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雑誌目次

雑誌文献

病院21巻12号

1962年12月発行

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グラフ

研究所をそなえた精神病院—精神医学研究所附属東京武蔵野病院を訪ねて

ページ範囲:P.9 - P.16

 病理学者故川村麟也氏が精神医学の総合的研究の必要を痛感し昭和18年精神医学研究所を設立,旧東京武蔵野病院を付属病院として本病院は誕生した。現院長は上田守長氏。
 現在,外来を訪れる患者は,精神,神経科外来を中心に日に50名を越える。病室は一部内科用をのぞいて,精神科,神経科の患者にあてられ,患者の活動はなかなか伸びやかで,よい効果をあげている。

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患者と病院職員との人間関係

著者: 金子敏輔

ページ範囲:P.17 - P.21

病院医療の性格
 患者と病院の職員との人間関係問題を論ずるにはまず始めに近代病院の姿,つまり病院の目標,その機能を充分把握しておくことが前提となる。すなわち,近代病院は公共的社会的医療のサービス機関であるから医療を中心とした近代的サービス観念があらゆる立場で現われなければならない。近代病院は複雑な組織の下に管理経営が行なわれ,医療をある水準に保ちそのための設備を完備し,患者の病気を治し,それは救命的治療から生命延長,痛みの緩和,身体機能を回復し,患者や家族に満足な医療を与える場所であるから,医師,看護婦,管理及び他の職員全体の近代的サービスのあり方が発揮されなければならない。従ってそれは専門職業的,プロフェショナル・サービスのあり方を認識して行なわれるのである。また専門職業的ナービスが発揮されることは病院医療機能を保つ重要な意義があり,医師団,看護婦団だけの医の倫理,看護倫理でなく,事務,技術職員全部を含めた病院職員倫理が近代的サービスの根底をなし,患者との人間関係に深い関係があることが滲透しなければならない。
 病院の人間関係を論ずるには,どうしても医療の病院職員倫理を根元とした患者へのサービス観がにじみでなければならない。つまり病院管理経営は倫理的概念によらなければ病院医療サービスの水準が保たれないし,発展が期せられない。

一社会学徒の見た病院—S病院における戦後の制度的変革と実態を中心に

著者: 姉崎正平

ページ範囲:P.23 - P.28

I.はしがき
 筆者が社会学を勉強する立場にある関係上,上記の様な題にしてみたが,結局は「素人の病院見学印象記」という事にほかならない。極めて偶然の機会に病院乃至は医療制度について社会学的方面より勉強してみないかと勧められ,"百聞は一見に如かず"と一年間にわたりS病院見学の便宜が与えられた。筆者は元来丈夫な方ではなかったが,幸い病院の御厄介になる程の事もなく今日に至ったし,医学に興味を覚え,医者になろうと思ったこともなかったので,この方面についての問題意識や知識は限られたものであった。
 先ず医師の間で取り交わされる言葉も分らず,看護婦さんの包交介助について行って,『ガーゼを取って』といわれても,手で取っていいのか否か分らず,『鋸子で』といわれても鋸子なる物が分らず途惑った。又看護婦さんの中には自分達の職業を世間がどう見ているかという事に関心の強い方も多く,看護婦になるためには高校卒業後3年間の専門教育を受ける事,深夜勤のある事,そして患者さんの生命を預かるこれ程尊く大変な仕事をしている事を世間の人達は知っているだろうか,又看護婦について偏見をもっていないか,筆者自身は病院に来る前どうだったか,という質問に何度か出会った。

