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雑誌目次

雑誌文献

病院22巻2号

1963年02月発行

雑誌目次

特集 診療管理

診療監査—病院診療業務の自己批評

著者: 橋本寛敏

ページ範囲:P.17 - P.25

 会計監査はいずれの事業体でも励行されるが,業務監査はそれ程励行されないのは業務の種類によって難易があるからであろう。診療業務の監査は最もむつかしい部類に属する。患者を対象とする診療が効果を挙げたか,過失があったかを正確に見極めることは極めて困難であり,監査を行ってもその確実性が疑われる場合が少くない。診療業務は医師が患者と一対一で行う隠れた業務であり,開放的でない。それに病院では医師が一人でなく集団をなして一人の患者を取扱い,それに技士がつき,看護婦が看護をし,それを補助する従業員もある。それで診療業務を徹底的に監視することは極めてむつかしい。病院では会計監査は励行されるにも拘らず診療監査が容易に行われない理由はここにあるのだろう。しかし病院管理の上から見ると,会計ばかり整っていても,主要機能である診療が乱れて効果を挙げないのでは何にもならない。診療監査の方が会計監査よりも遙かに重要であろう。
 マッケカーンMacEachernは早くから診療監査の必要を唱えてその方法について研究したらしいが,なかなか纒らなかったと見えて,晩年になって初めて著書にこの項目を書き加えた。アメリカでも診療監査はどの程度徹底して行われているか疑わしい。病院開設経営者が会計監査と同時に診療監査を行うとすれば,監事に診療監査のできる人がなければならないが,その適任者は極めて少い。病院管理者が自ら診療監査を行ったとしても,米国ではそれが行い難い。

診療管理序説

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.27 - P.31

1.病院管理のなかにおける診療管理の位置づけ
 病院管理のなかに診療管理という部面のあることは疑いないが,その診療管理の範囲内容については必ずしも明確でない。そこで診療管理を如何に行なうべきかを論ずる以前に診療管理とは何ぞやという問題について少し考えてみよう。
 そもそも管理には色々な段階及び局面があってこれらを系統的に分析することは甚だ困難である。しかし一つの分類方法は,要素的管理と構造的管理に分けることである。この要素的管理というのは生産あるいはその他目的とする仕事をなしとげるのに必要な諸要素即ち,人,物,金等のそれぞれに対して最も能率的な使用を考える管理であって,人事管理,資材管理,設備管理,財務管理といったものがこれに含まれる。この要素的管理は横の管理と言うことも出来る。

診療管理の諸問題

著者: 小野田敏郎

ページ範囲:P.33 - P.37

はしがき
 診療管理とは診療の面における人と設備との掌握指揮である。人員管理の面ではチームワークと適性配置各科の有機的なつながりが必要であり,診療設備は中央化するべく,臨床予防医学が重視され,さらには病院と病院との地域的関連性をも図ってゆかなければならない。日本病院協会診療管理部会はこのような問題を研究討議するために昭和33年5月以来毎月1回の研究会を持ってたゆまざる勉強をつづけている。それらの記録はすでに本誌に報じているが,さらにその後に検討された諸問題について記し,読者の参考に資することとする。

診療センターおよびグループ・プラクティス(医師会病院)について

著者: 島内武文 ,   前田信雄 ,   車田松三郎

ページ範囲:P.39 - P.44

医療の発展の方向
 医療のたどる段階をみると(第1表),中世に行われた様な経験的宗教的で看護を主とした伝統的医療が,近代における医学の発達によって今日の科学的医療となり,ここに専門的な技術や設備が重要な役割をもつ様になってきている。そこに病院というものが,従来は身よりのない一部の人々のための単なる収容所であったものから,あらたに一般に病める人のための医療の場所として発展することとなった。
 しかし今日においては,あまりにも専門分化した科学的医療が真に患者にとって利用されるために,これを患者を中心として総合して用意し,また今日単なる治療によっては充分でない成人病その他について,予防乃至早期診療を行い,すすんで患者が社会に復帰するまでのリハビリテイションに至る一貫的医療を与える様にすることが,積極的に考えられ工夫されてきた。この総合一貫的医療の一つの試みとしては,後にのべる診療センターが重要な意義をもっている。

