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雑誌目次

雑誌文献

病院19巻2号

1960年02月発行

雑誌目次

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白石市地区における病院・診療所の地域的利用状況について

著者: 一條勝夫 ,   前田信雄

ページ範囲:P.83 - P.91

 病院,診療所等の医療機関の地域的利用状況については,昭和31年仙台市において「医療機関選好事情調査」によつて利用者の側から病院,診療所の選好事情を分析し1),また山形,和歌山,山口の3県について実施された厚生省「診療圏調査」資料によつては医療機関の側から利用患者の地域的,時間距離的な分布特性を分析した2)が,今回は視点を限局された一地域圏にとり,その範囲に共存する病院と診療所とが,どのように診療を分かち合つているかあるいはその間に医療の機能的な分担があるかどうか,それにともなつて,医療機関の存在あるいは利用条件が,地域的な受診率にどのように影響しているかを具体的に観察し分析することにした3)
 そのために本県内でこの実態分析に適するような,すなわち,比較的独立した医療圏を形成し(とくに仙台市医療機関の影響の少い),病院と診療所とが混在している地域として白石保健所管内をその対象とすることにした。なお医療圏の劃定については,地勢や医療機関の配置,医療担当者の意見などを参考にした程度で,特別な調査を事前には行わなかつたが,患者住所調査の結果はこの地域がちようど単位医療圏に相当していることが分つた4)5)6)1

中小都市の公立病院はどうあるべきか

著者: 伊藤浜吉

ページ範囲:P.93 - P.98

はしがき
 市町村合併の促進に伴い,多数の中小都市が誕生し,其の何れもが,一面市の面目上,一面市民の福祉施設として,市民病院の新設既設病院の拡充強化が,力強く進められ,国民皆保険の実施は更にこれに拍車をかけて,市立病院ブーム時代とでも云うべき実状で,国民の保健衛生上誠に喜ぶべき現象である。勿論,最初から,病院事業は決して営利事業ではないので,或る程度の一般市費の繰入れや,起債の償還は覚悟の上であるが,愈々運営してみると,赤字が余りにも大きかつたり次から次へと,新しい医療施設の整備に,多額な市費の繰入れを要して,其の運営に悩み,ひいては一般市政にまで,悪影響を及ぼしている実例が案外多い現状である。これが解決策として,中小都市の公立病院は,どう企画し,どう運営すべきかについて,愚案の一端を述べて,関係各位の高批を仰がんとして,この稿を草した次第である。

胃ドックについて

著者: 永沢滋 ,   高橋政祺 ,   有賀槐三 ,   本田利男 ,   高橋淳 ,   宮川敬 ,   朝倉啓 ,   小野昭平 ,   岸功

ページ範囲:P.101 - P.105

I.胃ドック開設の動機
 近年悪性腫瘍(癌)による死亡者が増加してきたことはよく指摘されている問題であつて,我が国民の死亡順位でも上位(第2位)を占めている。この悪性腫瘍のうち我が国では欧米と異つて消化器系の癌殊に胃癌による死亡が最も多いのであつて,他方また罹病の面から見ても抗生物質の発展によつて細菌性疾患が減少するにともない,消化器系の疾患が種々問題となつてきている。特に慢性胃炎や潰瘍が悪化して癌化,穿孔,出血等を起して死亡する場合も比較的多く見られるのである。
 したがつてこの胃癌,胃潰瘍および慢性胃炎などを早期に発見して大事に至らぬ前に処理し食生活をコントロールする所謂胃疾患の予防こそ現在当面する第一の問題としてとりあげ,またこれについてもつと関心を高めるべきである。病院機能としてもこれらの疾病の予防活動は最も努力しなければならない問題であつて,胃ドック開設の動機は以上の考えと次の集団検診の結果から重大なる示唆を与えられ,病院の予防活動の一端としてなされたものである。

