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雑誌目次

雑誌文献

病院2巻3号

1950年03月発行

雑誌目次

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病院概史(その6)

ページ範囲:P.2 - P.2

 20世紀に入つてからいろいろの医学の知識や技術が目覚ましい進歩を始め,自然それを応用する為に医療の殿堂として病院の要求が高まり,病院は歴史上空前の発展を途げる様になつた事は前号に述べた如くであるが,然し一方かくも新しい段階に発展した20世紀の病院の一つの特徴は,看護教育の進歩である,この発見過程をアメリカに於ける状態について述べて見よう。1890年には合衆国の有した看護婦養成所は35ヶ所に過ぎなかつたが,その10年後の1900年に432に増加した。然し当時の養成所の生徒の扱いは,丁度今迄の日本の看護婦教育の状態と同様に,低賃銀による看護力の補給の目的に養成所が利用されておつた。当時の看護婦は下女の様な取扱いを受け労働時間は長く,その地位については何ら理論的根拠を与えられていなかつた。
 然し看護婦はお互いに組織を持つようになり,教育の改革を叫ぶようになつた。1910年には学校は1129に増加しているが,既に当時はその教育のし理論も非常に熱心に取扱われるようになつて来ている。この運動は,アメリカ看護婦協会(Ameri-can Nusrses Association)アメリカ病院協会及びアメリカ外科医士院(American collegeof surgeons)によつて支持された,看護婦教育全国協議会(National Leagne of Nursing Education)の活動にまつことが大であつた。

サービス瑣談

著者: 栗山重信

ページ範囲:P.3 - P.8

 1.病院管理に関する関心は最近関係当局の指示によつて急激に高まつて来た。何れの病院でも其改善に苦心せられて居ることと思う。従来と難病院管理の改善研究が軽んぜられたわけではないが,つい色々の遣り繰り算段で手が廻り兼ねて居た面が多かつたと思われ又従来は一般に標準の置き方が低位で不充分な状態でも夫れ程に感ぜられなかつた面があると思われる。世の中一般の関心が高まつて来れば色々研究せられる様になり,従来不可能とせられて居た様な点も,何とか打開の道が少しすつつく様になると感ぜられ結構なことである。病院管理研修所が設置せられ,雑誌「病院」が創刊せられ,医療監視が行われて色々指示是正の手段が講ぜられる様になつた。病院管理に関係の人々が顔を合せれば,あれはどうして居る,これはどうして居ると常に管理問題がトピツクスとなつて居る様である。
 2.病院管理の項目は極めて複雑多岐で,其何れをも完全にする様つとめることは素よりであるが,人的要素,物的要素に色々不自由な現状では容易なことでなく,従つて先すどの面からどの程度に始めて行くかを考究する必要がある。病院当事者の考え方により又其施設の状況によつて著るしく異ることは当然であるが,病院管理上不備なりとして各方面で指摘せられる所を能く考慮して改善の順序を定めるのがよい様に思う。

米國醫療關係調査團の病院に關する勸告—(承前)………(病院管理の諸問題)……‥

著者: 尾村偉久

ページ範囲:P.9 - P.12

米国薬剤師協会使節団の日本の病院薬局に対する調査観察
 病院薬局は日本に於ては健全に発展しているように思える。保健所,診療所のみならす,病院に於ても,医師が診断し処方を書き,薬剤師が調剤するという理想的な医師一薬剤師関係が,普及している。この責任の分割の結果として,一方の專門学が他方の仕事を再確認する作用をし,各機能は,その道の専門教育を受けた者によつて担当され,かくして,公衆衛生上の利益が厳重に保護されているのである。薬事関係の活動において3人以上の医師の働いてゐる病院には,凡て1人の薬剤師も必要とするという条項のあることは,極めてよいことである。日本に於ける病院薬局は病院の一部門として適正に組織され,薬局長がその長である。管理業務,入院患者の調剤,外来患者の調剤及び製剤研究室等の多くの分課活動に加えて薬品試験室に有しており,薬局職員が相当な研究をする機会を供与しているのである。薬局部内の管理の事務に関しては,病院長の職にある者は薬局長に相当な責任とそれにふさわしい権限を委任している。しかしながら調剤関係業務の方針及び他の専門家との間の連繋については「薬学及び治療学委員会」の如き病院内の連絡グループを公式に設立する必要がある。この委員会により薬品の評価,規格化,及び使用法,薬局部内の方針及びその他の関係事項を考慮するのである。日本の病院薬局は,病院の大きさにくらべて極めて多数の薬剤師を利用している。