病院におる麻酔科のあり方

著者: 山下九三夫

ページ範囲:P.45 - P.50

はじめに
 わが国に於ては麻酔科が10年前東京大学に設置せられてから,現在迄に九大学(東北大,京都大,慶応大,札幌医大,北大,岩手大,順天堂大,日本医大,九大)に完全講座が設けられ,近く他の諸大学に於ても次第に認められるようになり,一部では麻酔科外来や病床も設けられている。これに伴い各病院に於ても麻酔科が独立設置される傾向にあるが,その意義やあり方については,各病院各様で,麻酔に専従する医師が指導実施するところもあれば,外科や整形外科,歯科医時には看護婦が実際に当たる病院もあり,雑然混然としてその担当者は責任と労働の過重に苦慮している現況である。一方昭和35年3月14日より麻酔科標榜医制度が実施せられ,厚生省に於ける麻酔科標榜審査委員会の審査と医道審議会の決裁を経て附1の如き基準で麻酔科標榜を認可された者は全国で凡そ517名(昭和37年11月現在)に近くなり,これとは別に麻酔指導医制度(附2)が麻酔学会の手で実施せられ,麻酔科標榜医の指導育成にあたるべき指導医の認可試験を昭和38年2月より実施しようとしている。このように麻酔科に関する制度的方面は着々として進んで来ているが,これらの制度と現況とを併せ考え「病院に於ける麻酔科のあり方」はいかにあるべきかという問題を各大学麻酔科教授や斯界先輩各氏の意見をアンケート式に求めたものをも参考にして概観したのがこの小論である。

手術室の空気調和の実態について

著者: 大村勉 ,   松下与 ,   坂本清一 ,   岡田蔵司

ページ範囲:P.51 - P.55

 本研究は第4報迄に分け,今回は第1報,空調の測定と暖房期に於ける実態について述べる。第2報は冷房期に於ける実態を,第3報は不調和の原因窮明をそして第4報は将来への考察として発表したい。
 本論に入る前に空調の必要性と測定の目的について述べなければならないので記述すると,現在の手術室の基本的な設備条件を次のように仮定すると,1.防爆設備,2.照明設備,3.空気調和設備4.パイピングシステム,5.色彩調節に分けられる。

マイクロ・フィルムによる病歴の保存について

著者: 郡勝

ページ範囲:P.57 - P.59

はじめに
 病歴の保存については,戦前戦後をとわず当事者間には相当頭痛のタネであったことは周知のことである。
 特に戦後は病歴の中央管理化が叫ばれ,その整理方法と共に保存方法が重要な関心事項となって来た。

第4回短期人間ドツク研究会抄録

1 短期人間ドツクにおける尿濃縮テストの実施成績について,他

著者: 小関忠尚 ,   中川明子

ページ範囲:P.60 - P.69

 当院短期ドック受診者で正確に尿濃縮テストを実施し得たものの中から糖尿病者,循環器泌尿器以外の著しい疾病異常を認めたもの等を除いた282例についてその成績を検討し次の結果を得た。
 高血圧症(血圧160/100以上)40例では中10例に尿濃縮力低下(最高比重1020以下)を認め,60才以上12例中6例(50%),40〜50才26例中5例(19.2%),20〜39才0%と高令に至る程尿濃縮力低下の傾向が著しい。動脈硬化症(眼底所見KW第2群以上)74例では13例に尿濃縮力低下を認め,やはり高令者に至る程その傾向がいちじるしい。又心電図異常(心筋障害,冠不全)を有する者53例中12例に,慢性胃炎を有するもの11例中3例に尿濃縮力低下を認めた。更に高血圧動脈硬化心電図異常の3つを有する者ではその41%に,2つを有するものではその24%に,又1つのみを有するものではその13%に尿濃縮力低下を見,多く合併するものほど尿濃縮力低下を来すものが多いことを知った。

グラフ

新しい事業所病院—東洋工業KK附属病院

ページ範囲:P.9 - P.16

 東洋工業株式会社の付属病院は,わが国病院中デラックス型の最たるものと羨望の的となっている。その医療設備には目をみはらせるものがある。
 このような病院が何故できたか。私たちは会社が成長会社であり。そのありあまる利益から大金を投じてと単純に考えていた。しかし森田院長は語る。

