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雑誌目次

雑誌文献

病院21巻4号

1962年04月発行

雑誌目次

特集 病歴管理

病歴管理の発展について

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.246 - P.249

 近年欧米に病院視察に行かれる院長さんが多いが,かの国国特にアメリカとイギリスで気のつかれたことは,どの病院でも病歴担当の部門が置かれていることであったろう。そして病歴は一定の便利な形式に統一され,病歴室medical record libraryに退院患者の病歴が整然と保管され,病歴士medical record libraianがいて,必要に応じてこの病歴が活発に活用されていることをうらやましく思われたのではなかろうか。そして大病院ではIBMの機械までそなえ,この病歴からえられた各種の医学的統計または管理的統計が,統計士の手によって集計解析されていることに驚かれたろう。私も昭和23年にDr. Mec Eachernの,かの病院管理のバイブルをひもといて,この問題に非常な興味を持ち,26年のアメリカ視察では,各病院の病歴部を訪れ,または指導的病歴士の女史たちの話を聞き,ますますその重要性を認識し,この近代的取扱法がわが国へ導入されることに熱心になったものである。そして病院管理研修所で5年前からこの講義を担当し,熱意をこめて研修参加の方がたに説いて来た。この一般知識の講座は,昭和24年(1949)以来,栗山前所長により講述されていたもので,現在まですでに7,000名のわが国病院の幹部の方がたの耳にはいっていることになる。

都立7病院の診療録の統一について—行為伝票制実施のために

著者: 室賀不二男

ページ範囲:P.251 - P.259

Ⅰまえがき
 たとえ一つの病院のうちでも,各科の診療録に手をつけることは容易なことではない。まして古い歴史のある都立7病院,ここには60人以上の医長がいるが,その診療録の全部を捨てて,全く新しい型式のものにするなどとは至難のことである。むしろ狂気のさたといえよう。
 私がなぜ皆の反感や悪罵にかかわらず,このようなことに乗り出したか。多くの時間をかけ,多額の費用をかけても,やる必要のあるものと考えたか。少しでも理解していただければありがたい。

最少限度の中央診療記録室をつくるには

著者: 栗田静枝

ページ範囲:P.261 - P.264

 入院および外来患者の診療記録を中央に集めて管理する,いわゆる診療記録の中央管理制度については,すでに多くの利点が認められ,最近しきりと話題にのぼるが,いまだに中央診療記録室を作ることがむずかしいとか,あるいは作ったとしても運営がスムースにゆかないのではないかなど,危惧の念が強く,なかなか実行に移されないようである。しかしいろいろとお話を伺っていると,実現されない大きな理由の一つには,始めからあまりにも規模(内容外観ともに)の大きなものを計画されるからではないだろうか?欧米の病院を視察なさった諸先生が,スケールの非常に大きい病院の中央診察記録室における働きに目をうばわれ,せっかく作るなら機械化された理想的なものをと考えられるからでもあろう。至極もっともなことではあるが,そのために結局倒底作り得ないということになり,診療記録中央管理の発足がさまたげられているのではないかと思われる。なるほどアメリカの中央診療記録室はスケールも大きく,仕事のほとんどが機械化され,極わめて活動的,能率的ではあるが,診療記録を適確に整理し,かつ安全正確に保管し,医師その他の要請に応じて,必要時,すみやかに正しい診療記録を提出するという診療記録中央管理の基本原理は,それぞれの病院の現状に即して実行すべきはずのものと思う。
 極端ないい方をすれば,診療記録中央管理は院長の実施する意志と関係者の一致協力が得られるならば,直ちに実行し得るものといえよう。

看護記録の実際に当たって

著者: 増永道子

ページ範囲:P.277 - P.285

1 まえがき
 私たちが患者の看護を行なったり,医師の介助を行なうためには,正しい看護と正確な処置が行なわれ,細かい観察のもとに結果報告が綿密にされなければならない。よい治療と正しい診断の資料は十分納得のゆけるよう,いつでも記録として準備されていることが大切であろう。ここに完全な記録の重要性を感じる。しかし,多くの時間を記録にのみ費したのでは看護能率の効果もあがらず,なかなか両立は困難である。ここ数年,看護記録の充実と簡素化について種種考慮されているが,私たちの記録にあたり,反省の意味を含めて看護記録のごく一部を記してみたいと思う。看護の基礎を管理,倫理を中心に,まづずたちの病院では4年前より看護基準の作製(基礎看護を基準とした申し合わせ看護内容)に当たり,勤務員の臨床の実際および指導の面に努力した。その間,仕事内容の改正されたものもあり,看護基準委員会を設けて遂次改良された。次いで,看護基準にそって看護手引が2年前に改善され,165頁の図入で説明を加えた看護手引の1冊を完成した。病院全般の統一した手順が行なわれ,各科同一方法で医師介助が行なわれて,看護内容には多くの効果を認めた。次いで,患者個人の看護日誌その他メモ式記録に至るまで数多くあげられるが,いまだこれらの記録の数数にも毎日を満足し得ないままにも,何回か検討を重ねて現在に至っている。

