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雑誌目次

雑誌文献

病院19巻9号

1960年09月発行

雑誌目次

特集 第10回日本病院学会シンポジウム Symposium

育児相談

著者: 丹羽直久

ページ範囲:P.640 - P.641

 病院における小児を対象としての仕事はただ治療医学的面に止まることなく,育児学的面にも進めてゆかねばならない。即ち小児の疾病異常はその治療処置のみにおわることなく,その早期発見をまたその予防をはかることはもとより,更に進んで小児の健康な生活と心身の健全な発育成長を管理指導すべきものと思う。
 小児に対する治療医学的活動が病院の綜合的な働きによつてよくその成果をあげうる如く育児学的活動もまた診療各科,臨床心理,医療ケースワークなどの協力のもとに実施し得てはじめてその目的を達するものと考える。

聖路加病院における公衆衛生看護部の活動

著者: 松下和子

ページ範囲:P.641 - P.643

I.始めに
 病院における公衆衛生看護活動と一口にいつても,現在の日本においては,○小さな病院や診療所に保健婦として1人で働いている場合○2人位で働いている場合○大きな病院に5〜6人の,またはそれ以上のティームとして働いている場合○結核や乳幼児のみを対照としている病院や療養所に働いている場合等,それぞれその置かれた立場で,働き方や活動内容に随分差がある様に思います。

病院における公衆衛生活動の現況

著者: 吉田幸雄 ,   塚原国雄 ,   原素行 ,   小野田敏郎 ,   古屋暁一 ,   今村栄一 ,   岩佐潔

ページ範囲:P.644 - P.645

 前言:本報告は,昭和34年後厚生科学研究「病院における医療活動と公衆衛生活動との連繋方式に関する研究」の第一報の総括的報告である。

病院の公衆衛生活動

短期人間ドック

著者: 橋本寬敏 ,   堀内光

ページ範囲:P.639 - P.640

I.緒言
 近年老人医学への関心がたかまり人間ドックが広く行なわれている。短期人間ドックは従来の6日間のものに比して時間と費用を節約してより大衆化せんと試みたものである。

病院・診療書の連繋について

診療科目別にみた病院,診療所の地域的諸関係について

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.650 - P.656

 私の研究しましたのは病院と診療所が地域的にどういう具合に配置されているか,という地理的な関係を主としたものであります。地理的な位置ということに関しては,従来診療圏という問題で経営的に扱われておりましたけれども,最近では地域社会に対する医療保障計画という面で,単に私経済的な面ばかりでなくて,病院,診療所をひつくるめた公経済的な立場から綜合的に体系づけなければならないという要請もあるように考えております。そこでその実態はどうなつているかということを一番近い宮城県につきまして,非常に大ざつぱなものでございますが,調べた結果をお伝えいたします。
 宮城県の全市町村に報告を求めまして,部落別にできるだけ詳細に人口を調べて頂きました。他方,医療施設の場所を調べ両者を関連させて作成したのが次の表でございます。

病院と診療所の入院における競合問題特に有床診療所の実態について

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.656 - P.660

 私は引続きまして病院,診療所の任務の連繋でその中に,さつき司会の吉田先生からお話がありましたように,入院における競合というようなことについて,発表させて頂きたいと思います。
 病院と診療所の連繋がうまく行くためには,先ずそれぞれの任務がはつきり分担されているということが必要だと考えます。で,一般的,常識的に申しまして病院の任務は,入院治療ということが主体でありまして外来については特に高度な特別な診断を要するもの,あるいは特別な治療を要するものを受持ち,それに反しまして,診療所の任務は外来診療特に家庭医的なサービスをすることであるという風に言われておるわけでございます。従いましてこの観点からみますと,診療所に入院患者を持つということは,例外的なケースであるという風に考えなければならないわけでございます。

診療所より見たる病院の連繋

著者: 開田敏雄 ,   小野田敏郎

ページ範囲:P.660 - P.663

 私は開業医でささやかな診療所を経営するものでございます。今回この"病院と診療所の提携の問題について"というテーマを頂きまして,一番最初に戸惑いまして困りましたのは,先程岩佐技官のお話にありましたように,わが国において病院と診療所というものをどこで区別するか,ということでございます。医療法によりますと,病院と診療所の区別はただベット数できめられている。20床以上のものを病院とし,20床以下のものは診療所である,そうして岩佐技官の言われましたように,その法律における区別は診療所では48時間以上の収容は好ましくない,という表現でございまして,いけないという言葉は使つておらない。全く現状におきましては,私共の見るところではこの項目は死文化されておる,全然どちら側にも活用されていないということでございます。それで病院と診療所と区別がありません。ベット数によつてきめられている,しかも20床という非常に過少な現在の医療面におきましては余りにも少なすぎる数を以て,たちきられているという点で,どこをもつて診療と言い,どこをもつて病院というか,という点で非常に戸惑つたわけでございます。

