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雑誌目次

雑誌文献

病院19巻4号

1960年04月発行

雑誌目次

特集 大学病院

大学病院の趨勢

著者: 守屋博

ページ範囲:P.235 - P.236

 4月になると,全国で華々しく医学学会が開かれる。基礎医学に関しては99%までが大学の教室か大学研究室の発表である。また臨床医学に関しては,若干の其の他病院の発表があるにしても,90%以上は大学の臨床教室,即ち大学病院の医局員による発表である。この事はやむを得ぬことであろうが日本の医学研究の殆んど全部が大学で行おれていると見てよい。10万の臨床医家の9割までは聞き手であつて,研究は,残りの数千の大学医局員の手でなされている。
 この意味において,40前後の大学病院と,6,000の一般病院とは本質的の差があると考えてよい。戦前も,2,3の大学病院とその他の病院とは,内容がひらいていた。むしろ大学病院以外には,近代医学の行われる近代病院はなかつたと考えてよい。戦後は,むしろ一般病院中に,大学病院級の病院が増えて来たのである。2級病院,3級病院の質の向上が近代医学の大衆化に役立つのである。

イギリスの大学病院

著者: 佐分利輝彦

ページ範囲:P.237 - P.242

I.イギリスの医科大学
 イギリスには,現在16カ所の総合大学の医学部と4カ所の医科の単科大学とがあり,毎年の新卒業生の数は約1,500名である。なお,大学の名称は次の通りである。

大学病院の給食施設

著者: 高柳清十郎

ページ範囲:P.245 - P.258

まえがき
 名古屋大学病院は戦災を受けて,その大半を焼失したので,復旧計画も早くから論議されていたが,昭和31年6月になって6階建,地下1階の新病棟ができた。
 患者給食施設は,この地階に計画したが,予算措置が講ぜられないまま延びていたところ,ようやく昭和34年8月に完成の運びとなつて,9月1日からこの新らしい施設で患者給食業務を開始した。

大学病院の財政構造

著者: 山元昌之

ページ範囲:P.261 - P.265


 健康保険の普及に伴つて,大学病院の財政は非常に歪められたものになり,既に数年来,当事者の苦悩するところとなつている。大学病院には,他の一般病院には見られない純消費的な費用があり,これが大学病院の特性である。この消費的費用を適正に支弁する道が確立されていないところに苦悩の原因がある。更に近い将来,国民健康保険の全面的な実施によつて,国民皆保険が実現しようとしている。今にして大学病院の財政構造を確立しておかなければ,大学病院の経営が行詰ることは必至である。そこで大学病院の財政に検討を加え,あるべき財政構造を画いたのがこの小文である。関係諸賢の関心を得て大学病院の正しい経営に寄与することができれば,筆者の幸いこれに過ぎるものはない。

大学病院研究会のあゆみ

著者: 小林秀彌

ページ範囲:P.267 - P.270

 此度本誌が"大学病院"という特集号を発刊されるのに当つて,昭和27年に文部省内に設けられた"大学病院研究会"が爾来多少形は変つて来てはいるが,8年有余も引続き会合を重ねて,大学病院のあり方と各種の問題に就て検討を重ね,現在も尚その努力を続けておるので,此際この研究会の歩んで来た道を回想して御紹介するのも,強ち無意味の事ではない様に思われます。

座談会

大学病院の運営

著者: 吉田幸雄 ,   上月実 ,   守屋博 ,   松田豪一 ,   斎藤忠夫 ,   橋本仙一郎 ,   森山豊

ページ範囲:P.280 - P.295

 吉田 先生方にはお疲れのところをおいで頂き有難うございます。丁度先生方がお集まりなさいました機会に,大学病院の問題を採上げて見たい,こういうことでお集まり頂いたわけでございます。普通の病院でもなかなか問題がありまして,そう簡単に割切れないわけでありますから,特に大学病院となりますと,大学との関係で問題が更に複雑化している。従つてどういうところで考え方を整理して行つたらいいか,なおまた只今の健康保険の診療報酬と大学病院という関係で,大学病院の財政的の面でもいろいろ制約が加わつている,というような実情でございます。従つて今後大学病院はそれを切抜けて,本来の使命を達成するのにどういう風にしたらよいか,こういう問題にも直面しておるのでないかと,思われるのです。そこでこの座談会ですが,今晩それがすつぱりと,お話合で結論が出るかというとそんな簡単な問題でもないように思われます。大学病院は,一般の院病といろいろ関係がございますから,大学病院が今どんな問題を持つているか,というような点をお話頂いて読者にその点を理解して頂くという風にお話を進めて行つたらいかがと思つております。そこで最初に短刀直入財政問題から参りましようか,先ず他の病院と違うところは,組織の問題だろうと思うのです。

グラフ

大学病院の新らしい動き

ページ範囲:P.271 - P.277

 従来大学病院と言えば,各科臨床医学教室を芯とした専門の単科病院から成る連合体であるかのような観があった.特にそれ等は,第一内科病院,第二内科病院,第一外科病院などとは呼ばれてはいないが,現実は各科が独立した形態の施設であった.ただ調理場などは共同施設であったのは,重心から外れていたせいでもあろうか.大学病院の事務が近代化し,器械化されるにいたって自らその機能が病院医療のために一役を買うようになりつつある.

