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雑誌目次

雑誌文献

病院19巻6号

1960年06月発行

雑誌目次

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精神病院と緑化

著者: 式場隆三郎

ページ範囲:P.395 - P.398

 戦前,日本には代用精神病院の会があつた。これは官公立に代つて精神病者の治療にあたつている全国の精神病院のあつまりであつた。戦後に日本精神病院協会が誕生し,その後社団法人となり,昨年10周年記念の式典をあげた。これはかつての代用精神病院協会のようなものではあるが,もつと自主的な組織と性格をもつているし,その病院会員は200あまりの多きに達し,日本の私立の精神病院の主要なものはすべて網羅されている。この他に官公立の精神病院を加えた財団法人日本精神衛生会がある。この2つの会や,かつての協会では,いろいろな問題を研究したり論議したりしてきたが,緑化についてとりあげたことはなかつた。こんど日本病院協会が,病院の緑化運動の提唱をはじめ,研究雑誌「病院」が特集号を刊行し,私にも精神病院の緑化についての意見をもとめられた。この企ては当然のことであり,大賛成である。むしろおそきにすぎるきらいさえある。これは病院はもとより,一般のアパート,ことに近年続出している団地などにも適用すべき問題だとおもう。この数年,建築は異常な進歩をみつつあるが,その環境の整備や改善はまだまだ手がつけられていないといつても過言ではない。これは病院においても同様で,ことに結核病院や精神病院においては,もつと問題にしてよいのである。長期にわたる療養生活をするところだから,という意味はもう強調する必要はない。これら2つの病気とも,その在院期間は年々短縮されつつある。

医局の位置

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.399 - P.403

 医局に関する問題はいろいろあるが,その中の一つに総合医局をどう考えるか,あるいは病棟に医局があつては具合が悪いか等という問題も日常しばしぼ取り上げられている。この問題について考えを整理してみたいと思う。

病院経営と労働攻勢について

著者: 永田信三

ページ範囲:P.405 - P.407

 最近中小企業における労働争議は,漸次激化の様相を呈し,その前途に一大暗影を投じているがこの傾向は医療界にも波及し,早くも私営病院の経営者達は恐慌を来たしておるようである。そもそも今回の中小企業の労働攻勢熾烈化の原因は,永年不況の下積みにされておつた中小企業も,最近景気が好転し,利潤も漸次増大してきたことが従業員に知れ渡たつたことと,一方大企業の労働組合を主軸として組織された総評が,現在のままでは組織に行詰りを生じ,組合活動が限界に達したから,今後の活動分野を中小企業に求め,これがオルグに乗り出したことにあると思われる。従つてその組合運動は総評を背景に,総評の指示を受けて行動するから,その主張は強硬であり,又非妥協的でもあり,その要求も過大に成り勝ちである。
 病院もその規模,形態,従業員数の点から言えば,何れも中小企業に属するから,他の中小企業の従業員が活溌なる組合運動を展開することにより,それ相応の戦果を挙げれば,その影響は当然病院従業員にまで及んでくるのを回避することはできない。即ち労組未組織病院は直ちにこれが組織が結成されるであろうし,既組織の病院は陽動に転ずるであろう。

主要各国の医療保障制度における病院医療費の比較的考察(I)

著者: 佐分利輝彦

ページ範囲:P.409 - P.414

緒論
 現在世界各国の医療保障制度が年々支出している医療費の額の相違は,病院サービスに対する支出額の相違に基づくものであることは周知の事実である。
 多くの国の医療保障制度は,被保険者が利用する病院サービスの全費用を負担してはいないのであつて,多少とも公的資金(一般会計資金)の中から,病院に対する補助金という形で(医療保障制度自身に対する補助金以外のもの)国民が納付した税金によつて,或いは被保険者が保険料とは別に私費で支払つた患者負担金によつて,病院サービスの費用は賄われている。

