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雑誌目次

雑誌文献

病院23巻10号

1964年10月発行

雑誌目次

特集 第14回日本病院学会

開会の辞

著者: 大槻菊男

ページ範囲:P.13 - P.13

 本日ここに,会員諸君と相会して,賑々しく,第14回日本病院学会を開くことができましたことは,私のよろこびに堪えないところでございます。
 日本の病院の状態は,なお依然として幼稚でありまして,経営者,利用者ともに不満足に感じながら,容易にその域を脱しかねているものと存じます。その由来するところ複雑で,その解決は,容易でないと存じます。本学会は多年これに向かって多大の功献をいたして参りましたことを確信致しますが,まだその道が遠いことを痛感致します。

第14回日本病院学会プログラム

ページ範囲:P.14 - P.16

期日:昭和39年7月9・10日 場所:東京文化会館
(○印は演者)

あふれる熱意とめざましい展示—第14回日本病院学会を傍聴して

著者: 高橋政祺

ページ範囲:P.38 - P.43

 日本病院学会もことしは第14回となり,7月9,10日の2日間,上野の東京文化会館でその総会が行なわれた。
 一般演題は40題で,じっさいの病院の業務の研究が大半を占めていたが,その内容も質的に向上してきており,みなある水準以上になったという感じがした。これは,日本の病院そのものが向上してきたためで,いつまでも遅れた業態にとどまっていないことを示すものであろう。

病院学会展示場ところどころ—とくに病院設備ということを念頭において見てまわる

著者: 原素行

ページ範囲:P.44 - P.46

病院学会展示ということ
 日本病院学会の展示場は,従来,盛況であったとはいえない。展示事始めは,第3回総会のさいであったが,学会には事務局もなく,ともかく,不手際であって,ただ1基の国産「鉄の肺」が会場玄関口に展示されただけであった。当時学会参加者は少なく,しかも演説会場を出入する人もまれで,出品者派遣の説明係員は退屈して,おおいに不満を訴えた。学会が回を重ねるごとに展示品は増加したが,とくに病院設備や用品の展示は貧弱であった。
 第7回東京総会の折,展示場は第2会場として病院管理研究所に開設され,第1部は事務能率機器,第2部には病院建築設備および床材料など,第3部には病院用品および医療機械などが展示され,はじめて,病院学会らしい展示風景を呈し,おおいににぎわった。これを契期として,展示会はいささか充実するに至ったが,会期が短いためか,大型病院設備の出品が振わなかった。これに反して,医科器械類の出品が主流化した観がある。しかし,その後,医科器械の進歩は,病院医療の高度科学化を伴い,高級医療設備は,重要病院設備として数えられるに至ったと,筆者は私見として,このように考えるようになった。病院の固有の性格が,患者収容であるが,近年の世界的病院観は,病院医療の比重を増加するに至ったからである。これは,病院の診療所化傾向ではない。

一般講演抄録

1.仙台市における救急患者の統計的分折,他

著者: 島内武文 ,   岩本正信 ,   岩本正

ページ範囲:P.17 - P.37

 救急医療サービスの内容は,その地域の性格によってそのサービス内容が変動するものであり,単に人口を基礎とした救急病院数,救急車台数を定めたり,あるいは単に受動的に救急病院を指定するのみでは適切とは思えない。
 それには,まずその地域における救急患者の統計調査が必要であり,それを基礎とした組織的な構想,すなわち,Accident Service Areaの設定,救急病院の配置,病院における救急患者の受け入れ態勢などを考慮する必要があると考えられるので,仙台市における消防局救急車が取り扱った昭和36年4月1日(救急業務運営開始時)より昭和38年12月31日までの1,375名の救急患者の統計分析を行なった。調査の内容は,事故発生年月日,時刻,曜日,天候,患者の性,年令,職業,事故発生場所,事故種別,受傷原因,傷病名,受傷部位,輸送先,診療科目,外来・入院日数,転帰,事故現場から病院までの直線距離および時間距離,タコメーターによる距離,現場所要時間などであり,パンチカードにより集計した。本報告はその一部であるが,交通事故と急病による患者が総数の66.2%を占め,それぞれの患者数はほぼ同数であり,残り32.1%は一般怪我,自殺,作業事故が主であった。これを他都市と比較すると種々異なった割合を示している。

座談会

第14回日本病院学会を顧みて

著者: 吉田幸雄 ,   大槻菊男 ,   萩原義雄 ,   古玉太郎 ,   安富徹 ,   小野田敏郎 ,   島内武文 ,   石原信吾 ,   大森文子 ,   玉田米子

