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雑誌目次

雑誌文献

病院21巻7号

1962年07月発行

雑誌目次

特集 看護 看護の将来

わが国の看護婦の問題点—リゾス氏の論文を読んでの考察

著者: 岩佐潔 ,   津田豊和 ,   塚本蝶子

ページ範囲:P.23 - P.27

1.わが国における発展段階の二重性
 リゾス氏によれば,先進国では従来看護婦の業務と考えられたものが,しだいに補助者におろされ,専門看護婦は高度技術を要する仕事や監督的な仕事をするように変貌しているのであるが,後進国においては従来素人がなんとなしに行なっていた仕事を,しだいに訓練を受けた看護婦が自分らの手に取りこむ過程が現に進行しているということである。氏はアメリカで教育を受け,現在WHOの病院管理顧問としてマラヤに駐在する人であるので,この間の事情を身をもって体験しているものと思われる。したがって氏のこの見解は妥当なものと考えられる。
 しからば,わが国の看護業務はどのような発達段階に来ているのであろうか。わが国の文化全般についてみれば,アメリカやヨーロッパ諸国に対して後進性をぬぐいきれない部面を持っていると同時に,他面ではこれらの国々と並んで,アジヤやアフリカの国々に対しては,先進国としての多数の特質をそなえているのである。この点の事情は,看護についてもまったく例外でないように思われる。

病院管理者に望む

著者: 石本茂

ページ範囲:P.29 - P.32

堪えてきた日々
 変転極るところをしらぬ社会の進歩発展の中にあって,特に日進月歩の医療の分野に生きながら百年1日のようにただ病める人びとの幸をのみねがい,あたかも医師に使われる人足のようなあしらいにも敢て堪えてきた。否耐えようと努めてきたが,もはやその時代は過ぎ去りつつあります。
 看護そのものに対する社会の通念や,人びとの認識はともあれ,私は看護婦として20有余年の歳月を懸命に歩んできた過去を省み,しみじみとこの仕事のあるべき正しい姿について考えるのであります。

特別寄稿

専門職看護の発展への道

著者: E. ,   T.T. ,   C.T.

ページ範囲:P.17 - P.21

 看護の基本となるものを構成している要素のその根源は,世界共通の人間のニードである。患者ひとりひとりの特定な状態によって,そのニードがいろいろに変わることを,看護婦はたえず解釈する必要がある。
「ICN1960年看護の基本的原則」から

看護の実際 1.チーム・ナーシングについて

チーム・ナーシングの現状

著者: 中島恵美 ,   久保伴江

ページ範囲:P.33 - P.38

 看護の対象は人間そのものであるということはいうまでもない。近代社会で要求される患者中心の受持看護を当院にとり入れるようになってから,あしかけ4カ年の歳月を経た。完全とはいえないが,その必要性が滲透し,いくらか内容も充実して軌道に乗って来た状態である。ここにその1例を紹介して,皆さまの批判とご指導を仰ぎたい。

グループ・ワークとしてのチーム法を採用して

著者: 長島久子 ,   松木光子

ページ範囲:P.39 - P.42

 患者を中心に医療従事者すべて,すなわち,医師,看護婦,社会事業家,栄養士,機能訓練士,職業補導家,牧師,患者の家族は,患者の健康上の独立への援助という共同の目的に向かって協力,協働するひとつのチームと考えます。これを医療保健チームと申します。それぞれは,その専門の部内において独自の立場を持ちながらも保健医療全般の計画にそって,その特色をいかし効果的にチーム活動を行ないます。そしてそれとともに,それぞれの専門の分野ではまたそれぞれのチームが構成されていると考えて参ります。看護の部門におきましても看護チームを構成し,そのチームを通して看護がなされていくチーム・ナーシングが,最近実際に病院のうちにとり入れられて参りました。私たちの病院でも,すでにこの方法をとり入れまして1年は経過致しました。ここにそのチーム法のアイデアの一端と採用の実際を紹介いたしたいと思います。