座談会

続病歴管理をすすめるには

著者: 小野田敏郎 ,   室賀不二男 ,   栗田静技 ,   日野原重明 ,   高橋政禖

ページ範囲:P.266 - P.275

■七つの病院の診療録を統一
 司会(小野田) 今日は3月号の続きをお願いするわけですが,吉田先生が急に都合で出席できなくなりましたので,代わりに私が司会を勤めさせていただきます。まず室賀先生。
 室賀 私のほうの都立病院に,七つの総合病院がございまして,その診療録を一応統一したのですが,どういういきさつで統一ということになりましたかということを,申し上げたいと思います。これはちょうど34年,いまからまる3年ほど前のことですが,七つの総合病院で,都の監査がございまして,収入面やなにかのことを調べましたが,各病院テンデンバラバラの収入の請求の仕方があるわけで,それを統一するようにといわれた。それから消耗品費,ことに薬品費が足りないということ,その説明が各病院マチマチである。結局この根本をつかむには,行為伝票,ことに注射伝票が必要であるということから始まったのです。衛生局とから,各病院行為伝票をやってもらいたい,ぜひやらなければならないということを,院長会議に提示があった。これは私はそのころまでは副院長だったのですが,行為伝票をやるといっても,なかなか医者は書くのを厭がるのです。七つの病院のうち,一つの病院では看護婦がタッチしませんが,あとの6病院では全部看護婦が患者が退院する時に,注射とか,処置,レントゲン検査,手術等を書いて,事務にまわす。主任看護婦の仕事です,これでは具合が悪い。

グラフ

病歴管理

ページ範囲:P.289 - P.296

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わが国における病院の公衆衛生活動の現況とその考察(XI)—病院長の総括的意見(2)

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.286 - P.288

4.その他病院の公衆衛生活動に対する院長の意見
 「その他病院の公衆衛生活動に対する院長の意見(何んでも書いてください)」という欄を設けたが,これに記載された意見のうち特筆すべきものを分類して例挙すれば,次のごとくである。

療養所内の回復期管理としての研修療法

著者: 黒沢和夫

ページ範囲:P.299 - P.303

はじめに
 結核の治療や対策が進歩向上するにつれて,最近ではいかにして回復者からの再燃や増悪をなくするかという問題が,結核問題の重要なテーマとなってきた。この再燃防止のためには復職者の健康管理,すなわち精密検診,職場の勤務軽減とか配置転換および化学予防といったことが主として考えられているが,まだ療養中の時代から回復期管理といったことが考えられるべきものと思う。アフタケアー施設が完備していない現在,入所療養中から軽症者に対しては,将来に備えて再燃防止の対策をたてる必要があろう。つまり,できるだけ治癒を確認して,復職基準に達した者だけを復職させ,中途半端で職場に戻さないことと,職場復帰の準備訓練を行なつて,いきなり療養から職場へ直結させないことが,再燃防止の中心となろう。
 職場復帰の準備としては軽快期に達してから,できるだけ復職後の現場に近い作業を課することが必要で,それによって肉体的にも,精神的にもかなり自信をもって復帰することができるし,ひいては復職当初の疲れも,かなりへらすことが可能であろうと思う。

WHO看護管理セミナー報告(全訳)その2

ページ範囲:P.305 - P.309

昭和36年10月25日グループ報告の要約
看護教育と看護サービスとの効果的な関係は,どうしたら結ぶことができるか?
 関係というものは,1)医療あるいは看護(補助的従業員を含めて)のすべてのレベルにある者が,なすべきことをきちんとなした時,あるいは,2)問題や苦情が十分に,そしてじょうずに取り扱われた時に,始めて効果的になる。

