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雑誌目次

雑誌文献

病院23巻12号

1964年12月発行

雑誌目次

特集 人件費対策

現下人件費の諸問題について

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.14 - P.18

 人件費問題は大別すると二つの見方がある。すなわち経営費用としての人件費と,人事管理上の賃金制度問題とである。
 経営費用としての人件費は,賃金の総和として経営費用のうちのどのくらいの割合を占めるか,それがコストとして収益性・採算性にどのような関連をもつかという問題である。これに対し賃金制度としての見方は,経営に必要な労働力を確保し,その能力をもっともよく発揮せしめるための人事管理政策としての面である。すなわち個々の職員に対して雇用労働力の再生産,モラールや職員間の協調,労使関係にどのような影響を及ぼすかという一連の広く複雑な問題である。

病院規模と職種別職員数の実態

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.19 - P.24

 病院の必要職員数の算定にあたっては,作業の質,作業方式,作業範囲,作業環境,設備,作業組織,作業員の能力,モラールなどの諸要素が微妙にくみあって,単なる作業量のみを問題とすることは危険であるが,病院の部門別能率測定の指標としては,やはり第一に考慮さるべきものであろう。
 この病院各部の業務量は,病院管理上の重要な指標であるが,全国的な調査が明らかでないので,昭和36年3月,公的病院に対して行なわれた医業経営実態調査の調査結果より,病院各部門における業務量と構成員につき計算解析を行なった。

病院における専門職種の給与の実態

著者: 島内武文 ,   車田松三郎

ページ範囲:P.25 - P.29

 以上調査の結果を要約すると, 1.病院の専門職種間の平均給与を全体的にみると,医員がもっとも高く(51,000円),准看護婦が最低である(16,700円)。
 2.経営主体別にみると,医員と医員以外の職種ではまったく逆の関係がみられた。すなわち医員は医療法人や個人立に高く,国立に低い。医員以外の職種では国立に高く,個人立に低い。
 3.規模別では一般企業のように格差が著明ではない。
 4.年齢別では各職種とも年功給の性格がつよく,昇給率も頭打ちになる年齢も職種により異なっている。

病院各部門におけるパートタイム職員および補助者の採用

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.30 - P.36

まえがき
 本号は「人件費対策特集」で,私に与えられた題目は「パートタイム職員および補助者の採用」であるが,パートタイム職員および補助者の採用の問題は,本来「人件費対策」としてだけ考えられるべきものではない。もちろん,この問題が労働力のムダを排除することをひとつの主眼点とするかぎりにおいては,そこに人件費の節減という効果が生まれることは当然であって,その効果を目的としてこの問題が取り扱われる場合の多いことは否定できない。しかしながら,もしそうした面だけからこの問題をみるならば,むしろ,コトの本質を見うしなうおそれのあることも事実である。
 病院はいうまでもなく一個の組織体であって,その組織構造の精粗あるいは適否は,その病院自体の機能性および経済性の両面に影響を与える。そこで病院においては,組織の問題は,その存在性の根本に連なるもっとも重要な問題のひとつになる。そして,いまここで取上げようとする「パートタイムおよび補助者の採用」の問題は,じつはそうした組織の問題の範疇に属するものなのである。

外注の効用と問題点

著者: 相良貞直

ページ範囲:P.37 - P.40

まえがき
 表題について紹介するよう依頼を受けたのであるが,国立がんセンターは一般の病院とことなり,組織・事業内容など複雑多岐であり,また設立後日なお浅く,果たして平常運営といえるまでに整備されたとは申し難い点もあるので,読者各位にはまずこの点をご理解願い,さらに予備知識として国立がんセンターの設立経過および最近の概況についてご理解願ったうえで本論に移らせていただきたいと思う。

人件費累増の趨勢と新設病院における人事管理問題

著者: 大門繁雄

ページ範囲:P.41 - P.42

 病院経営上,人件費と材料費が総経費の75%以上を占める現在において,これらの運営がいかに重要であるかは,すでに学会その他で検討ずみでありますが,材料費は患者の負担となり,これに基因する赤字は少ないようであるが,総経費の45%程度に達する人件費については,将来の病院経営を左右する問題であり,とくに独立採算制下における病院にあっては,終身雇用制に類する組織である関係上,初度の人事問題は,将来の基礎となる固定的生産支出であるから,慎重に検討のうえ,実状にそい,しかもそれぞれの職場に貢献する度合に応じた人選と格付が必要であります。

