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雑誌目次

雑誌文献

病院23巻3号

1964年03月発行

雑誌目次

特集 患者への心づかい—T.L.C.

T.L.C.への関心

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.17 - P.18

 本号はT.L.C.の特集とした。T.L.C.という言葉は本誌上はじめて現われたことばであるので,眼あたらしいと思われる読者もおられるであろうから,いささか解説めいた私見を述べてご参考にしよう。
 T.L.C.とはTender Loving Careということばの略語である。すなわち,「患者を優しく親切に扱うこと」の問題である。いうまでもなく,患者は肉体的または精神的に病変がある。その病変を正常な状態に戻してあげることが病院医療の本質的な重要な課題であるが,しかし患者はその傷病に伴って,病苦というものに悩まされ,その苦悩を誰かの手でやわらげてもらいたいと思っている。この苦悩の救い手は医師であり,看護婦であり,病院全体である。患者は傷病の本体を含めて,この苦悩の救いを求めて病院に訪れ,病院に身を横たえているものである。この苦悩という患者の心情を対象として,救いの手を差しのべる処置の問題がこのtender loving careである。

病院の騒音調査

著者: 津田豊和 ,   佐々木澄夫

ページ範囲:P.19 - P.25

 筆者らは,昭和37年夏,東京都区内にある公的4病院について,患者に対する質問形式による紙面調査と,これから得た騒音源の騒音レベルの測定および食器運搬車等の周波数分析を行なった結果について報告したい。

国道に面した一総合病院の騒音の実態について—第1報:質問調査成績

著者: 芦沢正見 ,   久保田美恵子 ,   岩佐淳子 ,   中村友輔 ,   藤田篤雄 ,   長沢長治 ,   加藤英夫 ,   西郡まさ

ページ範囲:P.27 - P.32

 調査の対象となったこの病院の環境は,東京都に通ずる1級国道に直接面しているため,たえず交通騒音の影響をうけている状況にある(写真・図参照)。われわれは病院の環境管理の上からこの状況下に在院している患者たちが,このような騒音を一体どう感じているかを調査し,他方騒音そのものの音量レベル,周波数帯構成,発生頻度,間隔等について実測し,近時公害としても,問題となっている交通騒音と病院環境との関連について寄与しようとしてこの調査を行なった。以下,質問紙による調査成績を第1報に,騒音測定成績等を第2報に分けて報告する。

面会人の実態調査および管理について

著者: 加藤よね

ページ範囲:P.33 - P.36

I.はじめに
 先年東京都の某病院において新生児の誘拐事件があり,病院管理の不備を批判されたことがあったが,多くの乳幼児をはじめ各種各層の患者をあずかっている病院では,特に人の出入激しいため,事故のおきないようにと指導しながらも不安は念頭を離れないものである。また患者の状態を悪化させてはいけないし,静粛であるべき病棟が雑沓する場所となっても困る等のため,各病院では面会の規定をもうけているわけである。当国立札幌病院においては地域の関係もあってかそれが守られず,お手あげの事情にあるため実態調査を行ない,その資料について若干の考察を加えたので報告いたします。

病院におけるB.G.M.の使用経験

著者: 大須賀武夫 ,   佐藤邦夫

ページ範囲:P.37 - P.39

 従来,病院はその環境条件として,静かでなくてはならないとされています。
 もちろん,賑やかであっては困りますが,静かすぎてもいわば平生の家庭その他の環境とは全く異なった環境にあるために,かえって,患者の不安感を増大する場合があります。

患者の投書から見た病院サービスの分析

著者: 鈴木武徳 ,   吉江余志子 ,   吉田照男 ,   白坂龍曠

ページ範囲:P.41 - P.44

まえがき
 昭和34年7月,当産院の新築工事も完成し,ベット数も旧院の倍となり,赤十字産院としてますます庶民に愛され,親しまれ,利用されうるよう一層のサービス向上,改善の一助として.第1図のような様式の投書を求あた。
 これにより勤務者各自も常に自己反省をし,また月例会議において検討改善につとめた。その対象は入院,外来患者全員とし,期間は現在なお継続実施中であるが,34年7月から37年12月末日までの3年6カ月間の全入院患者対象のものを検討分析した。

グラフ

エレクトロニクス展MEコーナーをみる

ページ範囲:P.9 - P.16

 「科学新時代を開くエレクトロニクス展」がこのほど開催され,わが国における電子工業の大勢を概観することができた。
 展示会の一部門としてMEコーナーが設けられ,これからの医療の手段としてのMEの実用的設備が,臨床検査,高血圧と心臓の疾患の診断,癌の診断,エックス線,理学的治療,難聴,手術室,分娩室,病室のME設備など,およそ10コーナーに分類されて,それぞれのME機械が配置展示された。

