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雑誌目次

雑誌文献

病院19巻12号

1960年12月発行

雑誌目次

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地域の必要病床数の算定方式に関する研究

著者: 加倉井駿一

ページ範囲:P.871 - P.881

必要病床数の概念について
 病院建設に当つて,その保有する病床数を決定することは,その地域の医療対策上必要であるとともに,病院設置者にとつても病院経営上欠くことのできないところである。
 疾病はある確率をもつて平等に住民の間に発生することが予想せられても,入院を必要とする疾病の率を以て直ちに必要病床数とすることは,入院という事実が患者自身は勿論その家族にとつて精神的,経済的影響を与えることからして許されない。

医療機関における労働組合運動

著者: 遠藤保喜

ページ範囲:P.883 - P.888

I.まえがき
 過去2年来,各経営種別の医療機関において,労働組合運動が活溌化しており,医療機関の特殊性から,社会的にも論議されているが,特に精神病院の争議で,管理者側が保護患者の転院措置を執つたことが問題になつたり,日赤の某病院で伝染病患者の退院を実施しようとしたことが新聞紙上に大きく取上げられたり,また組合側の行動についても強い批判がなされるなど,医療機関の組合運動は,いろいろの意味で問題を孕んでいるようである。
 これまでに各医療機関に相次いで発生している組合争議は,給与改善や,勤務条件の改善等の組合本来の要求のみでなく,職員の通勤問題から職員の採用に至るまで各種に亘つているが,それ等の中には,組合運動以前のものと思われるものも含んでいるところに,医療機関の労使関係が,今日の時勢においてもなお相当に旧い形態の中に在るものが依然としてあることを物語つているのである。

病院と騷音

著者: 佐々木武史 ,   小口洋子 ,   石崎竜雄 ,   石橋睦夫 ,   石原栄美子

ページ範囲:P.889 - P.897

 都市の公害として騒音に対する積極的対策の樹立は各方面から強く要望されている。病院も都市にある限り例外なく騒音対策に悩まされている。特に都市交通網の拡大と病院利用度の増加は病院の立地条件を根本的に変化させ,大病院になればなる程,都心または主要交通路に近接して建てられる結果騒音の被害も著しいものと思われる。われわれは最近大津市内の某病院の騒音を調査する機会を得たのでその調査の結果を事例として病院騒音を考察分析することにした。

県立精神病院の管理の実状(I)

著者: 井上正吾

ページ範囲:P.898 - P.909

1の1 緒論
 最近の病院管理学や病院精神医学(注1)の発展のため,精神病院でのわれわれの診療活動が容易になつた。今回は更に,精神病院における独特な事務管理や診療管理上の問題の調査に一歩をふみだしたものである。

新たに考案した精神病院の温度表

著者: 西尾友三郎

ページ範囲:P.910 - P.914

 病院における温度表の重要性は今更論ずるまでもなく,各病院はそれぞれ独自の形式を考案して看護の完全を期し,また請求医事の基本資料に便ならしめようと努力している。
 ところが精神病院においては一般の身体疾患病院とは種々の点で相違がある。即ち精神病院の入院患者は精神病,精神病質,精神薄弱等の病名のものであり,その患者の看護は日常の詳細な言動までも注意し時には指導時には介補被護その他多岐にわたる人間学的看護を必要とするのである。このような看護に際して看護記録たる温度表は精神病院と一般病院とでは大いに内容が異なることは自明の理であろう。しかも前記のような患者に薬物的,物理的あるいはまた外科的治療を加えるには身体面の管理も必要であるし,更にまた種々の合併症の状態,身体的には健康である者についても日常の肉体的な異和をも記録しなければならない。入院患者を個別的に考えれば身体的には特に合併症もなく,いわゆる身体医学的治療の段階も終えて生活療法(生活指導,レクリエーション,作業等の)的な扱いを重点としなければならない患者や,とにかく第一に身体症状を対象としてゆかなければならない人々などの差異がある。

肢体不自由児施設の建築計画について(II)

著者: 小川健比子 ,   川澄卓男

ページ範囲:P.924 - P.930

IV.居室又は訓練病室
 施設における居室の役割は,ある程度機能の回復をみ,身のまわりの簡単な始末が出来るようになつた児童,および手術後経過良好児童が,児童指導員,保母の管理下で,自立の心構が得られるような,日常生活指導を受け,退所後は,直ちに,一般家庭生活および,普通学級への復帰が出来るように起居生活を送る場所である。
 施設の居室は,和室型式,和室中廊下型式,和洋型式,ベッド型式とに分類することが出来る。7施設が和室型式,5施設が和室中廊下型式,2施設がベッド型式,1施設が和洋型式となつている。

私共の採算管理図表

著者: 関谷友一郎

ページ範囲:P.933 - P.938

I.はじめに
 およそ病院には,その病院の管理経営のための,一般的なまたはその病院独自のモノサシとなるべき色々の数値,比率,標準,図表等が用いられていると思います。
 これらは,その病院の輝かしい伝統に基く過去の経験と実績によつて蓄積された貴い資料でありまして,必ずや,その病院の明日を方向づけてくれるでありましよう。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.940 - P.940

 このあとがきを書いている唯今は,未曾有の病院ストの真最中で,しかも見通し不明というところです。私としては,起るべきものが起つたと見ています。その理由には沢山のものが挙げられていますが,(1)病院経営者層の不明瞭と経営者意識の低調,(2)病院内部組識の特徴である機能組織による各種職能群間および対患者間に生ずる人間関係の複雑性,(3)医療資本の取り扱いに対する政府の無方針,(4)社会保険医療費の現状無視等が基本的問題と思います。これらの問題については,永年本誌上でいろいろと論議されて来た問題で,少なくとも本誌の愛読者には十分認識されていた問題で,世論が「病院経営の前近代性」「前近代的労働管理」と簡単に経営者を批判していることは,ごく皮表を見ているにすぎないと思います。「どうも一般の企業とは性格が非常に違うものらしい」という程度の認識が新聞論調にもでて来たようですがこの程度の認識が示すように,病院が社会に不当な扱いを受けているのです。
 病院経営は,(1)病院資本(自己資本)(2)病院組織(生活共同体)(3)利用者集団(社会)の三者の利益の調和を求めるところにあるべきです。しかし借入資金の上にあぐらをかいた開設者は無力なものですから,結局は病院組織団体と地域社会との利益の調和を求めざるをえません。従つて病院団体が強く発言を要するならば,世にいう「アベック」闘争にならざるをえないことも致し方のないことでしよう。

「病院」 第19巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

グラフ

病院事務管理の場

ページ範囲:P.915 - P.922

 病院管理の近代化,合理化と共に,当然の道順として,病院事務部門の業務は,専門的に中央において扱われるようになった.これによって事務の分担は明確となり,事務長の職能もきめられる.わが国の病院事務は合理化され,いよいよ近代的活動の緒につき出した.
 カメラはその生き生きした事務室などの動きをとらえた.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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