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雑誌目次

雑誌文献

病院2巻6号

1950年06月発行

雑誌目次

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醫療法の一部改正—醫療法人

著者: 曾根田郁夫

ページ範囲:P.3 - P.6

 さきに医療法が,病院を科学的で適正な医療を行うに足るべきものとしてその規格を高度に引き上げたことにより,医療法施行後の病院経営は,戦後の経済情勢とも相俟つて個人資本にのみ依存することを甚だ困難ならしめたことは争えない。しかも法自体,医療事業の特殊性,非営利性に鑑み,営利を目的とする病院経営を期待せず,従つて,商法の規定による会社組織を医療機関の開設主体として認めることを排斥する立場が依然として貫かれたため,他方民法の規定による公益法人の設立が必ずしも適当でないことを相俟つて既に各所において数人の医師の資本合同による病院開設の要請が現実に生じつゝあつたにも拘らず,これに法人格を与え,その要請を法的に充たすことは著るしく困難な状態にあつた。
 その意味において今次第七国会において成立をみた医療法の一部を改正する法律(昭和二十五年五月一日法律百二十二号)が,あらたに医療法人の一率を設けたことは,以上の要請に応えるものとして極めて注目されるものである。即ち改正法は,会社経営に対する従来の態度は一応留保しつゝもあらたに営利さも公益さも目的とせざる特殊法人の制度を設け,医療機関の開設主体に,法人格を取得し得る途を拓いたのである。これにより従来民法の公益法人,商法の会社何れにもより難かつた社団又は財団が容易に法人格を取得し得ることが期待されるのである。

病院經營統計論(2)

著者: 菱沼従尹

ページ範囲:P.7 - P.12

第二章 統計とは何か
 統計学は通説によれば二つの源泉から生起したことになつている。(三つの源泉を主張する人がある)一つはヘルマン・コンリング(1606年—1681年)に始りゴツトフリード・アヘンヴール(1719年—1772年)によつて完成せられた国情学派であり,他はジヨーン・グローント(1620年−1674年)を始祖とする政治算術学派である。
 アツヘン・ヴールは国家の考察から出発して,これを一般の普遍的考察と,現実的,個別的考察とに区別して,後者を取扱うのが統計学の目的とするところであると考えた。国家に存する数多の現実的事物のうち,その安寧福祉を左右するところのものを顕著事項と定義し,統計学とは一個もしくは数個の国家の現実的な顕著事項を取扱うものであると考えたのである。

病院人事消息

ページ範囲:P.12 - P.12

 ◇森田 平吉氏 都立駒込病院医長の氏は先般同病院を辞し,千葉県松戸市3の1392に内科,小児科森田医院を開業。
 ◇橋本 満次氏 信州大学松本医大教授の氏は同大学附属病院長に就任。

病院と管理(その12)—病院の倫理

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.13 - P.18

第五章 病院と診療との倫理的関係
 日本医師会では最近医道の昂揚の為に,医師の倫理を制定する準備をしていると聞いているが,確に時宜に適したものというべきであろう。医師が有する社会的責任というものは重大であるから,その行為は当然正しい医学的知識技能によるばかりでなく,人道的でなければならない。「先生」という敬称を受ける所以はこゝにあるのであつて,名実共に「先生」として値する人格識能を有すべきことは申すまでもない。そして病院に働く医師は,病院の社会的施設としての重大な位置及使命から考えて,特にこの点が要求されなければならない。この点わが国の病院勤務医師について反省されなければならない問題が存在しないだろうか。
 アメリカ医学協会及びアメリカ外科医士院が認証する病院は,病院で診療を行う医師(閉鎖式或は開放式を問わず)は,資格があると同時に倫理的であることが要求されている。病院の施設を利用出来るという特権を持つている医師に対して,病院は倫理的監督を行う権威と責任を持つものであるとしている。従つて,病院の開設者は,倫理的でない医師を任命したり,或は医道に反するような診療を行う医師を病院に関係させて置くことは許されない解である。

短期・長期病院管理講習会

ページ範囲:P.18 - P.18

昭和25年度計画
 厚生省病院管理研修所主催の昭和25年度病院管理に関する講習会は,短期は4月21日から10月3日迄3期間,長期は5月16日から2ヵ月間,左の如く公私立一般病院管理者に対して開催する事となつたが,昨年度は国の開設した病院(厚生省「国立病院,国立療養所を除く」大蔵,文部,郵政,電信等の各省及び目本国有鉄道,日本専売公社所管の施設)及び日赤,済生会,農業協同組合等の各病院については別途各本部宛連絡したが,本年度は同施設も各都道府県衛生部を通じて申込むこととなつた

