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雑誌目次

雑誌文献

病院22巻11号

1963年11月発行

雑誌目次

特集 看護

看護の再検討—病院管理者と看護指導者のために

著者: 橋本寛敏

ページ範囲:P.19 - P.25

看護とは
 看護制度について論じ,あるいは看護婦を養成する看護教育制度について論ずるにも,まず考えを纒めなければならないのは「看護とはどんな仕事をすることであるか」という問題である。わが国では,従来白衣と白帽を身につけるいわゆる看護婦が現われてから85年余になるが,姿は文明国の看護婦と同じだが,その業務内容は必ずしもそうでない。それは看護婦自身が自分の本務は何であるかを真剣に考えたことがないからである。漠然と医療にたずさわる女として,医療の主動的立場にある医師に操縦されるままに,何等自主性を持たずに働き続けてきたのである。外国で看護は専門職業であるといったので,その真似をしたが,実際は職業的の独立性はなく,医師の補助者にすぎない。もともと百年前に,ナイチンゲールが看護を一つの専門職として打ちたてたときには,医師の求めに応じて立ち上がったのではなく,患者が悲境にあるのを見るに見かねて,自主的にこの職業を創めたのであった。それは患者の衣食住について生活の援助と世話をし,それをコントロールして,医療の効果が挙がるような心身の状態をつくり出すことに全力を注ぐことにあった。科学を無視する尼僧,無智な下碑と違って,女性の教養を生かし,医学を学び,それに則って病態生理をもつ患者の生活の援助,世話,指導,教育を企てたのであった。

看護業務における中間管理者

婦長の業務内容について

著者: 相模はつ子

ページ範囲:P.27 - P.31

はじめに
 ひとつの病院の看護部の最高の長を看護婦長(総婦長)という。看護婦長は看護部を統轄し,病院全体の看護業務管理の最高の責任者である。婦長(看護取締)はいくつかの看護単位をまとめて管理する,あるいは外来,手術室を管理する中間管理者である。主任看護婦はひとつの看護単位(セクション)を管理し,看護サービスと看護教育の責任を直接もつ。

婦長の立場から

著者: 壁島あや子

ページ範囲:P.33 - P.35

はじめに
 病院という組織体の中での「婦長」の役割がいかに重要であるかは今さら言うまでもないが,ことに現在のような複雑な問題をもつ医療体制下にあっては,よりその立場はむずかしく,その任務にあたっては困難をきわめているといっても過言でないと私は思う。
 そこでまず,私は,婦長というものを婦長自身の立場から考え,その中から問題点をとりだして検討してみたいと思う。

看護管理者の位置づけを

著者: 松村はる

ページ範囲:P.37 - P.41

はじめに
 病院の組織は一般の企業体と異なり,複雑多様な特殊専門グループの集まりである。これら多様の職種のなかで,最も多くの人員をもつ看護の部門は,その機能を充分に発揮することのできる組織を確立することが必要であると思う。この組織については病院の設置主体別にみてもその中で異なり,また病院の大小,看護単位の大きさ,診療科別,などによって当然異なるものであると思う。しかし数百ベッドを有する病院の病棟管理については,一様でない現状をいかに検討し,組織し,運営するかということである。第一線の病棟管理を受持つ主任看護婦と,中間管理者と考えられる病棟婦長,この両者の位置づけから考えてみたいと思う。

看護業務の軽減法

1.小児外科病棟における看護業務の軽減

著者: 永谷陽子

ページ範囲:P.43 - P.46

はじめに
 私達ナースの仕事は,病院の発展とともに日々複雑さと多忙をきわめている。一方では患者の世話を専門的に発展させなければならないし,同時に医師の診療の介助者としてその活動を積極的に援助していかなければならない。ましていくつかの科にまたがる混合病棟においては,単一科病棟とは異なった意味での繁雑さが加わり,いろいろな問題も生じてくる。忙しいということはしばしば診療介助に手がまわらないことの弁明になっているが,忙しさの原因を分析し,雑務の専門化と,診療時間の調整等によって,医療と看護が充実して行なわれるよう,努力していきたいと願っている。

