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雑誌目次

雑誌文献

病院22巻9号

1963年09月発行

雑誌目次

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第13回日本病院学会プログラム

ページ範囲:P.6 - P.8

日時:昭和38年10月1,2,3日
場所:札幌市北大クラーク会館

医師の分布と医療機関の分布

著者: 車田松三郎

ページ範囲:P.19 - P.29

はじめに
 医師の分布は従来都道府県別1)に発表されていて,その業務の種類別では第1表の如く,医師総数の93.1%が医療施設に従事し,診療所では開設者47,849(46.4%),勤務者10,450(10.1%),病院では,開設者が2,449(2.4%),勤務者25,896(25.1%)となっており,これらの比率を年次別でみると(第2表)診療所医師では開設者が昭33より13%増加しているのに対して,病院では勤務者が15%の増加であり,年々病院の勤務医師が増加している。また都道府県別では第3表の如くで,東京都・大阪府・福岡県等にそれぞれ15.0%,7.7%,5.1%等を占め,これを人口10万対医師数でみると全国平均の110.4に対して,最高は京都168.4,次いで東京157.8,石川・大阪・福岡の順で,最低は秋田の73.7で,茨城,宮崎の順で,74.8,76.2等となっていて,いかに地域的に医師の分布が偏在しているかがわかる。

胃集団検診受診者の調査

著者: 永沢滋 ,   高橋政祺

ページ範囲:P.31 - P.39

まえがき
 かつて人類の死因の最大のものは感染症であったが,免疫法の進歩による予防対策の確立や抗生剤の発見などによって,これによる死亡は激減してきている。これに反し成人病と呼ばれる一群の疾患は難治であり,時には不治であり,感染症対策に燭光を見出した人々は再びこの黒い蔭におびえるようになった。
 そこで病院も人間ドックという方法で,中年以降の人を定期検診することにより成人病の予防または早期発見を行なう体制をととのえるに至った。しかしこの一週間に及ぶ検査のための入院は時間および経費の点で誰でも行なえるというものではない。このためその半分の日数の短期ドックが作られ,さらに通院による外来ドックなども考えられている。このような病院の予防医学活動はその対象を来院患者だけに止めておかず,外に出張する集団検診という形のものにまで発展してきている。このように地区の保健の問題と結びついた病院の公衆衛生活動は,在来の病院サービスの概念を越えたもので最近注目されているものである。これは病院の性格つまり地域社会との結びつき方によって,どの程度までこの分野を拡充するかがきまってくる。その地域社会の住民の健康の保持を目的として設立された公立病院であれば,当然この活動は活発化しなければならない。また大学病院のようなものはこれを側面から援助し指導する意味で大いに活躍したいものである。

国立療養所における診療管理

著者: 浅利譲

ページ範囲:P.41 - P.42

 日本の医療法第10条においては,病院または診療所の管理者は医師でなければならない旨が定められているが,そのことは必ずしも院長自身が診療管理にたずさわらなければならないことを意味してはいないと思われる。レジデントをのぞいて医師が管理者の隷下に属さない米国などとことなり,すべてが雇われ医師であるわが国においては,そのProfessional Authorityからみて,医師以外の管理者の下で仕事をするということは,堪えられないことだからである。院長はすべてにわたっての統轄者であって,決して1診療管理者ではないはずである。国立療養所においてはその管理機構が明確にされており,その機構の長短はともかくとして,やりやすい面もあることはたしかである。即ち厚生省が制定した国立療養所業務基準の第2章組織のところで,
 第2条 所長は厚生大臣の命を受けて常時所務を統理する。とあり,昭和35年に配付されたその解説によると,所長は療養所の管理運営全般の責任者として,常に所全体を把握し,一切の業務を総括する。(中略)一方所長は必要に応じ医師として自ら診療にたずさわり後進の指導にあたることも肝要であるが,あくまでも管理者としての本分に支障を来さないよう配慮する必要がある。

