icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院22巻10号

1963年10月発行

雑誌目次

特集 病院の機械化

機械化の意味するもの

著者: 島内武文

ページ範囲:P.17 - P.22

 先般大阪の医学会総会には診断機械やロボット看護婦があらわれて,いよいよ病院にも機械化時代が始まったという感を深くした。もちろんかねてからエレクトロニクスの医療への応用は始められており,展示されたものもそれぞれの専門からみれば,別に珍しくないものであったにちがいない。しかし,それらが着々と一般製品として市場に出はじめていることがはっきりうかがわれたのであった。
 元来機械化ということは反復安定しあるいは類似共通する機能に可能なのであって,人間の身体のように個性がつよく弾力的であって動的なものでは,直接機械を適用することはなかなかむずかしい。今日,外ではジェットやロケットの飛び交うという時代になったけれど,たとえば赤ん坊のおしめにしても,患者の便器にしても,昔からいくらも進歩していないし,頭の理髪も型にはめて仕上げることは困難なようである。

病院機械化への道

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.23 - P.28

1.生産性と病院
 生産性とは,投下した生産要素とそれによって産出した生産物との量的な関係をいう。そして,労働力,原材料,機械設備などの生産要素を有効に使って労働力単位当りの生産を引き上げることを労働生産性の向上といい,一般に生産性向上と略して呼ぶ。
 生産性を考える場合,いま言った労働生産性,なかんずく付加価値労働生産性が最も重視される。ここで付加価値とは,売り上げ高から前給付費用,すなわち原料,外部用役および減価償却の費用を差引いた額で,生産の過程でそこに新たに生み出された価値と考えられるものである。

病院におけるエレクトロニクスの適用

1.病院における電子計算機の適用

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.29 - P.34

 現代の象徴といわれる電子計算機(EDPS)は,第2次大戦中およびその後の発達の結果である。主として軍事上の目的から開発されたこの機械が,1946年ペンシルバニア大学に始めて設置されてから,わずか10数年に過ぎないが,その発展はまさに驚くべきものがある。
 事務用の電子計算機は,1951年米国政府の国勢調査部での設置に始まるが,通常の事務面への適用は1954年からであり,その後の普及についてはここで改めて述べるまでもないほど急速である。我国でも昭和30年頃より輸入品によりまず実用化され,現在国産化も進んで,ほとんどの大企業がこれを保有し,事務の合理化に飛躍的な進歩を与えている。

2.診療と看護におけるエレクトロニクス

著者: 樫田良精

ページ範囲:P.35 - P.39

 最近のエレクトロニクスの進歩はまことにめざましく,現在はこれによる第3次産業革命が進行中であるとまでいわれている。
 医学領域においてもエレクトロニクスを積極的に導入して医学の研究や臨床に大いに役立たせようとする気運が昨今急速に昂まっている。昨年11月医用エレクトロニクスの発展を主目的とした日本ME学会が設立され,本年4月の日本医学会総会にはこの学会の企画により医用エレクトロニクス関係の学術展示や商品展示が盛大に行なわれて参会者の注目を集めたこと,2年後の1965年夏には第6回Medical Electronics国際会議が東京で開催されることに決定したことなどはMEという医学と工学の境界領域の新しい分野が急速にわが国においても進展しつつあるのを示しているといえよう。

病院各部の機械化の実例

1.事務—聖路加国際病院の例

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.41 - P.45

 病院事務合理化のための最も新しい方策として機械化の必要が提唱されるのは,機械化によって仕事の能率を高め仕事に速度と正確さを求めるほか,管理に必要な資料集成のスピード化を求めるからである。したがって機械化するだけの仕事の旦と,仕事の標準化の可能性が着眼点となる。猫もしゃくしも機械化というわけにはいかない。さらに,機械化には相当の支出が伴なうから病院の管理者の頭に現金主義会計つまり,大福帳的な考え方が浸み込んでいる傾向が強いと,「この機械を購入して有効に使用すれば,これだけの能率をあげられるから,何年後には償却が可能だ」というような,企業的な,健全で長期的な計画は成り立たない。したがって,「こんな高い機械はもったいなくて買えない」とか「買えば赤字になるから買わない」というような官庁会計的な,いってみれば原始的な算盤のはじき方で病院のために,プラスになることがはっきりしていても,みすみすのがしてしまうことも多いようだ。
 逆の場合もあるようである。すなわち,「あの病院で購入したから私の病院でも買ってみよう」というように,あまり計画性もなく高価な機械を買ってはみたが,使用しないで,見学者にみせるだけにおわってしまう展示会的な機械化もあるときいている。

2.看護(その1)—虎の門病院の例

著者: 栗原やま

ページ範囲:P.47 - P.49

 虎の門病院では機械,器具を利用することによりある種の看護業務の能率をあげることができた。そこで,労力,時間の節約,正確さ,などの点から,現在病棟で扱っている機械器具について簡単に紹介したいと思う。