ページ範囲:P.48 - P.60

すばらしかった会場好評の"都民のための病院展"
 吉田(司会)毎年学会が終わりますとすぐに,学会のいろいろの問題をお話し合いしていただきまして,学会においでにならなかった読者の方にお知らせし,同時にきょうご出席の方がたは,今回の学会をご担当になりました会長さん,幹事長さんならびに来年の学会の会長の萩原先生そのほか京都の幹部の方にご出席をいただいたわけで,今回の学会のやり方を批判すると同時に,来年の学会へ,いくぶんでもご参考になり得れば,というような気持で座談会をしていただきたいと思っております。
 それでは最初に,学会の総括的な印象を,島内先生……。

グラフ

第14回日本病院学会総会東京

ページ範囲:P.5 - P.12

第14回日本病院学会の総会は,昭和39年7月9日(木),10日(金)の2日間にわたり,東京上野公園内の東京文化会館で開催された。
全国から多数の会員が参集して広い会場を埋め,「都民のための病院展」には一般都民が気楽に入場し,病院に対するPRの効果をあげた。

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書評 —佐口 卓 著—「医療の社会化」

著者: 大谷藤郎

ページ範囲:P.47 - P.47

 医療の社会化というコトバは最近あまり使われていないようだ。
 ところで,国民皆保険が達成されたといわれる今日,いわゆる国民皆保険を含む医療制度が果たして国民の医療のうえにどのように影響を及ぼしているものであるのか十分なものであるのかどうか,再検討を要するものと考えられているが,この際それに関連して,「医療の社会化」というコトバの意味を改めて考えなおしてみる必要があろう。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.92 - P.92

 第14回日本病院学会特集号をお送りします。まずこれによって学会の全容が知れるよう,例年のように一般演題の抄録と学会運営のうら表をご紹介しました。しかし頁数の関係で専門集会などの報告を割愛せざるをえませんでした。専門集会報告と共同研究は,テーマが関連した爾後の特集号に含め,パネルと宿題報告も適当な号に載録させていただきます。できればこれらを1冊にまとめた学会特集号を明年から,あるいは号外として発行することも検討してみましょう。
 日本病院学会は終戦後いち早く発足し,この14年間に大きな足跡を残してきました。とくに本誌とはもっとも密接な関係にあって,学会はあたかも本誌の筆者や読者の総会のように表裏一体となって,日本の病院管理の進歩に貢献してきました。今回の第1回総会は,東京の文化会館で大槻菊男会長の下に盛大に開かれ,各分野の発表はもちろん,新しいいくつかの問題がとり上げられました。献血問題について学生の参加があったことも特筆すべきことでしょう。

論壇

第三者の論争

著者: 山田芳一

ページ範囲:P.68 - P.68

 病院7月号「論壇」に友谷氏の"看護婦の勤務体制"なる論文が掲載され,おもしろく拝読した。看護職員でない私が,看護職員でない筆者の言に論評を加えることは,いささか筋違いの感なしとしないが,第三者同士の論争も時には当事者にとって参考になることもあろうかと考え,あえて一言するしだい。
 「看護婦の勤務体制を一般サラリーマン化する」どこかのコマーシャルのキャッチフレーズを聴いているようで,何だかむずかゆい。筆者は看護業務の厳しさについて,どのようにお考えなのだろうか。看護婦の3交代制なる勤務体制は,看護業務そのものの本質的な要求を満たすための勤務体制であって,職員のご都合主義から生じたものではないはずである。患者は四六時中患者であって,職員の退庁後は健康人に戻るということはない。申すまでもなく,看護業務とは保助看法第5条,6条に示す診療の補助と患者の療養上の世話,この二つの組み合わせにより成り立っている。病院における医療業務は,通常退庁後当直医師に引き継がれる。したがって,夜間における看護婦の診療補助業務は,当直医師の行なう診療行為の補助だけとなり,大幅に業務量が減少する。加えて患者の睡眠に伴い,療養上の世話もまた減少することになる。

病院管理講座 理論編・20

病院の組織(ⅩⅦ)—医師,支配体,管理者の関係

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.69 - P.74

 本講座の23巻1号から4号にわたって管理者論を述べたが,改めて医師,支配体,病院管理者の関係について私見を補追したい。

実務編・18

中央手術部管理の実際—看護業務を中心として

著者: 三浦章代

ページ範囲:P.75 - P.82

Ⅰ.はじめに
 私どもの病院の中央手術棟は昭和32年6月俊工した。その設計,管理の基礎には萩原現院長,安富外科医長および前任者の豊田婦長(現国立津病院総婦長)らの精魂が注がれている。その後も,幾多のアイデアを盛って,つぎつぎに改善されつつ今日に及んでいる。今回,この手術部の看護管理の実情についてのべるよう編集者よりご依頼があったのを機会に,自らの反省の資料ともするつもりでまとめてみた。皆さまの忌憚のないご批判とご教示をいただければ幸いである。

