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雑誌目次

雑誌文献

病院19巻7号

1960年07月発行

雑誌目次

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病院内における赤痢発生とその反省

著者: 村田四郎 ,   足立茂 ,   岡本季彦 ,   赤坂裕三

ページ範囲:P.475 - P.481

I.まえがき
 より良き病院管理は,直接間接に患者の診療に重大な意味を持つものであつて,病院の当事者にとつては実に大切な事柄である。幸に近時,病院分類検査のこともあつて,漸やく其重要性が当事者間に認識されてきたようである。
 然し乍ら,唯検査の基準に沿うことに,注意をそそがれる結果,形の上で整つただけでは意味がなく,あく迄も患者にいい作用を及ぼす様な管理となることに,当事者としては留意することが肝要であることは云う迄もない。職員の定数が充足されて居り,設備が基準に合致していたとしても,患者にはよき作用を及ぼすのでなければ,よき病院管理が行われていると云うわけにはゆかず,基準等の形にあらわれるものの外に,形に見えぬ管理がより大切であることに思いを致さねばなるまい。その形に見えない管理上の大切なこととしては,医師看護婦の倫理に始まり,患者の衛生教育に至る迄,数多くの問題があるが,夫等はしばらく措き,院内に法定伝染病の発生を見るが如きも,管理面に欠くる所があると断じてさしつかえない。

台風と病院—伊勢湾台風を中心として

著者: 角田信三

ページ範囲:P.483 - P.487

I.序言
 昭和34年9月26日夜,愛知,三重,岐阜,殊に名古屋を中心として,伊勢湾台風は風雨害と水害とを残して通り過ぎた。その災害は意想外に大きかつた。日刊紙,放送機関が台風の接近を伝えていた9月26日当日の中部日本新聞紙面より概要を摘録して見よう。
 26日朝刊には,「台風15号,東海昼すぎ圏内。衰えずに本土をめざす」と5段抜きの見出しで,最低気圧910ミリ,暴風雨圏700キロメートルの大型台風発生とその接近を,罹災直前の夕刊最終版には,「台風15号東海めざす」と凸版横見出し,「今夜半は大荒れか,今年の中では最大級」と6段抜きに報じ,別図の台風情報図をかかげていた。

病院と環境の快適

著者: 冨田重雄

ページ範囲:P.489 - P.492

 I.
 われわれは昭和33年3月病院における応対の調査研究を実施し,病院におけることばつかいと態度が少なからず診療効果にも影響があることを知つた。調査の結果は,昨年10月末会報第3号をもつて「ことばつかいと態度」を特集し,本年3月25日単行本「ことばづかいと態度」——病院サービス改善のために——を医学書院より発行した。
 最近の病院経営においては,医術や看護技術などの研究はじゆうぶんとり入れられているが,反面サービス面においては相手が身体的に,精神的に病人であるだけに,上記のような問題をも,ないがしろにできないことをわれわれは強調したつもりである。「病院と環境の快適」という題目も漸く日本病院協会が新年度より病院の緑化としてとりあげたところであるが,これは遅きに過ぎたと考えられる。しかしこれによつて動的なことばづかいと態度に対して,さらに静的な意味において,おそまきながら病院の環境が快適を保持し,病院が患者の治療の場として,また働く病院職員の作業の場としてじゆうぶんな要件をみたすよう努力しなければならない。

病院経理の特殊性

著者: 永田信三

ページ範囲:P.495 - P.501

I.病院経理
 私立病院の経営目的は,開設者個人の資本の増殖,病院関係者の生活の維持など,単純であるから,その経理は企業会計と同一筆法で行えば良いのであるが,国公立若しくは公的病院になると,医学教育,医学研究,特殊伝染病の予防,公衆衛生,慈恵,社会保障,医療の普及等,特殊的であり,又多目的的でもあるから,その経営形態は,これらの目的を達成するにふさわしいよう組織せられており,従つて経理方法も,経営形態に適応しておらなければならない。故にこの種の病院に企業会計をそのままの形において適用しても巧く行かない場合がある。
 しからば企業会計にいかなる修正を加えたならば,その適用の適正妥当を期することができるであろうか。

温泉療養と医療保障

著者: 伊藤久次 ,   岡崎稔

ページ範囲:P.513 - P.520

 わが国には約1,200に達する温泉地があり,多数の人々により日常生活の中に欠くことのできないものの1つとして広く温泉は利用され,昭和33年度には延5,000万人の温泉利用者があると推定されている。しかしこれ等は温泉を休養あるいは保養として利用しているものが大部分ではあるが,療養を目的のものも少なからずある。これ等温泉療養者は泉質による適応と伝統的効能を信じて温泉に集まつて来る傾向が大であり,医師の指導によつて来たものは必ずしも多くないようである。もしも一般医師が温泉療法をよく認識し,指導すれば患者はさらに多く温泉地を訪れるであろうし,また一般医師が依頼出来る療養施設が温泉地にあれば,なおさら温泉療養患者はそれに集まるであろう。国立伊東温泉病院の入院患者(リウマチ)の状態はこれを裏書きしていると思われる(第1表)。
 さて温泉病院で取り扱う患者は大体慢性疾患の患者が多く,例えば伊東における状況は第2表のようであつて,これらは必ずしも生命に直接ひびくものとはいえないし,また死亡率も低いが難治なるが故に個人的にも日常生活は暗くなり,作業能率の低下のため自他ともに多大な影響を受け,団体的にも個人的にも莫大な経済的損失を招くものであるから,すみやかに社会的経済的道徳的心理的に正常な生活に復帰し得るように手段が講ぜられなければならない。

