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雑誌目次

雑誌文献

病院20巻7号

1961年07月発行

雑誌目次

特集 病院労務管理

病院労務の問題点

著者: 三原七郎

ページ範囲:P.475 - P.482

 病院の労務管理を合理化せよといわれる。それならばいつたい具体的にはどんなことを意味するのであろうか。管理学という学問的立場からは多分様々の観点なり方途なりがあるのであろう。しかし,現場でその衝に当る者にとつては必ずしも容易な問題ではない。それについての解決策などということになるとそれは私の能力の外にある。これは,或は愚痴といつていいかもしれない。ともかく常日頃,自分の肌で感じている問題点というようなものを少しだけ採り上げてみたい。
 私は平生から医療労務の特性として次のようなものを考えている。

病院争議の合法性の限界

著者: 宮沢源治

ページ範囲:P.503 - P.505

 昨年6月頃から行われてきた一律3,000円,最低保障10,000円要求の医療労働者の統一闘争は,年末闘争のころには,全国的規模に発展し,病院企業のゼネストにまで発展する様相をおび,社会問題化するに至つた。
 政府は病院争議のおよぼす社会的影響の重大さを憂慮して,昭和35年11月11日労働省労政局長通達「病院等の医療事業における労使紛争の処理について」の形で,労働行政の立場から,病院労働争議に対する当局の態度を明らかにした。つづいて,同月18日には,厚生省が労働省側の考え方を医療行政に結びつけて,医務局長通達「病院における争議行為について」という標題で,病院労働争議に対する厚生省の公式な見解を明らかにした。

国立病院・療養所の給与体系

著者: 遠藤保喜

ページ範囲:P.507 - P.523

I.基本法規
 国立病院,療養所(以下国立病院という)の職員は国家公務員であるため,国家公務員の給与関係法規の全面的な適用を受ける。
 したがつて,国家公務員給与関係の基本法である「一般職の職員の給与に関する法律」(以下給与法という)及び同法に基づく人事院規則,細則,指令,運用方針その他の関係規程,通達によつて給与(以下,本俸を給与といい,本俸以外の給与を諸手当という)が定められるのであるが,この資料では給与の決定を主として述べることとする。

肺結核患者の要望事項について—過去5ヵ年間,32回の患者側要望項目の分析

著者: 小林信三 ,   大崎康二

ページ範囲:P.524 - P.529

まえがき
 肺結核に対する外来治療(自宅療法)の可否は,現在なお,とかくの議論がなされているが,少くとも,入所療養に利点があるとするならば,それは,第一に,入所によつて得られるであろう肺結核という病気の正しい知識と,正しい療養態度を身につけることができるという点,第二には,自宅では不可能な適切な栄養療法を受け得るという点,第三は,嗜好の是正(食餌の好き嫌いが少くなる,また,酒,たばこをやめることが出来る)等が大きな効果であろう。
 しかしながら,一方においては,肺結核患者は病気の性質上,入所期間が長く,一部の重症患者を除いては,自覚症状も少く,退屈されるのが実状である。したがつて,とかく精神的に「あせり」を感じ,療養に専念できない場合が出てくるわけである。であるから,療養所側としては,診療,看護の面はもちろん,給食関係,施設関係,環境衛生,さらに,娯楽関係などについても,常に患者側の要望,希望を聞き,できうる範囲で,患者の療養生活に「うるおい」をもたせるよう努力すべきであろう。

外来患者の来院動機の調査

著者: 永沢滋 ,   高橋政祺 ,   中村晃

ページ範囲:P.531 - P.538

 診療圏の研究は昭和31年に厚生省が山口県,和歌山県,山形県で行つた調査を解析した島内等1),喜多村2)および三宅3)の報告があり,その他にも岩佐4)額田等5),吉武等6)および御園生7)の発表がある。また昭和33年には全国の社会保険病院が外来患者,入院患者についてその来院動機の調査を行い,病院がいかなる患者によつて利用されているかについて,小島米吉8)および小島博9)が報告している。
 病院管理上その診療圏を知り,またその患者がどのような理由で病院を選択したのかを知ることは必要であり,かつわれわれのように近く病院を大改築する予定の場合はその基礎資料としても重要である。

看護婦のおき方について(Ⅰ)