オープンシステム病院

総説—オープンシステム病院の諸類型とその本質

著者: 神崎三益 ,   岩佐潔

ページ範囲:P.665 - P.668

 オープンシステムのシンポジウムでございますが,オープンという言葉が語られてから,すでに10年くらいになると思いますのですけれども,その間にいろいろお話しになる方によつて内容にもいく分の違いがありまして,明確でない点があるように思います。それで私はまずオープンといわれております中に,いろいろ段階がございまして,オープン,クローズドと申しますのが一つの系列としてつながつておるものであるということを考えますので,それらの点についてお話し申したいと思います。
 オープンの中の最も原始的な形態と申しますのが図表上左端の模型で,ここでは,Ⓓというのが医者で,○は患者を示しているのでございます。この病院の周囲におります開業医の先生方が必要があれば患者を病院に連れて行つてここで診療をする。すなわち周りの医者はたれでも病院へ行つて使うことができる。ちようど公園がありまして,だれでも好きな人がそこに行つてよろしいというような格好です。これは原始的な純粋のオープン型式でありまして,これについては異論はないと思います。

従来の欠点と利点の比較研究

著者: 守屋博

ページ範囲:P.668 - P.671

 私が与えられた問題は,オープン病院とクローズド病院の利害得失という問題であります。ただ今岩佐先生からお話がありましたように,オープン,クローズドといつても内容的にいろんな考え方があり,いろいろの段階がある。例えていうと,1から10まである。これを各各比較するといつても大変なことになる。現実にわれわれが今さし迫つて問題になるのは,現在日本でやつているやり方と,これから一歩出るか,出ないかということが問題になつておるのであります。もともと病院が雇傭しないドクターの間をオルガナイズしているか,してないか,active staffだけでやるか,あるいはフリーに外からくるかという点で,区別しないで単に雇傭医であるかないかの点で線を引いて研究するのでありますが,われわれは日本の場合,まあ従来日本でこれを現在われわれのやつている病院をクローズド,その他の病院をオープンというふうな名前をつければですね,どういう利害得失があるか,ということをやつて見ようというわけであります。
 両者を比較するといつても,その中の代表を取り出さなければならないのであります。上は現在われわれが普通日本で見られる形の病院を表わしている,下はそれから1歩出た2乃至10の中でですね,2乃至10にもいろいろありますが,その中にこういうような性質を持つた病院があつたとした時に,これをどうして比較するか,という問題にしぼつて研究してみようというわけでございます。

現状における実行方法論

著者: 吉田幸雄 ,   島内武文

ページ範囲:P.671 - P.681

 私がしんがりになつてしまいまして,「それでは現実にどうやつたらいいのか」という大変な課題を頂いたことになりました。
 これにはいろいろな考え方があると思うのであります。従いまして私が今から申し上げようと思いますことは,私個人の試案でございます。そのお積りでお聞き願いたいと思つております。

シンポジウム抄録 病院の建築・設備

1.病院建築の諸問題

著者: 団野健二 ,   吉武泰水 ,   金子敏輔 ,   武藤多作

ページ範囲:P.693 - P.694

 病院管理の常識は建築家の間に広まつたが,病院建築は型にはまつてきたきらいがある。新しい病院の創造は病院に対する認識を深めることから生み出され,新技術の適用はその後の問題である。実状ではベッド当り坪数・坪当り単価に著しい幅があり,かつ最高のものも欧米の水準におよばない。これまでの一般通念を引き上げる必要があろう。また経済的に余裕がない場合ほど,当初の計画をねることが大切である。2.看護単位の構成と大きさ:看護単位は,精神・伝染・小児・結核・産科・外科系・内科系の病類別区分が行なわれるようになつたが,実状では混合単位がかなり多く,地方では一層著しい。病室を大病室と個室のほかに4〜6床室をまじえて構成する必要がある。また病棟内の生活的諸施設を使える患者の割合が知られたが,食堂は必ず設けるべきであろう。しばしば問題になつた看護単位の大きさについて,研究の結果では現状のように看護婦数が少なければ一般や結核で40〜50以上となることはやむを得ず,地方の小規模病院てはもつと大単位になりついには完全看護の体制がくずれてしまう。英国では従来の仕事受持よりも患者受持の看護体制がよいことを認め,看護単位の構成に新たな実験的試みを行なつている。また平家建病棟も悪くないとして独自のプランニングを発展させている。

病院薬局管理

3.病院における在庫薬品の管理(主として自動算出表付カーデックスの利用について)

