icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院22巻7号

1963年07月発行

雑誌目次

グラフ

成人病に挑む—神奈川県立成人病センター

ページ範囲:P.9 - P.16

 脳卒中,心臓病,癌など成人病による死亡が年々増加の傾向をたどっている。ところが,成人病は発病してしまってからでは手遅れになる場合が多く,現在のところでは早期発見・早期治療を除いては確実な決め手がまだ発見されていない。このため,全国各地で,地域診断の拠点として成人病センターの建設が急がれているが,その中でデラックスな検査機械と集団検診の実施などで話題を集めている神奈川県立成人病センター(神奈川県保土ケ谷区中尾町)を訪ねてみた。

座談会

病院外来の現状と問題点

著者: 島内武文 ,   石原信吾 ,   今牧嘉雄 ,   岩佐潔 ,   大久保正一 ,   佐藤修 ,   佐分利輝彦

ページ範囲:P.18 - P.29

 島内(司会)実は私,この問題を知らないんですが,そのほうがかえって白紙の形で進められていいんじゃないかと考えまして,お引き受けしたわけです。日本の病院の外来は日本独特のもので,外来に参りますと,大へんな数の患者が受診していますが,患者も,外来とはこんなものだというふうに,すっかりなれてしまっている面もみられると思うのです。従って,開業医の方が外来患者をとっておられるのをみても,病院外来と似たようなことをやつておられる。フランスあたりの開業医はもっともっと患者の気持を察し丁寧な外来をやっているように思うのです。そんな意味では,日本の病院にはほんとうのPrivate Practiceがないんじゃないか。
 実際,外来というところは医師の一番大切な仕事場であるわけですから,当然もっと早くこれが検討されてなければならなかったというふうにも思うのです。ことに最近にいたって,医療制度調査会その他の報告も出て,将来の医療制度というようなもののプランも,ある程度つくられてきておりますし,一つの転換期に当たって医療制度の全体面から病院外来というもののあり方を議論することが,ぜひ必要であると思うのです。

--------------------

臨床生理検査室の管理

著者: 江部充

ページ範囲:P.31 - P.37

はじめに
 病院における管理方式の伸展に伴い検査室の中央化が積極的に行われるようになって来たが,その一つに臨床生理検査室という名称で呼ばれる部署が見受られることがある。これらの部署の規模及び運営の仕方は他種の検査室に比して,又病院によって極めてまちまちである。その理由として考えられる要素は数多くあるが,一つには検査の多くが患者から直接に検査結果を得なければならず,又検査の実施に当って臨床医学的な知識と手技の必要性が大きいためと考えられる。従って中央化とは逆に各検査項目によってそれぞれ適当な診療各科に所属している場合がきわめて多い。病院の規模或いは目的によって入員の関係上からも各科に所属するという形が妥当な場合もあり,又そのような考え方も成立つであろうが,しかし一方において病院の経済面も含めて病院の運営上から又診療の能率化,検査内容の向上,技術者の充実等から中央化することが都合がかい点も多々あるように思われる。現在の病院の管理には会社或いは生産工場に見られる如き科学的な方式が充分に確立されておらずかなり前近代的な要素を多分に示していると云われており,筆者も又管理学の専門家でもないので特に臨床生理検査室の管理について科学性に立脚した意見は持っていない。そこで虎の門病院の臨床生理検査室の実情を明らかにするとともに二,三の見解を加えて本検査室の管理方法の資に供したい。

事業所綜合病院の計画および設計

著者: 桑本正雄

ページ範囲:P.39 - P.46

まえがき
 最近の日本経済の目覚しい発展のかげには,経営者の企業の合理化,生産性の向上等に対するなみなみならぬ努力が払われている。ひるがえって私たちの病院の実情を見ると,有機的につながる会社組織内においてさえ,まことに超時代的で,医学医術の進歩は目覚しいものがあるにもかかわらず,その経営は旧態依然たるもので,おおむね,何の自覚も企業努力もなく,落伍者の道を進み続けているかに見える。
 昭和31年以来,会社幹部の理解と援助により,経営合理化の目的で,合理的な近代綜合病院の建設を企画し,すでに管理棟および診療棟の完成をみ,おおむね所期の目的を達し得たので,ここにその概略を報告し,なぜこんな設計がなされたかその経緯を振り返り,事業所病院のあり方と将来の私たちの進むべき道を確認し,社業に協力するとともに,読者諸氏には,世間にはこんな病院があることを知っていただき,医業のあり方の参考にでもしていただければ幸甚である。