グループ看護を行なって

著者: 吉武香代子

ページ範囲:P.44 - P.48

グループ看護を行なって
 小児病室をあずかって1年間,私はチームナーシングの考え方をとり入れたひとつの勤務体制を組み立て,少しずつ改良しながら1年間実行してきた。施設にも人員にも決して恵まれぬ,まったく普通の病院で行なわれた新しい型の看護の方法として皆さまにご紹介してみたい。
 小児病室において,小児の特殊性から受持看護が必要であることは,ほとんど議論の余地がないと思う。ただ現在の4人に1人の基準ではどうしても能率の劣る受持看護に徹し切れないのも実状であり,さりとて能率本位の機能看護ではあまりにも理想から遠くなる。

チームナーシングの考え方と実際

著者: 塚本蝶子

ページ範囲:P.49 - P.57

1.その由来
 病院入院患者に対する看護体制が,主として受持看護という形で発展してきた米国において,近年,専門職業看護婦の不足という問題が起こってきた。そして,非専門看護職員が准看護婦あるいは看護助手などの名で,しだいに看護業務の一端に介入してくるという現象があらわれてきた。このことによる看護の実質の低下を防止することおよび手元にある看護婦をはじめ,非専門看護職員の能力や分に応じての最大の能率効果をあげての入院患者の看護を行なうために,それぞれの病院ではいろいろなくふうがなされてきた。病院ベットの急増や医療の一般化は米国のみにこの現象をきたしたのではなく,現在の世界各国で直面せざるを得ない大きな問題になっているのである。日本においても,病院看護婦の不足はしだいに社会的な問題にまで発展していく傾向にある。米国では,すでに今から13年前の1949年にこの点を重大な問題として注目して,専門職業看護婦の任務をより明確に分析し,その最大の能力を発揮するための試みや,また,非専門看護職員にゆずり渡してゆくべき業務を分化すること,或はそれらの補助看護職員の統率と管理監督を十分に行なうための看護体制の実験がはじめられたのである。つまり,チーム・ナーシングは,よりよいそして「最も効果的な患者中心の看護を行なうためには,看護要員をいかに組織したらよいか。

チームナーシングの問題点—アメリカでチームナーシングを体験したなかから

著者: 伊藤暁子 ,   小田切希伊子 ,   鮫島康子 ,   村上登美 ,   塚本蝶子 ,   吉武香代子

ページ範囲:P.59 - P.62

はじめに
 昭和31年以来,在日米国教育委員会(フルブライト委員会)は,日本の看護婦の米国留学に力を借して,現在までに十数人の若い看護婦が米国各地の病院あるいは大学に留学または実習の経験を得ることができた。このうち,ニューヨーク市内,コロンビア大学教育学部,看護教育科に在学したもので,そこのプログラムのなかで,同市内メモリアル癌病院において,丸1年間の勤務実習をし,チームナーシングを経験をした在京のものが集まる機会を得た。このグループは,実際に身をもって,アメリカの登録看護婦といっしょに働き,また准看護婦や看護助手を率いて,チームリーダーとして1年間活躍をした6人の日本の新制度看護教育卒業者であり,そのうちのほとんどのものが,その後の期間にアメリカの各地の病院で,他種の看護をも体験して帰国している。今,日本のそれぞれの看護の分野に働いて,その現状に十分な考察をする機会を得,今後,日本でチームナーシングを発展させるについての問題を,一夜ザックバランに語ってみたのである。ここにまとめられたものは,その会合で討議されたなかから,チームナーシングを日本の病院看護体制のひとつとして消化し,応用する場合,どういう問題点が考慮され得るか,また何が困難な点として指摘され得るか,という要点の要約である。

2.看護婦の夜勤の問題

看護婦の夜勤について思うこと

著者: 松村はる

ページ範囲:P.63 - P.66

はじめに
 看護婦の勤務は「なるべく3交代で」といわれてからすでに久しい。8時間3交代の勤務が行なわれるようになったのは,看護業務の向上とともに夜間の看護の必要性が重視された結果によるものとおもう。もちろん患者の立場からも昼夜の別なく診療,看護が受けられることが望ましいのはいうまでもない,しかしこの8時間3交代制が現実に行なわれている病院は,全国の病院の30%でしかない。このほかおおかたの病院は2交代当直制をとり,1交代制の病院は最近皆無であるといってよいとおもう。