著者: 久保文苗 ,   山口寛人 ,   福地喜一郎 ,   吉田幸雄 ,   神崎三益

ページ範囲:P.695 - P.695

 病院予算の中で薬品予算の占める割合は極めて大きいのが普通である。従つてその使用を合理化し,適正化することは病院の管理運営上緊要のことである。この目的のためには従来の薬品管理事務を種々の点で再検討し,改良を加えなければならないが,私共はその一つとして,在庫薬品を管理するために,自動算出表付カーデックスを利用し,ある程度事務能率を向上することができたと考えるので,それについて簡単に説明,報告する。
 この方法は一口でいえば,管理事務における「例外管理の原則」を応用した整理方法であつて,使用する帳票の様式は,薬品出納カード,統計記録カード,算出用紙,見出紙およびシグナルよりなるものである。その最も大きい特徴は,算出用紙を用いて過剰在庫,正常在庫,発注段階および督促段階を区別表示し,それに合わせてシグナルを移動することによつて,出納カードを一一開けて見ることなく,各薬品の在庫状況を把握できる点にある。従つて各在庫薬品の標準在庫量について一つの安全な標準を定めれば,その標準通りに運営されているものには特に注意を払う必要がなく,例外のみを即座に発見して,適切な対策をするようにすれば,極わめて能率的な事務処理が可能であり,欠品,死蔵品等を生ずることを可及的に防止し得ると考えられる。なお発注点の算出法についても,それぞれスライドを用いて解説する。

海外News

アメリカの医療保険の動き

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.646 - P.646

 アメリカ医療保険を拡めることが近年の問題となつているが,その一歩として200万人の連邦政府職員及びほぼそれと同数のその家族を医療保険に加入させることになつた。
 これだけの団体員を対象としているのに,我が国の様な共済組合とか健康保険組合を結成して,それに対して政府が直接に保険を運営することをせず既存のBlue Cross, Blue Shieldとかその他色々の非営利医療保険プランや保険会社が行う営利プランでも,いずれにでも本人が選択加入し,その掛金を一部政府が又一部本人の給料から差引いて政府の方で支払つて呉れる仕組になつている。これは,AMAやAHAが政府直営保険に反対したためであるが,アメリカ的な自由主義の現われでもあり,実業家内閣らしい工夫でもある。これは,本年6月から開始される。

グラフ

第10回日本病院学会シンポジウム

ページ範囲:P.683 - P.690

特別講演
病院人事の特徴
東北大学教授島内武文氏
 病院は多数の複雑高級な専門職を持っているところに,病院人事の特質がある.医師,看護婦などの良否は病院の成績を左右する.病院の人事は,労使関係よりも,機能を異にする職業人群間の関係調整に重大なる意義ありと説く.

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第10回日本病院学会印象記

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.697 - P.701

 新潟公会堂に顔を合せてから1年がもう経過して,また日本病院学会総会が東京で開かれることになりました。これまで会期は通常2日間でありましたが本年は5月26,27,28日と3日間に延長されたことも第10回という記念すべき学会を迎えて益々今後の発展を約束するもののように思われます。

敬語はどう使うか

著者: 冨田重雄

ページ範囲:P.700 - P.701

 現在敬語のつかいかたは,この程度というはつきりした基準があるわけではない。たとえ一つの基準をつくつたとしても,その時と場合に応じて多少変えるべきものである。
 もともと敬語は,相手を敬い,尊敬の意思を表示するものであり,個人としてでなく,病院という患者の治療の場において仕事の相手方である患者に接する場合には,当然この意思の表示が要請されるのである。こちら側の誠意のあるこころづかいがあらわれることが基本であつて,昔の諺にもある「過ぎたるは及ばざるがごとし」というとおり,むやみに敬語を使用することは相手を尊敬するゆえんではない。

社会医学研究会印象記

著者: 黒子武道

ページ範囲:P.703 - P.705

 第1回社会医学研究会は創立,総会をかねて去る7月29日,30日の両日,東京都千代田区,日本都市センター講堂に於て開催された。酷暑の中であつたが約130名の参会者を得て終始熱心な討論が交され,予期以上の成果を収め,ここに社会医学研究会の正式発足を見るに至つた。
 本会設立への動きを理解するためには,日本に於ける社会医学の起源,歴史的意義,その思想的背景について考察しなければならないが,その詳細については他日にゆずり,主として戦後に於ける会設立の過程について簡単に触れてみよう。戦後,公衆衛生の飛躍的発展にともない国民大衆の医療に対する関心が急速に高まり,医療制度の改善,国民皆保険等医療保障,衛生行政に関する諸問題について,医療関係者は勿論,広く社会科学者等によつても社会保障,経済政策の面から積極的な発言が見られるようになつた。公衆衛生学会に於いても数年来医療保障の分科会,自由集会においてこれらの問題について取扱うようになり,医療及び公衆衛生発展のための経済的,社会的条件の究明を行うことになつた。これらの諸集会は年々盛んとなり,同様の集会が全国各地で持たれるようになつたので同じ関心を持つ全国の研究者を糾合した1つの研究組織を作ろうという機運が起きてきた。一昨年4月,日本医学会総会の折りその具体化が問題となり,社会医学研究会なる仮称のもとに準備会をかねて研究発表会を開催することになり,昨年7月,東京に於ける会合となつたわけである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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