小児科の色彩調節の経験

著者: 伊藤順夫 ,   木島吉衛 ,   小笠原節郎 ,   大沼宏

ページ範囲:P.47 - P.53

I.緒言
 岩手県立高田病院では,昭和35年2月火災,5月チリ地震津波によって,その建物の半分を失った。その再建に当って,患者や職員の気分刷新と公衆へのPRのため,特に色彩調節を重視して計画した。

国立病院改善論

著者: 竹山正憲

ページ範囲:P.55 - P.57

1.病院経営研究のきっかけ
 1960年3月,筆者は,交通事故のため,〈脳挫傷の疑い〉で2週間救急病院に収容されていた。この時,病院経営の非近代性を痛感し,病院経営の近代化に深い関心と興味をおぼえた。
 そこで,その後約1年間,筆者の所属する産業能率短期大学人事管理研究会は,「病院経営と人事管理」の問題をテーマとして研究を行なった。この間,病院管理研修所の岩佐博士にはいろいろ助言と御協力をいただいた。研究中たまたま各地の病院に相次いで争議が起こり一時世論は病院経営に強い関心を寄せ,ジャーナリズムもこれをとりあげた。筆者は,求められて「朝日ジャーナル」1960年12月4日号の,特集「医療産業の病理学」に資料を提供したこともある。そして,都内にある多くの病院経営の現状と実態を調査するに及んで,ますます病院経営改善の必要性を認識するに至った。それで,及ばないながら,今日までに次のような意見を発表して来た。

医療費請求事務の簡素化によせて

著者: 中佐肇

ページ範囲:P.59 - P.63

はじめに
 医療費の請求事務の簡素化についての議題が,最近ようやく斯界の日程にあがってきた。このことについて既に36年8月の医療懇談会でもとりあげられていたのであったが,その後いっこうに何の変哲もないので,いったいどうなっているのかとなかば焦燥にかられていたおりから,さる1月末の国会における野党議員の事務簡素化に関する質問に対して,厚相は努力する旨述べられたことにより,明るいニュースを得た次第である。
 およそ,事務のなんたるかを問わず,ややこしくて手数のかかることは困る。事務はすべてし易く,簡単なものであってほしい,大所高所からながめてもらって,可能性の許容限度までを。

第3回病院管理視察研究会に参加して

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.65 - P.68

 昨年11月の第2回病院管理視察研究会に引続き,本年は5月16日から18日迄3日2晩の計画で,大型バスを借切って,岡山県と広島県下の7病院を訪ねた。この研究旅行は,橋本聖路加病院長の言われる様に,病院管理に志を同じくする人々の修学旅行であり,単に食を共にし,室を同じくして親しみを図るばかりでなく,見学先の手柄話や苦労話を聞き,一行の遠慮のない意見を述べ合って,少しでも病院の現状を向上させようとする試みであり,この点,参加者の一人であった私も啓発されること大きく,深い感銘をもったので,2〜3の感想やら個人的意見を述べることにする。

事務長日記

著者: 檜原謙

ページ範囲:P.80 - P.82

5月1日(水)
 風薫る月。5月は天地の事象すべての生々躍動する月だ。病院も20日の開院5周年記念日を中心に式典や多彩な行事が予定されているから,この美しくめぐり来った季節を背景に,院内の空気もその月に向かって次第にもり上がりを見せて行くことだろう。
 管理連絡会のあと,昼食後の時間を利用して,院長,総婦長と一緒に,5年勤続者に贈る記念品を選ぶために近くの陶器店のショールームを見に行く。

