職員棟,炊事場の改築が完成し,当時ではスエズ以東最大最新の設備を誇つていた。さらに総合外来の建設も計画していたのであるが,戦争のため中止となり敗戦後は米軍に接収され,昭和30年接収解除となるまで,苦難の道を歩んだのである。
 こういう事情であるので,外来本館の建設は当院にとつては三十数年来の懸案であり,悲願でもあつた。そのため本院の接収解除以来,菊池院長を中心として鋭意計画をねり,厚生年金還元融資をもとに,大阪財界,日赤組織の後援が加わり,33年4月着工,34年9月にその第1期工事が完成した。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.786 - P.786

 いよいよ好季節です。各病院の経営管理の改善計画を樹てる絶好の季節でしよう。是非懸案を整理され,院長以下各幹部の方々の総合的御研究をお願いしたい。
 さて,今月号には,第10回病院学会の特別講演であつた永沢教授の「病院内盛染の管理について」の玉稿を巻頭に載せることができた。この問題については,博士の指摘された如く,大部分の病院では余りにも無関心である。医師が院長であるのであるから医学的な管理については特に他国よりも進んでいなければならないに不拘,この現実はどういうことであるのだろうか。勿論病院経済の面で,予防の処置が困難な理由もあるだろうが,それよりも,矢張り,管理に対する関心や熱意に関係するのではなかろうか。あるいは外国の如く,二元的管理(Dual System)の方が,医師は医学的管理については,管理者に忠言すればよく,管理者はその忠告に従って管理すればよいという,管理の方式が,却って医学管理の実際がうまく行くのかも知れないとも思える。しかし,日本のように一元的管理(Whol System)でもできないことはない。院長自身が決心し先頭指揮することにより,全組織は動くのであるから。問題は,却って院内の医師団自身の無関心にあるのではなかろうか。

グラフ

診療棟の建築と設備—大阪赤十字病院

ページ範囲:P.731 - P.737

 Osaka Redcross Medical Centerの設立こそこの病院の悲願ではなかったろうか.今その夢が実現したが,その夢の底に流れるものは,50年の病院歴史と赤十字精神とであった.人類の社会に,貧困と病苦と災害とが存する限り,赤十字活動は要求される,と菊池院長は赤十字活動の筋を説き,Human-ismとmedical scienceとの殿堂を築いた.これが大阪赤十字病院の新しい本館として,大阪市の一角に,一大偉観を添えた.

プロフイル・75

大阪赤十字病院事務長 村元界氏/大阪赤十字病院監督 長島久子氏

ページ範囲:P.738 - P.738

 村元界事務長は大阪市の出身,明治35年生れであるから当年58歳.大阪市に勤務の後,病院事務に関係し日本医療団勤務を経て,昭和19年目赤大阪支部に入り昭和22年以来大阪赤十字病院事務長として勤務している.
 事務長就任当時は病院が米軍による接収を受け,多事多難の時代であり,この困難な時期を院長,副院長を助けて乗り切り,31年本院の接収解除と共に発展期を迎えるや,本院の整備,輸血研究所、法円坂分院精神科の建設,さらに,昨年の外来本館の建設に努力した業績は大きく買われてもよい.

Symposium 看護

大学病院に於ける看護制度

著者: 武藤多作 ,   松村はる

ページ範囲:P.755 - P.759

 大学病院は臨床医学の教育研究機関としてその場所を提供し,常に発展向上を図る責務とともに,完全な綜合的診療機関としての使命をもつものであると思います。随つて看護の面におきましても,開拓される医療の分野とともに,当然この使命達成のために,患者を中心に各々の疾病に適応する看護が行なわれ更に医学部に併設する看護学校におきましても,医学教育に併行する看護教育が行なわれますことが最も望ましいと思うのであります。
 けれども大学病院の看護の状態は,決してそのようなものではなく,殆どの病院は,看護の主力を診療介助のために費やし,また医師の数が非常に多いため業務は複雑となり,患者に対する看護は申訳の程度となつておりますのが実情のようであります。

看護制度についての基本的研究

著者: 大森文子

ページ範囲:P.759 - P.765

 この研究は看護要員の配置の適正化を計つて患者の満足する看護を行ない,しかも病院の運営上も合理的であるかどうかを検討することを目的として,厚生省の科学研究班の看護に関する部門が2年間にわたり数施設において研究中の課程にあるものを参考とし,現状についての2,3の解析を試みたものである。

私の考え

病院と看護婦制度の2,3について

著者: 塚田恒助

ページ範囲:P.766 - P.768

 世の中が進歩するにしたがつて,色々の制度も,その進歩に順応する様に変つて行かなければならないと思う。然し当然と思われる事が改めるとなると保守的の考えが先に立つてうまく行かない事が多い様です。
 看護と云うものが純愛の精神から生れて来た時代から職業の場であると云う考えに変つて来つつある過渡期に於ては労働組合の攻勢を受ける点が多くなつて来た事は今迄が愛の精神と云う事で犠牲が要求されて来た事が多かつたからではないでしようか。

新刊紹介

ことばづかいと態度—編集市川市病院協会発売元医学書院

著者: 林四郎

ページ範囲:P.785 - P.785

 朝日新聞評——応対の基本,応対の具体的な例,電話など,なかなか親切に解説されています。この小册子は病院の事務員や看護婦さんのことばづかいなどが中心で,病院関係者のコトバの辞典として,珍らしい注目してよい試みといえましよう。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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