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雑誌目次

雑誌文献

病院22巻5号

1963年05月発行

雑誌目次

特集 放射線部の管理

診療エックス線技師からみたX線科(室)の諸問題

著者: 川崎幸槌

ページ範囲:P.35 - P.40

 近代化された現在の医療においてX線は心要不可欠の要素であり存在である。また予防の面においても検診業務に果たしつつある役割の重要性はいまさらいうまでもない。したがってX線施設も年々増加しその使用頻度は益々上昇しつつある傾向にある。
 一方放射線業務の依存する学問が放射線物理学・生物学・電気工学・写真化学等きわめて専門的なものであり,常に進歩してとどまることをしらない科学である。加うるに放射線はその効果とともにその運用をあやまれば恐るべき障害をひきおこす危険があり,その取り扱いにあたっては極めて慎重を要するものである。

病院放射線科の機能—特にその実態との関連

著者: 塩見二郎 ,   小神俊彦

ページ範囲:P.41 - P.49

序言
 現在各病院においての放射線科の運用,機能的考慮は従来のそれと著しく異なり,大きく変わりつつある。又何がしの病院には専任放射線医が配属され,有能な活躍を示している。併しながら我国における放射線医の養成教育過程の外国のそれに比し,著しく異なっていた関係上まだまだ不充分な面が出て来ている様である。近代病院の一要素であるセントラルシステムの興隆に依り放射線科も多分の影響を受けざるを得ない。即わち中央検査部門の中に放射線に依る診断(検査)を拠り所とする意味も含めて配置されるべきとする意見(治療部門は除外して),又放射線科の独立,自主性を基調とする意見等各々まちまちである。確かに放射線医を臨床病理専門医と同じ基盤に考えて運用を委ね,中検制度を大きく確立した方がすべてに便利な面もあり,又中検部とは全く別意義に考え純粋の独立科としてではあるが,専らサービス科的要素を多分に負わせて有利な面も出て来る。此の場合もむしろ臨床病理医の司る検査部と同様の歩調を取る事を前提としている。又内外科の如く完全臨床独立科の形を採る考え方もある。此等の問題については未だはっきりした結論も定まっておらないように感じられる。

X線室内の散乱線防御についての一つの試み

著者: 柴田正衛

ページ範囲:P.51 - P.56

I.緒言
 X線室の散乱線防護材料として,防護塗料,バライトモルタル,多孔組織を応用した防護材料等が主に使用されている現状である。X線室内の防護材料として具備されるべき要件はX線の遮蔽効果良好なる事,建築材として十分耐久性を有する事,外観優美である事等が要求される。
 厚生省中国医務出張所管内に於ける病院,療養所等の施設に対し防護塗料,バライトモルタルについては既に数年前より防護工事を施工し,その効果,耐久性等については試験ずみである。最近新しく出現した防護材料にて多孔組織を応用したもの(多孔層試料)に関心を持ち,その構造,遮蔽効果及び建材としての耐久性等について検討を重ね,昭和37年度管内の病院,療養所のX線室にこの試料をもって防護工事を施工して室内散乱の減弱効果について工事施工前及び工事施工後の散乱線分布状況を比較測定した。

特別寄稿

核エネルギーの応用と病院計画におよぼすその影響

著者: 長尾英彦 ,   J.Schooneman

ページ範囲:P.17 - P.33

緒言
 本稿は,以下述べるように医学的,工業的,軍事目的のための核エネルギーの応用が病院計画におよぼす影響について記したものである。医学的工業的,軍事的技術などは,それぞれの専門家の領域に属するので,ここでは論じない。われわれのビューローは,Space unitsの総合計画,整備,要求されるスタッフの定員の算出,投下資本や経常費の計算を行なうとともに病院やその他の保健施設の計画に関与している。
 放射性物質は,工業の面や軍事目的のために,主として純粋の科学研究の施設において使用される。一般に医学の面では,使用するに適当な放射性同位元素の数は少ない。しかしながら工業における放射性物質による事故の被害者は,軍事的核実験によって放射性物質で汚染された人々と同様に病院に収容される。

