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雑誌目次

雑誌文献

病院21巻2号

1962年02月発行

雑誌目次

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病院と他の機関との連繋—わが国における病院の公衆衛生活動の現況とその考察(Ⅸ)

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.86 - P.92

はじめに
 病院は,地域(または特定集団)の公衆衛生活動にとっては有力な存在となるべき機関であるが,病院が独自で活動するよりも,その地区の保健所はもちろん,開業医または診療所,あるいは他の病院と連繋した活動をすることにより,その活動はよりその地域にとって効果的な公衆衛生活動を行ないうることは当然である。
 しかるに,これらの保健関係機関との連繋方式については,日本のいかなる地域でも,日本の現在おかれている歴史的な背景や医療制度のあり方から,理想的な機構がまだ定型化されたところがないように見受けられる。しかしながら,病院の公衆衛生活動は,時代の要請でもあるから,必ずしもその協力組織が意識して確立されていないにせよ,保健所,病院,開業医の連繋が何らかの形で,有無相通じようとしている自然な現象が皆無ではないものである。

病院給与の諸問題

著者: 遠藤安喜

ページ範囲:P.109 - P.117

まえがき
 病院争議が社会の関心を高めてから,すでに1年余を経過したが,この争議によって病院従業員の給与については,幾多の問題をはらんでいることが明らかにされて来た。
 争議の結果,相当額の賃上げが行なわれては来たが,依然として問題は残されているようである。

手術室気侯の手術患者に及ぼす影響

著者: 田村政司 ,   小林八重子

ページ範囲:P.119 - P.121

 閉鎖循環式麻酔が普及するにつれ,手術室の対爆設備については注意が向けられたが,手術室の気候環境については,なお等閑に付された感がある。
 私たちの手術室は,地理的条件のためか,その構造上のためか,初夏より初秋にかけて高温多湿で,閉鎖循環式エーテル麻酔で肺切除を行なつていると,時として全身に発汗している患者のあるのに気づいたので,手術室の室温および湿度と肺切施行中の患者の体温の変化とを比較して見た。

WHO看護管理セミナーに出席して

著者: 細貝怜子

ページ範囲:P.139 - P.140

 去る10月16日から28日まで東京で開催されたWHO西太平地域主催の看護管理セミナーに,看護学校をもつ病院の総婦長という立場で,日本代表の一人として参加する機会を与えられました。会議内容のくわしいご報告は抜きにして,私の感想を申し述べたいと存じます。
 13ヵ国から看護業務や看護教育にたずさわる看護管理者が代表として29名,それにWHOの顧問や,オブザーバーを加え,総勢40名が参集しました。WHO当局はじめ厚生省の協力のもとに多くの人びとの助力で準備も万端整い,終始円滑な会が運営されました。

WHO看護管理セミナー(全訳)その1

著者:

ページ範囲:P.141 - P.145

WHO西太平洋地域・看護管理セミナー報告
グループ報告の要約と四つの主題についてのまとめ
 「病院」1月号で,このセミナーの中心課題となった四つの焦点と,13カ国からのセミナー出席者をご紹介した。今回は,細貝総婦長の印象記にひきつづき,四つのグループで討議され,提出された報告の要約を,日を追って紹介し,さらには四つの主題について,このセミナーで確認された事柄をそのまま順次当誌に発表して,今後日本において看護管理の問題を検討し,応用し,発展してゆく上の指針にしたい。このセミナーにおけるグループの討論は,各グループメンバーの一員が議長となり,また書記も選ばれ,進行される議事の記録がとられた。WHO顧問はグループの中で討議される内容の調整,あるいは議事のリードなどを配慮され,さらに四つのグループの報告が提出されると,その顧問団が,それぞれのグループの記録を全部総合して,経過報告として,全員集会の時に発表された。

第12回国際病院会議(2)

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.147 - P.149

患者管理
 フランスのモーミー博士はオージャルー博士に代わって,患者の変わりつつある特質を三つの点から論じた。
 1.病院に来る患者のタイプの変化 2.罹病率の型の変化 3.医学の変化である。

研究所便り

著者: 病院管理研究所

ページ範囲:P.155 - P.156

 この雑誌が皆様のお手もとに届く頃には,昭和37年度研修計画に基づく研修生の募集が,各都道府県衛生部を通して参っていることと思いますので,研修ご希望の向きは,適当な回を選んで衛生部経由のうえ,申し込みいただきたいと思いすま。
 昭和36年度に実施いたしましたのは,開設者を対象としたもの1回,院長を対象としたもの3回,医長を対象としたもの2回,事務長を対象としたもの4回,総婦長を対象としたもの2回,計12回それに長期研修科1回でありました。

質疑応答

著者: 林正直 ,   佐分利 ,   矢口親正 ,   岩中 ,   岩佐 ,   金子

ページ範囲:P.157 - P.158

夜間勤務者の責任分野
 間1夜間における庶務宿直,医師宿直,夜勤婦長の責任分野はいかにあるべきでしょうか。
 夜間における庶務宿直,医師宿直,夜勤婦長の責任分野が如何にあるべきかについては,個々の病院の立地条件や,所属する経営主体の別によって特殊性が加味されることもあろうし,その病院の内部組織にもとづく所掌業務の区分によって,夜間の業務範囲が決められることになろう。