研究所だより

著者: K.K

ページ範囲:P.95 - P.95

 研修所が研究所に拡大改組されてから,早くも2年の月日が経過し,去る6月1日で3年目の歩みを始めました。研修所の創立からは満14年を過ぎたこととなります。研修参加者は既に8,000名を越え,しかも毎回定員を越える方々におことわりをしなければならぬ状態で,我国病院のむずかしさと,皆様の熱意を示すものと思います。今後とも一層のご支援をお願い致します。
 自由化の影響かどうか,最近研究所も国際的な活動に参加する事が多くなって来ました。去る5月13日から20日迄,フイリッピンのマニラで開催された『公衆衛生計画における病院の役割』に関するWHO (世界保健機構)主催のセミナーに,日本代表として岩佐医療管理部長が出席致しました。詳しい報告はまた本誌に掲載されると思いますが,参加10ヵ国中,日本は先進国として大いに参考にされたとの事でした。病院における公衆衛生活動については,研究所スタッフも参加して,昭和34年,35年の厚生科学研究が行なわれ,その内容については,本誌36巻2〜12号で発表されたものがあり,今回のセミナーでもその内容の紹介が興味を呼んだとの事でした。さすがにブイリッピンは暑く,大分陽焼けした顔で元気に帰ってまいりました。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.96 - P.96

 いよいよ夏を迎えました。毎年夏になるたびに思うことは,暑さに苦しみからだを弱らさせる病人のことです。なぜ病院の全館冷房ができないものかと思われてなりません。特急や旅館や一流会社の事務室が冷房されるようになったことは勿論ありがたいことですが,病人が一流の病院に入院してさえ暑さに苦しまねばならぬということは,文明の社会というにははばからねばならぬでしょう。病院人が力を合わせてこのことを社会に訴えたいものです。

病院管理講座 理論編・7

病院の組織(Ⅳ)

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.69 - P.72

 第5回において病院の仕事を大きく体系化し,前号(第6回)で組織の階層化の一般原則を説明したが,本号から各職能ごとにこれをどう階層化して集権して行くかについて述べて行く。

実務編・7

病院給食管理の実際(Ⅰ)—事務管理

著者: 永田優

ページ範囲:P.73 - P.78

1.管理のポイント
 病院給食業務は,個々の患者の病状に応じた主治医の食事箋又は食種指定にその基礎をおき,栄養療法のための治療食を調製,供食することが主目的であり,しかも,それを一定の材料費の枠内で収めなければならないことが要求される。この2つが基本的な責務であり,必順の条件であって,栄養管理,事務管理のポイントはここにおかれる。
 そこで,まず事務管理について,その要点をのべたい。第1に,病状別に数十種に区分されている食事は,特定の食品を制限又は増量する関係上,それぞれの材料費がちがってくる。それらをプールして一定の材料費の枠内に収あるためには,給食の計画特に献立担当栄養士の技術に期待するところが大きい。しかし,それをよりよく行なうための役割を事務係がもっていることを確認しておきたい。

Hospital Topics 経営

定年制とその現状

著者: A.S.

ページ範囲:P.84 - P.85

1
 わが国では一般に終身雇用制とか生涯雇用制とかいわれるように,新規に学校を卒業して一旦ある企業に就職し,忠実にその企業に勤めていさえすれば,その企業では労働者の労力が減耗するまで長期の雇用を保証するという慣行ができている。そしてかかる終身雇用制を維持し,強固なものとする支柱として,賃金の支払い形態も年功序列型賃金が一般化している。この年功序列型賃金は,ひとたび会社に労働者の技能・能力とは関係なく自動的に年々賃金があがっていく仕組みになっている。したがって年功序列賃金制のもとでは,労働者は同じ会社に長く勤務した方が賃金の上り具合がよいので,会社を転々と替えていたのでは損である。また社会の見方も会社を転々と替えるような人間を,一カ所に辛抱することもできない気紛れ者としかみてくれない。会社の方も学校出たての労働者を訓練し,その企業にむく労働者に仕上げるため,すでに一定の型にはまった労働者,つまり就職の経験のある労働者を中途から採用することを好まない。とくに労働条件のよい大企業ではこの傾向が強いのである。
 ところで人間の労働力は,年をとるにつれてますます衰退していくのであって,働く能力の衰えた者を高い賃金で雇うということは,資本主義の原則に反している。

診療管理

アメリカにおける医療費支出状況

著者: K.I.