グラフ

病院のかげの担い手営繕課員

ページ範囲:P.9 - P.16

医師看護婦が人体の健康を管理するように病院営繕課は病院建物の健康管理を行ない病院診療業務がスムーズに行なわれるよう日夜努力している。その仕事は縁の下の力持ちて院内一般の人には目立たない存在であるが,その守備範囲の広さは病院本館から遠く職員宿舎まてに及んている。病人を収容している建物は一般の建物の管理と異なり一刻を争う仕事が多く,電気工事,管工事等は,特に診療業務を休止させることなく修理改修を行なうのであるから,大変である。また木工作、塗装の工事も短かい愚者の不在期間を縫って行なわれる。毎日多数の修理伝票が院内各所から提出されるが、緊急を要するものが多く,毎日この伝票からどれを優先して仕事にかかるかを決めるのも営繕課員の頭を痛める仕事である。
近年医療も段々と近代化されてきているので,その整備保守にも最新の知識と専門の技術とが要求されるようになり,一昔前の保守管理の様式ては営繕の仕事はできなくなってきている。最新の設備を持った病院も,その設備の管理保守が完全におこなわれなかったら,かえって設備が病院の負荷になるであろう。このように重要な役割をもっている営繕課の業務が完全に営まれるためには,課員自身の努力はもとより,病院幹部の理解や医師,看護婦の協力が是非とも必要とされるのである。

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精神科職員の蒙る危険について(第Ⅱ報)

著者: 井上正吾

ページ範囲:P.57 - P.63

I.緒論
 前回は高茶屋病院の職員を中心として,患者から蒙る危険を身体的・精神的危険及び,物質的損失について,調査した結果をのべたのであるが,今回は全国の県立精神病院を対象として,大体1年間にどれ程の危険を蒙るか,病院による差はどうして生じるか,その理由を或程度明らかに今後の方針を確立したいと考えた。

近代病院管理とわれわれの理解—特に管理者のあり方を中心として

著者: 蔡恵然

ページ範囲:P.65 - P.67

病院はどう変わったか
 病院,医師,患者,三者の観念及びその関係は第二次大戦終了後欧米諸国,ことにアメリカの影響をうけ日本及び台湾の一部の識者の中に認識が新たにされ改革改善が唱えられてきた。そして20年近くなった今日では完全ではないが,ある程度までの科学的方法に基づく合理的経営管理が病院で行なわれている。即ち過去の病院は一切が医師中心に設備され,管理されてきたのであるが現在では欧米のごとく病院は患者収容の場所であり,一切が患者サービスを中心に発展し,管理経営されるべきであるということが妥当と認められるようになった。そのために看護部門がいち早く過去の形態から脱却して独立し,すべての施設は中央管理され,人的物的にも経済的,合理的点が強調され,また給食サービスの点では栄養学の発展に伴い,薬物療法と相並び食餌療法が設けられ急激な進歩をなした。また患者が日常生活をする環境を清潔にし,静かにして住み心地よく心身両面を快適にするために,看護部門や給食部門などとともにハウスキーピングも重要な一部門として登場してきた。

事務長日記

著者: 檜原謙

ページ範囲:P.79 - P.81

3月1日(金)
 調査室長として来てもらうことになったS君,本日より出勤。調査室は,1昨年開設したものだが,開設後間もなく室長の0君を,退職した会計課長の後任に移したあと,適任者が得られなかったために,そのまま今まで中断されていたのだ。S君は,松山高校から京大法科に進み,昭和21年に卒業してから長い間療養生活を経験した人で,まさに温厚篤実,調査室長にはうってつけの人だ。そのS君を得て調査室が再開できたことは,何としても喜ばしい。
 朝,課長全員を召集して,調査室では今後具体的にどういう仕事をしてもらうかについて相談する。ブレインストーミングのやり方を採用して見たら,どんどん意見が出て,短時間の間に割合いよい結論が出た。

日本病院管理学会結成さる

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.82 - P.82

 4月3日,大阪市の府立社会事業短期大学の一教室において,「日本病院管理学会」の創立総会が開かれた。参加者のおもなものは,順天堂大守屋教授,東北大島内教授,日大大久保教授・高橋講師・神戸医大金子助教授など大学医学部の病院管理学の数育・研究担当者,病院管理研究所の吉田所長,小川,岩佐,一条の各部長,名古屋大山元事務局長,虎の門病院石原事務部長,日医菊地専務理事など,病院管理学にかんし指導的な役割をになって来た専門家と,その他の会員をまじえて30名たらずのささやかな集まりであった。
 総会では学会会則の決定,役員選出,事業計画が論議され,初代会長には守屋教授が満場一致で選任された。また事業としては第一回研究発表会を本年7月,東京において開くことを決定した。その後自由討議にうつり,「病院管理学と医学教育」について各大学から病院管理学の講義の内容が紹介され,教育のあり方について熱心な議論が交換された。

研究所だより

著者: K.K.

