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雑誌目次

雑誌文献

病院2巻5号

1950年05月発行

雑誌目次

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病院の日

著者:

ページ範囲:P.2 - P.2

 陽春5月の12日はアメリカの病院の日(Natlonal Ho-spital Day)である。この日を期してアメリカ全土に病院に関してのいろいろの行事が一齊に行われ,民衆に正しい病院の紹介運動が展開される。これは公衆衛生教育の一つの行事であつて,アメリカ病院協会の手によつて行われるものである。
 この日は,看護と病院管理とに歴史的に関係の深いFlorenee Nightingaleの誕生日に当るものであつて,病院は社会に対して何んな奉仕を提供しているか,病院は何を理想とし,何をしようとしているかの知識を,書き物又は口による説明と眼た訴える方法を以て公衆に理解せしめる努力を結集する。

病院經營の本質と經理の目標—病院経理に理論を与えよ

著者: 山元昌之

ページ範囲:P.3 - P.7

I
 従来日本の医療制度は所謂開業医制度であつた。この開業医制度がいろいろの欠陥を露呈するようになつて,10数年来,種々改善策が講ぜられ,旧医師法が廃止されたり,又戦後には医療法や新医師法が制定されたり,更にアメリカ社会保障制度調査団やアメリカ医師会調査団の観告を見たりするようになつてきた。何れも医業経営をその本質に沿うものにしようと云う考えである。我我が病院経理の主目標を何処におくべきか,を考えるに当つては,まず病院経営の本質が何であるか,と云うことを明確に認識して,その上で結論を出すのが正しいと思う。そこで病院経営の本質を抽象的に,直に掲げることは容易であるかも知れないが,現在の開業医制度も結局は1つの歴史的所産である。それが欠陥を生じたと云うのは社会進化に追従せない面が大きく行われてきたと見るか,或は医療制度自体が社会制度の1部分であるから,社会制度の変革に応じて変革されるべき運命にあるものと見てもよい,更に唯物弁證法的な説明もできよう。どの説明をとるにしても,開業医制度が社会進化の一定の発展段階に於ける必然の産物であつたと云うことは間違がない。そこでこの医療制度発達の歴史を辿つてみると病院経営の本質がよく理解される。
 今我国医療制度の発達史をこゝに詳細に取扱うだけの準備もないが,極めて簡単な素描を試みてみよう。

病院經營統計論(1)

著者: 菱沼從尹

ページ範囲:P.8 - P.16

はしがき
 近頃の統計の流行ぶりは目ざましいものがある。しかし病院経営の基礎となる統計を体系的に論究したものは少い,病院経営統計という表現は妥当な用語であり病院関係者間の口にしばしば上るにも拘らずこの命題を究明しようとするものが意外に少い。
 けだし病院経営統計論は病院を中心に考えれば衛生統計の一分野とも考えられ,経営に重点をおけば経営統計の一分野とも考えられる。既ち異質的な衛生学,経営学及び統計学の三者にまたがる知識が必要であるからだと思う。

病院經營の特異形態—各部門による協同経営は可能か

著者: 鹿毛俊吾

ページ範囲:P.17 - P.22

 財団法人組織・健康保険を対象とする病院経営について述べる。
 本病院の特異とするところは経営の面にある。財団法人は建物設備等に要する一切の建設費を負担し,経理を大別して,入院部(入院料收入),医療部(医療收入)に分ち,更に細別して給食部(入院部に所属)洗濯部(医療部に所属)を設ける,各自独立採算制をとり,而して各独立した範囲で協同経営体を組織する。而して病院管理者は全体を一つにして統一する。

病院と管理(その11)—病院の倫理

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.23 - P.27

23 医術と病院
 医術は,そもそも生命を対象とするものであるから原始時代から経験的であると同時に又宗教的であつた。唯科学が勃興するに従いその経験は医学を形成するようになり,形而下学としてのその医学が発展するに従つて稍もすると形而上的宗教的色彩を失いかけようとする為に,医家という独立した職業に対して常に医道というものがうたわれ警告されて来ている。この医道の表現としては,欧米ではギリシア的又はキリスト教的であり,東洋に於ては仏教的,儒教的である。そしてこの医学と正しい宗教的又は倫理的概念との結びつきである医術こそ近代社会から要求さるべき医術である。
 わが国に於ても幾多の医箴が残されている。例えば丹波康頼の「医心方」(982年),惟宗具俊の「医談抄」(1284年)等の仏教観によるものがあり,儒教的には「医は仁術」として取扱つた医箴は幾多存在する。欧米に於ては,遠いギリシアの昔ヒポクラテスの医箴がさん然と輝いたが,中世紀の暗黒時代を通つて,16世紀以後にあつては西洋の医学は漸く科学的のものとなり宗教とは相離れるようになつた。しかし尚宗教に本づきたる道義は術これを伝え,医術は尚倫理的技術としての特性を具えて居つた。然し18世紀の終頃からは次第に形而下的技術の傾向を帯び,哲学及び宗教は排斥されるようになり,そうして自然科学主義は智能の修養と知識の獲得とに最大の価値を置いて感情及び意志の修養は等閑に附せららるようになつた。