研究所便り

著者: 病院管理研究所

ページ範囲:P.316 - P.317

 昭和37年度の研修計画が別紙のように決まりました。すでに皆さまのお手もとには,各都道府県衛生部を通して連絡があり,お申込みをされた病院もあることと存じますが,事務の手違いなどで,あるいはまだ連絡の不十分なところがあってはいけませんので申し上げます。先号に記載しました表ご覧のとおり,回により研修出席者数にむらがありますし,例年,「年の途中にそういう研修会があることを初めて知った,ぜひ受講したい」という申し込みが少なからずありますので,いささかでも病院管理にご関心のある向きは,この機会に申し込まれてはいかがでしょうか。もちろん,これらの研修会に参加されて,それで病院管理をマスターしたというわけには参りませんし,私どもも病院管理のあり方を手探りながら,研究してゆこうとしているのでありますから,同学の方の1人でも多くなることは,大歓迎するところであります。病院管理などという研究は,やはり理論からおして行く一面,実務に実際たずさわっておられる方がたからの研究が加わって行かねば進歩しないのではないでしょうか。
 昭和37年度研究計画で変わっておりますところは,人事管理ゼミナールを8日間組み入れたこともその一つであります。

質疑応答

著者: 中鉢美津子 ,   岩佐潔 ,   岩中 ,   K.K

ページ範囲:P.318 - P.319

夜勤婦長
 問 夜勤婦長制度の意義と勤務期間,および健康に対する影響について(120回総婦長研修会)
 答 専任夜勤婦長として1年たらずですが,その経験についてお話しします。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.320 - P.320

 本号は「病歴管理」特集としました。病歴管理は,アメリカをはじめ各国の病院管理では大きな課題です。本誌でも,もっと早くとり上げるべきテーマでしたが,ようやく先月号で座談会形式で序論を行ない,本号で本論的なものをとり上げることができました。ただし本号でのとり上げ方は,病歴管理の普及を目的としまして,病院管理を家際にはじめる際に,当然ぶつかる問題を主としてとり上げました。したがって,病歴管理をはじめようとする方の手引のようなものです。巻頭には,小生が病歴管理が歴史的にどのようにはじめられ,そして現在英米ではどのような現状にあるかを説明して,日本でもこの方面の実践が普及されることをうながし,次に室賀先生が実際に都立病院の病歴管理を創始するために必要な諸記録の統一に生みの努力をされた経緯をご報告願って,どのように経営主体や医局の人びとの協力をえるために諸問題があるかを読者に知っていただき,次に聖ルカ病院で実際に病歴管理をなさっておられる栗田女史に,中央病歴室自体の管理もまずここまではどこでもできるというところを解説していただき,さらに看護記録の作り方を増永婦長さんに書いていただきました。
 室賀先生は,病歴管理をぜひ都立病院で実施しなければならぬと決心され,それにはまづ記録のformを統一することから努力をされました。これを実行にうつすには,医師の協力がまずなければならないでしょう。

固定欄 人事管理

人事管理以前のはなし

著者: Y.I.

ページ範囲:P.310 - P.311

 世界を旅行するのに,「Thank you」と「Excuse me」の2語を知っていればこと足りるというのは極端なはなしであるが,一面の真実はとらえているともいえる。この論法を人事管理のうえに借用するならば,病院人事管理の第1歩は,まず「お早よう」と「ご苦労さん」の2語にあるといえないだろうか。学の蘊奥を極め(うんおう)病院管理の経験も深い院長さん方に,このような大それた仮定を申し上げることは不遜のいたりであるが,あえて,人事管理以前のはなしともいうべきこのようなことを取り上げるのは,近来数病院の職員と語りあってみて,「うちの院長さんは(あるいは医長さん,看護部長さん,事務長さんなど)いい人だが,朝廊下で会っても(こちらがお早ようございますと言っても)返事をしてくれない。せっかく張り切って出勤して仕事をしようと思っても,気勢をそがれて仕方がない」「朝の挨拶をしてくれないのはまだしも,廊下で会うと横をむいて通られる。私に何か悪い印象でも持っていられるのではないかと,ついひがんでしまいます」「院長さんに今朝は(やあお早よう)と言ってもらった,一日楽しかった」「うちの事務長はどんなに苦労して書類を作って持って行っても,(ご苦労さん)と言ったことがない。言いたくなければ言ってもらわなくともよいが,それでいでいものしようか」Etc, Ete。

医療制度

病院の地域構造

著者: T.S

ページ範囲:P.312 - P.314

 最近,わが国の経済の地域構造,とくに地域格差の問題が論義されているが,わが国の病院と病床の地域的な分布にも相当なアンバランスが認められ,とくに国民皆保険計画が達成された現在では,その是正が医療制度上の大きな問題となっている。そこで,次にわが国の病院と病床の地域構造が,現在どうなっているか調べてみよう。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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