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雑誌目次

雑誌文献

病院21巻9号

1962年09月発行

雑誌目次

特集 病院給食管理の諸問題 病院給食の動向

病院経営と給食管理

著者: 三宅実

ページ範囲:P.19 - P.24

病院給食の実態
 現代の社会は急速に変動している。科学・技術・政治・経済などすべての領域において,加速度的に,そして幅広く変動し,その複雑な要素が相互に作用しているので,急速なる変動を的確にのべることは困難である。
 これらの急速に変動している流れに順応し上手に病院経営管理を行なうことが管理者の使命であり,医学の進歩,物価の変動,新しい食糧品の上手な利用,嗜好の向上した患者へのおいしい給食などを上手に運営管理して行くことが給食管理者・栄養士の任務といえよう。

臨床栄養と治療食

著者: 阿部達夫

ページ範囲:P.25 - P.29

はしがき
 昨年12月1日から,社会保険において特別食に対して点数加算がみとめられた。これは治療食に多少とも関心をもつものに対しては久しく待望のことであったので,大変に適切な処理として歓迎されている。むしろその遅きに失した感さえある。
 私はかつて本誌上に病院の給食について一文をのせたことがある(本誌20巻第1号65頁昭和36年)。その文中,社会保険において治療食特別食に対しては,点数の上で何の配慮もされていない。これらの食餌が一般食に比して材料費だけでも高いのに,さらい多大の手間を要することを考えれば,これがいかに不合理であるかは自明の理である。一定の規格のある病院において,特別食または治療食を給与した場合には,点数加算を認めるようにしてほしいものである。その実施の一日も早からんことを願うものである。以上のごとくにのべた。

病院給食と基礎栄養学

著者: 速水泱

ページ範囲:P.31 - P.34

 現在栄養上の問題で広く一般に関心をもたれているもの,あるいは大いに注目されなければならないようなものについて述べることにしよう。

給食部門の人と作業の関係

著者: 宮川哲子

ページ範囲:P.41 - P.44

 標題のような大きなテーマをもらって,どのように処理したらよいかとまどった。しかしわれわれの立場として常にぶつかっている大きな問題ゆえ,この際日頃考えていること,処理していることを述べてみようと潔くペンをとることにした。給食問題の根本は「栄養科のあり方」であろう。どこまで栄養科のなすべき仕事か,いな患者給食サービスをどこまでなしうるかによって人員の構成はなさるべきであると考える。いま一度ここに栄養科の業務内容およびおのおのの分担を記して見る。

一般食の給食管理

著者: 杉江康子

ページ範囲:P.45 - P.48

 病院給食の目的は,治療の補助として大きい役目を持っており,患者食事は治療と相まってそれぞれ患者個人の状態に応じて出されなければならないので,病院給食はすべてが治療食事と考えられる性質のものである。しかし,数多くの給食を行なわねばならないので,食事が治療に直結響くものを特別食,それ以外を一般食として区分し,給食の運営が行なわれている。したがって病院給食は個人的に食習慣や嗜好も違い,要求量も異なり,病状も異なる患者を,社会保険給食の基準と食糧費の枠の中で一律に給食してゆかなければならないところに矛盾があって,給食管理のむずかしさがある。しかし,この矛盾の中で,給食本来の目的--診療補助部門として治療効果を上げる--に向かって努力されている。
 最近医療が進歩し,各病院とも治療食の増加が目立ち,当院のような結核療養所でも,老人結核の増加,ひいては成人病,治療食の増加という結果となって現われてきており,給食数に占める治療食の比率は次第に高くなってゆく傾向である。しかし,まだ大部分を占める一般食の給食管理がよりよく行なわれてゆくことは給食運営上大切であり,ここに一般給食の温食,食器,盛付,配膳,残食の問題について考えてみたい。