病院給食の原価計算例

著者: 永田信三

ページ範囲:P.107 - P.110

 病院の基準給食費は,甲表では1日20点即ち200円と定められてあるが,基準給食について監査が実施せられる場合,標準カロリー2400でているかどうかは,当然その主たる対象となる。同時にこの標準カロリーの質の問題に関連し,患者1人1日当り,いくばくの材料費を支出しているかも,当然監査されることになる。そして若し材料費が1日130円以下の場合は,病院は1日70円以上儲けておるのではないかと,監査官から皮肉られることが往々あるが,しかしこれは明らかに監査官の誤解又は認識不足に基くもので,給食材料費即ち給食費とは言えないのである。
 然らば給食材料費にどの程度支出することが理想的な給食かと言えば,勿論病院の規模とか組織その土地の物価事情,その病院の経理状況等によつて,一概に論ずることはできないが,若し病院給食が,良質なる材料を豊富に用い,患者の嗜好に適する食事を供給することを理想とするならば,これを制約する材料費の極限を発見することが必要である。而してその発見の方法は,現在実施している給食の実態について,厳格なる原価計算を試み,給食向上可能の限度を算出して見ることが良いと思う。

合成洗剤及び殺菌性界面活性剤による汚染患者食器の洗浄と消毒について

著者: 大島虎之助 ,   森岡誠 ,   関谷守 ,   小山重則

ページ範囲:P.121 - P.133

緒言
 第二次世界大戦後米国の合成洗浄剤工業に刺激されて,我国でも近来種々の合成洗剤が市販され或は研究されている。
 合成洗剤は一般に高級アルコール系洗剤とアルキルベンゾール系洗剤の二つの型のものが市場に見受けられるが,食器類の洗浄対象となるものはその大部分がアルキルベンゾール系洗剤である。

原始林に病院を訪ねて—ラムバレネの初印象

著者: マルティンエミ ,   会津伸

ページ範囲:P.134 - P.140

 マルティン夫人は,牧師の未亡人であるが,40年来,アルベルト・シュヴァィツェルの仕事の緊密な協力者であり,シュヴァィツェルの病院のためいろいろと尽力している人で,いくたびかラムパレネへわたつたが,ヨーロッパで病院の業務を預つている。ここにかかげた文章は,第一次世界大戦中に,廃墟と化したラムバレネ病院の再建期のプロフィルである。この病院は,現代の世界の危機において,ひろく人間性の象徴とみなされている。

第10回病院学会特別講演(予定)・一般演題募集

ページ範囲:P.141 - P.141

会期 昭和35年5月26,27,28日(予定)
会場 東京虎の門社会事業会館講堂

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.150 - P.150

 1年中で最も寒いときです。寒冷地の病院では,積雪の中で,職員が御苦労をされています。暖い方の皆様と共に御同情と感謝の意を表します。
 さて,今月号には異色のものが1編加わりました。それは,エミ・マルチン女史が書かれた"原始林に病院を訪ねて"です。これは,会津助教授の御厚意による飜訳ですが,幸い氏の友人である医学書院の長谷川編集局長の手を経て本誌に御投稿になつたものです。聖医シユヴイツアー博士の至高な人類愛の活動の初期の姿を,博士の共力者である女史が,ありのままを描写されたものであつて,読者は,博士と一緒に,人類愛のともしびをかかげて,暗黒の世界を切開く思いのするものです。日本の病院は,今や余りにも企業的になりつつありますが,病院人は改めて反省をしなければならない時期に当り,女史の文章の中から何ものかを感ぜさせられるものではないでしようか。

グラフ

病院の歌

ページ範囲:P.111 - P.117

病院長プロフイル・71

布施信良氏—国立大阪病院長

ページ範囲:P.118 - P.118

 国立大阪病院は大大阪のどまん中にあつて,敷地2万坪,病床700床を有する厚生省御自慢の近代的基幹病院の1つであり,最高の治療設備と療養環境をかねそなえているのみでなく,建物全体の配置,高低なども,建築美術家の設計指導を受け,大阪城に連なる一帯の風致地区を形成しているという恵まれた病院である.
 現院長の布施信良博士は,明治22年生れ,阪大教授として,ながらく令名を馳せた後,昭和25年3月定年と共に副院長として赴任した阪大名誉教授である.一昨年院長に就任した.

固定欄

診療,他

著者: 浦田

ページ範囲:P.143 - P.149

医療法施行規則第4章「診療用放射線の防護」の施行をめぐる問題点について
はじめに
 昨年5月1日改正された医療法施行規則の第4章「診療用放射線の防護」が,その附則で認められていた猶予期間を過ぎて,同年10月1日から全面的に施行をみている。
 その内容については既に本誌第18巻第6号(1959年6月号)に收載の「医療法施行規則の診療用放射線の防護に関する一部改正について」で詳しく紹介されているので本文を読むに当つてはそれを参照されたい。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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