ページ範囲:P.85 - P.86

 1960-61年にアメリカ合衆国で支出された総医療費は290億ドル(約10兆円)の多額にのぼった。この内政府支出でない支出は76%で,この比率は1950年以来余り変化していない。この総医療費は1928-29年には36億ドルであったからその7倍であり,1949-50年のそれと比較しても1.34倍になっている。
 1960-61の直接医療費は257億ドルでその21%が政府関係支出であり79%がその他の私的支出である。1928-29年の直接医療費は億であったからその6.8倍になっている。しかし1960-61年と1928-29を比較するとその閥に貨弊価値の変動と人口増があったので1人当り直接医療費の増率は1.4倍となっている。

事務管理

病院管理者の良識(Ⅱ)

著者: K.K

ページ範囲:P.86 - P.87

 前号に続いて管理者の直面するさまざまな倫理的問題とそれに対する反応を見てみよう。今回はやや事例的な問題(ケース)となっている。

建築・設備

Balanced Hospital Community

著者:

ページ範囲:P.87 - P.88

 地域住民と医療施設との関係においての,国民医療のありかたについて,マッケオン教授(Mckeowen,T,バーミンガム大学社会医学)が提唱している新らしい概念である。
 これまでのイギリスにおける国民医療の系統的分裂に目をとめてその新らしい組み替えを強調している。すな一つには,イギリスの病院はおおまかにAcute (急性) Chronic (慢性) mental (精神)に類型化できる。これら病院の機能はその成因と成立過程によって自からちがっている。しかし現在では,院内でのさまざまなニードをもった患者の混在,職員,設備の重復等を結果し,ほんとうにその機能を発揮しているとはいえない。二つめには,家庭との病院との関係,G.P.(general practioner)と病院との関係,予防医学と治療医学との関係,これらの関係の"まずさ"と"きはくさ"について言及し,これらの欠陥を補う意味で,地域住民の医療ニードの適確な推量・家族と病院とのつながり,G.P.と専門医(consultant)とのめんみつなれんらくにきびしくうらづけた組織としてのhospital Communityを提案した。

特殊病院

フランス心臓センターにおける死亡調査

著者: K.S.

ページ範囲:P.88 - P.90

 フランスの主要大学や病院には心臓センターがかなり設置されている。この内,設備が完備し,診療体制が確立し,しかも診療内容の高い九つのセンター),即ちBordeau,Lyon,Marseille,Mathieu,Montpellier,Parisの3センターを対象とし,これらのセンターで最近数力年間入院中死亡した者3,066名の臨床記録を集めて調査した資料が,フランス国立衛生院月報にのっている。死亡者全員のうち,解剖によって死因を確かめられたのは2,324例であり,後述する比較要素は解剖された群でも非解剖群でもほぼ同一結果を示している。
 死因別にみると第1図に示した如く,高血JEとアテロスクレローゼによるものが46%を占めており,ロイマチ性心臓障言は25%で軽視出来ない。注目すべきことは,先天性心臓障害者死亡が7%もあって,今後小児心臓センター新設が期待される。

給食管理

食餌療法の理論と実際

著者: T.M

ページ範囲:P.90 - P.91

 病院における治療食は年々多くの医師により研究され,栄養士と共同発表されるようになって,非常に進歩をとげている。本年の医学総会の内科学会ではあらゆる病種に関連のある栄養素の問題がとりあげられ,栄養食糧学会では医師栄養士が共同でシンポジウムを行なった。その一部をここに紹介してみたい。

霞ガ関だより

医療法人の問題

著者: 厚生省

ページ範囲:P.92 - P.93

 医療法人とは,医療事業を行なうことを主たる目的とする法人である。これは,医療法第39条以下の規定に基づいて設立されるものであり,民法第34条の規定に基づいて設立されるいわゆる公益法人とも異なるし,また,商法,有限会社法の規定に基づいて設立される合名会社,合資会社,株式会社,有限会社等の営利法人とも異なる。いわゆる特殊法人ないしは中間法人にあたるものであり,宗教法人,学校法人,社会福祉法人等に類似するものである。
 この医療法人制度は,昭和25年に,医療法の一部改正によって創設された。すなわち,医業には非営利性が要求されているため,前記の商法上の会社組織によることは認められず,また一方においてすべての医業経営の主体が民法上の公益法人となることも困難なので,この医療法人制度を創設することによって,医業の経営主体に容易に法人格を取得する途を与え,医業経営の永続性をはかるとともに,医業経営に要する多額の資金の集積を容易に行なうことができるようにしようとしたものである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?