治療食の給食管理

著者: 永田優

ページ範囲:P.49 - P.53

病院給食の特殊性
 病院食は,一般の集団給食に似て非なるもので,工場その他の集団給食のように健康入を対象にした給食とちがって,病気にかかった人たちに治療の一環としての栄養療法を行なうための給食であるところに,その特殊性が見られる。
 病院のために心ならずも家庭を離れての入院生活を余儀なくされることから,心理的にも平静であろうはずがないし,環境の急激な変化,特に食生活のちがいと病状そのものからくる食欲不振という悪条件が重なり合ってくる。さらに,病状別,性別,年令,体位のちがいなど,栄養療法を行なうための基本条件が患者個々にちがってくることも,いわゆる集団給食方式を採ることができない特殊性である。

給食材料費の問題

著者: 小泉信子

ページ範囲:P.55 - P.58

はじめに
 戦後食糧事情の悪かった頃とくらべ,日本の消費水準の上昇はすばらしい成果となって現われてきている。ところが物価は指数としてみれば,卸し売り物価は下っているのに,われわれ消費者,に直接関係の深い小売り物価や消費者物価はいぜんとして上りっぱなしである。
 ここに病院給食の内容を分析し,値上りに伴う動きを昭和33年1月より昭和37年5月に至る4年5ヵ月間の内容を検討してみた。

病院給食施設の設計と設備

著者: 熊野秀徳

ページ範囲:P.59 - P.64

1.病院給食の最近の動向
 諸物価の値上がり求人難を契機として,集団給食もこの二,三年来共同で従業員に対する給食事業を行なうところがふえている。これは給合管理を統一して事業所ごとの給食格差をなくし,給食施設並に衛生施設の完備もでき,かつ食生活の改善を計ると共に,給食婦,作業員の不足を解決し安い給食費で多くの人々に福利厚生をもたらす時代となって参りました。
 病院給食もすでに実施しているところでは,さらに全般管理作業管理,衛生管理の面に分析検討され,一層の改善改良が加えられ統営の合理化が研究されております。

病院給食の報告事務

著者: 花村満豊

ページ範囲:P.65 - P.67

 疾病の治療は,特に内科小児科領域においては,患者の自然治癒,すなわち患者自身の体力回復による疾病の克服に重点をおき,直接細菌に作用する薬物を除けば栄養の補給も薬剤の投与もすべてその意味において行なわれているといえよう。したがって病院給食は単なる日常食を給与することではなく,病気の治療という積極面において大きな影響を与えるものであるから,病院における医療,看護と並んで給食部門は3大部門の一つであるといえよう。また,経理面よりみても,人件費と並んでもっとも大きな部分を占めている。
 しかし従来は,食事の内容をどのように工夫しても,これらの技術的考慮に対しては保険点数の上で特に加算はなく,昨年12月医療費の緊急是正を行なうにあたり,新たに一部の特別食について5点加算が認められ,従来の懸案の解決に一歩を進めたものでまことに喜ばしいことである。

患者に対する栄養指導の実際

著者: 山内絢子

ページ範囲:P.69 - P.72

 近年医学の進歩にともない,治療食もまた多様にわたり,食餌療法は疾病治療の重要な要素となっている。主治医から発行された食事箋に基づいて行なわれる治療食も,患者の認識が薄ければ効果は思うように上がらないため,適切な個人個人の栄養指導の必要性が痛感される。
 また栄養士がいかに従来の病人給食にのみ追われていた域を脱して,医師と協力して積極的に疾病治療の面に参加する熱意を持っていても,医師や管理者からその必要性を理解され協力されなくては円滑に行なうことはできない。

