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雑誌目次

雑誌文献

病院22巻12号

1963年12月発行

雑誌目次

グラフ

古きもの新しきもの—ヨーロッパ病院瞥見記

ページ範囲:P.9 - P.16

10年前にはじめてアメリカ旅行をしたときには、最新さと合理性に魅力を感じた。しかしそれだけであった。病院にしてもこの100年間の背景を理解すればよかった。しかし今度のヨーロツパ旅行では、古い時代からの文化を背負いながら、新しいものを作ってきた、古い民族のたゆまない努力の道程を認めないわけにはゆかなかった。Lかし戦後この古きヨーロッパは、アメリカからの文化の逆輸入を受けて、古きものの中に大きな文化革命が起ころうとしている。病院はもちろんそのひとつである。

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経営的に見た医業

著者: 守屋博

ページ範囲:P.19 - P.26

まえがき
 わが国の医療制度を複雑難解にしている原因は,医療の提供者の大部分が資本主義下の企業者として行なわれているからである。一方で医療は利潤の対象とすべきでないという理念があるのに,現実には現在の社会制度がそうであるのか,あるいは長い歴史の伝統の惰性であるのか,大部分の病院,診療所は私企業的に運営されている。
 企業の本質は,多額の資本を固定した設備を利用し,多額の材料を投入し,多数の従業員を専属雇傭して,生産またはサービスを社会に提供するのであるから,医師が単独で自分の技術を提供する診療所においては,設備の面からも,従業員の面からも,企業的制約を受けることが少ない。これに反して,病院の場合は,投下資本についても,雇傭従業員についても,非常に企業的であり,よきにつけ,悪しきにつけ,その影響を受けることが大である。

岩手県立病院における会議制度の統計的観察

著者: 伊藤順夫

ページ範囲:P.35 - P.42

I.緒言
 労務管理のやかましくなった今日,人間関係改善の大きな方法の一つとして,会議制度は再考されねばならない。
 今回,岩手県立30病院における会議の実施状況について調査したので,報告する(第1表,第1図)。

医事業務の今日的状況と問題点

著者: 江本邁夫

ページ範囲:P.43 - P.45

1
 医事業務の性格が医療事務一般を意味しているため,とかく業務内容があいまいな印象をうけ,事実,それぞれの病院で取扱う内容が多少とも異なっているようである。
 医事というものがその重要性を言及されながらも取扱い内容の「あいまいさ」故に正当な?位置づけが施設においてなされていないのは,存外,そういうところにあるのかも知れぬ。

肺結核患者の入所前における諸調査について

著者: 小林信三 ,   菅野辰子 ,   大崎康二

ページ範囲:P.47 - P.51

Ⅰ.はじめに
 入所患者について入所前のいろいろの状況を知ることは,療養所を管理運営する上においても,また患者の療養を指導する上においても,貴重な資料を提供してくれるものと考えられるので,私たちは今回,入所患者約300名について,主としてアンケート形式によりいろいろの角度から入所前における患者の状況を調査してみた(アンケートを行なうに先だって,調査票を各患者に配付する前に,患者会の組織を通じ各病棟の代表を集め,このアンケートを行なう主旨をよく説明して極力協力してもらうように計った)。

短期人間ドック検査成績へのパンチカードの利用

著者: 渡辺健五

ページ範囲:P.53 - P.54

 私どもの病院は,すでに本誌1)に紹介されているが,札幌の近郊農村都市で人口約4万余,最近とみにベットタウンとして開発されつつあり,病床数も入院430。近々500床に増床の予定で,外来は日約400名前後,最近サービス棟が建設され,これまた近い将来は5階建てとして,諸設備の中央化が計画されつつある。
 病院の概況はさておき,パンチカードは各病院において大いに検討活用され,また種々のケースが報告されているが,私どもも病院学会2)において,薬局管理の一方法としてのパンチカードの利用について述べ,その中で,さらに薬局以外の利用として,病歴,入院,職員健康管理カードまで附言した。

Parisの救急外傷センター

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.57 - P.62

はじめに
 フランスの救急外傷センターの設立運動は約30年前に遡る。昭和7年,Paris大学整形外科教授Dr.MathieuはCochin病院のLister病棟を主宰した。当時その病棟の定床は77床で,第一次大戦々傷患者や交通外傷患者やさらに災害外傷者等で外来患者は激増し,病棟は常に満床であった。教授はParis市会に対し病棟拡張か外傷センター新設かを提案し,市会も応諾の決議をした。その後数カ年経過してようやく予算措置がなされ,交通量の多い《下町地区》の中から,Taubourg-Saint—Jacques通りのCochin病院が敷地に選ばれ,1,900万円で1病棟を新築することになった。これは将来の外傷センターの一部をなすものであり,完成図としては地下1階,地上3階で1室14人から18人定床で総計152床を定員とし,職能訓練,理学療法,研究実験室を含む最新の設備を施す予定であった。1941(昭和17年)2月,国も本センターに失業対策費から2億9千万円拠出することとなり,基礎工事が開始されたが,ドイツ軍占領のため,工事は中断された。戦争終了と同時に工事再開の声が関係者の間におこったが,昭和16年の企画がみすぼらしく,また,Paris解放前ひそかに占領下で続けられた医療改善有志会が1病室当りの人数制限を強調し,さらに専門医は手術や治療手技の進歩に基づく新設備を要求したので,旧計画はふたたびねりなおされることになった。

