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雑誌目次

雑誌文献

病院19巻11号

1960年11月発行

雑誌目次

学会特別講演

病院人事の特徴

著者: 島内武文

ページ範囲:P.791 - P.799

 はじめにこの最も記念すべき第10回病院学会において,貴重な時間をさいて講演の機会をいただきましたことを,塩沢学会長始め会員の方々に心から御礼申上げます。
 さて病院人事は管理の中でも最も重要な部門であつて,事実,病院での多くの問題が結局は人の問題に帰せられる場合が多いのであります。今日は私の教室において一条,前田等と共に過去3年にわたつて病院の医師・事務長・看護婦等について全国にわたつて調査致しましたものについて,その細部はそれぞれ別に御報告申上げましたが,ここにはその概要を中心として病院人事の特徴を申上げたいと考えます。

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病院医師の人事について—病院医師の人事にかんする調査研究(VI)(総括・結語)

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.801 - P.805

総括
 以上の各節を総括して,病院医師に共通な,人事,厚生,移動にかんする一般特徴を指摘するとすれば,次のようにいうことができよう。
 病院医師は,院長の紹介によつて,多くは大学医局或いは病院から採用される。院長と大学医局との関係はかなり恒常的且つ特定的なものである。また,厚生にかんするところの給与住宅は,内容的には業務上のものが多いけれども,一応全般的にはととのえられてきている,といえる。但し,退職後の生活保障は,現在のところ,定年制度の適用は少ない反面,年金等の社会保障を受け得る医師は僅かであつて,必らずしも十分ではない。退職後頼るべきものは自己の専門的能力だけである。また,移動状況をみると,若い医師の同一病院への勤務期間は短かく,学位のないものは大学医局へ,また学位のあるものは自己開業もしくはヨリ良い条件の病院へ移つていく。

主要各国の医療保障制度における病院医療費の比較的考察(III)—イタリー・スイス・オランダ

著者: 佐分利輝彦

ページ範囲:P.807 - P.815

V.イタリー
1)医療保障制度の概要
 イタリーの医療保障制度は,社会保険,公的扶助および特殊の疾病(伝染病,性病,トラコーマ等)に対する公費負担制度によつて構成されている。イタリーの社会保険制度には国民疾病保険,国民社会保険,国民産業災害保険,国家公務員基金,公共企業体職員基金,地方公務員組合等の各種の保険があり,また国民社会保険のなかに結核保険制度が設けられていることは,イタリーの社会保険制度の一つの特色である。
 イタリーの国民疾病保険制度は結核,精神または神経疾患については入院の給付を行なわない。また,市町村が予防および治療の責任を持つているある種の伝染病に対する入院の給付も,国民疾病保険制度の給付から除外されている。業務災害は結核と同様に別の制度で給付されている。

アメリカの病院の中央検査室制度について

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.829 - P.835

 私は昨年11月半からWHOのフェローとして本年4月半までアメリカ合衆国,ついで1カ月間フィリッピンおよび台湾を,「臨床検査室の管理」という研修題目を与えられて見学して廻つた。アメリカでは専ら各種病院の臨床検査室を廻つて,その管理運営の方法,日常検査のやり方,それに検査室の管理者である臨床病理専門医の養成,更に臨床検査技術者の教育施設である医学技術学校における教育方法を見学した。
 私のアメリカにおける滞在期間は僅かに5カ月であり,その期間に見学し得た検査室も極く限られた数のみである。僅かの見聞でもつてアメリカ全体の中央検査室制度がどうなっているかわかろう筈はない。狭い範囲内での見たまま聞いたままを書きつづつて見よう。

一級臨床病理技術士第5回資格認定試験(昭和35年度)実施について

著者: 日本臨床病理学会

ページ範囲:P.835 - P.835

 一級臨床病理技術士資格認定試験は,日本臨床病理学会が,その責任と標準に於て行う臨床病理技術士資格認定制度による最高級の試験であつて,全科二級並に単科二級臨床病理技術士の資格を有するものに対して行うものである。

肢体不自由児施設の建築計画について(I)

著者: 小川健比子 ,   川澄卓男

ページ範囲:P.837 - P.849

この論文は,現在の日本の肢体不自由児施設の建築を機能的な面より検討を行つて,その立ち後れをクローズ・アツプし,今後のプランニングのあり方を方向づけた研究である。児童福祉を目的とする同施設の建築を行うに当つて,何を考えなければならないかが,具体的に詳細に追究されている。(編集部)