山口縣の病院の概觀

著者: 山田秀暢

ページ範囲:P.19 - P.26

 昨今の世情はどうやら落着を取り戻しつゝあるかに見える。長い買物行列もなくなつた,列車の乗り降りもなぐり合う必要もない。物価の鰻上りも止んだ様だ。数えれば多くの不愉快なことが次次と改められて来たものだ。すつかり常態に復つたとはいえないまでも,政治の貧困とか"デフレ"か"デイスインフレ"か等と議論するにも嘗ての殺気立つた目の色を見出す程のことはない様だ。
 食べること,着ることの困難は余程緩やかになつて来て居る。ただ住むことの条件はそれ程に好くはなつていない,けれど住むに家がなく死に当面する人々の群を想像することもまずない。従て直接最も多く人の生命に関わる事がらの中,残る問題は"病い"ということになる。この事も公衆衛生の圧倒的勝利を表わすかに日本国民の死亡率は近年にない程低下した。これが死亡率減少の最低だろうと言う風に言う学者も多い程だ。然し全体から見た豫防効果が個々の人々に絶対の生命保障を与えることは至難と言わざるを得ない。

病院に関する用語とその訳語

著者: 島內武文

ページ範囲:P.26 - P.26

Hospital Library 病院図書館
 Librarian 司書

病院給食の現状とその改善

著者: 岩田昌一

ページ範囲:P.27 - P.28

1,病院給食の概況
 昭和23年3月から7大都市の1般病院及び全国の結核療養所,癩及び精神病院の入院患者に対して主要食糧及び調味料等の増配が実施されると同時に病院給食実施指導が開始された。当時病院では戦中戦後の食糧事情等の窮迫のため,戦前実施していた病院食事も実施困難となり,患者は病室内外で自炊するところとなり,病院は雑然として不潔を極めた。又患者は自炊を行うために附添,炊事等の経費に莫大な金銭を要し,患者にとつては入院することが大きな負担であつたわけである。これらの悪い状態を排除改善するためにGHQの絶大な援助の下に食糧増配及び病院給食実施指導措置がとられたのであつた。
 ついで昭和24年5月よりこれらの措置を押し進め全国のすべての病院(10床以上の診療所を含む)にも適用することとし,食糧増配の水準を若干向上せしめ,病院給食実施の躍進的な前進が企図されたのである。以来中央地方庁,保健所の組織を通じてあらゆる機会をとらえて病院給食の関心向上に努めるとともに,講習会,連絡会等を随時開催してその実施方について病院当事者に対し相談に応じ,援助につとめてきたところである。最近とみに病院給食に関する理解が高まつてき,栄養士の雇用配置が著じるしく増加し,施設の新設或は修理拡充したところが漸時多くなつたことは全く同慶に耐えない。

ある病院の思い出より

著者: 久松栄一郞

ページ範囲:P.29 - P.31

I
 今から20年程前,中国のある町にあるキリスト教病院を訪れたことがありますので,記憶と想像をまじえて報告することに致します。と云うわけは,その頃の中国は国民の経済状態も文明の状態も余り恵まれていず,丁度今日の日本の状態に近いように考えられるものですから,或はこんなお話も満更暇つぶしでもないかと思つたからです。
 この病院は,ほぼ町の中央にあつて,1部1階,1部2階建の余りぱつとしないものでした。外来は大きい待合室をかこんでたのしい3ヵ所の診療室と薬局をもつていました。それにつづいて約100床足らずの入院病棟があつたようです。医師は多分英国人だつたろうと思いますが2名で,その他に中国人の医師が1名位いたようであります。キリスト教伝導師を兼ねていたりではないかと思います。従つて病院に営利性などあろう筈もなく,又患者の取り扱いに対して患者と云う1つの名称によつて10ぱ1からげの様な心ない仕草はなく,常に暖い心やりがあふれていたようであります。この宗教にもとずいた医療事業であるだけ,中国人にとつては,砂漠の中のオアシスの観があつたのであります。特に中産階級や貧困階級にとつては,なくてはならないものであり,実に感謝感激の施設であつたのであります。たとえその町在住の日本人の医師達からは.その医療技術のこまかい点,又医療設備に就いては多少の批判があつたとはいえ。