病院勤務医師の待遇にかんする実態調査

著者: 赤井卓三 ,   森脇潤

ページ範囲:P.43 - P.50

Ⅰ.はじめに
 病院勤務医師が現在の待遇について不満をもっていることは,大方の通念であると思われる。しかし医師も一介のサラリーマンであるとみなした場合,他の産業の職種とくらべて待遇がよいとか悪いとか,また医療労働者として,看護婦以下雑役に至るまでの職種と比較して待遇を論じることはむずかしい。同業者である一般の開業医とくらべると,漠然とながら収入は少ないらしいというようなことで,なんとなく不満をもっている。病院の基幹労働者である医師が待遇に不満をもつことは,病院運営上,もっとも障害が大きいと思われる。
 一方,医療技術が高度となるに従い,専門医として長く病院にとどまり,技術を磨くことは当然の社会的要請でもあり,一昔前とちがって勤務医一般の勤務年限が長くなってくることは必然でもある。医大卒業後10〜15年の医師の開業率を,1953年と1959年で比較してみると,戦前は4割開業しているが現在は2割である1)。ことにオープン・システムの発達の見込が当分なさそうな日本の医療形態においては,高度な医療技術は主として勤務医の手にゆだねられることになろう。

座談会

病院勤務医師の給与をめぐって

著者: 守屋博 ,   今井一男 ,   川上武 ,   佐藤修 ,   江間時彦

ページ範囲:P.52 - P.65

勤務医師は果たして一種のサラリーマンか
司会(守屋) きょうは,たいへんな方たちにお集まり願ったのですが,勤務医師の給与の問題を論じていただきたいと存じます。
 これは端的にいうと,一方では安過ぎてどうにもならん,また一方ではそうも出せんということで,ちょうど今の医療費と同じようなことなんですが,医療費は直接医療を経営している人には影響がありますが,勤務医のほうはいくらもらうのかということだけに関心があります。むかしは勤務医者というものは,非常にりょうりょうたるもので,大部分の医者が"医療経営者"だったわけです。最近の統計によりますと,50%くらいのお医者さんが月給で暮らしているということになっています。これは医療だけではなくて,ほかの業体においてもそういうことがいえると思いますが,こうなってくると給与の額が大きな問題になってくるんですが,これをどう決めるかということになると,いろいろ議輪がある。ほかの職種と同じでいいか,あるいは医者だけは違うのか。そういうところをいろいろご検討願いたい。

グラフ

療育 恵まれぬ子に愛の手—東京小児療育病院

ページ範囲:P.5 - P.12

 女医さんたちが力をあわせて作った脳性麻痺の子どもたちの病院——東京都下の村山町にある東京小児療育病院を訪問した。昭和39年4月26日に開院したばかりである。
 鉄筋コンクリート建ての地下1階,地上2階の本館,平家の病棟(88床)のほかに個室ばかりの3階建ての職員宿舎など堂々とした施設である。

ニュース

第14回国際病院会議—1965年6月・ストックホルム

ページ範囲:P.50 - P.50

 第14回国際病院会議は,国際病院連盟とスエーデン組織委員会の主催で,1965年6月21〜25日スエーデン,ストックホルムのst.Erik Fair Exhibition Hallにおいて開催される。この時期はスエーデンの伝統的な祭であるMidsummerと時を同じくして行なわれる。
 会議の常用語は英語,フランス語であり,スエーデン語と同時通訳が行なわれる予定である。大会議場は1500人収容能力を持ち,展示は2000平方米の建築関係の展示をはじめ5000平方米以上が予定されている。

病院管理講座 実務編・19

麻酔科管理の実際と問題点

著者: 竹田昌暉

ページ範囲:P.75 - P.81

 わが国に麻酔科が外科から分科して講座として独立したのは僅々12年前の昭和27年のことであり,東京大学の山村秀夫教授を中心に麻酔学講座を開講したのが日本における麻酔の第一歩である。
 以来わずか10年そこそこの間に,北は北海道から南は九州まで,麻酔学の講座がつぎつぎと設けられ,その発展ぶりはちょっと最近の他科の歴史に類をみないぐらい目ざましいものがあった。

