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雑誌目次

雑誌文献

病院22巻6号

1963年06月発行

雑誌目次

特集 中央検査室

中央検査室の機構と管理

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.9 - P.13

 診療に必要な臨床検査の種類が著しく増加し,また手技が複雑で熟練を要する検査や,高価な器械,器具を必要とする検査が多くなった結果,医療機関においては臨床検査の中央化が必要になってきた。すなわち病院においては中央検査室が拡充整備され,診療所については地区医師会単位の臨床検査センターが建設されつつある。
 わが国のような経済状態の国において,高度の医療を行なうためには,臨床検査の中央化は不可避であると考えられる。そして従前は医師自らが行なった臨床検査が,医師の手を離れて,検査を専門に行なう技術貝の手に委ねられることになった。かくて臨床検査技術員(法律では衛生検査技師という)という新しい職種が医療機関で誕生し,またこれら技術員を監督指導し,中央検査室を管理する専門医,すなわち臨床病理専門医が必要となった。

検査部をもつ診断病棟の研究

著者: 守屋博 ,   樫田良精 ,   小酒井望 ,   小原辰三 ,   鴫谷亮一 ,   小川健比子

ページ範囲:P.15 - P.19

本研究は昭和31年度の厚生科学研究費による「診療設備の建築プラン化に関する研究」の一環としてとりあげた「診断病棟」に関する研究である。主任研究者は守屋博氏であり,その分担研究者名は末尾に附しておいたが,これらの先生方によって数回にわたって討議を重ねたのち,本文は主に守屋博氏により作成され,図面は小川健比子が病院管理研究所員の川澄卓男氏の協力でその作成を分担した。この特集号において病棟と検査機能を極度に近づける本研究が少しでもお役にたてば幸いである。(小川健比子)

簡易検査総論

著者: 丹羽正治

ページ範囲:P.21 - P.26

 最近の医学の発達は加速度的であり,経験を主とした過去の臨床医学は科学的な姿に急速に脱皮している。今日では患者の診療は各種の臨床検査によって得られた客観的資料を基礎として進められている。
 このような情勢の下で最近急激に膨脹している各種の臨床検査の内容は,一方では益々微に入り細にわたって発達したため,検査には特殊な技術や高価な精密機械を必要とするようになった。これと同時に他方では,誰でも,何処でも気軽に行なえることをねらった検査も益々発達している。それは簡易検査あるいはインスタント検査などと言われているものであり,名の通り操作が簡単で,試薬類は錠剤,試験紙あるいはアンプル入りなどの形態となっているので,天秤を使って一々作る必要もなく,すぐそのまま使えて,あとで器具を洗う手間もいらないなどの特徴がある。このような簡易,迅速を旨とした性質が日常診療上の要求に良く適合するので,この種の検査は一層急激に普及するようになった。

検査技術員の教育・養成

著者: 柴田進 ,   宮地隆興

ページ範囲:P.27 - P.31

 ふりかえり見れば私が臨床検査室で働く様になって既に17年になる。その間運営を担当する者として骨を折ったのは器械・器具の購入,技術の改良,部屋の設計など沢山あったが,最も苦心したのは優秀な技術員の養成であった。すべて物事はそうであるが,殊に臨床検査室はそこで働く適格な人物を得なくては全く運転出来ないものである。
 初期の時代に私はこう考えていた:--技術員としては男子よりも女子の方が望ましい天性を持っている。だから料理と裁縫の好きな地味な若い女子を選び,検査技術の手ほどきをしてやれば2〜3年のうちに立派な技術員にそだて上げることができる。しかし経験を積むにつれて技術貝の養成がその様ななまやさしいことではないと感ずる様になった。そして4〜5年前にはとうとう"従来の徒弟制度による技術員の養成は時代おくれになった。どうしても系統だった教育によって基礎的知識と多面的な検査技術を身につけた均整のとれた技術員が必要である"と考えるに至った。山口医大臨床病理部の主宰者として私は当時運営上の大きな壁にぶつかっていた。年々職を退いて去って行く2〜3人の技術員を補充するため新しい素人の女子を雇い,彼等に技術を教えることをくりかえしていたのであるが,これらの人々が一人前になって能率をあげてくれるまでには2〜3年間順々に検査の場所をかえてローテートさせて指導しなければならなかった。

