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雑誌目次

雑誌文献

病院23巻7号

1964年07月発行

雑誌目次

特集 空気調和

院内感染,とくに空調の問題

著者: 永沢滋

ページ範囲:P.14 - P.18

院内感染の意義
 院内感染の問題は,すでに内外の文献にも,また国内の学会などにおいても取り上げられ,これを憂慮する識者も多いが,その研究や解決のための努力が病院の一局部,すなわち診療各科によって別個に行なわれているのみで,病院として一貫した予防体制が確立されている例も決して多いとはいえない現状である。
 病気の治療にきた患者に,院内感染というよぶんな負担をかけることは,病院の重大な責任であり,特に抗生剤の開発以来耐性菌が出現し,院内で起こる交叉感染の治療が困難になっている事実は軽視することができず,この問題の解明と対策の研究が切に望まれるゆえんである。

手術室の空調—麻酔薬の問題に関連して

著者: 高橋長雄

ページ範囲:P.19 - P.24

1.はじめに
 さきに開催された第13回日本病院学会の空調に関するシンポジュームで,手術室の空調の項の分担を命ぜられた。その時,筆者は会長の奥田義正博士ならびに司会の石井主器夫博士に次のように申しあげてご了承をいただいた。「私はできあがった札幌医大病院中央手術部の施設をそのまま引き継いで使用しておるのみで,空調の設計が問題になった当時外遊中で,まったく関知しなかったし,空調はこうあらねばならぬという研究や業績も持ち合わせていない。ただ麻酔薬の爆発の問題に関連して空調に若干の関心をよせているのみである。問題の焦点をしぼって,そこに移してもよければ,シンポジュームの演者をお引き受けしましょう」と。
 さて本誌からの原稿依頼にも,第13回病院学会の発表内容を土台に,記載をすすめるようにとあったので,筆者は,上記のいきさつから,手術室の空調というテーマの包含する尨大な対象のうち,主として,麻酔薬の爆発という点に焦点を合わせて述べてみたい。

未熟児室の空調—とくに感染症との関係について

著者: 巷野悟郎 ,   宍戸哲男 ,   伊藤宏

ページ範囲:P.25 - P.31

はじめに
 未熟児室管理でまず取りあげなけれならないのは感染予防の対策である。すなわち,未熟児室が一般病室と隔離されていること,未熟児室内の空気調整が完全に行なわれていること,哺育者が感染予防に対するじゅうぶんな知識をもって,感染予防の措置を行なうことなどである。
 これらのうち,未熟児室内の空気を常に清浄に保つための空気調整は,未熟児室を管理するうえにもっとも基礎的な事項と考えられる。われわれの病院では,昭和32年以来20床の未熟児室を運営しているが,昭和37年に空気調整のための設備を設けて以来,とくに感染症が減少したという事実は,このことを裏づけしているといってもよいであろう。

病院建築の空調設備入門

著者: 井上宇市

ページ範囲:P.32 - P.36

 病院の空調方式を論ずる前に,各方式に共通な基本的事項の二,三を取り上げてみよう。

全館空調の経験

財団法人住友病院の場合

著者: 吉岡好郎

ページ範囲:P.37 - P.40

 病院建築については,その性格上,特に高度な機能の装置と設備が要求され,新しい分野の開発が常にこころみられている。
 昭和33年に当住友病院の新築が計画された際にも,全館暖冷房設備について,次の4つの方式が検討された。

名鉄病院の場合

著者: 阿久津慎

ページ範囲:P.40 - P.43

1)はじめに
 全館空調に関しては,『病院』19巻8号(昭和35年8月号)に"全館冷暖房病院における空気調節の実際"という表題で発表してあり,『病院設備』2巻5号には"空気調節と院内感染"を発表し,同じく『病院設備』2巻6号には"空気調整設備のある新生児室案内"と題して当院の産婦人科部長馬場太郎博士に発表してもらってありますし,昭和37年4月には第一資料社発行の『空気調和と冷凍』の2巻4号で,"全館空調を実施している病院の報告"をしていますので,このたびはこれらの既発表の部分に関するものには,なるべく触れないようにして話をすすめて行きたいと思う。

東洋工業株式会社付属病院の場合

著者: 森田専一

ページ範囲:P.43 - P.47

 最近の一般建築には空調の普及がめざましく,もはや,空調装置なしでは考えられぬ時代になりつつある。
 近年病院における空調も重要な病院設備のひとつとして,その地歩を確立するようになった。特に世界の病院で問題となった院内感染の対策など,空調は文化設備なりという時代は過ぎ,欠くことのできないものに変わりつつある。

豊橋市民病院の場合

著者: 染川芳美

ページ範囲:P.48 - P.51

 豊橋市は愛知県の東南部,豊川の下流南岸にあって,北は豊川市と隣接し,西はすぐ渥美半島が伸びています。農業はもとより綿糸業,食品工業,製材,機械など,年産十数億円にのぼっております。この二十数万の人口を擁する地方都市の市民の保健,医療のため当院は昭和7年に開院されたのでありますが,年々利用者が増加し,かつまた医学の進歩に伴って既存の施設のみでは十分な診療も行なえない状態になりましたので,利用者の要望に応ずるため本館診療棟を,昭和32年4月に起工し,昭和33年12月に第1期工事を終了しました。続いて昭和34年10月に第2期工事を施工し,全館空調設備を有する総合病院として増改築されたのであります。当時はまだ総合病院で全館空調を行なっているところは数少なく,また地方都市の経営という特殊事情もあって,大方の注目を集めたのであります。今ここで全館空調の経験について述べるにあたり,設備の概要についてまずお話しいたしましょう。