病院長プロフイル・73

二宮恵一氏—愛知県公立陶生病院長

ページ範囲:P.278 - P.278

 名古屋の東北20粁,山間の谷間に,黒い煙,白い河水と,陶土のほこりによごれた瀬戸の町がある.其の旧市街の西端に,鉄筋2階建の明るいアメリカ式の診療棟と,4階建の清楚な病棟が,小高い丘の上に,偉容を浮び上らせている.これが瀬戸市外2カ町村の一部事務組合に依つて運営されておる公立陶生病院である.
 この病院が,昭和11年病床35を有するみすぼらしい産業組合病院として,発足してから年を閲すること,ここに23年,共の間或は県農業会により,或は地方農協組合連合会によつて,経営されて来たが,昭和27年市町村組合に移り,今や病床500を有し,外観内容とも,地方に誇り得る綜合病院として市民に絶対の信頼をかち得るに至つたのは,二宮院長の崇高なる人格と,高邁なる識見と,卓越せる医術と,たゆみなき努力の賜物に外ならないのである.氏は愛媛県の出身で,昭和4年名医大卒業,岡田内科教室にあつて,研鑚を積むこと7年,34歳の青年院長として,着任以来今日に至る長い間,全魂を打ちこんでの献身的努力が実を結んで,市民からは慈父の如く仰がれ,慈母の如く慕われ,世にもまれな氏の後援会が結成され,一面病院の内容充実のために,既に1千万円に近い最新医療器の寄付があり,他面氏の家庭に関しても,後顧の憂なからしむる方途が講ぜられつつあることは,稀に見る美挙であるとともに,氏に対する信頼と,期待が如何に大であるかを物語つて余りあるものといつてよかろう.

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病院医師の任免,採用源・採用経路,出身校—病院医師の人事にかんする調査研究(II)

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.299 - P.303

 1゜医師の任免は各病院とも殆んど院長によつて行なわれているが,病院の規模が小さいほど開設者の発言力が強いという傾向がみられた。
 2゜医長の人事を別にしている病院は,大規模病院と公的病院とに多い。
 3゜医師の採用源は殆んど大学医局であり,またその採用経路は院長又は医長の紹介による場合が多いが,規模別,経営主体別にも若干の差異がみられた。
 4゜当該病院の医師の出身校をみると,約6割の病院に,同じ出身者で半数を占めているばあいがみられ,個々の病院と大学医局との結びつきが強いことが知られた。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.310 - P.310

 陽春4月,各地で医学会が盛大に開かれています。各病院とも例年のことながら,3月末と4月初旬には先生方が学会出席のためやや手薄になるときです。この学会出席は,病院機能の原動力である医師の専門家としての活動意欲の源泉をなすものであつて,病院経営にとつて重大なる行事であります。医師の学会出席を喜ばぬ病院経営者は,病院医師がマンネリズムに陷り診療が消極的になることを望んでいるようなものです。診療の多忙のためだけの理由で出し惜しみすることは,大きな損失と知るべきでしよう。

海外事情

アメリカ滯在1年間(Ⅱ)

著者: 山村好弘

ページ範囲:P.305 - P.307

 私はこのアメリカ滞在中に多くの友人が出来ました。1人はドイツのフライプルグ大学の公衆衛生研究所からやつて来たドクター・オツテン,彼はドイツ人特有の融通のきかない石頭の持主ですが親切で真面目な男。実験は極めて正確そのものにがつちりと,時計の針の如くやります。概してドイツ人は日本人には親切で,よく第二次大戦中や,戦後の生活の苦しかつた事を話し,お互に敗戦国の条件は同じであるということを知りました。この連中のユダヤ人嫌いは徹底しており又日本人はアックスだといつて,特に仲よくしてくれます。次はスイス人のピーター・ミユーラー,彼は実に純情な男。一般にスイスとスカンジナビヤの系統は,感覚がインターナシヨナルで,人種的差別がなく,平和を愛し,人間は善良です。「日本の平和憲法には心から敬意を表する」と常に語つていました。私のプワフェッサーのブロツホもスイス人で,スマートな紳土,しかし,心底をながれる精神は実にしつかりしています。頭脳も良好,自らアイデアを出し,自ら試験管を握つて実験を行い,我々の意見もよく聞きます。私が「日本では研究費も設備もなく,実験はやりにくい」というと,「ブレインは同じだ」といつて,いつも励ましてくれました。彼はまた「刀根山病院の空洞の仕事は実にワンダフルだ」といつて敬意を表していました。

固定欄

給食

著者: 三宅実

ページ範囲:P.309 - P.309

病院における食器消毒の動向
 病院給食管理上,患者食器の消毒の問題は大きな分野を占めているにかかわらず,その解決が行われていない。最近また新しくこの問題が論及されて来たので,その動向を眺めてみよう。
 病院給食の目標は,患者に給与した食事を全部おいしく食べてもらうことである。しかし現実にはある程度残飯が生じる。その原因を追及して行くと,献立・調理技術と共に,使用食器の種類が問題となつた。アルマイトの凹凸の多い食器では,食慾の起らないのは当然である。そこで食器の吟味が行われ,昭和28年に国立病院では食器の共同研究を行い,その結論として硬質磁器又はO・S・ライトが良いと発表し,4年計画で食器の更新を行つた。この研究の途上,合成樹脂・メラニン等の食器が採り挙げられたが,煮沸消毒により破損されるところから,昭和29年度共同研究の課題として「食器・食缶の消毒に関する研究」が採り挙げられ,多くの国立病院に,研究費が配布され患者食器の消毒に関する研究が行われた。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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