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雑誌目次

雑誌文献

病院2巻4号

1950年04月発行

雑誌目次

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病院概史(その7)

著者:

ページ範囲:P.2 - P.2

 アメリカ外科医士院が,1918年に病院規準化運動Hospital Standardiza-tion movementを始めた事は病院史上劃期的な事業である。アメリカ外科医士院は,病院は病者を扱うに適正な科学的な構成によるべきであるとし,高い理念により而も可能な進歩的基準である最低基準Minimnm Standardを設定した。この基準は25床以上の総ての病院を毎年調査した結果から導き出された。1918年に合衆国及びカナダの総ての病院を調査した結果は,最初に設定した基準に合致した病院は89病院に過ぎなかつた。16年後の1934年には,この基準に合格しアメリカ外科医士院に認澄される様になつた病院は2180病院に達する様になつた。この基準が,如何に病院の向上に役立つかはその内容を見れば誰にも了解されることである。例えば,この基準化計画は,(1)有能な医療の倫理に合した而も組織された医師団を有すること,(2)この医師団は定期的に研究会を開き,病院の診療成績を研討すること,(3)医師間で診療報酬を分割し合うことを禁止していること,(4)診療された全患者について,正確且つ完全な診療録が作製されること,(5)臨床検査,X線検査その他適当な診断治療の機関が備つていること等を要求している。1934年の調査では70%の合衆国及びカナダの病院が合格するようになつた。

病院の管理—アメリカから帰りて

著者: 橋本寬敏

ページ範囲:P.3 - P.6

 今度私が米国の旅行をする間に,病院管理経営については,特に興味をもつて,見て歩いた。シカゴに行つたのは昨年10月のなかばだつたが,先ずマツケカーンMalcolm Thomas Mac-Eachernを訪ねるのを怠らなかつか。この人は我国でも病院経営管理に興味をもつ人ならば,誰でも読む病院管理の虎の巻を書いた,この道の大家である。この人の姓は何と読むのか,わかり難いのだがあちらの人でもはつきりしない。或る人はマツケクレンと発音する。シカゴの中心,East Erie Streetにある American Collage ofSurgeonsの2階の古風な美しい室に執務して居た。頑丈な体格の,表情に乏しい,耳の少し遠い老人であつたが,言葉は容貌に似ずやさしく,耳がやゝ遠いにも拘らず,物わかりが極めて良く,談話をテキパキと運ぶ。殊に事病院経営に関することならば,何を話しても即座に明快な解答を与えて,気もちがよい。日本でも昨今は病院管理に就ての関心が多くなり,既に病院管理の雑誌も発刊され,研修所もある話をしたら,席を乗り出して,熱心に聴いた。日本の院長とアメリカの病院管理者の異同についても話したが,アメリカにも曾てはそうゆう時代もあつたので,良くわかつた。

病院に関する用語と訳語

著者: 島內武文

ページ範囲:P.6 - P.6

Governing Board 運営委員会
 President 会長

院長覺え書

著者: 家田三郞

ページ範囲:P.7 - P.8

 定刻の出勤だけではいけない。四六時中いつでも出勤すべきである。真夜中の出勤ならば火災豫防の注意が出来る。夜勤員のいねむりも時に発見出来る。大きい声で叱つたり靴音だけでも叱ることが出来る。院内飲酒は禁止されていてもどうかすると見つかる。
 よつぱらいの操従は難しい,なぐられる覚悟も時には必要であるがうまく逃げるのがよい。昼中酔つていない時に大勢の前でやんわり,つるし上げをやる。大柢みんなの笑い声のうちに処理されて再び繰返えされることは少ない。