病床利用率の限度について

著者: 永沢滋 ,   高橋政祺 ,   中村晃

ページ範囲:P.29 - P.33

はじめに
 病院の病床利用率は80%以下でなければならないというのが定説になっている。これは病院管理学の教本であるMacEachern1)の著書にも「病床利用率は70〜80%が安全で有効な医療の限界であるということに意見が一致しているようである」という表現で記載されている。そしてその理由として,「それ以上になると医師,看護婦,その他のサービスが,仕事の過重,空間の制限,設備や材料の酷使などのために効果的でなくなる。また病院が混雑していると感染の危険が増し,患者の必要とする医療を与えることが困難になる」ということをあげている。しかしそのあとに「最近では病院が過剰収容にも拘らず高い水準を保っているのは驚くべきことである」と言っている。
 たしかに満床にすると性別による室の区分とか重症者の隔離などの操作がむずかしくなる。しかしそれだからといって80%という数字にどういう根拠があるか,その説明が不足である。たとえば90%や70%ではどうしていけないのだろう。始めから病院の病床は80%の利用率で運営すべきであるという前提があって,その80%分の入員と設備を用意しているというのなら話が分かるが,もしそうでなく全病床が満床になった時に充分な診療が行なわれるような用意をしてあるのならば,これは非常にむだなことだといわなければならない。

病棟の構成計画(Ⅱ)—看護単位のBed数

著者: 小川健比子

ページ範囲:P.35 - P.37

 本論文では,1看護単位の持つべき合理的Bed総数と,これに含まれる病室の種類と,その夫々のBed数の算定を試みようとするものである。
 先に発表した「病棟の構成計画(I)」(本誌21巻11号)において考察して来た様に,1看護婦の約8時間の勤務時間中に,如何なる業務のために,如何なる室に,幾回入出室し,そこで幾何の滞在時間を費したかを見ると共に,更にそれらが,病室の種類によって相違している状況を考察した。この重症個室,不自由患者室,個室,2Bed室,4Bed室或は8Bed室等の内部で,看護婦が何らかの仕事の目的で,幾何かの滞在を余儀なくされたのは,つまりは病室それ自体の中に,看護婦に対してそれだけの要求を持つ患者が存在することを意味しているわけである。すなわち,夫々の病室における看護婦の実態が,結局,各病室における患者の実態を反映していると見てよいと思われる。

代表登録番号制(Rep.No)によるレントゲンフィルム中央管理について

著者: 塩見二郎 ,   小神俊彦 ,   山本義重 ,   多田隆義 ,   神野行幸 ,   山下宏 ,   大川進 ,   香西ツエ子 ,   中山靖子

ページ範囲:P.39 - P.47

 代表番号(Representative Number)を,仮称Rep.Noとする。

精神科病棟の開放管理のために—国立肥前療養所環境衛生規程

著者: 岡部重穂 ,   江越春樹 ,   平野源次

ページ範囲:P.49 - P.55

まえがき
 われわれの国立施設は,全国に4箇所あるその一つで,九州の穀倉といわれる佐賀平野の山麓農村地帯にあり佐賀市から16kmの地点にある。療養所の敷地29万m2,定床473の精神科施設である。
 この施設は前所長,伊藤正雄氏のとき,昭和31年11月頃開放病棟管理の運営をはじめた。そのために,医療体系はつぎつぎに脱皮して,新しい医療チームの編成がなされていった。それにつれて所謂開放された患者は,治療社会ならびに,地域農村に出歩くことになったわけである。これらの患者の出歩きに対して,病院内及び地域社会の環境衛生的顧慮が,あらためて討議されることになった。昭和34年2月9日に所長は,当施設の環境衛生の新らしい検討と内規作成方を診療会議に付詫した。診療会議の討議に提出する草案は,従来どういうふうにやっていたか,そのままを記載し,それに従って,誰が,何時,何処で,どういう方法で,その責任の所在,報告すべき上司,残すべき記録などの各項について,方法論的に最適なもの,衛生行政六法,防疫必携などを照しあわせ,保健所にも問合せて,できるだけ資料を集めて,各委員会ごとに刷らせて,現況に最も適した実際に行ないうる方法が検討された。実際に開放に踏切って3年を経過しているだけに,従来の環境衛生の在り方が衛生の名に価いしないものであったかを,その都度,印象強く感じた。