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病院の騒音問題に関する展望

著者: 津田豊和

ページ範囲:P.24 - P.24

 病院の騒音に対する関心は米・英両国を初めとして最近5〜6年来非常に高まって来ている。米国においては,The Modern Hospit-al(1963,4月号)にHow to KeepHospitals Quietと題して,Public Health Serviceが調査結果を発表しているが,これによると退院患者を対象として質問形式の紙面調査を行ない,騒音計による測定とともに騒音を24時間テープレコーダーに録音し,オクターブバンドによって再生音の周波数分析を行なう方法をとっている。わが国においては,佐々木氏らが「病院」19巻,12号に「病院と騒音」また岩佐氏が「看護学雑誌」の26巻,2号に「病院の騒音管理」さらに額田氏らが「病院」の21巻,11号に「病院内騒音をいかにして防止するか」をそれぞれ発表している。英国においてはKing Edwards'Hospital Fund for Londonが質問用紙による入院患者に対する騒音調査を1957年から58年にかけて行ない,さらに1960年に追調査を行なってその間に如何なる変化,いかなる改善があったかを比較して発表している。この他にも英国には2,3の騒音に関する発表があるが,ここでは特に上記King's FundのNoise Control in Hospitalsの大要を紹介したい。

病院の部門別生産性と医師給与について

著者: 一条勝夫 ,   清水重喜 ,   後藤与四文

ページ範囲:P.47 - P.53

 生産経営体における経営能率の測定のしかたにおいて,ふつうにとられるものに,資本生産性,および労働生産性といった視点がある。病院においてはその事業内容からいって多分に労働集約的である。また資本概念にかんしては経営主体ごとにマチマチであって,内容的にも曖昧なため実際的に比較条件がととのっていないから,むしろ労働生産性がより中心的であり実際的であるといってよかろう。

看護業務の合理化と業務内容の向上についての研究—第1報:検査介助,患者輸送,メッセンジヤー業務を新たに中央化した経験

著者: 津曲イマ ,   吉岡ハツ子 ,   山下カツ子 ,   藤田都奈美 ,   木村洋子 ,   鶴田久子 ,   永松智津子 ,   三小田瑠璃子 ,   蒲池芳江 ,   熊谷美津子 ,   玉利敏子 ,   古賀節子 ,   福原和子 ,   小沢都美子 ,   土屋呂武 ,   河辺敏雄 ,   赤星一郎

ページ範囲:P.55 - P.61

1.病院のスケール
ベッド数:330床,鉄筋4階建(一般144床,結核180床,リカバリー6床)医師の数:20名(定員)薬剤師:4名看護婦の数:定員 94名(歯科衛生士1を含む) 看護婦 52,准看護婦 26,歯科衛生士 1,看護助手 15看護婦宿舎:鉄筋3階建,延  坪,1室2名収容。

薬剤管理—第13回日本病院学会宿題報告

著者: 上野高正

ページ範囲:P.63 - P.67

I.まえおき
 現今,医療を考える時,医薬のことを念頭におかないですますことは出来ない。近来医薬はますます適用範囲を拡げつつあるので,このことはますますうごかしがたいものになってきた。この傾向は,単に医薬に限らず,化学製品という少し広い範囲のものを意味する語におきかえても同様である。
 医薬に例をとってみると,たとえば最近虎の門病院では,入院患者の36%について処方箋が発行され,調剤した薬の種類は全入院患者1人平均毎日0.5種類となるし,外来患者については,47%の患者に処方箋が発行され,全外来患者1人平均4日分の何等かの薬をもって帰っている。医薬品としては調剤薬の他に,注射薬も,処置薬も,消毒薬その他もあるわけであるから,医薬のみをとってみてもいかに広く頻用されているかが推察されるのである。

空調の諸問題—第13回日本病院学会専門集会要約

著者: 石井主器夫 ,   奥田義正 ,   畑弘道

ページ範囲:P.71 - P.75

 昨日は午前中に,9つの研究が,空調関係で発表されたわけでございます。いずれも立派なご研究でございまして,中には直接空調とは結びつかないかと思われるものもございましたが,非常に立派なご意見を伺わせていただきました。さらに引き続きまして,空調専門集会が持たれましたが,約2時間にわたって専門的な研究の立場から有益なお話を伺いました。空調関係の一般演題につきましては,プログラムの抄録をご覧いただければ,お分かりいただけることと存じますが,専門集会につきましては,昨日お見えにならなかった方々も,本日は大分おられるようですから,はなはだ簡単でございますが,その要旨を要約いたしまして,お話しいたしたいと存じます。なお,昨日は時間の関係で充分なデスカッションを省略せざるを得なかったことを深くお詫び申上げます。
 講師の方々は,千葉大学工学部の伊藤助教授,伊勢崎病院長の成内頴三郎氏,札幌医科大学麻酔科教授の高橋長雄氏,さらに,市立札幌病院小児科医長の巷野悟郎氏,最後に,日大医学部の永沢滋教授,以上5人の方々によりまして,いずれもその日常の,専門的なご研究の結果を,詳しくご発表があったわけであります。