イギリスの病院整備計画

著者: 佐分利輝彦

ページ範囲:P.43 - P.46

 イギリス保健省は,1962年1月に,1975年を目標年次とする"病院装備15ヵ年計画"を発表した。この計画によると,第1表にしめすように,1959年末には人口1,000対10.35床であったイングランドとウエールズの総病床数を,向う15ヵ年間に人口1.000対8.38床にまで減少させ,病院整備の主力を既存の病院の近代化にふりむけることにしている。
 このような,イギリスの病院整備計画における政策の転換は,主として数年前から開始された"自宅サービス"または"地域保健サービス"の拡充計画が次第に軌道にのってきたために採用されることになったものであるが,この方針は,イギリス医師会が,国民保健サービスの10余年の経験を,医師の立場から根本的に検討するために,1958年に設置した内科,外科その他の臨床学会,衛生技術宮の学会,一般医の学会の代表者からなる「医療制度検討委員会」(Medical Services ReviewCommittee),いわゆるPorrit委員会の1960年の報告においても打ちだされている。

療養所における音楽的効果

著者: 黒沢和夫

ページ範囲:P.49 - P.51

はじめに
 デパートや工場等では軽い音楽をとり入れて従業員や来客等の精神的緊張を和らげる方法が漸次普及されてきている。このやり方を病院や療養所にも用いたらかなり患者に良い効果があるだろうということは容易に考えられる。ことに結核のような慢性病では,療養所に長い間入所しなければならない患者にとってはより一層の効果が期待されよう。
 大気,安静,栄養を治療の中心としていた一昔前と異なり,化学療法,外科手術のような積極的治療に加えるに患者に与える精神心理的な影響というものは結核治療上無視しえない。結核患者に接してみるといわゆるストレス症状が悪影響を及ぼしている実例をちょいちょいみかける。すなわち不安,イライラ感,不眠,頭重感,食欲不振,めまい,動悸等の訴えであるが,これらの症状は結核による直接症状と申すよりも自律神経系の異常とかノイローゼ症状ともいうべき間接症状であって,結核医としてはこれらの症状をできるだけときほぐして結核治療の促進を図る必要がある。

新しい癌研究会附属病院

著者: 梶谷鐶 ,   山下久雄 ,   増淵一正 ,   宮嶋碩次

ページ範囲:P.53 - P.59

緒言
 明治41年4月創立されたわが癌研究会は,昭和8年故長与又郎会頭により財団法人に改められ,昭和9年5月現在の土地に癌研究所および附属病院を開設し,三井報恩会よりラジウムの寄贈を受け,わが国唯一の癌の研究および診療機関として飛躍的発展を遂げてまいったのである。ところが,不幸戦災にあい,その施設のほとんど全部を失なった。その後東銀座に,或は西巣鴨に遂次施設を復興してまいったとはいえ,近代病院に比べて遜色甚だしく狭い汚い病院として有名となり,ついには癌研に課せられた使命の遂行に支障を来たす段階に立ち至り,われわれ診療にたずさわるものとして新病院の速やかな建設を渇望して止まなかったのであるが,幸い癌研後援会の方々の並々ならぬ御尽力によって昭和36年12月新病院の建設に着手,昭和38年7月その竣工をみるに至った。従って開院後日なお浅く,われわれの意図した建物およびその施設を充分使いこなして結論を下しうる段階に達していない。ここでは設計図に基づいて新しい病院の構造と機能の概略を述べ,皆様の御批判を抑ぐ次第である。

就業規則と労働協約

著者: 菅谷章

ページ範囲:P.61 - P.64

はじめに
 就業規則と労働協約は,一面労使相方の利害得失をもっとも集中的に表現したものであり,他方では労使関係の摩擦・紛争を解決・予防する最大の"カギ"であるともいえる。したがって人事管理をうまくおこなうか否かは,就業規則と労働協約の内容いかんにあるといっても過言ではない。後で述べるように,病院の多くは就業規則の作成を必要とする事業所であり,先年の病院のスト以来労働協約の締結化が進められつつある現在,病院の人事業務を担当するものは,ますます就業規則と労働協約について知る必要性を迫られてきている。そこで,この論文では,これらの就業規則と労働協約はどのようにして成立し,そしてわが国の労働法ではそれらに関してどのように規定しているか,それらの作成に必要な内容・手続きなど,管理者の知っておくべき問題について取扱うことにした。
 はじめに就業規則の成立過程と,その法的に必要とする内容・作成の手続き,効力ならびに労働協約との関係について簡単に説明してみたい。

