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雑誌目次

雑誌文献

病院23巻5号

1964年05月発行

雑誌目次

特集 病院のPR

病院のPRはいかにあるべきか—患者心理とPR戦略

著者: 安食正夫

ページ範囲:P.9 - P.13

PR以前の問題
 読者諸子もすでに承知のこととおもうが,最近2つの暗いニュースが相ついで新聞に報道された。
 そのひとつは「青梅市立総合病院,1億円の赤字で重体「あまかった経営方針」というもの。この病院は昭和32年11月開院した比較的新しい病院でベッド数303という立派な内容だが「建築費には2億円をかけ建物はできたものの,中身の医療器具を買う予算がなかった」ため市中銀行から借金したのがはじまりで,「人件費や薬代の値上り,さらに医療単価の安いことなど」で借金を返すどころか毎年赤字の連続で,つもりつもって1億1千万にまでなってしまったものという。

地域社会に対する病院のPR

著者: 宮坂忠夫

ページ範囲:P.14 - P.18

はじめに
 編集部からのご依頼では,地域社会に対する病院のPRについて書くようにとのことであるが,テーマについて少々わかりにくい点があるので,それから始めさせていただこう。
 まず,ここにいう地域社会とは一体何をさしているのだろうか。地区組織活動などの場合には,一応まとまりのある地域とそこの住民というほどの意味であるが,病院がそういう意味の地域のセンターにふさわしい所にあるとは限るまい。また行政上の市町村をさしていることもあろうが,市町村に二つ以上病院があることも少なくない。そこで,いわゆる"診療圏"のようなものかとも考えたが,これは病院の大小によって異なってくるし,保健所の管轄区域のように,はっきりしたものでもない。ちなみに,この特集の他のテーマをみると,おそらくこのテーマに対応するものとして,"病院内のPR"というのがある。従って,地域社会に対するとは,院内に対応して"院外"という意味に考えたい。はじめから面倒なことをのべたが,病院が本気でPR活動をするとしたら基本的な考え方として大切だと思う。

病院内のPR

著者: 姉崎正平

ページ範囲:P.19 - P.26

Ⅰ.はじめに
 我国の医療をめぐり,様々の問題が山積している。病院はこの問題を少なしとしない医療制度の中にある以上,内部的にもその影響でいろいろな問題をかかえている。これらは近代化への脱皮を迫られているわが国の医療制度や病院経営における過渡的現象ともいえる。医療の公共性を考えるとき,これらの問題に対し,国民の理解と支持に基づいた納得のいく解決がなされることが望まれる。これは医療関係者や病院によるPRによりなされ得る面が多い。
 特に病院経営に関しては,医学の進歩発展に呼応し,その機能を十分発揮させるため,広く一般の科学技術や経営管理を取り入れていかねばならない。それは規模および専門分化の度合を増大させるであろう。そのような傾向の中で病院の組織化を進め,合理的且つ有機的な経営を行なうには,経営担当者が職員および患者の理解・信頼・協力を得なければならない。また一般の人々が医療や病院の実情や問題を最も切実に感ずるのは患者となったとき病院職員等の医療関係者を通じてである。これらの点において,病院職員および患者に対する病院内PRが重視さるべきである。

欧米における病院PR

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.27 - P.31

 現代は競争の時代である。あらゆる種類の組織体は,進歩のためあるいは存続のためには,その活動状況を公衆に知らせ,興味を起こさせねばならない。現代がPRの時代ともいわれるのも当然であろうし,われわれの周辺の事情はこの事実をはっきりと裏づけている。そして病院においても,PRは好むと好まざるに拘らずとり上げざるを得ない問題となってきている。
 この問題の米国の病院における考え方をAldenMillsの著書「Hospital Public Relations」を中心に考えてみよう。

病院のPRはどこまで許されるか

著者: 下村健

ページ範囲:P.32 - P.36

1.病院PR制限の趣旨
 医療法では,病院に関する広告について厳重な制限が設けられているが,同法にいう広告のうちには,PRも含まれていることは疑いない。そこで病院のPRはどこまで許されるかを明らかにするためには,PRと広告との関係についても一応考えておく必要があると思われるのであるが,実際問題として普通に広告といわれているものとPRの間に明確な一線を画することは困難であるし,ここではPRは広義の広告のうちに含まれ,通常の広告が直接的効果を目的とするのに対し,間接的な効果を目的とする洗練された方法によるものである,といった程度に考えておくことにして,広告一般について述べることにしたい。
 さて,今日の医療法による広告の規制は,その系譜をたどると,明治39年の医師法,歯科医師法に至るのであるが,その間の経緯にもふれつつ広告規制のなされている趣旨を明らかにしよう。