中央検査室の検査機械

著者: 樫田良精

ページ範囲:P.33 - P.41

 中央臨床検査制度は数年前よりわが国の大規模の病院,大学病院などを中心として次第に普及しはじめたが,その有用性が広く認められ,今日では各地の医療施設が競ってこの新制度をとり入れようとする一種のブーム状態になっている。進歩のはげしい医学の成果を医療の実際面に活用するためには,中央臨床検査制度の長所をうまく生かして行かなければならないが,臨床検査技術の進歩が速い他に,この制度そのものの経験がわが国では少ないので,これを導入するにあたってはいくつかの困難な問題が起ってくる。検査機械の問題は中央検査室を開設する場合に,それらを扱う技術者の入数や能力と共にまず充分に検討されねばならぬ問題である。以下私見をのべてご参考に供したい。

検査室の採算性について

著者: 内海邦輔

ページ範囲:P.43 - P.49

まえがき
 検査室の採算性について書くことを求められたが,筆者は,経済や経営については全くの素人であるから,その意味からは不適任この上なしである,かといって,経済経営の大家はまた,検査室の実態について充分な認識があるかどうかとなると,また問題がある。このように考えると,検査室の実態の面から,検査室の採算について,素人なりの考察することも必ずしも無益ではないと思われるので,敢て筆を持った次第である。
 検査室の採算を考察する際には,その採算を左右するいろいろのファクターについて考える必要がある。

血液銀行の管理

著者: 福武勝博 ,   鈴木弘文

ページ範囲:P.51 - P.58

I.緒言
 従来,総合病院が医療について独立した完全な姿でなければならないのが当然であるのに対して,こと「輸血」特に「輸血に必要な血液の管理」という問題に関しては現在の日本の病院の機構を考えてみるに非常に不完全な状態が多多あることを痛感する。輸血はその意義から考えて,良質そして健康な信頼される血液を注入するということがまず第一に必要な条件であることは今更ここで改めて述べるまでもないが,更にこれらの血液が厳重な管理の下に保存されていて,そして何時でも,その血液型の如何を問わず,充分な量が供給されるべく準備されていることも重要である。また,これらの血液を輸血する際に,受血者との間における適合性を信頼できる機関,施設において検査されることも輸血にさいして絶対必要な条件である。従って総合病院或は輸血を多く取り扱う医療機関においては,これら輸血にさいして重要な条件即ち,患者の体内に血液を注入するということ以前の問題に対してもっと慎重に対策を講ずべきであり,輸血の管理,輸血に使用する血液の管理をつかさどる独立した機関,施設を是非設けるべきであると考える。こうした機関,施設の代表的なものとして院内血液銀行があげられるが,その他,血液の供給のみを他の営利的血液銀行に依存するが,血液の保存及び輸血の管理は中央化した機関にておこなっている所謂,狭義の院内血液銀行或は輸血部,輸血センター等といった施設を設置している総合病院もある。

神奈川県下病院検査室の実態

著者: 新述東太郎

ページ範囲:P.59 - P.64

はじめに
 神奈川県には京浜工業地帯の大部分があり,さらに新しく招致された東海道沿線及び相模台地の工業地帯の開発,住宅団地の造成が進行して著しい人口増加をきたし病院利用者の増加をみるに至り,各病院は診療内容の向上及び成人病対策(人間ドック,癌,高血圧の予防等)に必要な臨床検査を広く行なう必要に迫られ臨床検査室の整備が問題となってきた。県病院協会は従来医療従事者の給与の実態,看護,給食,事務能率等につき調査統計を行ないその結果に基き必要な講習,指導を実施して県下医療施設の質的向上に多大の努力をはらい又成果も挙げてきた。検査技術者により結成されている県衛生検査技師会は衛生検査技師法の制定以来会員の検査技術の向上をあざして,意欲的な活動を始めようとしており,ここにおいて県病院協会は昭和37年1月下記の諸氏に委員を委嘱して臨床検査委員会を発足させた。

