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雑誌目次

雑誌文献

病院20巻3号

1961年03月発行

雑誌目次

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医療における患者の心理

著者: 金子仁郎

ページ範囲:P.157 - P.164

病気の社会的心理学的意義
 人間はただ一人で生活しているのでなく,複雑な社会環境のなかで生活しているのである。その背後には家庭,職業,経済,地位などの結びつきがあり,多くの人間との対人関係のもとで生活している。患者といえどもこの枠外へはみ出すことはできない。社会の荒波のなかで傷つき,病み,血と涙を流しているのである。医療にたずさわる者は患者をこのような人間として理解し病める箇所を治すだけでなく,病める人間として治療しなければならない。すなわち患者とは病める人間であり,種々の身体障害だけでなく,病苦といわれるように疼痛や不安あるいは罪悪感のような心理的障害をもいだいている。さらに患者直接対人的にあるいは経済的につながる家族や社会人の悩みがあり,その患者の社会的地位に応じてその病気の及ぼす影響は大きい事を理解せねばならない。
 一人の人間が病気になることはこのように大きい影響を及ぼすだけでなく,さらに病気そのものが社会的心理的環境殊に情緒の影響をうけ,その原因ともなりうることは精神身体医学の実証するところであり,患者の心理を充分に理解せずしては完全な医療を行ないえない。

国際病院連盟の病院視察旅行に参加して(Ⅲ)

著者: 村田三千彦

ページ範囲:P.165 - P.171

The Clinical Center,National Institute of Health
 メリーランド州のBethesdaに在る,厚生教育省の衛生研究所の臨床センターを,9月16日に視察した。
 会員が,バスで到着すると直ちに,劇場のような立派な一階の講堂に着席した。数グループに別れて,壇上の万国旗の前に並んで写真をとる。各国の代表1人ずつのグループの写真もとり,これには日本からは,橋本日本病院協会長が加わつた。

アメリカ病院協会第62回年次大会と国際病院連盟視察旅行とに参加して(Ⅲ)

著者: 平賀稔

ページ範囲:P.173 - P.176

 1960年9月3日夜United Air Linesのプロペラ機で,San Francisco空港を出発,途中Oakland, Salt Lake City, Denver, Omana, Chicago, New Yorkを経て,9月4日午後Bostonに到着,5日午後,Sheraton PlazaHotelで,視察旅行参加を登録した。ヨーロツパ各国を主とする34カ国215名にのぼる参加者一同は,ここに初めて一堂に相会した。夕方,7時30分同ホテルの大広間でReceptionが行われ,会するもの一同cocktailの杯を重ね,夜の更けるを知らず,会食し,且歓談した。国際病院連盟会長Dr, Romain De Cock (ベルギー),副会長としては,Dr.Edwin L.Crosby (米),Mr.E.F.Collingwood (英),Mr.E.J.Faucon(仏)の3氏,事務局長Dr.J.C.J.Burkensの諸氏が顔をつらねた。9月6日,視察旅行の日程は開始されたが,公川語として英語,仏語が用いられるので,それぞれの両班にわかれ,且参加者の実情に応じて,スペイン語もこれに加えられた。一行は5台の大型バスに分乗し,800キロ,2週間にわたる米国東海岸視察の旅程についたのである。
 以下順を追つて,その日程を記すこととする。

第11回日本病院学会演題募集

ページ範囲:P.176 - P.176

開催日時 昭和36年5月18,19日
会場 東北大学川内講堂

病院従業員の労働時間短縮問題

著者: 遠藤保喜

ページ範囲:P.187 - P.191

I.まえがき
 本年10月初旬,東京地方医療労働組合連合(以下東京医労連と略称)傘下の組合に発生した病院争議は,11月1日の東京医労連7組合7病院4診療所のストとなり,その後さらに全日本赤十字労働組合連合会(以下全日赤と略称)の全国的規模における統一争議へと発展し,あらゆる報道機関もこれを一斉に取り上げ,12月5日開会された特別国会でも,病院争議が重要な審議の対象として論議されるなど,今回の病院争議は,かつてない程の社会問題となり,さらに政治問題とさえなつているが,なお解決に至らない現状である。
 今画の病院争議の中心が,賃上げと労働条件の改善に在ることはいうまでもないところではあるが,組合側の掲げている要求項目の中に「労働時間短縮と人員増加要求」とがあることは,今後の組合運動の方向を考える上に見逃すことのできない重要な問題ではないだろうか。本稿においては,この医療従業員の労働時間短縮と人員増加要求の問題を取り上げてみることとしたい。