ページ範囲:P.91 - P.91

 昭和38年の研修計画につきましては,3月号でお知らせしました様に,長期1回,人事管理ゼミナール1回,短期9日間研修会12回,内院長コース2回,事務長コース4回,医長コース2回,総婦長コース2回,開設者コース1回,と今年度は特に新しい試みとして100床以下の病院の院長事務長合同コースを1回新設しました。申告用紙も都道府県衛生主管部局を通じ,皆様のお手もとに届いていると思われますが,早日にお申し込み下さる様お願い致します。
 尚各コースの時間割は下記の如く予定しております。

質疑応答

著者: 岩佐

ページ範囲:P.95 - P.95

医長の外来への出方
 問 外来でもっと医長に診てほしいという声がありますが,医長の外来への出方はどんなにしたらよいでしょうか。(事務長)
(答)医長の外来への出方は診療科の種類により,また各医局の医師数や医長と医局員の技能の相対的関係により異なることになりますから一概に言うことは出来ません。外来の診療体制は外来患者の利便を考えると同時に入院診療のさまたげにならないように工夫しなければなりません。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.96 - P.96

 病人のためにも,職員のためにも快適な5月を迎えました。
 本号は放射部の管理を特集しました。放射線医学と診療放射線工学の進歩は特に急速であるので,放射部の改新には苦慮されることが多いと御想像します。特に新しい装置を準備する際は財源ばかりでなく,また部屋の設計や設備の工夫ばかりでなく,その部の管理法についても検討されることと思います。

病院管理講座 理論編・5

病院の組織(Ⅱ)

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.69 - P.73

 前号においては,管理組織の一般論を,主として,Louis Allenの組織論をもとにして説明したが,本号から病院の組織について述べて行こう。

実務編・5

病院ハウスキーピング—その実務と考察

著者: 井上貞子

ページ範囲:P.75 - P.78

はじめに
 著しく医学が進歩した今日,病院ハウスキーピングに対する必要性と興味は,それと並行して深まってきた。私は戦前一看護婦として聖ルカ病院に勤務していたが,その折外人ハウスキーパー(ミス・ハーバート)から,主任ナースの会合や病棟での接触のたびごとに,実務をともなった指導を受けてきた。20数年後の現在,私は,この方面でもっとも理解ある橋本院長のもとで,当時の教えを思い出しながら,日夜実務に励んでいる。そして今,種々の経験から,私は一つの大きな収穫を得た。医学がすばらしい進歩を見せたとはいえ,ハウスキーパーの仕事に関しては,常に注意深く,人間関係を大切に,私事を忘れての熱意と責任を持ち得る人,つまり完全な人間性をそなえていなくては不可能だということである。
 戦後,原素行先生,守屋博先生の御熱心なる御研究があずかって,今日,ハウスキーピングに,完全な理論的解明,また実務上の解明がなされているが,個々の病院においても徐々にこの研究によったハウスキーピングが実施されつつある。私は,私自身の経験から,ハウスキーパーと病院内での位置と関係とを許される範囲において述べてみたいと思う。

Hospital Topics 経営

就業規則

著者: A.S

ページ範囲:P.84 - P.85

 病院の多くは就業規則の作成を必要とする事業場であるので,今回は病院管理者のために,就業規則の成立過程と,その法的に必要とする内容,作成の手続き,効力ならびに労働協約との関係について,簡単に説明してみたい。
 資本制生産が小規模生産から大規模生産に移行するに従い,企業が多数の従業員を雇用するようになると,必然的に職場を統轄し,労働の効率を高めるために職務規律の設定や,始業終業の時刻ならびに休憩時間を統一化する必要に迫られてくる。こうして就業規則は,歴史的には,企業経営における労働力を組織・秩序づける必要から明文化されてきたが,その当初は,賃金の決定・計算および支払方法や,退職金・諸手当・賞与などの労働条件ならびに職場の安全衛生に関する事項は含まれないのを常としていた。しかし,労働者の発言力が増大し,労働基準の明示を要求する声が高まってくると,就業規則は,当初の単なる職場規律的なものから,次第に賃金等をめぐる労働条件の明示や労働者の待遇基準を明確化する方向へとその重点が移ってくる。けれども,その内容・本質のかかる変化にもかかわらず,就業規則の制定や変更は,依然としてもっぱら使用者の恣意に委ねられていたのである。わが国の労働基準法は,就業規則の制定・変更を労働者側の意見をきくことを要件としながら,終局的には,それらを使用者の一方的な決定に委ねているのである。