3.看護(その2)—アメリカの病院の例

著者: 新藤信子

ページ範囲:P.51 - P.54

 外国の病院関係者が日本の病院を訪れて,看護婦が1枚の伝票をもって走り廻わっている姿,医師の廻診に大名行列のごとく従っている忠実ぶりや,午前中からどっかりと椅子に腰かけてガーゼや包帯をのばして再生につとあている姿,あるいは図体の大きな患者に小柄な看護婦が数人アリが物を運ぶようなかっこうでつかまり,ベットから移動させている現象をみたら,かれらはきっと『日本の病院では,何と看護婦がありあまっているのだろう。実にうらやましい』とおもうかもしれない。日本の一般患者がうけている看護の実際面に目のとどかぬ,あるいは,真実を知る前のかれらには当然の現象であろう。
 私もアメリカから帰ったばかりで,この光景をみたときには,まったく日本の看護力の豊富さにおどろいた。なぜなら,私があしかけ3年の間アメリカで見学や実習した病院では,いずれも看護婦が不足で,患者のそばでの看護(bed side care)をするのが精一ぱいで,前述のような光景には1度も出会ったことがなかったので。

4.薬局—東洋工業株式会社附属病院の例

著者: 森田専一

ページ範囲:P.57 - P.61

はじめに
 本病院はマツダ三輪車や軽四輪車のクーペ,キャロル,普通車のキャロル600等を製作している事業所の病院である(写真1)。広島市外国鉄山陽本線向洋駅前に位置している。昭和36年7月完成開業し,会社従業員およびその家族並びに附近住民の診療を行なっている。建物延面積3653坪,病床数218床,病院従業員300名,医師31名,薬剤師12名(薬局勤務薬剤師のみ,他に臨床病理研究検査科に13名),看護婦110名である。診療科目10科を有し,外来患者1日平均1,200名,入院患者200名で,処方箋1日平均574枚,基準剤数1056件である。全館に冷暖房換気設備を有し,夏期は26.7℃,冬期は22.2℃,湿度はいずれも50%に調節され,外部窓硝子は二重硝子にて断熱および騒音防止になっている。
薬局について

5.中央材料室—国立がんセンターの例

著者: 野手貞子

ページ範囲:P.63 - P.65

 中央材料室の機能を充分に発揮させるためには,(1)職員の量および質の充実,特に専門的職員の養成につとめ,(2)設備の機械化,(3)それらが作業の流れに従って配置されていることであります。さらにそれが能率的であるために建物の面積,採光,換気,除塵,適温,適湿度,防音等の労働条件や,物品管理に配慮があることなど中央材料室の理想像は大きく拡がりつつあります。単に中央材料室が「注射器を消毒する場所」的の概念で設計されたとしたら、悔いをあとあとまで残すことになるでしょう。
 国立がんセンターは,がんを扱う特殊な病院ではありますが,医療処置材料の準備においては他の綜合病院と比べ何等かわるところはなく,むしろ患者1人当りの材料消毒の多いことは大手術,化学療法,検査件数が多い点などから予想されていました。このような事情で,病床450,手術室6,医師67人で,手術可能患者270床を想定して,中央材料室が設定されたのであります。

6.給食部—名古屋大学医学部附属病院の例

著者: 山元昌之 ,   高柳清十郎

ページ範囲:P.67 - P.72

はじめに
 国立大学病院は,国の一般会計で処理されているので,その施設設備の整備が非常に遅れている。当院も戦災で建物の約2/3を焼失し,その後の整備が捗らないので,医学の進歩に追従する面でも,また近代病院への脱皮の面でも難渋を極めているが,定員不足と相俟って,何よりも日常の運営に苦慮する面が多い。このような状態の中で,給食施設だけは,かなり予算がついたので,一応の整備ができた。この給食施設の新営に当たって,この施設は患者食だけを扱い,看護婦と看護学生の給食施設,および職員や外来者のための給食施設はそれぞれ別個に持つように計画したので,患者給食について縁,すっきりした運営ができている。
 この新しい患者給食施設の設計は,当院に栄養士として永年勤務し,臨床栄養について識見を持つ高柳君が中心になって構想をまとめたものであり,その後も同君は業務課長補佐として,給食部を含めて日常の運営を指揮しているから,この施設の実際使用面にも詳しいので,以下本稿は同君に執筆してもらった。今後,給食施設を新営または改修される病院で,ご参考になるところがあれば幸いである。

座談会

病院におけるエレクトロニクス—特に病院管理への適用をめぐって

著者: 石井威望 ,   石原信吾 ,   岩井喜典 ,   大島正光 ,   紀伊国献三 ,   守屋博

ページ範囲:P.74 - P.85

エレクトロニクスとは何か
 司会(守屋)きょうは,M.E.の話をしろということなのですが,われわれは,いろいろのところで,エレクトロニクスのおかげをこうむっているわけですが,エレクトロニクス自身についてわれわれ素人は非常に弱いので,先生方に,ひとつ,M.E.について,現在どういうことがわかっているか,将来どういうふうに発展するだろうか,そういうお話を伺いたいと思います。まず,話の順序といたしまして,M.E.というのは,一体,どういう範囲のことを云い,どういう仕事をするものをいうのか,という定義からお話をうかがいたいと存じます。
 岩井 ご指名がございましたので,いまの問題について,お答えしなければならないのですが,一口でうまく言い表わすことができませんので,ただ,エレクトロニクスという言葉がなぜそんなふうに喧ましく言われるようになったのか,ということを申しあげて,お答えに替えたいと思います。