病院採算管理の課題と目標—病院採算管理論序説

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.193 - P.199

I.病院の置かれたジレンマと採算管理の課題
 今日程病院事情が切迫し,苦難の様相を露呈している時代はない。一体,それは何に由来するのであろうか。
 今日の病院を見ると,其処には二つの課題が課されているように思われる。その一つが,「出来るだけ高度且つ広範な医療サービスの供給」という,病院の基本目的に関するものであることは言うまでもない。近来,医学の進歩は特に目覚ましいものがあるが,そうした医学の達成し獲得し得た限りのものを真に実現出来る場所は,病院を措いて他にはない。この第一の課題である人々の生命と健康を擁護し保全するという病院本来の使命が,社会的に何物にも替え難い重要性を持つものであることは多言を要しないであろう。

病院事務長の権限と職務について—病院事務長に関する調査研究(Ⅱ)

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.207 - P.217

 1゜事務長の分掌規定は,院長補佐,事務部の統括,業務の連絡調整などであつて,いずれの病院にあつてもほぼ同様の内容であつた。
 2゜その専断権限範囲となると,施設ごとに若干のちがいがでてくる。慣例あるいは院長,開設者との関係がどうなつているかによつて影響されている。
 3゜院長からの権限委任は,物的管理についてはその程度が大きいのに対し,医師,看護婦の人事については,少ないことが知られた。
 4゜他職種,他部門との関係で,最も多くのトラブルが生じる事項は,医長とでは設備機械購入,組合とでは給与・手当,総婦長や院長とで人事問題などであつた。
 5゜事務長が議長となる事務会議は,全体の20%以下の病院でしか開かれていない。また,管理全般にかんする会議は非常に多種類であるが,事務長は議事の書記的立場にあるばあいが多い。
 6゜日常業務で事務長が最も苦労する事項は,診療収入関係及び人事関係であり,最も時間を費やすのは総務的仕事である。未収金問題,医師や定員不足,資金調達などが困難に感じる事項であることが知られた。
 7゜事務長は,その職務遂行上,責任感,経験が最も必要である,という意見が多かつた。
 8゜事務長が成功した企画は,主に施設的な面であり,人事,経営管理の面では,やはり大きな困難にぶつつかている病院が多いことが知られた。

わが国における病院の公衆衛生活動の現況とその考察(そのⅡ)

著者: 吉田幸雄 ,   岩佐潔

ページ範囲:P.219 - P.228

 前回報告しました病院の公衆衛生活動に関する調査原票を此所にのせます。
 それは一つには,今後各担当者が調査結果について報告を本誌に記載する予定にしていますが,その調査結果の御理解と御批判との資とするためであります。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.232 - P.232

 いよいよ陽春3月を迎えることになりました。今冬は殊の外寒さがきびしく,どの病院も御苦労の多かつたことと存じます。それにつけても,医療費の値上げが決定せず,病院経営は非常な苦境に立たされ,春まだ遠しの感が深いことはお互いに困つたことです。

グラフ

病院の事務用機器

ページ範囲:P.177 - P.184

 第7回日本病院学会総会の第2会場として,病院管理研修所に病院用品などの展示会が開かれ,大講堂に,病院事務用機器や用品が沢山展示されたことを思い出していただきたい.
 ところが,昨秋こんな噂が耳に入った,「病院さんでは,近代的な事務用機器には一向に振り向いては下さらない,旧式人物の吹き溜りか病院でしょうか.」というのである.これには恐れ入った.やがて,病院にストか起って賃上げ闘争があちらこちらで展開されて,天下の耳目を奪った.ある会社から,筆者に電話がかかった.「病院の賃上げストは大変ですね.事務の人手ばかり多く,無駄をしているんですね.それで,一人当りの賃金が低いんですよ.」商売人にしては気概がある物の言い方である.「病院経理には,手前共にも対策があります.自信があります.」という.

座談会

アメリカ病院管理者学会について

著者: 吉田幸雄 ,   L. Sutley ,   小西宏 ,   守屋博 ,   落合勝一郎 ,   石原信吾 ,   T.Prentzel ,   小篠暉

ページ範囲:P.200 - P.205

 吉田 それではきようの座談会は,雑誌「病院」の主催ですが,わずかな時間ですが,最初に米国病院管理者学会(American College of Hospital Administrators)の組織をどうして作つたか,それの目的,そしてその歴史について少し話していただきたい。次にプレンツェル氏から,いまどんな活動をしているかを話していただくことにしまして,それを読者にお伝えするという形式ではじめたいと思います。
 サットレー ただいま私は,米国病院管理者学会を代表して日本を正式に訪問しているわけであります。それで,両国間のアドミニストレイト——病院管理——をしている人と一緒に自由に話し合つて,両国の間の協力と親善とをはかりたいと思つているのです。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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