生活看護の問題—第13回日本病院学会専門集会要約

著者: 高須キサ ,   橋本寛敏

ページ範囲:P.77 - P.80

 これから専門集会の生活看護に関する問題についてご報告申し上げます。会場は当館の2階第2会場があてられました。出席者は150名で大半が看護婦でございまして先生方は数える位しかいらっしゃいませんでした。非常にこの点は参集者として残念がっておりました。しかしその中に日本でもっともこの問題についての権威者,橋本先生,吉田先生また多くの院長先生がおられましていろいろご助言いただいて時間的にも4時までというお約束が4時35分までも延びるという状態でした。なおこれらについてのご質問が相当ございましたのを打ち切るような状態で非常に盛会に終わったということはそうしたご援助があったためと思いこの席からご出席くださいました先生方に厚くお礼申し上げます。そこで講師として選ばれました方々をいちおうご紹介申し上げます。全国ブロックからお集まりになるべき予定のところ連絡の都合とかその他でご出席いただきましたのはわずか東京と北海道といったような寂しい状態でございました。しかし東京からはさすがに日本のトップレベルの方々が三人お集まりくださいました。その方々は聖路加の佐々木ノブ先生で病院の看護婦の業務指導をなさっていらっしゃる主任の方でございます。また国立公衆衛生院の柴田明子先生もやはり看護教育をなさっている方でございます。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.108 - P.108

 今月はT.L.C特集号をお送りします。巻頭で述べましたように,tender loving careという課題をとり上げたのは本誌として初めてのことです。もちろんこのこと自身は病院として当然すぎるくらい大切な問題ですが,今まで特にとり上げられなかったのは,病院管理の合理化で解決しなければならない骨格的問題が山積し,それを追求するために思いがこれまでに届かなかったといえるのでしょう。さいわい今回たまたま数編のT.L.C.関係の論文を頂いたので,あえてT.L.C.特集号としました。従って編集部が企画したのではなく,この数編の論文の筆者の着想がT.L.C.を日本の病院界に問題提示した結果にほかなりません。改めてこれらの筆者に御礼を申し上げます。
 津田氏らおよび芦沢氏の騒音調査の2篇は,騒音を物理的音響と心理的影響の二方面からその実態を把握したものでして,病院の立地条件が問題となることはもちろんですが,院内音の性格について科学的根拠を与えたものとして注目されるでしょう。英米においてはすでに院内騒音防止規準を作製しているが,これらの研究から日本でも具体策が考慮されるべきでしょう。

病院管理講座 理論編・15

病院の組織(ⅩⅡ)—管理者論(その3)

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.83 - P.87

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 前号では,病院の本質的な業務である医療業務に対する病院管理者の義務について説明を行なったが,次は所謂事務管理 business management, lay administrationに関する義務について述べてみよう。
 この事務といわれる業務には2種類のものがある。(1)医療業務を援助する作業的業務と,(2)病院全体が組織として活動するに必要な管理に附属する業務とがある。物資の補給,熱,動力,電気,水の供給,土地,建物,設備,器機の保善,輸送,通信等医療業務に必要な物資を供給したり,環境を整備したりする所謂現場的業務といわれる施設的業務と企画,統計,文書,人事,会計,購買等の病院が経営体として必要な管理事務との2群である。医療部門をprofessional depari-tmentsとし,事務部門をnon-professional depar-tmentsと名付けることもあるが,医療に関する限りこの事務部門は患者に接しない。従ってまた患者に接する業務を前方業務とすれば,後方業務といえるものである。そして前線部隊が活発に活動できるためには,後方部隊の存在が必要であるごとく,患者の医療が円滑に行なわれるためにはこの事務部門が充分活躍しなければならない。