院内報のあり方・作り方

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.42 - P.47

1.まえがき
 ここで院内報というのは,一般に社内報と呼ばれているものと同じで,病院の中で出されるから院内報と名づけたまでである。
 そこで,まず第1問。「あなたは,経営管理の責任者として,これまで一度でも院内報というものを頭にうかべたことがありますか。」

座談会

病院PRのあり方をめぐつて

著者: 吉田幸雄 ,   原素行 ,   石原信吾 ,   森直一 ,   岩佐潔 ,   若林利重 ,   桑原藤馬

ページ範囲:P.48 - P.60

 司会(吉田) きょうは病院のPRという課題でいろいろご高説を拝聴したいと思います。PRとは,パブリック・リレーションズ(Publicrelations)という言葉の頭文字のPRをとったそうであります。そしてこのパブリック・リレーションズという考え方は,病院という企業体に一番ぴったりとした問題であるわけであります。世の中にはPRをプロパガンダ広告,あるいは宣伝と間違えて用いられる方もございますが,病院は利益を対象としない企業体でございます。従ってそのPRというのは最も純粋に活用されるべき問題かと思います。
 そこでPRの対象でございますが,結局病院の基金を提供している人たち,病院で働いている職員,また病院を利用している患者さん,ないしは地域社会に対して病院がどういうふうに今運営あるいは経営されているかを理解してもらって,そして病院事業に協力してもらうことが病院PRの目的ではないかと思います。

グラフ

九州労災病院のリハビリテーション活動

ページ範囲:P.5 - P.8

昭和23年12月,わが国最初の労災病院として発足以来,九州労災病院は,その後続々とできた各地労災病院のモデル病院になってきた。
昭和25年,すでに今日のリハビリテーションの重要性に気づきわが国最初の本格的理学療法施設及び義肢装具製作部門を開設した。その後とくに内藤は外国視察帰国後作業療法の労災のリハビリテーションに不可欠であることを強調し,わが国最初の綜合病院における大規模の作業療法の採用に踏み切った。

国立下総療養所—組織化された精神科作業療法の場

ページ範囲:P.61 - P.64

近年、医療の領域に、リハビリテーションが重視されるようになったが、精神科の領域においては、当然の常識として、作業療法が行なわれ、レクリエーションがとり入れられており、何ら新しい問題ではない。昭和33年、国立下総療養所においては、作業センターが設けられ、組織化された中央式作業療法指導が行なわれるようになった。
遠藤淳先生のご説明を伺いながら、また、欠陥度別慢性患者区分、生活指導箋、生活指導連絡表、作業連絡経路、病棟レクリエーション患者の指導、作業およびレクリエーション患者の出席巡路、レクリエーション週間予定表などの資料を読みながら、下総療養所(院長 豊泉太郎先生)の取材を行なった。

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質疑応答

著者: 岩佐 ,   東京警察病院中央病歴室

ページ範囲:P.47 - P.47

米国の手術後死亡率の統計
〔問〕本院中央病歴室でも年々患者統計をとって居りますが,つきましては米国に於ける手術後死亡率はどの範囲迄の手術数を基準として統計を出しているのでしょうか。(例えば耳鼻科・眼科等に於ける小手術を入れての統計でしょうか)
〔答〕米国においては普通手術場は中央化されていますが,その中央手術場で行なわれた全手術件数,即ち耳鼻科や眼科の手術も含めた総手術件数に対する手術後死亡件数の比を算出しています。ただしこの場合,更に全麻,局麻等麻酔の種類別に細分した手術後死亡率を出して置くのが普通でこれによってある程度手術の内容別に状況を把握することが可能となります。

病室単位とその設備について—人手節約の方法,とくに病室単位の整備について

著者: 島内武文 ,   岩本正信 ,   車田松三郎

ページ範囲:P.65 - P.72

 最近病院経営における人件費の増大は病院経営上の重大な問題点となっており,給与ベースの上昇・職員年令構成の老令化は一層これに追打ちをかけてきたため,収入に対する**人件費率が50%をこえる場合は経営は赤字を免れない事態となって,管理の合理化が強く求められてきた。加うるに一般に人員の不足があり,ことに医師看護婦等の専門的職員や,第一線の働き手である若い従業員については欠員がいちじるしく,とりわけ地方においてはこのため診療所,病院等が閉鎖のやむなきに至り,あるいは折角の設備機械があそんでしまうという場合もでてきた。
 この様な事態に対しては,もちろん根本的にいって今日の医学の進歩や経済の成長に伴わないで不当に低い医療報酬の改善に努めることが何よりも大切なことはいうまでもないし,また専門的職員の教育養成も計画的に行なわれなければならないが,当面の処置としては管理上において従来のやり方の中から人手節約のための種々の工夫がなされなければならないと思われる。かつてわが国は物の価値に比べて人手の安い所であったので,一般に人間を使うことには物を節約すること程には気にかけなかったきらいがあった。しかし今日の様に人々の生産性が上昇し生活水準が上ってくると,従来の放慢な人使いを改めなければならなくなってきた。