研究

肝臓病の食餌療法と病院給食—神戸市立病院給食研究会記録

著者: 木島滋二 ,   湊川学 ,   山田実 ,   浜野忠彦 ,   鈴木武定 ,   織野俊之

ページ範囲:P.73 - P.74

医師の立場から
(A)(浜野)
 最近肝臓病の薬物療法はめざましい進歩を示しているが,それに眩惑されて食餌療法をおろそかにしてはならない。食餌療法は,20年前までは全く消極的で,肝庇護を主とする制限食であったが,1941年Patek以来高蛋白,高カロリー食が主流となっている。脂肪についても,昔のように禁止一点ばりというわけではない。
 しかし,これは肝臓病のうちで給食数の最も多い慢性肝炎と肝硬変代償期にあてはまるものであるが,同じ肝臓病でも,急性肝炎初期の発熱や食欲低下があるときに,高蛋白,高カロリー食を与えても,食べられるものではなく,また肝性昏睡前期に大量の蛋白質は有害でさえある。肝硬変非代償期で腹水がたまっているときには,食塩の量にも考慮をはらわなくてはならない。

病院栄養士の声

院長に対する提案

著者: 西原豊子

ページ範囲:P.24 - P.24

 良いテーマをいただき,私達栄養士のためにこの機会にと提案させていただきます。
 院長と栄養士の間は一般に大分距離があるようですが,わが産院では院長が栄養問題に熱心ですから,私は非常に恵まれた環境の中で仕事をしていると言えます。私はもう産院に14年近くいますが,院長に小言を貰うとすれば勉強をしないということです。お金のかかる実験のようなものまでやらせてもらっています。ほかの病院の栄養士からうらやましがられています。

医師に対する提案

著者: 寺沢貞子

ページ範囲:P.29 - P.29

医師が栄養士に対して提案,要望せられることは非常に多々あろうと思われる。しかし立場をかえ,本題の原稿を依頼されて,ちょっと躊躇いたしますが,私がまず申し上げたいのは,「食べる」ということは「人間の根本の生理」であるということについて改めて深く考えていただきたいことである。患者に適切な食物を給与し,体力を充足,補強することは,治療上極めて重要な業務であり,ことに「食餌療法」の必要な病種にあっては,その重要さは申すまでもないことである。給食に関して基準病院に必ず栄養士が配置されているが,その実態ならびにあり方はどうであろうか?
 栄養部の組織図は普通事務系統に属し,その代表者は事務官が多い。栄養士はおおむね地位を持たず,責任のみは重く,極めて小人数で,本質的な仕事の進歩性は阻まれがちで,雑用の中できりきり舞いをしている。これは患者給食があまり重んじられなかった旧時代のまかない式炊事の系列,観念で近代病院の中に今も温存されている機構である。

事務長に対する提案

著者: 須田咲子

ページ範囲:P.37 - P.38

 給食の向上は内外ともに皆さまの協力を得て徐々に良いほうに向かいつつあります。
 一つの問題が解決すると次の問題が出てきて,改善されたころにはまた問題,というようにたえず努力に努力を重ねてお互いに根気よく戦わねばなりません。

医師に対する提案

著者: 山口和子

ページ範囲:P.39 - P.39

良否の指摘をはっきりと
 ある一つの仕事をなすうえに大事なことは,たて,よこの理解あるつながりだと思います。経営者,主治医という軸の一貫した考えのもとに,それぞれの仕事の範囲を犯されず,犯さず,各人の不足分を補い合って,病院経営がなされ,そしてその中での給食がなされるわけでありますが,給食を担当する栄養士の現在の立場はいささか周囲に甘やかされてはおりますまいか。
 これを裏返えせば,栄養士に対する信頼の度合がすくないともいえないことはないので,一面では私たち栄養士の力量不足の責任も感じております。

看護婦に対する提案

著者: 御子柴常子

ページ範囲:P.53 - P.53

 今日も看護婦室より電話が掛かってきました。「○○さん牛乳が嫌いですからヨーグルトかジュースに変えて下さい。」「なるべく牛乳を奨めて下さい。」これが私たちの答えです。
 たったこれだけのことですが,ここに重要な問題が含まれているように思われます。まず,看護婦さんと私たち栄養士の立場の相違,さらに院という機構の中で分かれた業務の融通性の問題です。