座談会

金の生かし方

著者: 吉田幸雄 ,   石原信吾 ,   本間五郎 ,   小野肇 ,   守屋博 ,   荘寛

ページ範囲:P.93 - P.107

■虎の門病院で図書費を拡充
 司会(吉田)お忙しいところ大へんどうも……。きようの話題は金の生かし方という病院経営でいちばん苦心を要する課題を中心にお話を願うことになったのであります。申し上げるまでもなく,病院というものは利潤を追求するところではなくて,患者のために医療を提供するのが本来の仕事であるわけです。従って病院の財政問題というのは,患者からいただいた金を,いかにうまく使ってそれを患者または患者の世話をする職員に還元するか,ということにあるのではないかと思います。そこで,はいってきた金を上手に使うことによって患者の利益もはかれますし,また合わせて経営も安定するのじゃないかと思います。で,実はこの問題を取り上げた理由は,病院によって非常に金の使い方が消極的であって,なるべく使わないように使わないように考える。すべてただ節約を1本にして経営をしようと,もちろん入るを制し出ずるをはかるのが原則であるとは思いますが,出るを制し過ぎてしまって,かえって本来の機能を低下させては患者のためにもならんし,また経営を支える周囲にも影響する。こういう結果も生じてくるのではないかと思うんであります。

第3回短期人間ドツク研究会抄録

短期人間ドツク検査成績—ドック質問表との比較,他

著者: 石黒治 ,   鷲野昌夫

ページ範囲:P.123 - P.127

 今回は昭和35年11月から昭和38年8月までの実施人員129名の検査成績について,ドック質問表の主症状と比較検討してみた。
 質問表で異状ありとしているもの29名,健康としているもの50名。被検者の年令別では40〜50歳代が全体の88.4%を占め,女子は7%に過ぎない。また質問表中の至症状ならびに精査希望箇所に関しては,胃腸系24.7%,循環系20%,呼吸器系18.8%,肝28.2%,神経系8.2%であった。

グラフ

小田原市立病院見学—中都市の地区基幹病院のモデルケース

ページ範囲:P.129 - P.136

 昭和24年,神奈川県医療機関整備審議会は,小田原市に,地区基幹病院の設置を期待すると決議した。一方,小田原市民の間には,昭和15年市制が布かれた当時から,市立病院の設置を希望する声が高かったという.
 これらの情勢に応えて,市当局は,昭和32年4月,総合病院の建設に着手し,35年4月,その第2期工事の竣工によって,病床230の小田原市立病院が完成するに至った.この病院を,ひとことにして評すれば,新しい酒は新しい皮袋へ,ということわざの現実化である.このことは,日本の病院の世界では,なかなか行なわれ難かった問題の一つである.

固定欄 看護管理

拾い話し(4)

著者: C.T.

ページ範囲:P.151 - P.151

ある高等看護学院の教務主任と学院を持たぬ病院の総婦長の対話
 ◎家の卒業生が,お宅で何人か働いているけれど,どお?実習病院と違って,なかなか慣れるのに苦労するんじやないかと心配しているんだけれど……。
 ◎ええ,苦労しているようよ。とても一生懸命に努力はしていてくれるんだけど,何しろ周囲が相変わらずでしょ。だから,私がはげましたりするぐらいでは,だんだん効果がなくなって,2年もしてもうアキラメちゃったような顔付きをされるんで,その顔を見るたびに,私の胸が痛むのヨ。この頃は。

人事管理

病院ストの諸問題点(2)—ストの際の賃金の不支払いいわゆる「賃金カツト」について

著者: Y.I.

ページ範囲:P.152 - P.153

 前回は病院ストの問題点の一つとして,保安要員のことについて述べましたが,今回は案外知られていない賃金カット——実際にはあちこちの病院で,裁判問題やら不当労働行為の問題などになって,ほとんど係争中になっていますが——について触れて見たいと思います。これも一般産業にあってはほとんどルールになっているようで,病院ほどの騒ぎもないようでありますので,病院ストの特色の一つといえると思います。賃金カットについて係争中の病院の方は,すでにじゅうぶんご研究になっていられることでありましょうし,ここに申し上げることは,はなはだ常識的なことであって,ご不満な感じを抱かれることと思いますが,一応この欄では問題点の指摘程度と考えておりますので,あらかじめご了承を願いたいと思います。

特殊病院

特殊病院について(4)

著者: N.H.

ページ範囲:P.153 - P.154

 さきの号で述べたように,国立結核療養所は,結核病院の中では大きな部分を占めており,その在り方如何は結核病院全体に与える影響も少なくないので国立結核療養所が当面している体質改善の問題についてふれてみることとする。
 全国に配置されている国立結核療養所が地域社会の医療需要に十分に応じ,かつ最高の機能をもって治療活動を行なうことが望ましく,また国の結核対策の中心機関として,将来結核治療の最終拠点となることが期待されるのではあるが,国立療養所の現状をみると,これらの条件に適合させるのには甚だ不十分であり,たとえ強化充実するとしても,限られた国の経費では長年月を要することとなりそうである。そしてまた,その立地条件から考えるとき,全国180の各療養所がすべて同じ程度の機能をもつということは非能率であり,国立療養所相互の競合をも生ずる結果,経営合理化の方向とも逆行することになり,望ましい在り方とはいえないのである。国が経営する療養所である限りそこに特徴があってしかるべきで,他の経営体では容易になし得ないような結核対策の分野を受けもつとか,結核治療に関して他の医療機関の指導的役割を受け持つとか,というようなことが考えられるのである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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