2.産科病棟における看護業務の軽減

著者: 森幸

ページ範囲:P.46 - P.47

はじめに
 私どもの1日の中には,惰性によって動いているものも多いだろうし,思いがけないところに無駄がころがっていて,あわててその穴埋めの処理に八方手をつくすことがよくある。思いつきに,また追いつめられて,少しずつ私どもの産科病棟に取り入れていることをのべてみると,

3.国立大阪病院で現在実施している看護業務の軽減法

著者: 増永道子

ページ範囲:P.49 - P.50

 最近各方面の職場では業務の改善にめざましい進歩をみせているが,看護業務においてはまだまだこれから改善で,多くの課題が山積している。看護業務は他の業務と異なり,病人を対象とするので,単に機械的に動いたり,機械化されることだけでは,看護の責任は果たされない。患者を気持よくまた安楽にすることが,看護の第1条件である。ナース自身の熟練されたその手め操作が尊ばれるだけに,この問題の難点があることも考えたい。当院において改善改良を加え,成果をあげ得たと思うものを,ささいなことではあるが,いくつかの例をあげてのべてみる。

4.薬品定数制度の採用(1)—薬局の立場から

著者: 中野久寿雄 ,   上野純一

ページ範囲:P.51 - P.52

 薬剤科が各病棟,外来診療室へ注射薬を供給するに際し,適確な薬品管理を行ない,看護記録室の作業軽減や,請求洩れの防止を考慮する必要がある。注射薬品の供給方法は,種々あるが,当院の定数制度については次の2通りがある。
(A)定数制度。あらかじめ各品目薬品の定数を決めて病棟で保管し,注射伝票によって使用した定数不足分を,請求日にまとめて補給する方法。

5.薬品定数制度の採用(2)—看護婦の立場から

著者: 一場茂子 ,   国島弥生

ページ範囲:P.52 - P.53

 東一における注射薬品定数制の改良が看護業務をいかに軽減させたかを,看護婦の立場から述べてみたい。

6.患者の食事に関する助手の採用について

著者: 内田卿子

ページ範囲:P.55 - P.56

 人間の生活のなかで,衣,食,住は欠くことのできないものである。まして病気となり病院に入院した環境のなかの食事は単に健康のときに食べたのや,好きだから食べるのと異なり,そこには治療という面が大きくはいってくる。
 いやでも,少々気にくわなくても,病気が早く回復するためには食べなければならないし,またその意志があっても一人で食べられない人も出てくる。それで食事は医師にとっても,患者にとっても,看護婦にとっても大切な問題である。

7.メッセンジャー・システムの採用について

著者: 伊佐マル

ページ範囲:P.59 - P.60

はじめに
 近代社会の進歩にともない医療にも多くの変遷がみられ,看護業務の内容も分業化の方向へ進んできました。そして看護の仕事にいろいろの事務的な色彩の濃い,あるいは患者に直接関係の少ない仕事が増えてきました。
 しかし私どもの本来の仕事には「患者の身の廻りの世話」,「医療の介助」という主な仕事があります。それだけに分業制度のはっきりしない看護業務のなかでは段々と看護力の不足をきたすようになり,これに対する看護内容の低下を防ぐ手段として,看護以外の雑用を除き,その時間を看護力に向けるために,メッセンジャー・システムが考えられました。いわば分業化の表われであります。

座談会

看護婦と忙しさ

著者: 橋本寿三男 ,   杉政孝 ,   今村栄一 ,   川島みどり ,   田中保子

ページ範囲:P.62 - P.74

忙しさとは
 橋本(司会)皆さんお忙がしいところを,とくに夏の暑いところをまげてご出席をいただきましてありがとうございます。きょうは看護婦さんの問題を皆さんでお話をいただきたいと患いますが,国会あたりでも看護婦さんは非常に忙しい,不足しているということが問題になっておりますし,巷間も看護婦さんはみな忙しいと承っております。そこできょうはほんとうに忙しがっておられる方と,それからいっしょに働いておられる方,それを第三者として学問的に見ていただく方にお集まりいただいて,それぞれの立場から忌憚ないお話をしていただきたいと思います。
 最初に杉先生,忙しい,忙しい,と言いますが忙しいというのは主観的にきまるものであるかどうか,また客観的に忙しさといったようなものを判定できるのかどうか,その辺をひとつご解説をいただきたいと思います。