ホスピタル・トピックス 診療管理

病院内輸血業務のあり方

著者: 鳥居有人

ページ範囲:P.82 - P.82

 最近,血清肝炎,薄い血液など,輸血に関する話題がさわがれているが,病院内の輸血業務をどのように組織化したらよいか,いろいろ議論のあるところである。しかし,その目的とするところは,いかに安全に迅速に輸血を実施するか,にあるのはいうまでもない。この線に沿って二三の項目につき検討してみよう。

事務管理

米国病院職員の給与

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.83 - P.84

 病院における人件費問題は,世界共通の感がある。米国においても大きな問題であり,ついにことしはじめて連邦政府労働省によって,全国的な病院職員の給与調査が行なわれ,その結果が発表された。過去に米国病院協会などの調査はあったが全国的かつ広範囲な調査はこれが始めてであり,その点米国の職員給与の実態の知る好資料である。
 調査は,連邦立,結核および精神病院を除外した,従業員100以上の病院より抽出された549病院の従業員476,086人の平均週間給与額および勤務時間を調査し,宗教関係病院における奉仕的従業員,実習学生,パートタイム勤務者を除外してある。給与額は通常勤務時間における基準内給与額で,残業・宿日直・夜勤・休日勤務などの手当や宿舎・食事の提供を含んでいない。

給食管理

複数献立

著者: 森田百合子

ページ範囲:P.84 - P.85

複数献立とは
 私ども国立療養所関係では,複数献立とは『献立を数種類作製して患者に示し,そのいずれかを選ばせる』ことを複数献立制度といっています。

特殊病院

フランスの精神障害者数

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.85 - P.87

 最近着のフランス衛生院月報(Bulletin de I'Institute National d'Hygiène T 19 N°4)に1961年末の入院精神障害者数が掲載されている。
 全土が16の衛生行政地域に分かれ,それぞれに平均6.5,総計104の精神病院がある。調査した施設数は101で,その全入院者数は103,152人で,うち男50,350人,女52,802人で,やや女性が多く,45歳以上が全数の59.3%を占めている。年齢階級別にみると,在院者を総人口構成とは一致せず,25歳以下は両性とも総人口比にして低く,男は35歳から65歳まで各階級が高く,女では45歳以上が高くなっている(第1表)。

建築・設備

セントピーター病院の救急センター

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.87 - P.88

 イギリスのチャートスィーにあるセントピーター病院に最近(1964年3月)開設された救急センターは,この種の施設のプロトタイプとして注目されている。人口約20万に対して,1週当たり100〜150入の患者を扱うことを予定している。近年急激に増加した交通事故に対すべくこの程度の救急センターを全国の主要な病院に付設して,総合的なネットワークを構成しようとするものである。プランは,建築家,設備技術者,病院管理者,内科・外科の医師,看護婦の1年半にわたる討議の未決定された。試験的な運営の結果によれば,外科的なケース8割に対して内科的なものが2割となっている。運びこまれた患者が軽症のものである場合には,直ちに付近の診療所に送られ,ここでは重症のものだけを扱うことを原則とする。簡単なケースだけで施設がふさがれ,いざという時に本来の機能を発揮できないようでは意味がないからである。
 プランの概要をかいつまんで述べておこう。

霞ガ関だより

昭和38年医療圏調査の概要

著者: T.S.

ページ範囲:P.90 - P.91

調査の目的
 この調査は,地域社会における病院の入院患者の医療圏の実態をはあくし,地域保健サービスの改善をはかるため基礎資料をうることを目的として行なわれた。

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編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.92 - P.92

 いよいよ昭和39年のも暮れんとしています。医療費の緊急是正もついに宙に浮いたまま年を越さんとしています。その結果,どの病院も予算に大きな狂いが生じてきたものとご同情申し上げます。かえって,国家公務員の待遇だけは予定より遅れたといっても,今回の国会で補正予算が通過して9月にさかのぼって支給されることとなり,これが各病院の人件費増となって現われることとなるでしょう。
 このように,つねに人件費が先に増加して,診療報酬の是正が後になって行くことを繰り返えし,これが病院財政を増々圧迫していることは困ったことです。そのことはまた職員にもしわよせられ,病院職員の処遇上の適正化を不利にしています。

「病院」 第23巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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