Hospital Topics 経営

引当金について

著者: 針谷達志

ページ範囲:P.84 - P.85

 期間損益計算を課題とするこんにちの企業会計では,当該期間に帰属すべき費用,収益を確定することが必要である。すべての費用・収益は過去・現在・将来の収入・支出にもとついて測定し,また各期間の発生額が把握される。このうち,特に将来の支出にもとづいて当期に発生した費用の額を把握するものが引当金である。すなわち引当金は,一般的にいえば,将来の特定支出に対する準備額であって,その当期に帰属すべき負担が,当期の発生費用として見積られたものであり,その準備額を示す貸方科目が引当金である。
 引当金を一元的に定義することはむずかしい。同じく引当金とよばれるもののうちにも,退職給与引当金,納税引当金,修繕引当金など負債性引当金といわれるもの,減価償却引当金など評価性引当金といわれるもの,渇水準備金など留保利益の性質をもつ剰余金性引当金といわれるものなど,いろいろな種類のものがある。ただ,多くの場合,引当金は正確な期間投資を計算するため,すなわち期間損益計算上の必要から計上されるものであるから,その本質は期間損益計算の立場からつかまなければならない。

診療管理

リハビリテーション・サービスの案内

著者: 佐々木智也

ページ範囲:P.85 - P.86

 リハビリテーションは時代の脚光を浴びているので,コトバとして知らない人はないと考えるが,その実務となると多くの医療関係者が把えどころのないものと感じているのではないだろうか。しかし,リハビリテーションの理念は昔からあったもので,それほどに理解し難いものではない。病気の結果として何らかのハンディキャップを負った者に,いかにしてこれを克服するか,または,いかにして不利な条件下で生活するかを考え,教え,訓練することである。このようなことは,程度の差こそあれ従来から,すべての医療間係者が個々の例について考え,行なってきたことでもある。もし病勢を挫き,病根をとり除けば医療行為は終わりと考えていた者があったとすれば,その者の常識,ひいては人間性をも疑うものである。リハビリテーションは病気の後始末を組織的に行なうものであり,臨床各科の負担を減ずるとともに患者を人間としてたいせつに取り扱う治療行為であるともいえる。
 観念的な論議はこの程度にして,リハビリテーション・サービスのあり方と現状での問題点について述べよう。

看護管理

看護婦の社会経済福祉

著者: 千野静香

ページ範囲:P.86 - P.87

 先年ILOの行なった「看護婦の労働条件と雇用状態」の調査によると,看護婦の不足のおもな原因は,不満足な労働条件と生活条件,そして受けた教育,行なっている業務およびその責任に対してふさわしくない社会的地位におかれていることである,ということが明かになった。
 これを契機に,ナースの国際団体であるICN (International Councilof Nurse国際看護協会)は,各国の加盟看護婦団体に対して,看護婦労働問題について積極的に働きかけるように呼びかけてきた。一方ILOとも非政府統治団体の立場で近しい関係を持つようになった。メンバー団体である日本看護婦協会は長年この労働問題については,絶えず関心をよせ,その条件の引き上げには努力をしてきていたが,ICNの影響によってあらためて系統だった団体活動のひとつとして,その具体策を実践するべく,その母体を作ることにのり出した。

給食管理

改訂日本人の食糧構成

著者: 森田百合子

ページ範囲:P.87 - P.88

 病院のトピックスとして,ちょっと,見当違いの感を抱かれるかも知れませんが。
 科学技術庁資源調査会が昭和31年4月30日付で,わが国の人口がおよそ1億に達するころ(昭和45年または46年)を目標とした『日本人の食糧構成』を公表したことはすでに皆さまご承知のとおりです。

特殊病院

麻薬病棟—国立の麻薬中毒者医療施設開設

著者: 土井敏男

ページ範囲:P.88 - P.89

 1.昭和38年度中に発見された麻薬中毒者を種々の角度からみると,
 (イ)年齢比は20歳以下3.1%,20歳台24.0%,30歳台40.5%,40歳台15.2%,50歳以上17.2%であります。

霞ガ関だより

医学的リハビリテーションの問題

著者: T.S

ページ範囲:P.90 - P.91

 新しい医療の概念によれば,国民の健康水準の向上をはかるためには,健康の増進,疾病の予防,治療,リハビリテーションにわたる総合的な保健事業の推進が不可欠のものとされている。
 このなかで,その第四相をしめるリハビリテーションについては,近年わが国でも部分的に漸次進展をみせているが,保健事業の他の部分に比較すると,いちじるしい立ち遅れをしめしている。これは,医学の分野においてもこの領域の技術的な発達がおくれたこと,わが国の社会経済的な状態が身心障害者の更生,雇用を促進する気運になく,リハビリテーションの需要を生むにいたらなかったことなどのほかに,この分野が行動的にも多岐にわかれていて,体系的な推進計画が立てられなかったことなどがあげられる。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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