病院と管理(その10)—病院長は何をしなければならないか

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.9 - P.13

【3】患者の専門的世話に関する義務(続)
(5)給食部に関する義務
 病院は病人を收容治療する処である。従つて病.人に榮養を補給し,疾病治癒の活力源を賦与することは病院の義務であり,この食物のサービスは院長の責任である。然るに経戦後のわが国の病院はこの問題に対して如何なる取扱いをしていたで、あろうか。大部分の病院は患者の自炊に委ねてしまい,偶々給食をしたとしてもその給食内容は不完全極まるものである。即ち病院の義務を放擲しておつたといつても過言ではない。勿論戦争末期からの食糧事情の悪化が最大の原因であり,更に社会保障制度の一部である保険診療が給食費を10点におさえて置いた侭であつた事も原因の一つであろう。戦後病院給食の加配及び病院給食の指導が行われたが,以上の原因が障害となつて仲々戦前の欣態には恢復し難い現状にある。この際特に各病院の協同した努力が必要である。第一に院長が取上げなければならない事は,食糧の入手困難,食費の不足という悪事情の為に全く放擲して居つたこの大きな病院の養務を思い起す決心である。そして事務長と栄養士と医師その他の職員の協力によつて,病院給食組織を確立することである。

生理學と病院—生理学は病院の機能となりうるか

著者: 藤森聞一

ページ範囲:P.14 - P.18

 生理学と病院と云う題を課せられて少からす困惑した。と云うのは夫は私の様な弱輩の取扱うべき問題でないからである。併し乍ら私が兎に角生理学を標榜して病院に勤務している以上,共の特殊性に関する報告を求められたならば,好むと好まざるとに拘らず何等かの資料を提供し,厳しい批判を受けなければならない立場に居る様に思われる。依つて私はここに本院に於ける生理学を含めた所謂基礎医学部門の実状を報告し,之によつて一応私の責任を果したいと思う。此の場合欧米の現状を紹介し,我が国に於ては今後病院と生理学の関係が如何にあるべきかを論ずる行き方が望ましいかも知れないが,夫は他日然るべく論ぜられるであろう。

病院と原價計算

著者: 守屋博

ページ範囲:P.19 - P.23

 我々素人が,原価計算の話をするのもおかしなものだが,病院の計理的な研究は焦眉の急を要する問題であり,一応病院当事者の意見を述べるのも無駄ではないと思う。
 先ず計算について考えねばならぬ事は正確である事が必要です,従来の計算は多くは豫算を取る為であるとか税金を少くする為の政治的意味を含んだ,人工的計算が多くて第三者をナツトクさし難い数字が出る事がある。その為にはあくまで事後計算であつて単位原価を総計すると,正確に実際経費に一致する様でなければならぬ。

病院人事消息

ページ範囲:P.23 - P.23

 ◇三沢 敬義氏 東京大学医学部物療内科教授の氏は2月22日開会の東大教授会に於て附属医院長に互選さる。氏は福島県人,大正10年東大医学部卒業,故真鍋教授の後任教授として今日に至つた人で,昭和2年東大で学位を授け,本年57歳。
 ◇金森 虎男氏 東大医学部附属医院長の氏は停年が向う一ヵ年に迫り渡辺助教授が急死し研究員の指導と学生の教養に専念せねばならぬ理由で院長を辞任さる。

入院患者の生活の斷片

著者: K・生

ページ範囲:P.24 - P.26

 寺田寅彦の数ある随筆のなかに,「病院の夜明けの物音」というのがある。
 多分帝大病院のことでもあろう,ともかくも蒸気煖房装置のある大病院でのことである。ある入院患者が冬の明け方,まだ暗いうちに眼ざめてしまい,それからどうしてもねつかれない。シインと静まりかえつた曉の静寂に耳をすましていると,聞えるものは,たゞ自分の頭の中に聞える不思議な雑音や,枕におしつけた耳に響くザツクザツクという律動的な脈管を通る血液の響ばかり——それすらフト忘れてしまうと,たちまちにして又もとの悠久な静寂に帰つてしまう。