定年制についての一考察

著者: 菅谷章

ページ範囲:P.65 - P.69

 労働者の労働能力に関係なく,一定年令に達した労働者を一律に強制的に退職せしめる定年制は,わが国人事管理政策の一大特質であるといえる。

事務長日記

著者: 桧原謙

ページ範囲:P.94 - P.96

10月1日(火)
 朝,宿で目を覚ますと雨。北海道,そして第13回日本病院学会の第1日目が雨というわけでちょっとがっかりする。
 会場のクラーク会館は,学生の集会所にも使われていて,設備も環境も実にいい。会長の奥田先生の陣頭指揮で,万全の準備体制の下にプログラムは円滑に進行。当院の,K課長,看護婦のN嬢,検査士のU嬢等の発表もなかなかのできばえで満足する。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.102 - P.102

 このひと月の間に大事件が続発しました。三池の炭鉱大爆発,鶴見の国鉄大衝突——ともに数百名の人びとの生命が奪われ,日本の急速な経済膨脹のヒズミがこの現象を起こしたのではないかという疑問を,日本人の多くの人びとの心の中に起こさせました。実に11月23日には世界中の人びとの敬愛と信頼を集めていたケネディー大統領が暗殺されるという,全く思いがけない大々事件が起こり,改めて世界中の人びとは平和への祈りと誓いを新たにしました。経済成長といい,主義主張といい人命を犠牲にすることは許されるべきではないでしょう。しかしこれらの突発事故ばかりでなく,毎日交通事故や工事事故で多くの人びとの命が失なわれてゆきます。このような事故が,社会的に予防されることを心から望むとともに,私ら病院人にとっては一人でも多くのこれらの犠牲者の生命を救い,不幸を最小限度にくいとめねばならぬ決意を新たにします。

「病院」 第22巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

報告

第13回国際病院会議に出席して

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.29 - P.34

 病院に関する国際会議として唯一である国際病院会議International Hospital Congressは,国際病院連盟International Hospital Federationの主催するものであって,隔年に開かれていることはご承知の通りである。前回はイタリア病院協会が担当してヴェニスで開かれ,日本病院協会(連盟正会員)の小野田参与が本誌の第20巻12号でその模様を報告された。今回の第13回会議はフランス病院協会の手によってパリーで開かれ46カ国1,500人の参加者をえたものであり,今までの会議の中で最も盛大なものとなったといわれている。今回もわが国から12名の参加者があったが,幸い私も参加しえて親しく見聞することができたので,本誌上を通じて日本の病院界にご報告したい。
 5月15日に羽田を立ってから欧洲の各地を駆けめぐり,ローマからパリー郊外のオルリー飛行場に降り立ったのが6月9日の昼近くであった。今日こそは今回の旅行の主目的である国際病院会議の第1日に当たる。陽光のふりそそぐ世界の都パリーに入り,ルーブル博物館の近くに旅装を解くとただちに会場であるUNESCOビルに向かった。これはもちろんUNESCOの本部のあるところで,アンバリドの近くに位置し,超近代的な建築様式をほこるものである。

シンポジウム

病院図書室の管理

著者: 石原信吾 ,   橋本寛敏 ,   小池信子 ,   今井義文 ,   松下与 ,   中島克三 ,   河上利勝 ,   村田三千彦 ,   小野田敏郎 ,   鈴木明 ,   村田嘉彦 ,   五十嵐衝 ,   戸嶋豊 ,   日置治男 ,   下山順司 ,   平賀稔 ,   三竹とせ子

ページ範囲:P.70 - P.80

 第41回日本病院協会診療管理部会は昭和37年12月18日病院図書室をテーマとして,虎の門病院を会場としておこなわれた。参会者は石原虎の門病院事務長よりその概要をきいたのち図書室を見学し,つづいて討議にうつつた。

病院管理講座 理論編・12

病院の組織(Ⅸ)—支配体論

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.83 - P.87

 前回まで数号にわたって,近代病院の機能として必要な業務を,系列的な職能群としてグルーピングしてきた。そしてこれを職能部門としてそれぞれの管理機構についても,ある程度附言しておいた。今回は,管理を行なうに必要な権限の源泉である支配体というものについて私見を述べてみよう。

実務編・11

病院薬局管理の実際(Ⅰ)

著者: 上野高正

ページ範囲:P.89 - P.92

薬局の性格
 薬局は専門領域の機能を発揮して,病院機能の遂行に寄与する病院内の一組織であって,その立場は麻酔科,放射線治療科等と本質的に同じである面と,事務部門と同じような病院の中央機構を構成する一分科である面との,2つの面をもっている。
 前者は調剤および薬学に関するコンサルタントの機能で代表され,後者は補給で代表される。どんなに病院が小さくても,薬局が果たすべき役割はかわりがないが,その病院の規模や性格,薬局に働く人の識能によって,薬局が果たす各種の役割間の量的比が変化する。また大きな病院程機構の分化が著明なのが普通である。

霞ガ関だより

精神衛生法改正意見の二,三

著者: 大谷藤郎

ページ範囲:P.101 - P.101

 現行の精神衛生法が制定施行されたのは,昭和25年であった。それまでの精神衛生関係の法律というのは,明治33年の精神病者監護法,大正8年の精神病院法であり,この従来の旧2法にくらべると,昭和25年の精神衛生法はいろいろな面で画期的な進歩がみられていた。
 しかし,昭和25年制定当時には新しかった精神衛生法も,今日になってみると,問題点がないわけではなく,ことに精神障害に関する面について,その感じがふかい。以下問題とされている主な点について述べる。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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