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第13回日本病院学会を開催するにあたって

著者: 奥田義正

ページ範囲:P.70 - P.70

 昨年東京で開催された第12回日本病院学会の協議の結果次会開催地を北海道に引き受られた江別市立病院長佐川先生と旭川日赤病院長三宅先生と厚生省北海道医務出張所長有末先生の三人が御出でになり,第13回日本病院学会を北海道で催すことになったのでその会長を引き受けて貫いたい,とのことでありました。あまり突然であり吾々の病院系統の国家公務員共済組合連合会本部にも連絡した上で回答致したいと申上げたところ数日を出でずして,厚生省病院管理研究所の吉田幸雄先生から今井理事長に相談致し御諒解を得たとの報告があり,また種々の事情もあるというのでお引き受け致した次第であります。
第13回日本病院学会の北海道開催についての世話人構成は

某結核療養所41年間の在院日数の変遷

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.71 - P.74

 鎌倉市,額田保養院の開設(大正9年11月1日)から昭和36年10月31日までの41年間の退院者在院日数を調べその時代的変遷を考察した。
 開設から昭和31年10月までの在院日数については形式は異なるが先に簡単に報告1)したので,極く初期のことに誌面を費すことをさけ大正9年11月から昭和23年10月までの28年間の2,635退院者(除死亡)の在院日数は一括し第1表に示した。この28年間の総平均在院日数は127日であって短期間で退院した者が非常に多い。実はこの28年間を四期に分けてみると,時代のすすむと共に徐々ながら平均在院日数はのびてきている。この四期の成績表は省略したが,最初の8年間(大正9年11月から昭和3年10月まで)の583退院者(除死亡)の平均在院日数は90日,次の8年間(昭和3年11月から11年10月まで)の761退院者(除死亡)の平均在院日数は116日,その次の8年間(昭和11年11月から昭和19年10月まで)の1,121退院者(除死亡)の平均在院日数は140日である。昭和19年11月から昭和23年10月までの4年間,すなわち大束亜戦争の敗色濃厚となった頃から敗戦後の混乱期における170退院者(除死亡)の平均在院日数は208日となったが,この4年間でも在院期間が1ヵ月以下の者が退院者の約14%を,在院3ヵ月以下の者は約42%を占め依然として短期在院者の数が多い。

質疑応答

著者: 紀伊国

ページ範囲:P.94 - P.94

 問 病院,有床診療所等の診療成績に対する薬品費の割合について知りたい。
(京都府下某診療所)
 答 診療収入に対する医療用材料費の問題は,まず,その病院,診療所が投薬,注射等によりどの程度の収入を得ているかを見る必要があります。現在の点数表の考えでは,「つけ落し,請求洩れ」を除いて,使用の医療材料と,投薬料,注射料収入は直結していますから,投薬注射料収入が診療収入の多くを占める施設では,いきおい薬品費もかさむ事となります。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.96 - P.96

 全国的に寒波がおそい,特に積雪地帯は大雪が降り,病院にもいろいろの被害を与えたのではないかと思います。病院長さんはじめ,職員の方々の御苦労をお察し致します。

病院管理講座 理論編・2

病院の機能と使命

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.75 - P.79

 病院の経営や管理を論ずる前に,一応病院とは何んであるかを整理しておく必要があるだろう。しかしながら,これを一言にして定義づけることは困難なことであって,前号の病院の歴史で述べたように,社会の変遷や国情によってそのあり方は異なるものである。しかし病院というものを存在せしめる社会的要因は,社会の進化に伴って一定のものが存在し,その要因の組合せの変化によって,その様相に相違を来たすが,その進化の方向は一つの方向に向って行くように思われる。ただし,日本の現在の病院は,その中でも特に異なった発生と発展過程を経て来ているので,先進国の病院とは,現在では相等違ったものとして考えねばならぬだろう。
 現在の時点における国際的に最も新しい考え方を示すならば,1957年の第10回WHO総会の際に持たれた,「公衆衛生計画における病院の役割」という専門集会の結論であるだろう。

実務編・2

事務管理(Ⅱ)—外来受付業務

著者: 高橋元吉

ページ範囲:P.81 - P.85

1.外来医療事務の分化
 従来我国の病院における外来の機能は,医師の診療活動を中心として,総ての行為が確立されていたが,医療の専門分化の進歩,社会保障制度取扱上における複雑性,外来患者に対するサービス,外来機能発揮上の能率化,などの諸要件によって,診療業務,看護業務,医療事務,などを分業化し,総合的に専門化する必要性が生じたわけである。従って,これ等の業務中医療事務については,従来診療,看護部門でそれぞれ各所で同種事務を取扱っていたことがらを,集中化して,能率的にしかもサービスの向上を計るべく確立された業務であるといえる。