著者: 清水重喜 ,   吉田幸雄

ページ範囲:P.541 - P.544

 看護要員をどうおくかということは,わが国の病院管理合理化の最も大きな問題である。このことは矢張り世界中で問題になつているので,世界保健機構が看護婦のおき方の指導書を作製するために,Suggested Guide for Staffing a Hospital Nursing Ser-viceという草案を作り,昨年小西宏氏のところへ送つて来た。それを清水氏君に飜訳して貰つたので,わが国の病院看護婦の適正数算定の際の資料として提供するために掲載したものである。広くこれが実験され,さらにこの方法が改善され,日本式の適正看護婦算出法が生まれることを期待するものである。

座談会

病院の人間関係

著者: 吉田幸雄 ,   横山定雄 ,   石原信吾 ,   鈴木敦省 ,   浅井一太郎 ,   古屋暁一 ,   橋本説夫 ,   原素行

ページ範囲:P.484 - P.492

世間の非難を浴びた労務管理の後進性
 吉田 きようは大へんいそがしいところをありがとうございました。
 さて昨年来病院ストという問題が,だいぶ世の中を騒がしました。この病院ストの原因はいろいろございますが,その批判の一つに,病院の労務管理が旧時代的である。あるいは前時代的である,という声があります。

グラフ

風致地区に市民病院が建つ

ページ範囲:P.495 - P.502

 市民病院が計画されるとき,旧来の病院開設者は,人家密集の市街地を選定して,庶民の便を図った.なるほど,病院通いには便利であり敷居も高くない方がよいとして,街路に直接に玄関が設けられて,庶民の味方のつもりになっていた.旧式な日本病院思想は,ドイツ語でKranken Hausといいながらもこのような病院を創造して,病院が「患者の家」であることを見おとしていた.
 横浜市衛生当局は,市内保地ケ谷三ツ沢風致地区に市民病院が建てて,旧来の病院観に革新の涼風を送った.不便な土地に外来患者が集まるかしら,と言えば,病院の使命は入院施で,一般外来は付け足りだと市当局は答えたという.まことにわが意を得た.

ニュース

病院管理研究所開所式

著者:

ページ範囲:P.538 - P.538

 丁度12年前の6月1日,国立東京第一病院の片すみで,孤々の声を挙げた病院管理研修所が,増大する科学的病院管理の要請の声に応えて,新しく「病院管理研究所」として,改組発展をはかる事となり,その門出を祝う開所式が,来賓,関係者を多数集めて,去る6月10日研究所大講堂に於て開かれた。
 昨年来,一般世論の注目を浴びた病院のストライキを一つの契機として,日本の病院経営管理の遅れが,改めて各方面から指摘され,創立以来少数メンバーによるとは云え,着実に努力をつみ重ねて来た研修所の役割に期待する声は甚だ大きなものがあつた。これに対処するには研修所の組織人員では限りがあり,その組織の拡充は多年の要望であつたが,ようやくその実現の第一歩として今年度政府予算に計上されたが,国会の審議の遅れなどで,ようやく6月1日付をもつて正式に2部3室より成る11人の研究員を持つ研究所として発足する事となつた。

給食業務の工夫

防鼠防蠅,他

著者: 国立山口病院

ページ範囲:P.546 - P.546

実施方法
 鼠について強力クマラン顆粒を戸棚の裏とか,天井裏等に常時備えつけた。又蠅も食品の出入口には繩のれんをさげると共に,天井の蒸気抜きにまで防虫網を新期に取付け,又病院内を六地区に分け各地区を3日おきぐらいに消毒(DDT撒布)

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社会医学研究会第2回研究発表会について

ページ範囲:P.547 - P.547

 国民皆保険,医療制度の改善,保健所の型別再編成等々,医療保障や公衆衛生に関係ある問題が,今や社会的に大きな関心を呼んでいます。公衆衛生学会でも数年前から,分科会の一部としてあるいは討議会としてこのような課題がとり上げられるようになり,また医療保障の自由集会も年々盛んになりつつあります。
 学会という形式ではありませんが,実地医家が個人的にあるいは医師会等の組織を通じて医療問題や健康保険について盛んに発言されていることも周知のとおりです。多くの社会科学者が経済政策や社会保障の立場から保健医療の問題に強い関心を示しているのもこの頃の特徴といえましよう。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.548 - P.548

 7月1日を期して医療費を値上げすることが政府の方針であつたが,幾多の問題がからんで難行し,今後の見通しは未だに不確定の状態であることは実に遺憾なことである。
 さて本号は,病院の人事関係の問題の特集としました。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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