座談会

検査室の機能的運常をめぐって—特に医師・看護婦との関係について

著者: 相賀静子 ,   内田郷子 ,   小酒井望 ,   竹内直子 ,   中島章 ,   原萃子 ,   守屋博

ページ範囲:P.66 - P.74

検査室利用のルールをまもることが必要
 守屋(司会)今日は病院管理のうちの検査室の管理,これは病院の新しい管理をシンボライズするものじゃないかと思うのですが,まだ歴史が若いので,いろいろ問題点が残っている。その管理的な面を検査室を担当される方,あるいは検査室を利用される方のお立場からお話を伺いたいと思います。
 検査室を中央化しようという考えは戦後の考えであって,その前は,検査というものは,ドクター自身が自分で検査するという考え方であったわけです。組織的にもそれぞれの科,すなわち外科の検査室,内科の検査室というようなことで,あんまり問題がなかったわけなんですね。ところがだんだん検査の内容も進歩してきましたし,それから病院自身が非常に近代化してくるということになってきたので,どうしてもそういう検査を中央化しようという考えになってきたわけです。しかし中央化するということは,作業の一貫性からいうと,貴任が分担されることになるわけなんです。従って,大ぜいの人が一つの検査機構を利用するということになる。ということは,みんながルールを守らないと,それがうまく運営されないということなんですね。もし検査室にトラブルがあるとすれば,そういう点が原因になると思います。

病院管理講座 理論編・6

病院の組織(Ⅲ)

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.77 - P.81

 前号においては,病院が行なわねばならぬ仕事を,職能組織として発展してきた過程を述べながらgroupingを行ない,それを大別して(1)診療系グループ,(2)看護系グループ,(3)施設系グループ,(4)経営管理事務系グループの4部門に分類した。(1)と(2)は病院が直接患者にサービスを行なう二大系グループであり,(3)はそれらのグループへ資材や光熱水および役務を供給するグループであり(4)は病院という経営体が,同一目的のために活動する統一された組織体または社会的経済的単位として存在するに必要な経営管理に附属する事務グループである。そしてこの分類は,機能的に大別したものであると同時に,それに従事する職能群の系統分類でもある。
 これらのgroupが共同目標のために,統一された行動を行なうには管理が必要であり,その管理は開設主体の方針に従って統一されなければならない。そして,最高執行者である院長が,開設主体の経営方針に従って日常の業務を連続して管理する。

実務編・6

病院洗濯業務の実際

著者: 吉川遼子

ページ範囲:P.83 - P.87

病院洗濯の必要性について
 病院の環境整備面をつかさどる業務を大きく分けると,保清業務と洗濯業務の二つに一応分けられる。病院における洗濯の実際について考える時,私はそれが直営であっても,また外部へ外注の請負であっても,病院の洗濯とは,どんなもので,一体何を目的とするかを,根本から知って,とりかからねばならないと思う。病院の洗濯業務は,各病院のシステム,設備,方針等によって,多少異なってくるので,いちがいには言えないが,病院において,被服および寝具関係のリネン類を管理し,洗濯業務等を行なうことは,とりもなおさず,入院患者へのサーヴィスであると共に,病理管理上からも,医療面等の業務が,清潔かつ衛生的に行なわれている病院運営の現われでもあって,まことに重要なことである。したがって,その任にあたるハウスキーパーの任務は,なかなか重くつねに,この理念を念頭において,その作業を全うするよう努めなければならないのである。
 昔の病院は,とかく治療そのものに,重きをおいて,患者がそこにおいて,治療をしながら生活するという場所ではなかった。しかし,最近の病院管理は,治療と共に,患者に対して,病院というところは,生活する場所として,取り上げられるようになってから,清掃面はもちろん,終日暮らす,病床のリネン類にいたるまでに心を配り,昔とは,見ちがえるようになったことは,まことに,喜ばしいことと言えよう。

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事務長日記

著者: 檜原謙

ページ範囲:P.88 - P.90

4月2日(火)
 今回の第16回日本医学会総会を機会に,日本病院管理学会の第1回総会と評議員会が大阪で開かれることになり,これに出席するために西下。
 午後4時頃奈良の宿会に着いたら,其処で落合う約束になっていたSさんが一足早く着いたところだった。Sさんは4月1日から京都の国立病院で1カ月実習し,それが済んだら台湾に帰ることになっているので,この機会に奈良を案内することにしてあったのだ。

あとがき

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.96 - P.96

 今年は季節が少し早いのか,5月半ばからうっとおしい天気が続き,そのまま梅雨の6月を迎えました。病院の経営条件もますますきびしさを加え,そこにわだかまる停滞前線も一向に立ち去る気配を見せません。ただ長い間低迷を続けて来た中央医療協議会も再発足の段取りとなり,若干梅雨の晴間を見る思いがします。どうかこのあたりからだんだん暗雲が開けて,やがて病院界にもあの輝やかしい灼熱の夏を迎えるようにしたいものです。
 本号では,前号の「放射線部の管理」にひきつづいて,「中央検査室」を特集しました。わが国の病院機構は各種業務の中央化を中心にして,戦後急激な変貌を示すとともに,その体制を急速に整えて来ました。中央検査室もそうした動向に沿った必然的所産と言えます。そして,初期の試行期を終り,今や完全に病院機構の中にその存在を確立し,特に最近における各病院への普及および整備の進展ぶりにはめざましいものがあります。

Hospital Topics 経営

一般企業にみる初任給の上昇

著者: A.S.