日本病院管理学会第1回研究発表会に出席して

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.65 - P.68

 日本病院管理学会の発足と,設立の趣旨については,さきに紹介したが,このたびその第1回研究発表会が開催された。
 去る4月3日大阪において創立総会を開いた際,本年度の事業としてとりあえず7月下旬東京において研究発表会を開催することを決定していたので,その計画に従って7月20日(土)東京都千代田区神田駿河台,日本大学駿河台病院講堂において,一般演題その他の研究発表を行なった。

事務長日記

著者: 檜原謙

ページ範囲:P.84 - P.86

7月5日(金)
 いま新聞の週間ベストセラーズの中に入っている「物理学入門」という本を通勤の途中で読んでいるが,非常に面白い。その話を,今朝の朝食会の話題にして見た。
 例えば,アインシュタインの有名な「知識よりも,イマジネーションのほうが,いっそう大切である」という言葉は「夢なきところ民は滅ぶ」というソロモンの箴言に通ずるものを感ずるが,そういう言葉だとか,ボーアがパウリの新理論への批判に対して述べた,「私は,パウリ教授の理論が気違いじみていることは認めます。しかし,この理論が正しいという可能性があると考えられるほど,十分に気違いじみているかどうか問題です。」という言葉などを読むとそこに現代物理学の驚異的進歩の秘密があるような気がして,心の高揚を禁ずることが出来ない。物理学は実験上説明出来ない事実にぶつかるたびに従来の物の見方への執着を断念して新しい見方を創造し,そこに飛躍的進展への契機を見出して来たという。病院理解あるいは病院運営の上でもそれと同じことが言えるのではなかろうか。不確定性理論や相対性理論の根本的考え方は病院を管理する者の立場にとっても必ずしも無縁のものではない。スペキュレーションは文字どおり,空理であると同時に投機でもあるわけだ。そこからはどんな新しいものが生み出されて来ないとも限らない。われわれも空理空論に大いに心を遊ばせて見ようではないか。

質疑応答

著者: 新井廉子

ページ範囲:P.99 - P.99

 問 看護婦寄宿舎の管理はどのようにしたら良いでしょうか
(142回病院長研修会)
 答 公の仕野から離れて生活するには自治制が良いと思う。10代から60代までと余りにも年令の差があること,殊に,戦前,戦後と相通じない事が多いので,お互の理解が困難である。教育と環境により各自がそれぞれにすでにひとつの人格を作っている。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.100 - P.100

 秋が身近かにせまって来ました。個人でも身辺を整理する季節です。各病院もいろいろ事業の反省と改善策が検討される時でしょう。しかし医療費の改善がなかなか進まない現在,ご苦慮の多いこととお察しいたします。ただ乙地については,9月1日から診療報酬が甲地なみになり,5%程増収になることになったことは乾天の慈雨とも申しましょうか。

グラフ

面目一新した癌研病院

ページ範囲:P.9 - P.16

ガンは,いうまでもなく,現代医学をもってしても解くことのできないナゾの一つであるが。このたび,30年の伝統をもっ財団法人癌研究所附属病院が専門施設の偉力を誇る近代的な病院として生まれ変わったことは,ガンに挑むわが国医療陣の新しい威力となることであろう。まことに喜ばしいことである。そこで,本誌は,この新病院の専門施設,特に診療部門を中心にご紹介することとした。(詳細は53ページの「新しい癌研附属病院」参照)

医院管理講座 理論編・9

病院の組織(Ⅵ)—診療協助機関

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.71 - P.76

 第5回(22巻5号)で述べたように,病院には診療系部門と看護系部門という大きな2本の柱がある。そして診療系部門の機能の主体をなす医師の組織及び看護系部門の主体をなす看護の組織について,それぞれ第7回及び第8回において述べたが,今回は診療協助機関の組織のあり方について述べる。

病院管理講座 実務編・9

病院放射線科の管理

著者: 岡本十二郎

ページ範囲:P.79 - P.83

I.まえがき
 患者の診断,治療あるいは予後観察などX線あるいはその他の放射線の医療への応用はますますさかんとなり,その重要性はここに述べるまでもないほどである。
 ことに正確な早期診断を行ない,早期治療が望まれれば望まれるほど,その意義が大であり,おのおのの疾患診断目的に最適の優秀な各種装置の必要性が生じてくるわけで,診断学の進歩とともに装置の種類とそれらの性能にも格段の進歩がもたらされている現況である。