主要各国の医療保障制度における病院医療費の比較的考察(II)

著者: 佐分利輝彦

ページ範囲:P.521 - P.531

III.西ドイツ
 西ドイツの疾病保険によつて給付される病院サービスは,入院,看護,診療,薬剤,衛生材料の支給,およびすべての種類の患者収容施設(回復期患者収容施設を含む)において支給されるそめ他の総べての補助的サービスを含んでいる。結核患者は通常廃疾保険の給付を受けるが,廃疾保険は結核のほかに,リューマチまたはその他の慢性疾患に対する給付も支給している。疾病保険の入院給付は,被保険者に対して法定給付として最高26週間まで支給されるが,疾病金庫(Kranken—kasse:保険者)はその規則にしたがつて,入院給付の期間を52週まで延長できる。もし,被保険者が病院サービスの26週間の権利を使い果したときに,疾病金庫の顧問医が,給付が引き続いて継続されるならば労働能力を回復する十分な理由があると認めた場合には,疾病金庫は52週まで引き続き入院の給付を継続するのである。西ドイツの疾病保険においては,患者の自已負担はなく,疾病金庫は病院に直接医療費を支払つている。なお,西ドイツの疾病保険では,外来の給付については期間の制限はない。1945年の終戦直後から連合軍の占領中は,患者による医療費の一部自已負担の制度(占領地域によつてその額は異つていた)が実施されていたが,現在は行なわれていない。当時この一部負担金は,患者が診療を受けるために疾病金庫から医療券(Kranken—schein:疾病証明書とも訳されている。

病院医師の移動状況,移動・開業希望—病院医師の人事にかんする調査研究(IV)

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.533 - P.545

 すでに,Iにおいて,病院医師の多くは年齢が若くまた勤続年数も短かく,「非定着性」が強いことをみた。また,病院医師は,研修のための大学医局とのむすびつきや,開業との関係がかなり強いものであることもすでにみたとおりである。
 以下,これらの関係について,一つは施設の側からみた実態と,他は個々の医師の側からの意見と,2つの面から調査結果を整理し,分析を試みてみたい。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.550 - P.550

 いよいよ盛夏を迎えることになりました。先月号のあとがきにも防疫の注意を申上げましたが,今月号の巻頭には,「赤痢」の院内発生の実例の原稿をかかげることができました。筆者の村田先生は,元横浜市衛生局長で衛生行政のベテランであられますが,三ツ池病院で昨年10月発生した集団赤痢の実態と経験を発表して戴きました。今まで各病院で同様な事態が発生しても,仲々公表はされませんでしたが,病院の防疫上の資料として敢えて御発表戴けたことは幸といわねばなりません。先生他病院の方々に敬意を表する次第です。特に伝染源を突きとめられた御努力に対しては,大いに多山の石として有難く拝見させて戴きました。この例からいつても,集団発生の疑いのあつたときには,こそくなことをしないで防疫の専門家の協力をえることが,大切なことがわかります。
 次には,昨年の伊勢湾台風によつて大被害を受けた名古屋中日病院の経験を,詳細且つ警告的な御報告を,角田院長から御投稿戴きました。この例は,特大の風水害であつた解ですが,その程度のいかんを問わず,患者の護りをしている病院にとつては,常にその対策を心がけていなければならないでしよう。

グラフ

病院のユニフォーム

ページ範囲:P.503 - P.510

 「病院の制服」といえば,人はナースのユニフォームだと答える.それ位にナースのユニフォームの基盤は固い.ナースのユニフォームは「病院の制服」と言うよりも,「職業人の制服」だと理解すべきであろう.その他の職種の制服こそ「各病院の職種別制服」である.この頃「職種別の制服」を制定する病院が,ボツボツ見られる.統制癖の院長の趣味からではなく,患者その他の外来者には,如何に便利であるか,等々その利点は病院管理上の1つのテーマである.

診療

新しい診療科名「麻酔科」について

ページ範囲:P.546 - P.549

 今般医療法第70条第1項第3号の規定による診療科名(いわゆる特殊診療科名)の初のケースとして麻酔科が許可されることになつた。その細目については昭和35年3月14日付医発第183号をもつて医務局長から各都道府県知事あて通知されている(後掲)。これによると,麻酔科の標榜をするにはそれを希望する個々の医師について厚生大臣の許可が必要であり,その許可は所定の様式手続に従つて提出された許可申請書を厚生省において審査の上決定することになつている。以下その許可手続を中心として特殊診療科名(医療法第70条第1項第3号)の解説を試みよう。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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