夜勤婦長の業務について

著者: 幡井ぎん

ページ範囲:P.68 - P.70

 日本の病院は医師を中心として発達してきたために,診療に重点がおかれ,ともすれば看護はなおざりにされる傾向が強かった。しかし近年,病院の管理の近代化がさけばれるとともに,看護の重要性が認識され,看護と医療の関係が明確にされ,看護は独立したものとして,専門的教育を受けた看護婦の手によって全面的におこなわれるようになってきた。
 従来,多くの病院における患者の直接的な看護は患者の身内の者,または私的にやとわれた付添看護婦,家政みの手にまかされ,病院の職員である看護婦は昼間は診療補助業務と診療介助についやされ,夜間は病棟のなかに設備された仮眠用宿直室で仮眠をとりながら必要によって呼びおこされるという状態であった。

グラフ

夜の看護婦—夜勤婦長の1日

ページ範囲:P.9 - P.16

医療制度

数字でみた看護制度

ページ範囲:P.72 - P.77

1.看護婦数の現状と推移
1)年次別の観察
 看護婦(人)と准看護婦(人)の年次推移をみると,第1表にしめすとおりで,昭和35年末の資格取得者の総数は414,174人(前年末より5%の増)であるが,このうち看護婦(人)または准看護婦(人)として業務に従事している者の総数は185,592人(前年末より9%の増)で,人口増加を上回って殖えてはいるが,資格取得者の45%にすぎない。
 業務に従事している看護婦(人)と准看護婦(人)の構成をみると,昭和29年末には看護婦(人)は全体の97%であったが,昭和35年末には67%に減っている。これは看護婦(人)は,昭和29年から35年までの7年間に6%しか増加していないのに対し,准看護婦(人)は19倍に激増したためである。

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質疑応答

著者: 高橋正春 ,  

ページ範囲:P.78 - P.78

 問 手術承諾書の法的効果について
 答 手術承諾書が法律的に有効なためには,次のような条件が必要である。まず第1には,その承諾が患者自身によってなされなければならない。もし患者自身に意思能力(承諾した事柄の意味を理解する能力)が欠けている場合には(たとえば精神病者や幼児)法定代理人(たとえば親権者や後見人のように代理権が法律規定によってあたえられているもの)の承諾を得なければならない。このような者を同意権者というが,それ以外の者はたとえ肉親や知己であっても承諾は効果がない。つぎに承諾は同意権者の自由意思にもとづいた真面目なものでなくてはならない。脅迫や錯誤による同意,冗談の承諾は効果がない。たとえば重大な手術前にそれが少しの危険性もないように説明して,相手の承諾を得たり,患者側に医師の感情を害することをおそれさせて,やむを得ず承諾させた場合の承諾は有効といえない。なお承諾は事前が必要である。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.80 - P.80

 いよいよ夏が訪れて来ました。夏は伝染病その他夏季特有の患者さんが増加して多忙なときです。しかも暑さから患者を防いだり,職員の労働を快適にする,環境の整備が望まれますが,冬の暖房さえ思うにまかせない日本の医療費はいつになったらこれらをまかなえるようになるのでしょうか。
 病院学会が今月18日から東京の都市センターホールで開かれますが,せっかく冷房装置のある会場にしたのですが,東京の水飢きんで冷房がきかないかもしれません。全く困ったことです。日本の経済は一部は景気が良いようですが,文化国家と称するにはまだまだ道が遠いような気がします。「病院は,その社会の文化のバロメーター」だといわれますが,日本の病院の程度から考えると,やはり日本の文化はまだまだ三等国といわなくてはならないでしょう。われわれの仕事がし易くなるのは,国民所得が3倍か4倍増になるときなのでしょうか。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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