グラフ

わが国初のプライベート・クリニック—山王病院

ページ範囲:P.9 - P.16

長谷和三博士の山王病院は,人これをデラックス病院として驚異の目をみはっている。デラックス病院は,建築の面においても,またその他の諸設備においても豪華版であるが,カメラの力だけで,山王病院の全貌を充分にキャッチすることはできない。そこには,山王病院の山王病院たるところの性格があり,開設者兼管理者,長谷和三博士のブイロソフィーの発露がある。
前者が病院の有形文化財であるとすれば,後者はその方面の無形文化財として注目に値するものがあろう。わが国で進歩せる病院関係人が,これからの病院の新しい体系として夢に抱いてなかなかに実現し得なかった病院が,個人の力で現実化したからである。いな,個人なればこそその実力によってやってのけられたのであろう。

病院管理講座 理論編・11

病院の組織(Ⅷ)—施設的業務

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.77 - P.81

 前号までは,診療と看護という病院本来の医療業務または対患者業務Services for patient careの組織について述べてきたが,これらの業務を包括して1つの経営体または施設としての有機的な自律的活動体としての病院がその機能を発揮するためには,もちろん最高管理組織および最高経営組織の存在が必要であることは論を俟たないが,対患者組織に共通な業務であって,しかもそれを一括して機能化,中央化し,専門化することが,組織全体を有機的に強化する結果となる業務が存在する。この業務群を総括して施設的業務Institu-tional servicesと名づけることにする。一般に病院の事務部門で扱っている業務である。

実務編・10

病院物品管理の実務

著者: 久城孝

ページ範囲:P.83 - P.87

 聖ルカ病院で日常使用されている物品は,医療用資材をはじめとして,燃料,食料品,設備,什器,一般消耗品,給食材料等数千種類におよぶ物品がたえず動き,その支出額は診療収入の約40%をしめている。
 それらの物品を取扱う主な部門である用度課,営繕課,検収課,倉庫課,リネン裁縫課と院内各請求部門との間に行なわれる物品請求の順序と,それに伴う保管業務,購買業務について実際的な面について述べてみる。

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事務長日記

著者: 檜原謙

ページ範囲:P.88 - P.90

9月2日(月)
 9月の声を聞くと,さすがに強い日射の中にも何となく秋の気配を感ずる。法師蝉がしきりに鳴いて,夏の終わりを告げるようだ。
 今日から,増収対策の一環として,上級病室の差額を若干値上げし同時に,2床室の窓際ベッドにはさらに1日200円だけ差額を多くすることになった。部屋に差額をつけるだけでなく,ベッドの位置にまで差額をつけるということには異論もあり,また,いかにも苦肉の策めいた感じを与えるかもしれないが,位置によって環境条件が違う以上,それは当然だとも言える。国鉄が寝台料金に上段,中段,下段の差をつけているのはその好例だ。あらかじめ,上級病室には差額値上げの通告を廻わしておいたのに,今までのところ特別苦情は出ていないという。とくに,2床室の窓際ベッドにいる人からは,「今まではドア側の人に気がねだったのに,料金の差ができて気が楽になった」という声すら出ているという。上級病室に入るほどの人には,今回の値上げ額ぐらいは問題ではないのかもしれない。あるいは他の諸物価の動向から見て,それは当然だという理解もあるのだろう。午後,用度課職員との懇談会。これは7月下旬以来,チーフ抜きで各課職員と順ぐりに行なってきたものだが,今日は全員が筆記用具持参でなかなか旺んな意気込みと見えた。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.100 - P.100

 本号は久し振りに「看護」を特集とし,問題を2つにしぼりました。第1は「看護業務における中間管理者」とし,婦長のあり方を検討しました。看護組織で最も大切なものは,第一線監督者である主任看護婦であって,そのあり方は大いに検討されねばなりませんが,これは後日改めて徹底して検討することとして,従来全く問題にされていなかった婦長をとり上げました。大病院ばかりでなく,最近は中病院でも総婦長と主任看護婦との間の中間管理者である婦長制をしく病院が増えてきました。しかし実際には宙に浮いているところもあるので,ここには焦点を合わせました。この婦長を論ずるときには当然総婦長と主任看護婦のあり方を解明せざるをえませんから,おのずから看護部内の管理のあり方が明確になります。従って全病院にご参考になるものと信じます。
 次に「看護業務の軽減法」の問題です。どこの看護婦も多忙を訴えています。しかし多忙といってのみいたのでは問題は解決しません。ここらの心理状態については「看護婦と忙しさ」という座談会の中で取扱ってもらいましたが,実際の仕事の合理化について,進歩した病院の改善法をご紹介することに努めました。病棟部内は病院内のあらゆる部門に連なっているために,従来ここにいろいろのものがシワヨセされている事実があります。