グラフ

病院における能率革命の立役者—各部の代表的機械

ページ範囲:P.9 - P.16

 病院経営は、お役所、学校などとともに、ノン・ビジネス・マネージメントの類に属するものとして、産業界からかけ離れて、逞しい生長力も、また、そのかわりに、リスクもない、天下泰平の業であるかのように見られていた。もちろん、病院は利潤追求が目的ではないが、近代社会経済のものすごい激流に棹さし、こぎあがることは、容易ならざるわざである。病院は、地域社会の共同体として、社会とともに生き、社会の進連に從って生長し、さらに、科学の進歩は病院医療、看護その他すべての水準の向上を促して止むところを知らない。
 しかるに、一方、病院財政および病院い対する雇傭市場に著しい変貌を呈し、病院種々の面でこれらに対応するように血路を開かなけれはならない立場におかれるようになった。

病院管理講座 理論編・10

病院の組織(Ⅶ)—看護協助機関,その他の医療協助機関

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.87 - P.92

 前号においては診療協助機関の組織について述べたが,本号においては看護系の協助機関及びその他の医療の協助機関の組織について私見を述べて見よう。

--------------------

事務長日記

著者: 檜原謙

ページ範囲:P.94 - P.96

8月1日(木)
 今日はとても疲れた。増収対策を検討する臨時経済委員会が終わったのは22時。それから帰ったので,いまはもう24時に近い。委員会が開かれたのが16時だったから,ぶっ通し6時間の会議だったわけだ。院長や顧問のO先生も同席。とくに院長は,大学の時は医学と教育のことさえしておればよかったのに,病院へ来て見ると,こんなふところ勘定の心配までしなければならないというわけで,さぞびっくりされたことと思う。
 今年の収支予想は,いまのところどうやらとんとんの線までは持って行けそうだが,例年どおり人事院の給与改訂の勧告が出てベースアップがあると,約1千万円の赤字はどうしても免れない。そうなると,毎年出して来た決算賞与はもちろんなくなるし,その上,新しい機械設備の購入はおろか,そろそろ取りかえる必要の出てきたものの更改さえもできないことになる。それが職員の士気にも影響し,また病院機能の全般的低下を来たすことは明かだ。その結果,病院収益は減少せざるを得ないだろう。こうして,病院経営上最も警戒すべき悪循環がはじまることになる。この悪循環に陥ることは何としても防ぎとめなければならない。セネカも,「財布が空を告げた後の経済はすでに遅い」と言っている

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.100 - P.100

 今月は「病院の機械化」を課題に特集しました。ご承知のように,生産方式が近時また大きく変革しようとしています。すなわち,エレクトロニクスの発明により,オートメーション時代に入りつつあります。第1次産業革命は,人力を機械力に置きかえた革新でしたが,今世紀は科学的管理法によって人間の力が機械のように組織化され,第2次産業革命といわれました。しかし今や第3次の産業革命である,機械に統制力を附与することが可能になりつつあります。
 このような技術革新が生産機構を変えて行く時代に,病院が職人的な旧時代の観念にのみとらわれていることは愚かなことです。これらの技術をとり入れることにより,更に一層better patient careを確保するように努力すべきでしよう。組織を出来るだけ機能化し,さらに機械化できるものはできるだけ機械化し,さらにオートメ化できるものがあればそれもとり入れるべきです。そして,医師,看護婦等の医療チームが,医療に必要な高度の判断力,技術力をフルに活用しうるようにすべきでしょう。これが近代病院の進むべき道であることは疑えません。

霞ガ関だより

眼球提供あつせん業者の許可基準について

著者: T.S.

ページ範囲:P.99 - P.99

1.基準作成の経緯
 「角膜移植に関する法律」(昭和33年4月17日,法律第64号)は,第26国会に中山マサ氏外39名の議員提出の法案として提出され,昭和33年の第28国会で成立したもので,その趣旨は角膜移植術のためにおこなわれる眼球の摘出が,刑法第190条に規定する死体損壊罪に抵触することなく適法におこなえるようにすることと,死体の眼球の提供のあっせんを業としようとする者は,厚生大臣の許可をうけなければならないようにすることとにある。眼球の提供のあっせん業者については,血液銀行の例もあるので,国会審議の際もとくに非営利性の確保について論議がおこなわれ,「眼球の提供のあっせんを業とする者に対する許可にあたっては,営利を目的としないことを許可の要件とすること」という附帯決議がおこなわれた。
 しかし,あっせん業者の許可にあたっては,ただ営利性の問題のみならず,眼球の取り扱いに関する技術的な問題もあるので,その許可基準は,財団法人日本眼科学会の意見をきいて決められた。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?