看護管理

米国看護学校に常勤する看護婦とその教育背景の意味するもの—ANA統計資料"Facts About Nursing"より

著者:

ページ範囲:P.85 - P.87

 1960年(昭和35年)1月にNLNによって調査された看護学校に専任として働く看護婦の数は,表1の如く〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓約71%は,大学制度をとらない,diplomaプログラム(卒業時に学位を与えず単にその専門の分野においての学業を終了したという卒業証明を与えるもので,日本の各種学校の規定による看護学院にほぼ似ている)による看護学校に常勤しているものとなっている。同じ調査で発見された実態のうち,特筆すべきことは,このdiplomaプログラムによる看護学校の専任教員看護婦の欠員が大学制度の学校より多くあったということである。
 看護婦教育の内容についての質の評価は,そこで教える看護婦の数のみでは知り得ない面が多い。日本の看護学院に働く専任教員看護婦等も次第に臨床経験に加えて,特定の指導者講習会或はコースで勉強をして後に,はじめて,教務にたずさわっているという例が増えている様であるが,正規の教育制度にのっていない講習会やコースであるため,その期間も1ヵ月,3ヵ月,最大で1ヵ年といった補習程度のものが多い。

給食管理

大学附属病院の栄養士の研究会について

著者: M.H.

ページ範囲:P.87 - P.88

I.全国立大学附属病院における栄養主任会議
 限られた予算内で十分にサーヴィスをすることは非常に困難な問題であります。その範囲内で如何にしたち医師の治療に協力して効果をあげることが出来るか,よりよい給食が出来るか,その他給食の業務内容についてどのようにしたら能率的に出来るか,という諸問題についてお互いに勉強し見学をということが度重なって大学としての栄養士のあり方を研究したいという念願をもつようになりました。ちょうど栄養士会では栄養改善学会が盛んになって来て大勢集まりがあるので,その時を利用すればよいことになり上司の御協力を得て出張をさせて頂き会議をもつようになり成果が得られるようになりました。

Hospital Weather Topics 特殊病院

アルコール中毒者の専門病棟について

著者: H.K.

ページ範囲:P.88 - P.89

 東京湾の潮騒が砂丘の松林に静かなリズムを奏でている野比海岸の一隅に,現在着々と建設されつつある五十床の近代的な病棟があります。これが完成の暁に,人間性の弱さの故に,或はその厳しい人生との戦いの故に,心身共にアルコールという物質の与える幻影の慰めに魅惑され,その幻想性を知りつつもそれから自力で脱れ得ない不幸な人々の心身を医しかつ鍛練する場となる予定であります。
 アルコール中毒症に多年悩んできたフランス,スエーデン,アメリカ等の諸国に於いては,早くよりその対策は組織化され一貫した社会的組織を通じてその治療が行なわれております。

霞ガ関だより

医療制度調査会の答申について

著者: T.S

ページ範囲:P.92 - P.94

 医療制度調査会は,さる3月23日,厚生大臣に対して「医療制度全般についての改善の基本方策に関する答申」を提出した。その後,各新聞社はこの答申に注目して大々的にそれを報道すると同時に,ただちにその解説や社説を掲載した。各紙の解説記事には,多少の見解の相違がみられたが,その多くが云おうとしたところは,たとえば,朝日新聞が報道したように,「開業医中心の改革案--社会保障制度審議会の答申とくい違う」というものであった。
 しかし,今回の答申の内容を熟読すればわかるように各紙のこれに対する批判は,医療制度調査会の真の考えを正しく理解した上で述べられたものではないと思われる。このような誤解が生じた主な理由は,戦後の医療施設の急速な整備と,医療保障制度の急激な拡大のムードのなかで,医療の社会化とその推進役の一つとしての公的医療施設の拡充が必要であるという通念が,国民の間に次第につちかわれてきたために,自由主義社会における医療保障制度下の医療制度は如何にあるべきかという新しい観点から,現在の諸制度を検討し,その将来の方向を打ちだした今回の答申が,国民にきわめて奇異な感じをあたえたからではないかと思われる。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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