病院職種の社会心理的構造にふれる

著者: 原素行

ページ範囲:P.851 - P.852

ある日の院長と用務員長との対話
 もう一昔も前のこと,ある日,何かの用事で,院長室に来た用務員長が,帰りしなに,こう云つた。「この節の院長は,昔の院長と違つて,何からかにまで,大変なお仕事ですナー」この話に,筆者は,ついつられて,「病院の全責任を負わされているんでネー」と,思わず云つてしまつた。このとき,最高責任者だの,全職員を指揮監督するとか,古いお役所病院の規則に書かれていた官僚的な言葉を用いなかつた。それが,意外にも,大いに役に立つた。
--患者が来る。受付ける。診療する。入院の必要があれば,そのような取扱いをする。調理場の仕事もあれば,ボイラーに火を焚かねばならないし,それから掃除もネー。何にもかも,患者の世話に一連の関係があるので,兎も角,院長となれば,全責任者だからナー。だが,到底一人では,やりたくとも,出来ない相談で,また院長は神様でもないし。だから,職員が分担してくれて,やつて行けるのサ。君だつて掃除をしたり……--

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.866 - P.866

 本号の巻頭には,島内教授の第10回病院学会特別講演の原稿を載せることができました。同教授は,教室開設以来,病院の本質である医療の本質を究める努力を続けられているユニークな存在であるととは衆知の事実であるが,その医療を中心になつて行なう医師の本体の究明についても,最も真摯な研究業績を発表して来られた。今回の学会で「病院人事の特徴」と題する特別講演を課せられたことも当然である。最近各地で病院の労働争議が行なわれるようになり,経営者側は戦々兢々の様子も見られるが,人事管理の要諦は「人を知る」ことから始められねばならない。この点からもベールをはがされた日本の病院人事の立体像を見せて頂いたことを感謝しなければならない。それにつけても日本の病院人事がいかに不合理な前時代的な背景によつてでき上がつているかを知ることができるが,しかしこれを改善することは,他の病院をめぐるいろいろな制度の合理化にも手をつけねばならないから,一朝一夕で合理化を望むことはできないだろうが,少なくとも病院の管理者側は,この事実を十分認識して,その「人間」によつてでき上がる病院内の人間関係を調整し,融和せしめなければならないだろう。
 同教室の前田氏の「病院医師の人事に関する調査研究」は,本号をもつていよいよ完結する。長い間,ぼう大な調査から,いろいろと大切な資料と見解をお示しいただいたことを読者に代つて厚くお礼申し上げます。

グラフ

職員食堂と売店

ページ範囲:P.819 - P.826

1.食堂哲学
 食堂の入口附近:食堂は,内外共にすがすがしいことが好ましい.ホモ・サピエンスの食慾心理は,食事の場の環境によっても,また左右される.まして清潔を尊ぶ病院においておや,と言いたい.味覚だけに絞って人の集まるゴミゴミした食堂は,おでん・燗酒の哲学で,病院には通用しない.

私の考え

よい医事係とはどういうものか—医事業務の機能診断について

著者: 江本邁夫

ページ範囲:P.855 - P.857

はしがき
 どこの病院においても,医事業務の能率のよしあしは,その施設の経営をも左右する。医事係の機能が完全に働らいているかどうかは,管理者の知らねばならぬ必須要件だと思う。
 では,一体どういう医事係がよいのであろうか。

法制と統計

医療金融公庫の融資

ページ範囲:P.858 - P.861

 医療金融公庫は,前回の通常国会で成立した医療金融公庫法に基づいて,この7月1日に設立され,8月16日にその業務を開始する運びとなつた。

診療

製造の面から見た保存血液

ページ範囲:P.862 - P.864

 医学の進歩に伴つて,輸血が急速に増加しているが,それに使用される血液の大部分が保存血液である。わが国においては,昭和26年にはじめて血液銀行が設立されて以来年々その製造量は増加し,昭和34年には年間約43万lの保存血液が製造され輸血に使用された。
 (他に大病院でいわゆる院内血銀を設け自家使用の保存血液を造つているところがあるが,その製造量はわずかである。)この保存血液がわが国の医療上に果した役割は極めて大きいものであるといわなければならないが,これこそ製造の面から見たとき,この陰に買血制度に根ざす多くの困難な問題を見出すのである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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