ページ範囲:P.92 - P.93

 近年新規学卒者の初任給上昇がしきりに問題にされているが,一般企業でこの上昇率が一体どの位であるかは当然病院管理者にとっても関心の的と思われる。そこで今月はこの問題を取上げ,病院管理者の賃金管理の参考に供したい。
 ここ数年来,世界も目をみはるほどの日本経済の高度成長にともない,労働需要は著しく増大した。この高度成長も生産性向上運動と相互補充的に進められ,企業の合理化を促進したが,資本に需要される労働力は,新機械・新技術に容易に即応しうる労働力を必要とした。しかも日本の企業の大部分が年功序列型賃金制度を採用している現状から,人事管理の面からいって,また労働力をやすく使うためにも,学校を出たての新規の労働力を雇用することこそ,もっとも有利としたのであった。したがって労働需要も年令階層の上からいっても一様ではなく,以上の二つの資本の要請から若年の新規労働力に片寄っていたため,新規学卒者に対する需要が急激に上昇し,世上かまびすしくいわれた求人難は,実は主として新規学卒者に向けられていたのである。賃金は労働力の需給関係と賃金闘争の強弱によって決められるので,新規労働力に対する逼迫は,当然彼らの賃金を上昇せしめずにはおかない。最近にみられる初任給の大幅な上昇は,かかる経済的誘因にもとづくものである。

事務管理

病院管理者の良識(I)

著者: K.K.

ページ範囲:P.93 - P.94

 最近病院にからんだ汚職問題が新聞等の紙面をにぎわせたが,このような問題は帰するところ関係者の良識というか,倫理ということに待つものであろう。しかし現実に毎日の病院の運営に当たってはこの良識の面でデリケートな問題が発生するものである。例えば業者からのお歳暮は受取るべきであろうか。慣例的な小額なもの(酒,煙草程度)ならよいのか,小額といってもどの程度なのか,義務を感じなければ全くかまわないのか,またその分配はどうすればよいのか,等々考えればかなり重要な問題を含んでいる。
 以下(Modern Hospital 62年2月号)に米国で管理者に対して,管理者の良識の問題についてどう考えているか調査した結果の一部を紹介してみよう。

給食管理

食事療法最近の動向

著者: T.M.

ページ範囲:P.94 - P.95

食事療法今昔
 我が国の病院においては食事療法をはっきり始めたのは昭和3,4年だったと記憶する。特に内科疾患において薬剤と共に食事によらなければならない大切な問題と考えられ糖尿病,腎臓病,心臓病,胃腸病(殊に胃潰瘍)潜血検査のための検査食などを特別な調理室を設けて一般食とは全く別に調理されたのです。それは病院側で特に料理人というのでなく女子の専門学校の食物専攻をした人を入れその人に助手をつけて運営したのです(当時栄養士という名称はなかった)私の知っている範囲では岡山大学病院,東京警察病院(坂口先生)同愛記念病院(三浦先生)東京鉄道病院の4カ所でした。
 特別調理室において内科の治療食事を必要とする病気,即ち,糖尿,腎臓,心臓病,小児食,調乳,それにその頃はレントゲンのバリウムが飲み難いものだったために,飲み易いものに加工していたのです。業務内容としては,予算ということは余りいわれないものの高価なものはさけることは常識で(然しやかましいことはいわれなかった)献立作成,嗜好調査,残食をよくしらべ,病室訪問は欠かさなかった。実際に喫食したものの栄養価計算をしなおし診療録の食事の欄にかくようになって毎朝責任の看婦婦が食事表をつけに来る習慣になって医師は回診の都度それをよく見て,食事等の変更がなされていた。総回診(医長の廻診)には栄養士もついて行って患者の状態医師との会話を参考にした。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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