甲表乙表による損益計算

著者: 青木賢三

ページ範囲:P.415 - P.421

まえがき
 社会保険の診療点数は曲折を経て昨年6月甲乙の二本立と決まり同年10月から実施された。しかしこれは本来一本であるべきものであるが当時の厚生省と医師会の対立関係から政治的妥協の産物として二分化されたものでいずれ適当な時期をみて一本化する段取りとなつていた。厚生省では甲乙一本化を早急に解決しい意向であり,昨年暮の国会にこの件を持ち出し11月18日の衆議院社会労働委員会に於いて一本化促進を与野党共同提案で決議,さらに12月3日自民党に医療対策特別委員会を設置してそれが促進に乗り出すことになつた。これを契機として厚生省では10月頃に「医業経済実態調査」をする考えで準備をすすめているが,これに対し調査を受ける側の日本医師会ではこのほどの理事会で「厚生省の調査には応じられない」との強硬態度を明らかにする声明を発表したため診療費問題の混乱が再び表面化しそうな情勢となつた。
 現行の甲表は厚生省の主張する新しい方式を取り入れた診療点数表であり,医師の技術面を重く見て診察,検査,大手術などの料金を大幅に値上げすると同時に,投薬や注射の料金を低く押えた。これに対して乙表は従来の投薬や注射の料金を重くみる方法で点数のベースアップを行つたのである。

病院医師の厚生と定年制・退職金制度,労働組合—(病院医師の人事にかんする調査研究(III))

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.433 - P.443

 1゜医師の給与住宅入居状況は,経営主体別にもかなりの差がみられるが,それを最も大きく左右するのは地理的条件のちがいである。また,その家賃額の多寡は経営主体別に大きく異なることが知られた。
 2゜そして,医師に対する給与住宅は,業務上の目的や医師確保の手段などから利用に供されている,ということがわかつた。
 3゜給食利用者は全体の約半数を占め,その割合はとくに私的病院に大きく,また食事別には昼食が最も多い。
 4゜定年制は,会社立病院に特に多く適用されているが,ほかでは殆んど適用されていない。また,定年年齢は55歳に最も例数が多く,次いで60歳であるが,院長にその適用除外例が多いことがわかつた。
 5゜退職金制度は公共団体立病院のほかは殆んど一時金としてあるだけであつて,不十分なものであるとおもわれた。
 6゜医師の労働組合参加状況をみると,かなり多くの病院に不参加の医師がいることがわかつた。

病院の庭園と計画

著者: 飯島亮

ページ範囲:P.447 - P.450

病院の庭園は計画から
 病院に庭園を作ろう,或は環境緑化をやろうということになると,直に樹を植えたり,花壇を作つたりすることに考えが飛躍する。
 しかしその前に私達は如何に樹を植え,また何処へ,何本位植えるとか,花壇の大さは,位置は,また数等はどうするか等について考えてみる必要がある。そして植樹計画を建て,何年計画で植え終るとかの問題もあるのであるが,実際には上記のような植樹や花壇の問題のみでなく,病院の庭園を作るとなると,非常に複雑で単に,植樹と花壇作りだけでは,決してそこには立派な庭園は生れてこないものである。一般的に庭園を計画する場合でも,その施工の方法,即ち請負制にするとか,半請負制として簡単な部分は私達の手で行い,時には簡単な設計がなされて,全部私達の手で作りあげる方法等も考えられ,またその施工期限についても,3年計画,5年計画,あるいは10年計画となし,部分的に逐次その目的,事情に従つて分割施工する場合もあり,その内容的な計画については,施設,設備の問題,様式の問題,その運営,管理に関するもの等,充分な計画とその検討の上に施工に移す必要がある。計画性のない庭作りは結局において立派なものとはならず,失敗に終るか,庭園の効用価値の小さな割に,非常に大きな犠牲を払わせられることとなるのである。以上のことは病院の庭園においても同様であるので,私達が先ず立派な庭園を作るためには,必ず充分な計画が大切であることを知る。