病院人事消息

ページ範囲:P.12 - P.12

 ◇桜井 久一氏 多年東京鉄道病院長と内科部長であつた氏は最近後進に途を開くため勇退され東京女子薬専校長に就任された,尚氏は文京区小日向台町二ノ四三に住居。
 ◇三沢 憲氏 仙台鉄道病院長の氏は東京鉄道病院長兼内科部長に転任さる。氏は福島県人,大正7年九大卒,大正14年九大で学位を授けられた人で小野寺内科に於て研究し各地の鉄道病院に勤務され現在まで仙台鉄道病院長をつとめらる,本年58歳。

病院と管理(その9)—病院長は何をしなければならないか

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.13 - P.17

【3】患者の専門的世話に関する義務(続)
(3)診療の補助部門に関する義務
 病院内には,主治医が疾病を診断したり治療するに必要な補助の機能を途すいろいろの部門がある——例えば,理学診療部(X線による検査,治療,ラヂウム治療,光線,電気,熱気,水,マツサーヂ等による物理療法)薬局,エレクトロカルヂオグラフ部,臨床検査部,職能治療部等。
 これらの部門は勿論総て院長の下にある病院の組織であるが,院長はこの各部門をそれぞれ適当に組織し配置し,その仕事に必要な諸設備をしなければならない。

病院に關する用語と譯語

著者: 島內武文

ページ範囲:P.17 - P.17

Teaching Hospital 教育病院
Non-teaching Hospital 非教育病院

病院と精神衞生

著者: 村松常雄

ページ範囲:P.18 - P.20

(1)精神衛生の意味
精神と身体と環境との関係
 精神衛生とは,精神病の豫防とか,早期治療とかいう狭い意味のものではない。もつと広く人間の精神の健康を増進し,幸福を図ることを目的とする。このことは身体の衞生の場合と同様であり,然かも身体の衛生と精福の衛生とは相互に分ち難い関連を持つ。
 人間は身体的存在であると共に精神的存在であり,然かも社会的,丈化的存在である。然かも此の3面は緊密な相互関連を持つ。

醫師以外の病院開設は營利を目的とせば不許可

ページ範囲:P.22 - P.22

 醫婦人科の病院,診療所開設中の医師が助産所を開設する場合と,医師以外の一般人が病院,診療所の開設許可の申請あつた場合に営利を目的とすると見なして不許可となした件につき,茨城県と厚生省との間に照覆した全文は次の通りである。

盲目でも働ける

著者: 森島侃一郎

ページ範囲:P.25 - P.27

 米国の盲目戦士は雇用されるとき視覚上の支障はない。
 37才のPaul Moriarty君は米国の或る工場の工員だが毎朝6時に起き彼れの妻君の朝の仕事を手伝い5才を頭に4人の子供たちと工場出勤前に仲間となつている。

病院収入記録の研究

著者: 守屋博

ページ範囲:P.29 - P.33

 よいサービスをしようと考えるのは凡ての,病院管理者の希望でありましよう。しかし現在の様な,ぎりぎりの経営をやつている時にはサービスの良否の大部分は,其の病院の使える,経費に,比例するものであります。所がその経費は一体どこから得られるでしようか。若し社会医療制度が完全に行われる時代になれば,凡ての患者は無料で治療を受けられるから,病院の経費は凡て,税金其の他でまかなわれる事になるでしよう,その時病院に与えられる豫算多過は,社会の医療に対する理解の程度によつて左右されるでしよう。しかし現在は,国立,公立の様な公共病院でも税金からの補助は一定の額に限定されていて,それ以上は,病院の收入に待つと云う事になつています。従つて100万円の補助を受ける病院でも,200万円の收入があれば300万円を使用する事が出来,500万円の收入があれば600万円の仕事が出事る事になります。ここに凡ての管理者が病院收入について熱心に研究せねばならぬ理由があります。若し正確な收入豫算を立てる事が出来ねば,正確な支出豫算を立てる事が出来ません。
 正確な收入豫算を立てるには過去の收入の記録を正確にして,これを分析研究せねばなりません又收入源泉を色々と分類する事になつて,色々の経営上の工風をする事が出来るのであります。

日本に於ける病院建築の實際(その2)