病院洗濯の問題点(Ⅱ)—業務の基準化と管理方法

著者: 佐々木澄夫

ページ範囲:P.57 - P.65

 洗濯業務の能率が思わしくない場合の原因については種々考えられ,施設の立地条件,機械設備,洗濯従業員の待遇,対人関係の不調和など複雑な原因があると思われるが,能率のあがらない原因を大まかに分けると,機械等の洗濯設備と消耗品の充足状況関係のものと,洗濯従業員及び関係従業員の形而上的な欲求不満あるいは洗濯技術が十分でないこと等があると思う。この三要因は勿論何れかの要因単独で,原因となっている場合と,さらには三要因がそれぞれからみ合っている場合がある。病院洗濯においてはむしろ後者の場合が多いのではないかと思われる。
 拙著「病院洗濯の問題点(1)」(本誌21巻11号)において述べたように,国立病院における洗濯生産量については,患者1人1日平均洗濯量は360gであって,目標量の500gを下廻っている現状にあり,また洗濯物1kgに費消した洗濯原価は,クリーニング業者の洗濯原価に比較して,小規模病院については決して低額であるとはいえない状況にある。従って洗濯生産量が上らない原因を分析し,それに適応した対策を打ち出すことは,病院洗濯の当面した課題であると思われるので,洗濯業務の基準化と管理方法について以下具体的に述べてみたい。

十進分類法による病院備品の分類と管理について

著者: 永沢滋 ,   井上昌彦 ,   平野栄次

ページ範囲:P.67 - P.77

病院備品分類の目的
 病院運営のたあに必要である備品を,合理的にしかも能率的に維持管理するためには,資産維持の点からも適当な分類が行なわれていることが必要である。
 病院業務が,診療部門および検査。調剤・看護・給食等の診療補助部門の外に保清・リネン・機関等のサービス部門や,研究教育部門をも包括しているので,病院において使用される備品は,その規模の割合に種類が非常に多く,随ってその区分が複雑であるのは当然である。

質疑応答

著者: 一条 ,   小川

ページ範囲:P.91 - P.91

室料差額
 問 室料差額の定め方についておうかがいしたい
(都下某病院)
 答 最近,患者収容設備が高級化し豪華なものがあらわれて,これに対して室料差額を特別に徴収するものが少くなくなりました。しかし病室利用料金の定め方としては特別に理論的な基準というものはないように思います。参考までにホテルの室料の定め方の一例を御紹介しますと,

研究所便り—病院管理研究所

著者: k.k.

ページ範囲:P.92 - P.93

 窓外に木枯しの吹く12月を又迎えましたが,研究所も新発足以来足かけ3年目を迎えようとしています。
 今年は研修を12月一杯で消化する様に,スケジュールを組み12回の期9日間研修(対象病院長3回,医長2回,事務長4回,総婦長2回,開設者1回)と,一ヵ月の研修科1回,新しい試みとして専門コースとも云うべき,人事管理ゼミナール1回を開催しました。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.94 - P.94

 いよいよ本年も残り少くなってしまいました。この一年間をふり返って見ると,矢張り例年のごとく苦労の連続で,本当に患者さんの皆さんに心ゆくお世話ができたようにも思われず,職員に対しても無理をしいて来ねばならなかったようです。病院は,患者さんへの無限のサービスをしなければならない本質的な宿命があるからでもあるが,もう少し病院管理者の努力の甲斐のある条件が与えられてしかるべきでしょう。
 毎年暮となるとこのようなグチが出るのでなさけなくなります。しかし明年に希望を持ちましょう。われわれの努力は十分以上であったのですから…。それはそれとして使命をはたした満足感を持ち,新たな年への決意を固あましょう。

「病院」 第21巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

第12回日本病院学会専門集会 看護専門集会

病院看護婦の行なうべき看護業務

著者: 金子光 ,   内田卿子 ,   壁島あや子 ,   中鉢美津子

ページ範囲:P.79 - P.88

 金子(司会)今回私どもは短い期間に「病院勤務の看護婦が行なうべき業務は何んであるか」ということをはっきり打出すことが出来たら幸いであると思いまして,努力をし勉強いたしました。この勉強をするについて,実際問題としてまず行なったことは,全国129施設にアンケート形式による調査表を出し,110施設から回答を頂きました。
 アンケートの内容は大きく分けまして,内科系,外科系を含めた成人看護と未熟児看護を含めた小児看護,それから夜の勤務の中のとくに午後10時から午前5時までの深夜業務で,以上の3つの分野にしぼって看護業務の分類を大小の項目の何百かに分類いたしました。そしてそれについて施設側の御意見を頂いたわけでございます。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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