Hospital Topics 経営

付加価値について

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.92 - P.92

 最近の経営問題のひとつは,医薬品の使用量の著増である。保険医療での使用薬剤の制限が大巾に緩和されたこともあって,この1,2年の激増ぶりは目ざましいものがある。この現象は収入面では稼働額の増加となってあらわれるから,経営当事者としては割合に楽観的であるようであるが,採算性からみるとあまり良いこととは思われない。収入の増加があっても,そのほとんどは材料購入費用にふりあてなければならずいわば病院会計を素通りする部分であって,むしろ多額,多種類の医薬品使用による業務量の増大や,倉庫や保管設備の費用の増加,物品管理上のロスなど,消極面を考えると,採算性のうえでは効果はうすいものといわざるを得ない。したがって経営的な観点からするならば,問題なのは病院に所得として帰属する部分の割合,大きさである。そのためには総収入を把握するだけでは不十分であって,この純収入分の算定が必要である。
 ふつう生産経営では,企業の所得分の算出法として付加価値をとっている。これは収入のうちから,原料材料の費用,固定資産の費用としての減価償却費,他産業からの用益の購入(たとえば通信費,印刷費,修繕費など)など,収入実現のための費用であって当企業の所得とならない部分を控除した残額である。このなかから職員の資金や,地代,利子,配当,税,社内留保などがあてられるわけである。

給食管理

働きやすい調理室—厨房設備関係

著者: 宮川哲子

ページ範囲:P.94 - P.96

 栄養士の資質向上が要望され,今年は第1回の管理栄養士の国家試験があることになった。このことは是非必要なことであり,高度の知識と技術によって各種栄養業務にたずさわるべきであることは言をまたない。ことに病院における栄養士は,病気治療の一助をなす治療食を担当する者として,病理および献立作成調理の技術をそなえ,なお患者の食生活指導者として人格的にも鍛練される必要がある。一方,病院側も病院内における栄養士の地位,いわゆる組織的にもどこにおくべきかをもう一度考慮していただきたいものである。現今では昔と違って大部働きやすい地位にあるが,いまだに調理師なみに扱われている面があって,身分,地位の低さと仕事のやり難さがわざわいして,有能な栄養士が終生の仕事として選ぶ気運が少ないのは,残念に思う。このことは病院給食の発展とは逆の方向を歩んでいる傾向が表われていることはなげかわしいことと思う。受入れ体制がよくなれば優秀人材が集まってくるのは自然である。すなわち働きやすい調理室,栄養科(課)とはいかなる条件を備えているべきかここに意見をのべて見たい(例として)。
1.栄養士の組織内における地位待遇問題2.厨房の設備関係3.衛生設備

事務管理

米国労組の病院批判

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.96 - P.97

 加盟の組合員およびその家族を加えると,実に4,500万人にも達する。米国最大の労働者組織AFL-CIOのコミュニティサービス委員会では今年5月「病院に関する報告書」を発表し,病院の現状に強い批判を下している。
 現在の米国の病院の直面している問題点,また労働団体の病院に対する考え方をうかがうに注目すべき資料であろう。

霞ガ関だより

国立医療技術研究所の構想

著者: 長尾英彦

ページ範囲:P.98 - P.99

 近年,医学医術の進歩は著しく,経済の進展,人口構成の老令化などは,国民皆保険の実現とあいまって国民の医療需要の量および質に大きな影響を与えていることは周知のとおりである。
 近年のわが国の死亡率の低下傾向とともに,かつては死因順位の上位を占めていた結核,肺炎,および気管支炎等の細菌性疾患は次第に減少をたどり,最近では,脳卒中,がん,心臓病等いわゆる成人病と呼ばれる疾患群による死亡が大きなウェイトを占めるに至り,人口構成の老令化とともに医療需要の面にも質的な変化を及ぼしている。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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