社会医学研究会についてのお知らせ

ページ範囲:P.450 - P.450

 国民皆保険,医療制度の改善,保健所運営の再検討等々,医療保障や衛生行政に関係ある問題が今や社会的に大きな関心を呼んでいます。
 公衆衛生学会でも数年前から,分科会の一部として或いは討議会としてこういう課題が扱われるようになり,また医療保障の自由集会も年々盛大になりつつあります。

患者図書室

著者: 永田清一

ページ範囲:P.451 - P.452

 厚生省が1958年に行つた「国民健康調査」によると,我国では1人で年2回,通算25日間病気しており,その病気の大半は消化器疾患,伝染病,寄生虫病,呼吸器系疾患,循環器系疾患であると報告しており,国民が病院といかに密接な関係にあるかということを端的に示している。
 また,1957年の衛生年報の12表によると,1957年7月10日現在の患者教は3570千人であり,このうち,513千人の入院患者がいることを発表しており,そして,各疾患患者の入院日数は,95表によると,精神疾患345日,結核404日,伝染病19日,その他43日,平均して63日と発表している。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.467 - P.467

 6月……梅雨—赤痢の流行。病院内の防疫は万全でしようか。院内に発病者は—尿菌者は—外部からの食品は一応検討して下さい。
 さて,今春から病院緑化運動が始まりました。「病院緑化のポスター」が下の写真のようにできました。御希望のむきは,地方病院協会または病院緑化推進中央協議会(東京都文京区湯島3の1日本病院協会事務局内)にお問合せ下さい。まず院内の意識を高めましよう。

グラフ

車輪がついている病院設備

ページ範囲:P.423 - P.430

病院設備と車輪
 このグラフを見ていると,病院能率が,「車輪がついている病院設備」の函数であるという公式が成立する.勿論,職員の素質の如何という条件を度外視することは出来ないとして,病院の収入は,頭打ち,人件費の比率は上る一方であるとすれば,この車輪公式は病院の血路を開く方策の一つとして重視されねばなるまい.車輪は,ガッチリしたものがのぞましい,チャチな車輪がついている設備を購入すると,車輪公式に異変が招来する.ここで,日本病院設備協会が,病院設備の基準化を提議しようとする気運が,カメラマンにも感得される.

固定欄

病院の火災対策について

著者:

ページ範囲:P.453 - P.455

 昭和35年に入つてから,引きつづいて数件の火災が発生し,患者がその犠牲となつたことは,病院関係者の記憶に新しいところと思う。そこで,病院の火災対策について,現行制度の概要とその問題点を述べてみたい。
 現行制度は,医療法,建築基準法および消防法の3系統に大別される。

病院の適正経営規模に関する試算

著者:

ページ範囲:P.457 - P.461

 現行診療報酬額(点数)において病院の適正なる経営を行う場合,その採算は可能かどうか。また病院の病床の規模によつてどのような相異がみられるかを試算し,医業経営に関心ある者の参考に供したいと考える。
 病院の採算規模ということを考える場合,それぞれの病床規模において如何なる機能を維持するかということがまず前提として決定されなければならない。

地方公営企業の決算からみた病院事業

ページ範囲:P.462 - P.465

公営企業の概要
 地方公営企業の昭和33年度決算が自治庁より発表されたので,とくに病院事業を主体として,その経営状況を概観することとしよう。
 地方公共団体が経営する公営事業のうち,公共性とともに企業性を具備した事業を「地方財政法」では「地方公営企業」と呼び,特別会計を設けて独立採算制をたて前とすることを要求している。この決算の対象となつたのは,地方公営企業法を適用している297団体であるが,これに含まれる事業は,水道,電気ガス,下水道,病院,その他となつている。

病院経営分析に用いられる諸比率

ページ範囲:P.466 - P.466

 経営分析は,一般には貸借対象表分析(資産,負債,資本等の財政状態の分析)と(損益計算書分析(一事業期間に発生したすべての収益とそれに対応する費用の分析)とに分けられる。
 貸借対照表は,事業の安全性,例えば流動負債に対する当座資金の状況などに重点を置く「外部分析」である。これは資金融資業者等が事業に対して支払能力等を観察するために用いられる。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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