Hospital Weather Cock 経営

総医療費と病院経営

著者: K.I

ページ範囲:P.86 - P.86

 昭和35年度の国民総医療費は4426億円,国民1人当り4737円で,国民所得(分配)に対して3.7%に相当すると推計された。国民所得に対する比率としては30年,33年の4%台に及ばないが,国民1人当り金額とすると35年にくらべて実に56%の増加となっている。ここで比率において減少したのは,この医療費の増加にくらべ,国民所得の伸びのほうが世界にもまれといわれるほど高かったためであり,医療費のほうで減少したことは一年もなかった。すなわち年々前年にくらべて10%内外増加しており,とくに35年には国民皆保険のせいもあって16.5%の増加であった。
 国民生活の向上,医学医術の進歩にもかかわらず,医療費は年々確実に増加してゆくという傾向は,我が国だけでなく世界各国の共通な傾向である。たとえばアメリカでも,医療費が1940年には40億ドルにすぎなかったのが,60年には265億ドルと6倍以上になり,国民所得に対して5.4%,可処分所得に対する個人保健衛生費としてみても6.7%と非常に高率を占めるに至った。イギリスでも所得および医療費の増加は同様であるが,医療費が密接に国家負担と関係し,統制できる体制にあるためか,国民所得に対する比率は年々4%内外で不思議に一定している。すなわち個人負担分を操作して受診率を調節しているためと思われる。

診療管理

診療内容のチェック・リスト

著者: K.I

ページ範囲:P.87 - P.88

 病院における診療内容のよしあしを客観的に評価することはなかなかむずかしい。そのためアメリカでも色々試みがなされているが,その一つに病院機能評価100条項というのがある。これは理事会病院自体政策管理職員及び診療という6項目に分けて,病院を評価する場合に目をつけるべき点を列挙したものである。この最後の診療(care of patients)の項目に含まれている23条項は次のようなものである。

事務管理

電子計算機で請求事務を—病院会計事務の革命

著者: K.K

ページ範囲:P.88 - P.89

 病院に於ける医療費計算の複雑さはどこでも頭痛のたねである。医事業務の40%以上を占める請求事務の合理化には色々な試みがなされているが,どうも決定打の不足の感がないでもない。近年の事務の合理化の焦点は機械化,殊に電子計算機の導入で,我国に於てもそれの使用は一部巨大企業に止らず,相当広範囲に普及し,ますますその利用は広まるであろう。
 近着のModern Hospital誌は.ミシガン大学病院に於ける電子計算機(EDPS)の入院患者会計請求に於ける適用を報告している。

特殊病院

結核療養所のゆくえ—胸部病院の提唱

著者: S.H

ページ範囲:P.89 - P.90

 年1回1日断面調査で実施される厚生省の患者調査(国民健康調査といわれているもの)によると人口10万当りの患者数は,昭和29年を100とすれば昭和35年には入院患者169.8,外来患者163.8と,いずれも激増を示している。これを国民の健康状態が過去6年間に著しく低下したとみる者はあるまい。医療保障制度の進展や国民生活の向上など社会的な諸条件の好転によつて,医療がうけやすくなったことによるものと理解してよいであろう。
 ところが,同じ調査結果を結核患者について観察すると,全く反対の現象がみられる。同様に昭和29年の値を100とした場合,昭和35年の患者数は入院97.1,外来75.2であって,ともに明かな減少を示している。

霞ガ関だより

公的病院の経営実態調査について/病院の洗たく施設に関する通知について

著者: T.S.

ページ範囲:P.92 - P.93

 厚生省は,昨年11月,昭和35年度に実施した「公的病院の経営実態調査」の結果を公表した。この調査は,昭和36年3月に,全国の公的病院のなかから無作為に抽出された382病院について,経営調査,給与調査および病院部門別調査を行なったものであり,この調査の実施後同年の7月と12月の2回にわたって社会保険医療費の改訂(平均15%,病院のみでは18%)が行なわれているので,現在の実態を正しくあらわしているとはいえないが,今後の公的病院の指導に必要な資料であるので,その概要について述べてみよう。
 1.年間の病床利用状況をみると,精神病院では103%,結核病院は厚生省が85%,都道府県が80%,一般病院では市町村以外80%,市町村が76%で,結核病院以外では全国平均よりも利用率が低い。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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