Hospital Topics 看護管理

アメリカの看護助手

著者: 吉武香代子

ページ範囲:P.88 - P.89

 最近,全国的な看護婦の不足から日本でも看護要員の中で看護助手の占める割合が漸増しつつある。「看護の質的低下」ときめつける前に,現在の看護業務の中に,補助者に行なわせてよい業務が相当合まれていることと,看護婦を専門職の水準に高める以上,専門職業人の周辺には必ず数人の補助者を要する,という一般の通例とを考え合わせ,看護助手の心要性を肯定した上で,いかに業務を分析し,いかに合理的に看護助手を訓練して限られた範囲の仕事をまかせていくかを研究すべきではあるまいか。
 ここで,ボストンに近いブルックリンのブルックリン病院における看護助手の訓練計画の実例を中心に,アメリカの看護助手について述べ,日本における今後の問題を併わせて考えてみたい。

給食管理

管理栄養士の国家試験

著者: 宮川哲子

ページ範囲:P.89 - P.90

 現在栄養士間で最も関心をもたれている管理栄養士制度については先般この欄で報告されたが,いよいよ政令,省令が出て国家試験日も公告されたので,栄養士法,栄養士法施行令,栄養士法施行規則のうち管理栄養士の部のみ抜萃してみよう。

事務管理

病院人事管理の自己評価

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.90 - P.91

 病院の人事管理は他企業のそれと比べて複雑であるといわれている。それだけに管理者,人事担当者としては,効果的な人事管理体制を定期的に検討する必要がある。
 その自己評価の一つの試みを紹介してみよう。これは米国病院協会の機関誌"HOSPITALS"1962年6月16日号に紹介されたものである。

特殊病院

精神病院の機能

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.91 - P.93

 国民の精神的健康の増進,保持の体系の中で,精神病院の置かれるべき位置については種々議論されているが,昨年6月のフランス語圏内の精神・神経学会でProf.SivadonとDr.Amielが本問題について特別講演をしているので,その要旨を紹介する。
 向精神剤が誕生してから15年間,精神科の治療は全く変貌したけれども,精神障害者の大部分は生活環境との絡み合いで発生するもので,障害者周囲の環境調整が必要である。このことは,患者の家庭,社会環境のみでなく,精神病院内の生活様式の改善,治療体系にさえ影響を及ぼすこととなる。

建築・設備

Thistle Ward

著者: 松本啓俊

ページ範囲:P.93 - P.94

 病棟の研究とその計画については,すでにNaffeild Proincial Hosp-ital Trustのすぐれた業績があるが,このたびスコットランド内務,保健省が独自の研究を行ないその結果として急性患者のための新らしいWard Designを提示した。
 計画に当っては ①病棟単位の規模は50〜60床或はそれ以上とする。 ②Intensive-careを1カ所に集めないで,各病棟単位ごとに分散させる。 (これは1カ所に集めたこのような単位での看護職員の継続的な負担をさけようとすること等の理由による)。 ③病床使用のさいのフレキシビリティーを考える。便所やデイ・スペースを小単位毎に設ける。結果的にそれが,性別,専門科目別入室を可能にし占床率を高める。 ④患者の視察を容易にする。 ⑤交互感染の防止ができるように患者や職員の動きができるだけ小さい範囲内で完結できるようにする。換気も強制換気をする。 ⑥病棟への物品の供給と,処置についてもその動きに留意する。などが主として考えられている点だといわれる。

霞ガ関だより

救急医療対策の方向

ページ範囲:P.96 - P.97

 自動車事故,事業所における災害,新らしい薬品による中毒など,不慮の事故は,社会経済の進歩発展によって漸次増加する傾向にあるので,先進諸国においても社会問題となっている。
 わが国においても,昭和35年には死因順位の第9位にあった不慮の事故死が,昭和36年にいたって,がん,高血圧,心臓病等いわゆる成人病疾患についで第6位に達し,急性伝染病にかわってこの対策の早急な樹立が要望されていた。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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