実務編・13

病院エンジニアリングの実際

著者: 倉持一雄

ページ範囲:P.89 - P.93

I.はじめに
 最近の設備保全の技術は,建築の近代化,設備の自動化に伴い,急激に発展し,加えて管理の合理化,機能の専門化とともに,その経済性を左右するメンテナンスの方法について,PM(予防保全)が重要化してきたといえる。病院の設備は規模も小さく,生産性にも関係が少ないため,保全については軽視されがちであるが,医療設備機器は患者の生命に直接関係するものであるし,経済的見地からも,設備保全がいかに重要であるかを考えれば,この傾向は等閑視できないものがある。
 ここに病院における設備管理のあり方と,その問題点について述べてみたい。

紹介

医療に与える病院の影響

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.95 - P.99

 近着の米誌(Hospitals Nov.1 1963)は『欧州及び米国の医療に与える病院の影響』と題する,カルフォルニア大学公衆衛生のレーマー教授の興味深い論文を掲載しているが,これを紹介してみよう。
 教授は米国の医療が,病院内部ではさまざまな困難を産み出しているが,地域社会にはよき影響をもたらし,一方欧州の医療は,より優れた病院システムを産み出したが,地域社会との関係では困難さを作っていると指摘する。

Hospital Topics 経営

厚生省医務局の「病院勘定科目」(1)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.100 - P.101

 病院の勘定科目の標準化については病院経理関係者の間で話題にのぼってから久しいのであるが,それぞれ系統機関別に独自のゆき方をしてきたため,全国的な視野での統一化はなかなか困難であった。このため,経営実態の調査においてはその都度,科目を適宜に設定しなければならず,被調査施設ではそのたびに新たな調査や計数の組替えに無駄な労力を費やすことが多かった。そしてとくに問題であったことは,そのようにして無理に作りあげられた計数には信ぴょう性,客観性がうすく,比較,分析がすこぶるあやしげなものとなったことである。
 このような状態では今のように病院経営問題が急迫をつげているとき,経営情勢の把握にもことを欠くし,病院としても経営分析,比較において判定評価すべき対象も基準も得られないことになり,不都合はますます強く感じられるようになった。勘定科目の標準案の作成について,さきの病院経営管理改善懇談会が勧奨し,厚生省医務局がその作成に乗り出すと同時に,日本医師会でもとりあげ,日本病院協会,全国自治体病院協議会などの積極協力参加もあって,極めて短期間に統一案がまとまり得たのは,機運がすでに熟成していたからであるといえよう。もちろんこの標準勘定科目は何等強制力をもつものではないし,各経営主体にとって最善のものではなく,不都合の点もあるであろうから,今後の普及にはまだまだ時間がかかるであろう。

診療管理

病院管理者の仕事

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.101 - P.102

管理者の仕事とはなにか? 毎日それが如何に遂行されているか?それを遂行するにどんな知識が必要であるか?
 以下の数字は,アメリカのある傷痍軍人病院の管理者が,10日間にわたる自分の仕事を自己分析した結果です。この病院は平均一日在院患者数約1,000人,職員1,214人,大学とアフィリエイトしていて,フルイムの医師41人,レエジデント56人,顧問医55人を抱える大病院で,アメリカにおける大きな系統病院のチェインの一つになっています。なおこの管理者は医師ではありません。この調査は朝7時50分から夕方4時30分までの平日勤務10日の計5,186分の仕事を分類整理したものです。管理者は休日や時間外にも病院のための活動を行なっていますが,この統計からはそれは除外されています。また平日の昼食時間は他の職員等と同席して仕事の話しをするのが普通なのでこの勤務時間に含めてあります。

事務管理

医事研究会について

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.102 - P.103

 東京都内の有志病院が集まって昨年2月,医事研究会を設置し,今日まで5回の研究を持って,活発に活動している。日赤中央病院の中田事務部長はこの研究会を企画されたグループの一人であるが,医事研究会の発足について次のような点を明らかにしている。
 「保険請求事務の簡素化が今日までいろいろと論議されてきたにもかかわらず,現状を眺めると益々複雑化の様相をきたしているというのが実相であって,これは医療機関共通の悩みである。しかしながら理由はどのようであれ,関係者は数多い法規に精通し,適正な保険診療と相まって,保険請求事務を一貫して行なわなければならず,もはやかれこれ論議の段階ではないと考え,現在各病院において行なわれている,初診から請求事務に至る過程における事務の流れについて,各病院間に各各長所もあり欠点もあるのであるから,それらを相互に研究発表して改善に資したいとの趣旨の下に,都下有志病院にはかって結成されたのが医事研究会である」。

霞ガ関だより

昭和39年度医療施設関係予算案の概要

著者: 佐分利輝彦

ページ範囲:P.104 - P.106

 昭和39年度の政府予算案は,昨年12月29日に閣議で決定され,現在国会で審議中である。そこで,明年度予算案のうち医療施設に関係のあるものを,本年度予算と対比しながら説明してみよう。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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