病院人事消息

ページ範囲:P.27 - P.27

 ◇宮沢 国丸氏 厚生省保険局医療課長の氏は前橋市に新設の健康保健組合厚生病院長に転出さる。氏は大正14年大阪医大卒業,警視庁技師を振出しに山形,鹿児鳥,滋賀各県の衛生課長を歴任し,南方司政官としてジャワに渡る。昭和22年保健局に医療課が新設され初代課長となる。長野県人,昭和10年東大で学位を受く。本年53歳。
 ◇三浦  孚氏 北海道旭川赤十字病院長の氏は6月4日行われる参議院選挙に立候補される由。氏は大正12年東大卒業,現に北海道医師会副会長として活躍されている。

醫療管理者テスト

著者: 尾村偉久

ページ範囲:P.40 - P.40

 次の各問について,正否又は該当の事頂に○をつけ,尚その解答の根拠を研究して見て下さい。
 1,問 次の記述は正しいか否か。

醫療器械の規格制定

著者: 笹本正二郞

ページ範囲:P.41 - P.45

 従来医療器械については,何等の規格がなく,製造業者が一部医師の指導の下に独自の見解と経験によつて生産をしてきた。
 昭和21年2月官制によつて工業標準調査会が設けられたので医療器械の品質向上と企業合理化を計ると共に海外輸出に対応するため,右調査会に医療器部会を設置して審議決定することとなり,昭和23年より別紙品目について日本医科器械学会(医師,販売業者,製作業者の団体で会長は大槻菊男博士)が原案を作成し昭和24年6月に日本医療親格(JES)が決定された。

米國病院に關する資料

ページ範囲:P.46 - P.47

 次の表はCorvin著は著「米国病院」1946年版によるが実際の数字は年代が若干古いがかゝる数字は非情に貴重な資料となるのでこゝに転戴する事にした。かゝる数字が早く日本でも出来ることを望むものである。

編輯後記

著者: 編者

ページ範囲:P.48 - P.48

 陽春5月。生命の喜びを感ずる月である。5月12日がアメリカの病院の日であることがうなづける。5月は1日のメーデーに始まり,いろいろの行事が世界中に繰りひろげられる。病院が必要欠く可らざるものであろことは何んな子供さえ知つていることであるが一般には親しみを感じていない。一般人はお寺はお葬式の時だけ,病院は病気になつたときだけにしか縁のないものと思つている。そこでお寺は別問題として,病院は確に病人の家で,病気のときだけにしが訪ねる必要のないものだろう。そして一般に人間は何時も「自分だけは病気にはならない」と思つている。こゝに,病院に対して一般に認識が欠け,病院事業の発展が阻害されこいる原因があるのではなかろうか。平常から病院に親しみを持たせ,病院を理解しておいて貰うことは,必ず病院の利益になるもので,亦病院の正しい宣伝は病院自身の社会に対する義務であろう。病院を普段から誰にも而も正しく見せて置くこと。——自信を以て。
 医療法の一部が改正されて,医療法人が生れた。政府案が公布6ヵ月後に施行であつたものが,参議院で3ヵ月に修正された事は,一般に要望の強いものであつたことがうかがわれる。法人格を容易に得られ個人病院が社会性公益性を従来よりも強く認められる事になる。

座談会

『蛇の穴』(The Snake Pit)を見る

著者: 村松常雄 ,   吉田幸雄 ,   守屋博 ,   三浦貞 ,   長谷川泉

ページ範囲:P.28 - P.37

面白いが不愉快な映画
 村松 今日の座談会はどういう形で進行するのですか。
 長谷川 「蛇の穴」という映画は映画としての芸術的価値がすぐれているばかりでなく,精神病院の内部や精神病者の取扱い方においていろいろ問題を提供しております。日本などではなかなか出来ない映画だと思います。その意味で各方面からこの映画を検討して,日本におけるそうした方面の問題の展開に示唆したいと思います。進行については余り固くるしいことでなく,自由にお話し下さるようお願いしたいんですが……。

管理者メモ

病院の配置計画,他

著者: 学術書院病院編集部

ページ範囲:P.38 - P.39

5年で26万床増加
 厚生省の医療機関整備中央審議会では昨年来より医療機関整備計画案に就て種々検討を続けて来たが,計画案の一部は本誌第2巻第1号(1月号)に掲載したが,3月中旬厚隼省に於て開催された同審議会に於て次の如き医療機関整備計画案が決定した。なお各都道府県では本計画に基いて具体的に検討して整備計画を樹てるが,厚生省では更に之をまとめて全国的の医療機関整備計画を樹立することになつている。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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