病院における死體解剖

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.32 - P.34

1
 アメリカ医師会においては,毎年その認めたインターン病院の一覧表を発表して会報紙上に掲げているのであるが,その項目中に各病院のベツト数,患者数と並べて死体解剖のパーセンテージという一項目が見られる。これはその病院における年間の死亡数に対する解剖数の割合を示すものであるが100%というのが可成りの程度に見られ,大部分50%以上,30%を下るものは極く少い。
 これに依つてアメリカの病院においては解剖が如何に数多く行われているかゞわかると同時に,一方こうした数字が病院の価値を示す一つの指標として使用されていることに私は多大の興味を感ずるものである。

檢温器の損耗率

著者: 八木辰太

ページ範囲:P.35 - P.36

 病人には検温と云う事はつきものであつて,之無くしては真の診療は出来ないと言つても過言ではない。然るに検温器なるものは最も壊れ易い硝子製品であり,取り落し易い桿状物である関係上,"型あるものは壊れる"と云う古諺の通りに,検温器破損の訴えを聞く場合は極めて多い。然しながら病院主脳部は勿論,破損さした看護婦迄が左程の関心を以ていない様に感じられるが,これでいいのだろうか,今日の様に看護婦の質的向上が叫ばれ,他方物価高と物資の不足勝な折では,取扱い上に適切な指導と,一寸した取扱者の注意により之を防止し得たとするならば,病院の経営上は勿論のこと,看護婦教育上極めて重要なことではあるまいか。
 私は前任地K国立病院に副院長として勤務中本問題に興味を覚え,看護婦に検温器取扱上の注意に就て検討せしめた(林原・看護学雑誌,第5巻第6号参照)。共際調査し得た成績を参考迄にここに引用してみると概ね次の通りである。

洗濯は自家用で

著者: 村山傳

ページ範囲:P.37 - P.38

 作業員がガムでもかみながら鼻唄で仕事をしていてもそれが自然で又楽しく見える場合があります,洗濯作業等も押ボタン或はスイツチ一つ押して置けば洗い上るそれを絞り機械にかけて五分も経てばタライに何ばいもの絞りが出来る,お天気には関係なしに乾燥室で乾いてしまう,その間依然として唄いながらガムをかんでいた等と如何にも愉快な仕事に見えるではありませんか,これは洗濯をする作業員の事ですが,洗濯して貰う方の人は品物(汚れ物)を預けてさえ置けば期日に間違なく立派にアイロンした物が届いていたら外出するにも着る物に心を使わないで済むのではないでしようか,7,8年前のあの汚れた人と着物,戦後も誰を見ても汚れていた日常,乗物の中で又往来でお互が楽しく見合う事が出来たとは云えませんでした。最近少しは皆きれいに段々となつて来ましたがこの現象は布類が出廻つたばかりではなくて洗濯が少しづつ行き届いて来たからです。けれども小ぎれいにしている人は極少数の様に見うけられます,それは洗濯したいにも洗濯代が安くないから一般には着る物をどれもこれも洗濯に出したものという風に行きわたり兼ねる原因があると思われます,それならば如何様すば洗濯賃が安く上るかと申しますと洗濯を自家用で機械化す事に限ります。昔がちもそうですが現今でも人件費が事業では他の何よりも高くつくと思います,それで人手を省いて機械化せば一台の機械が何十人分の仕事を処理してくれるものです。

醫療器械の規格制定(2)

ページ範囲:P.39 - P.44

日本工業規格
外科持針器
1 適用範囲 この規格は医療用外科持針器(以下持針器と呼ぶ)に適用する。
2 種別,外形寸法,材質 種別,外形寸法および材質はつぎのとおりとする。

国立結核療養所の諸統計

ページ範囲:P.45 - P.47

(141箇所の総計)

編集後記

著者: 編者

ページ範囲:P.49 - P.49

 「病院」も発刊以来各方面の御協力,御支援によつて満1年を迎えようとしています。次号第3巻第1号はその意味で増頁の特集号にいたしたいと思つております。
 ちようど殆んど同時に発足した厚生省の「病院管理研修所」も満1年の歩みを進め期せずして一周年記念をむかえております。研修所では現在も長期講習が行われておりますが,いままでにこゝで病院管理の基本となる重要問題についてマスターして地方に帰つた者の数は数百名に上り,それが地方での中心となつて放射状の新知識,新理論が日本の病院の向上に資していることを思うと,僅か1年間の成果であつたとはいえ,大きな足跡を残したものと云えます。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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