著者: 小林仙次

ページ範囲:P.34 - P.39

病棟篇
II 病室補遺
J)総室(Wrrd)論
 現在日本に於ける,病院管理上建築に関係のある問題は,管理方式の劃期的な改革と共に,実に多数の問題が山積しているが,なかでも病棟単位問題に関連して,患者を如何にして総室へ誘致するかが,われわれに与えられた課題中の大課題である。
 尤もアメリカの最近といつても,ここ十数年来の傾向として,単独病室が,漸次増加しつつあるとのことであるが,建設費の面から,管理上,治療上の面から,看護能率の面から,其他あらゆる面から結論として,わが国に於ては総室が要求せられているから,われわれは如何にすれば,わが国民性にマツチした総室が出来るかを,工夫設計しなければならない破目に追い込まれている。

病院營繕係の經驗—特に給湯と洗濯の苦心

著者: 木谷平次

ページ範囲:P.40 - P.43

1 私の病院の再編成
 昭和20年に米軍の病院として聖路加病院が接收された時,我々職員一同も解散の手続がとられたが,法人組織が解散したのではなかつた。其の間に病院の首脳者側では小さくても聖路加国際病院としての奉仕を続けたいとの計画が進められ間もなく東京都の好意ある計らいにより都立整形外科病院を借りる契約が成立し70余名の職員が再編成されたのであつた。
 以上の組織の中に含まれた職員は,医師,看護婦をはじめとして,各自が自分の専門とする特技のみに依らず協力と融和に依つて結ばれ設立当初からの当院の目標たる「神の栄光と人類福祉の為めに」向つて再出発を始めたのである。

モデルホスピタル建築設計

ページ範囲:P.44 - P.45

厚生省企画中 三月末完成豫定
 G・H・Qの示唆もあつて,厚生省では昨年12月委員を委嘱して,模範病院建築設計に着手した。時宜を得たものとして各方面でその完成を鶴首している。従来わが国の病院建築設計は全く無定見であつて,互に他の病院の模倣をしているに過ぎなかつた。かくの如き状態が永年続いた事は,合理的な病院管理の方式が研究されなかつた事に原因する。終戦後病院管理の研究が盛んになり,最近では一定の管理方式が認められるようになつたので,この管理方式にかなつた建築設計が当熱要求されるようになつたもので,最近漸く病院復興の気運が至国的に活溌になつて来た時に,日本式模範建築設計企画がなされることになつた事は,日本の病院史のエポツクを作るものといえよう。これからの新建設病院はモダンな文明国の病院として恥しくないものが各地に現われるだろう。又戦争中荒廃した病院の改修改築にも当然応用されるだろう。
 この設計に当つている模範病院建築設計委員会の委員は次の六氏である。

長崎『養生所』の追憶(3)—長崎「養生所」は長崎出島に在つた日本最初の洋式病院である

著者: 荒瀨進

ページ範囲:P.46 - P.49

 筆者は,養生所出身のうち最も出藍の人,橋本剛常のことを少し述べて見たい。
 橋本剛常は越前,福井藩主春嶽候の臣でポムペに委贄は比較的おそく,師,帰国の年文久二年二月以後である。

編集後記

著者: 編者

ページ範囲:P.50 - P.50

 病院に関する各方面の研究が漸く進んで来ましたので,本誌も段々と具体的な問題についての貴重な原稿を掲載させて頂くことが出来るようになり,直接皆様の御役に立てるようになつて来たのではないかと思つています。
 米国の各種調査団の勧告は非常に示唆に富んだものですから,熟読百考を要するものでせう。栗山先生の瑣談はいつもながら先生独特の風格のある玉稿で,病院を愛する御心情の発露と拝読させて頂けると思います。村松先生の精神衛生の問題は,従来日本の病院に欠けて居つた大きな欠点で,是非取上げなければならない問題で,御研究願わなければならぬのでせう。医療の中心機関である病院は,医学を従横に活用すべきでせう。守屋氏の收入記録の研究は,計画経理こそ病院の積極的運営の基礎事務であるという課題。厚生省では遅ればせながら模範病院建築の設計に取かゝつていますが,その委員である小林氏からうん蓄を傾けた御投稿をして頂いていることは幸いと思います。木谷氏,の実際面の経験も各方面の御参考になることと信じます。広く各種の問題を取上げて行きたいと編集室一同常に努力している積りです,更に一層の読者の御協力をお願い致します。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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