病院管理研修所だより

著者: 島內武文

ページ範囲:P.27 - P.27

 早いもので病院管理研修所も開所以来1年近くになる。始めは却々珍らしかつた名称も,どうやら段々と知られて来た様である。今日では全国津津浦浦迄も研修所に来られた方々が,夫々の分野で活躍して居られる。研修所も赤坊でいえば,もうそろそろ乳を離れる時である。兎に角法制上の名前はついても,人も物も病院の乳房にすがつていたのであるが,ここでそろそろ独り立ちをしてゆかねばならないわけである。
 今日では医療の主体が個人である医師から,組織と設備を有する病院に移つて来ているのであつて,病院というものの完成向上の為には,我我はもつともつと努力しなければならないと思う。そして大きい中以上の病院が未だに小さい病院と同じ様な組織と持ちつづけて,あたかも子供の服を着た大人の様であるのに対して,身体に合つた着物を考えてやらなければならない時であろう。

『病院醫師の活動を阻むもの』反駁

著者: 米持栄次郞

ページ範囲:P.28 - P.31

「病院」誌上,昨年十月号尾村偉久氏は「病院管理の諸問題」と題する論文中で「病院長が病院経営に専念できないところから,事務長が所謂大物と自認し診療内容の向上を妨げ,診療部門の幹部の不満をかい,院長の管理が満足に行われない,所謂事務長独裁というたぐいのものである」と言われているが,このようになるというのは院長が無能なのか,事務長が悪いのか,それとも院長に診療に従事させる制度が悪いのか,をうかがつてみたい。
 事務長にその弊があるとすれば,これを阻止するも,放任するも院長の考え一つによつて左右できるものであるまいか,事務長が出しやばりすぎる,やりすぎるというように医局員をして感ぜしめるような室気をつくつたとすれば,それは無能な院長が都合の悪いところは事務長に責任を被せており,こんなことを屡々反覆しているものに外ならないのではあるまいか。勿論要領の悪い事務長もあるかもしれぬし吾々も時には失敗することはあるが,こんなことは稀のことである。医官側ではどうもこんな室気を感じているらしく,昨年12月のS生の論文「病院医師か活動を阻むもの」と題する長文は似たようなことを取扱つているが若干の施設にある例を以て全国病を推し当てて院長所長がみなそうであり事務長もそうであるというような公式的一般論のような観察されていることは,吾々の洵に遺感とするところである。それと共に院長や副院長を侮辱するものではあるまいか,そこで私はS生の論文を反駁して所信を明らかにせんとするものである。

醫療管理者テスト

著者: 尾村偉久

ページ範囲:P.32 - P.32

 次の各問について,正否又は該当の事項に○をつけ,尚その解答の根據を研究して見て下さい。
 1,問 次の各号の内医師に成り得る場合があるがどれか。

某病院に於ける凍氷使用量

著者: 松野正德 ,   淸水里都子

ページ範囲:P.33 - P.34

 病院に於ける氷の使用量について調査を行つたので参老の為に報告する。
 本院は東京都内に在つて,ベツト数現在445外来患者一日平均700〜800名,入院患者350〜380名を数える綜合病院(急性伝染病室は欠)である。

日本に於ける病院建築の實際(その3)

著者: 小林仙次

ページ範囲:P.35 - P.39

病棟篇
3)病室附属の諸室
 病室附属の室としては,看護婦詰所,同作業室,病棟治療室,リネン室,食堂,配膳室,ソーレリアム,浴室,便所,雑品庫,などの諸室が必要であろう。
 これ等の諸室は,詰所を中心として病床に接近していることが望ましい,従来日本の病院では,やゝともずると病床との連絡が悪く,看護能率を阻害していたようである,看護婦は一病床に対し,て,少なくとも1日30回,これ等の諸室との往復をしなければならぬと云われているので,最も多く往復する室を最も近く配列すれば,添付図のようになる。