調理担当者に対する提案

著者: 鈴木サナヘ

ページ範囲:P.54 - P.54

 給食の調理を担当する方がたへの提案とひと口に申しましても,私自身7年間栄養行政にたずさわったのちに勉強のつもりである大学病院に飛び込み,一調理員として器具の下洗い,野菜の下拵えの第一歩からはじめましたために,種々の不合理,隘路も体験いたしますと同時に得がたいかずかずの勉強もさせていただきました。それだけに,同様の経験をしておいでの皆さまがたに限られた紙数で提案などと書くのはいささかおもはゆいのでありますが,その時代に感じましたこと,そして現在150床あまりの病院栄養士としてなおかわらずねがいたい二,三のことがらを申し上げたいと思います。
 申すまでもなく,栄養士が病院給食の献立を作成しますに,種々の拘束,すなわち経費,栄養,患者の病状や地域社会による特殊性および季節感,それに加えて施設の完備程度のいかん,調理員の労働力とその技術の度合やその他のもろもろを土台にしてできあがる料理を頭に描き,夢を托しながら,苦心惨胆するのであります。そうして作成された献立がたとえ諸条件に最適100%のものであったとしても,まだ目的は果たされていないのであって,これから先は全く調理を担当なさる皆さまがたの双肩にかかってくるのでありまして,100%の献立が100%調理され,患者さんに喜んで喫食していただいてはじめて初志の目的は達成されるのであります。

院長に対する提案

著者: 中永さち子

ページ範囲:P.68 - P.68

 私の勤務している松井病院は,ベッド数43,院長以下職員45名の小さな病院です。
 全国の小さな病院に勤務なさる私と同職の皆さまが,機会があれば声を大にして訴えたいと思っていらっしゃるであろうことを,微力ではありますが,訴えてみます。

グラフ

給食の流れ—立正佼成会附属佼成病院

ページ範囲:P.11 - P.18

 病院給食の流れは、二つの因子に左右される。その主因子は、病院給食の機能とその管理組織、すなわち「病院給食チームの構成」であるが、それを支える因子は、「病院給食設備」である。すなわち、病院建築設計とその建築設備と、さらに、調理設備などによる能率増進と、仕事と人との動線計画の表現である、と言える。ここに、主としてそれらの設備面について、カメラ・ルポルタージュをこころみた。

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研究所便り—病院管理研究所

著者: K.K.

ページ範囲:P.76 - P.76

 13年前国立東京第一病院の片すみで孤々の声をあげた病院管理研修所は,限られたスタッフで日本の病院管理のパイオニヤの道を歩みつづけてきましたが,一昨年来の日本全国をゆるがせた病院ストライキ以来,ようやく病院の効果的管理への要望が限度を超えて大きくなり,研修所もこの要望に応えて研究所に組織を拡充されたのが昭和36年6月1日,早いものでもう1年を過ぎてしまいました。
 新組織に伴う雑務等で,必ずしも十分に満足した活動を皆さまにお示しできなかったことは残念で,深く反省しておりますが,研修に研究にだんだんと新風を吹きこむ下地ができたのではないかと思っております。

質疑応答

著者: 岩佐 ,   一条

ページ範囲:P.77 - P.77

医師の宿直
 問 医師が当直して夜間診療に従事した場合,当直料と超過勤務料とを併給すべきか。(医長研修会)
 答 労働基準法によって1日8時間労働の原則が定められていて,これをこえて働かせる場合には定められた超過勤務料を支払うことに定められているが,これの例外の一つが宿直で,これに対しては一定の宿直料を支払えばよいことになっている。しかし宿直というのは非常に軽易な文書または電話の収受などを断続的に行なう程度で,あとは大体その場に居て休むか寝ていればよい程度のものであることが要件となっていて,これには所轄労働基準監督署長の許可を受けることが必要となっている。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.78 - P.78

 今夏は特別にきびしい暑さの日もありましたが,夏のはじまりが遅く,秋の日の近づきが早いようで,比較的しのぎやすかったのではないでしょうか。しかしコレラの問題ではお互いに胸がドキンとしたことでした。
 さてお手元に9月号をお送りしますが,本号は給食問題を中心として特集しました。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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