中央滅菌材料室の業務分析—第13回日本病院学会宿題報告

著者: 原素行

ページ範囲:P.73 - P.79

Ⅰ.序説
1.中央滅菌材料室の成立
 病院における看護婦担当業務のうち,治療器械器具の準備,滅菌,保守保管など,直接に臨床看護から離脱した仕事を整理,分葉化し,これを中央組織化したものが,中央滅菌材料室葉務である。
 この分葉部門は,看護部内の一特殊機構とされ,その組織構成も,その業務目標も,機能もまた看護単位機構と著しく異なる。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.96 - P.96

 すでに初夏の訪れである。ようやく中央医療協議会の答申も提出され,来たる9月には6%ほどの医療費値上げが期待されている。長い欠乏の病院財政もどうにか一息できる見通しがついてきた。しかしそれとても過去の穴うめから抜け出すには日がかかる。そしてようやく恢復したと思うときには,さらに新しい苦難の道を辿って行かねばならないだろう。病院財政は結局常に重荷にあえいで行かねばならぬ運命の道なのだろうか。合理的な医療費改定ルールが確立されなければならない。
 さて本号は「病院のPR」を特集とした。すでに本誌上でたびたびPRがとり上げられたこともあるが,今回は筆者を拡大して,病院のPRをいろいろの角度から論じていただいた。

病院管理講座 実務編・15

財務諸表の作り方の実際

ページ範囲:P.85 - P.90

病院と企業会計
 病院事業は経済的にみると,建物,附帯設備,医療機械等の設備を利用し,医師をはじめ,いろいろの職種の職員が,薬品,給食材料等の材料を使い,水道,電気等の消費を行なって,医療サービスを行なうところである。しかも,医療サービスは経済的な価値をもつものであるので,継続的に経済的活動を行なう事業体であると云えるのである。
 生産活動を行なう事業体としては一般的には,最小の経済的消費によって最大の経済的価値を生み出すことが,その目的であるが,病院においても,全く同様である。ただ一般産業において,経済的消費と経済的価値造成の差は利潤によって示されるが,病院においては,その社会的性格から,単に利潤の大小によるべきではなく,医療サービスの質の問題となるということにその違いがあるに過ぎない。

Hospital Topics 経営

厚生省医務局の「病院勘定科目」(2)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.92 - P.93

損益計算書勘定科目は
(収益勘定)

診療管理

院内感染防止の工夫

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.93 - P.93

 院内感染においてstaphylococcusaureusが重大な役割を果たすことはすでに一般に知られているが,イギリスのSt.Bartholomew's Hosp-italでは手術後の患者に生じたwo-und seprisについて調査した結果次の事実を確めた。すなわち手術のため入院した全患者について粘膜をスポンジでふきとってstaphylococcusauremsの存在を調査し,その後毎週これを繰返した。その結果手術前後の全入院期間を通じてブドウ状菌を検出できなかった者では感染率は非常に低率であったが,これに反して入院時には陰性であったのが在院中に陽性になったものではwoundseprisの発生が一番高率であった。入院時にすでに陽性であったグループは前二者の中間であった。
 そこでブドウ状菌に感染していないものが入院してきて,手術前にこれに感染するとwound seprisを起こす危険が多いことが判かったのであるから,手術のために入院した患者ははじめから個室に収容するのがよいことになる。しかしすべての患者を全入院期間を通じて個室に収容することは不可能であるので,外科の大部屋を術前と術後の部分に分けることにした。

霞ケ関だより

小児病院について

著者: 野里寿一

ページ範囲:P.94 - P.95

 1959年,西ドイツに初めてサリドマイド・ベビーが生まれて6年,わが国にもサリドマイド禍が波及し,その人体実験が一部マスコミ等によりショッキングに取り上げられるなど,社会問題を提供したが,その反面これら不幸な小児を収容すべき小児専門病院が,わが国においていかに少ないかを知らしめた。
 しかし,厚生省においては,小児医療対策を軽視していたわけではなく,小児の健康が次の世代の健康,ひいては国家の繁栄を約束するものとし,小児専門病院の必要性と問題点を数年来検討してきたが,その結論がまとまり,東京では国立世田谷病院を転換して国立こども病院に,大阪では大阪市立病院に小児センターを併設し,これにあてることに決定した。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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