会社附属病院の一般患者の診療は医療法で不適当

ページ範囲:P.40 - P.40

 医療法第7条並びに第39条の運用に関し愛知県と厚生省との間に照覆された要点は次の通りである。

病院組織と總婦長制度

著者: 小西宏

ページ範囲:P.41 - P.43

 多数の職種の職員から構成される近代的な病院の組織は,シンフオニー・オーケストラの音に似ている。シンフオニー・オーケストラは,管,絃,打の各楽器が一人の指揮者によつて一糸乱れぬ演奏を行わなければならない。極く初期の時代,オーケストラが未だ小規模のものであつた時期には,指揮を第一バイオリンのトツプが兼ねていたが,オーケストラが段々楽器の種類,数を増すにつれて兼任では無理となり,専任の指揮者がタクトを振るようになつた。大交響曲の演奏で,何十種の楽器,何百人の奏者,更にこれに合唱団が加わる場合には,他に数人の補助指揮者の応援を必要とすることもある。病院の管理もこれと同様で,極く小規模な組織で患者の診療が比較的簡単であつた時代は,病院の管理を診療の傍ら片手間に見る丈で事足りたであろうが,医学の進歩と社会の発展に伴い診療内容が高度となり,看護その他患者に対する世話も複雑になり,又夫々の分野で深く掘下げられることになつて来ると勢い病院の組織は益々規模が大きくならざるを得なくなつて,かゝる病院の管理は,これを片手間に行うことが許されなくなつて来る。斯くして病院長をコンダクターとし,診療,看護,給食,補給その他の各部門を以て構成する近代的な病院組織ができ上つたものであろう。そして病院の規模が大きければ大きい程,これを構成する部門は多くなり,各部門の数が多ければ多い程,これら部門相互の調和Cooperationが重要となつて来る。

ホテルのぞ記

著者: 島內武文

ページ範囲:P.44 - P.46

 我々病院管理研修生一同は先日帝国ホテルの川連氏のホテルの話を聞く機会を得,大いに感心したので,是非本物の楽屋を見たくなつた。
 そこへ国際クリーニング社の仁王氏の御尽力によりその洗濯所を案内して戴いた上,それに隣接するホテル・テイトを見学することが出来た。

新潟県病院協会スタート

ページ範囲:P.47 - P.49

 新潟県では県下の病院が打つて一丸とした組織を結成すべく,2月25日,新潟市イタリヤ軒で,新潟県病院協会の創立総会が開催された。当日は県知事副知事,県会議長衛生部長,大学長,医師会長等県外からは厚生省病院管理研修所長外2,3の来席を得て盛大に挙行された。県下74病院,療養所の内,当日出席即時加入53施設で理事長に大学附属病院長,天児民和氏,副理事長に県立中央病院長高橋敏行氏,生産連上越病院長村井貞寬氏常務理事に生産連厚生部長川上久一郞氏がそれぞれ就任した。

編集後記

著者: 編者

ページ範囲:P.50 - P.50

 「病院」も各方面の御協力によつて順調な発展の途をたどつて参りました。皆様の御期待にそうべく,ここいらで編集の上でも飛躍をとげようと努力いたしております。本号は思いきつて投稿原稿にページをさいてみました。いつもの号と執筆者の顔ぶれのかわつているのも清新な感じをあたえることと思います。「病院」の窓はあかるく各方面に開放されておりますから,御意見のある方はどしどし率直な声を反映していただきたく思います。それによつて「病院」はさらに現実・具体的な問題をとらえて発展してゆくコースをとりたく思います。第1巻の頃にくらべると第2巻に入つてから,問題が総論を卒業して各論的に掘り下げられていることを痛感いたします。
 巻頭には橋本先生のアメリカ見聞記をいただきました。先生らしいフレキシビリテイのある感受性にうけとられた病院問題の数々——それは目下日本においても最も焦点となつている事柄であると信じます——が明快に論じられております。日本の病院問題の今後に示唆するところ多大で,熟読を御願したい一文です。病院管理を論する者がその名を没することの出来ないMacEachernにも親しく会つて意見を交換して来られた御土産の一つが本誌にのせた箸名です。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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