グラビア

病院は前進する—川崎病院(岡山)

ページ範囲:P.5 - P.8

昭和13年外科の単科病院として発足した病院が,戦災や移転の苦難を乗り越えて,昭和35年にガン診療を主目標とした総合病院(496床)と癌研究所にまで発展し,現在さらに成長を続けている。
この動きの中に,医療奉仕を院是とするスピリットと,合理化・能率化・集約化に立脚した創意と熱意とが感じられるであろう。

病院には愛と善意があふれている—聖マリア病院(姫路)

ページ範囲:P.9 - P.12

姫路駅からバスで25分。広々とした自然の中にくっきりと白い建物がそびえている。聖マリア病院(兵庫県姫路市仁豊野650)は,成人病ことにガンの早期発見に力をそそいでおり,患者は中国・近畿・四国などから集まってきている。病院の設計や設備には創意くふうがにじみ出ており,治療やサービスに善意と熱意が感じられる。すみずみにまで心がとどいている病院は患者の信頼をあつめ,医療成果を高めるものである。

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病院の人件費にかんする研究《第1報》主として病院統計報告に関連して

著者: 車田松三郎

ページ範囲:P.56 - P.60

 以上,分析の結果を要約すると,次のとおりである。
 1.人件費そのものについて1ベッド当たり1か月平均人件費をみると, イ)経営主体別に異なり国立や公立が高い。 ロ)規模別には100床未満がもっとも高い。 ハ)結核病院に比して一般病院はもちろん高いが,その差は予想したほど大きくない。 ニ)年次別には毎年増加傾向にあり,たとえば県立(A)の場合昭和32年を100とすれば昭和36年には165.5の増加である。
 2.費用に占める人件費の割合は,経営主体別には日赤が52.9%でもっとも高い。規模別には小規模病院ほど人件費割合が高い。
 3.人件費と売上高との関係(人件費率)をみると,平均的にいって,人件費率50%で収支比率100%に相当する。そして人件費率60%以上になるとほとんどの施設が赤字である。

医師会オープン病院とその運営1年の経験

著者: 高橋元吉

ページ範囲:P.61 - P.70

はじめに
 わが国の病院史を概視してみると,552年ごろ仏教伝来とともに貧民救済施療病院に始まり,1556年西洋医学の導入によって,医育中心の病院形体をみて,以来幕末に至り幕府医学所では西洋医,学速成が計られた。その後明治改新に至りこの医学所が基盤となって,官公立医学校に移行し,各所に病院の開設が勃興した。これらの病院も明治17年府県立医学校の廃止によって,私立病院が誕生した。その後,日赤,済生会,農協病院などの開設をみて戦時中はおおいに医療と人的物的の各面にわたり災害救助に活躍をし社会に貢献した。
 終戦によってかつての軍病院が国立一般病院として移管され,ひき続いて都道府県立病院が遂次増加した。また一方には医療保険制度施策によって国民健康保険の普及にともない,国保病院が出現し,農協病院組織の強化が計られ,それに加えて職域病院ならびに保険関係病院,法人立病院の設立が盛んとなって,まさに近時では病院設立主体上において戦国時代の様相を呈してきた。

病院管理研究所だより

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.90 - P.90

 4月号の本誌でもお知らせしたとおり,わが国の病院管理者教育の歴史で画期的といえる「病院管理専攻科」が,さる5月11日からいよいよ開始されました。15年前病院管理研修所が創設された時からの希望であった,専門病院管理者の正式な数育訓練がようやく第一歩をふみ出すことができたわけです。
 昨年までは1か月(創設時しばらくは2か月)の研修科がありましたが,なにしろ時間的な制約が,ややもすれば総花的な研修にとどまらせていたきらいがありました。今回は6か月研修,そのあと6か月の実地訓練が計画されており,やっと国際的なレベルでの病院管理者教育訓練水準に近づくことができたといえましょう。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.94 - P.94

 今月は第14回日本病院学会総会が,東京文化会館で盛会裡に行なわれました。この記事については本誌11月号に詳細に報告されるでしょう。
 本号は昨年秋の第13回日本病院学会の専門集会「空気調和」で発表されたものを,各発表者から原著としてご報告願ったものを中心として,「空気調和」の特集号を編集しました。

病院管理講座 理論編・17

病院の組織(ⅩⅣ)—中間管理組織論(その1)

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.75 - P.79

1
 第5回(22巻5号)および第7回(22巻7号)から第8回(22巻11号)にわたって,病院業務の職能分化について系統的に述べてきた。そしてこれを大別して(1)医師グループ,(2)看護グループ,(3)診療協助系グループ,(4)看護協助系グループ,(5)その他の医療協助系グループ,(6)施設的業務グループ,に分けることができた。(1)〜(5)は病院独特の職能群であり,(6)はいかなる種類の施設でも存在する職能群であるということができる。すなわち前者は医療を行なうに必要な職能群であり,後者は前者が単一の医療組織を作って現実に施設あるいは経営体として活動するに必要になってくる職能群であるということができる。また前者を前方機能または第一次機能,後者を後方機能または第二次機能と名づけられることもある。すなわち患者に直接サービスするものとそうでないものという分類である。
 さてこれらの職能分化の発展は,(1)病院の規模の増大,すなわち業務量の増大が職能分化の要因となり,また(2)病院機能の質の向上が職能分化を促進せしめる。業務量の増大はおのずから職員数を増し,そして分業の原則に従って専門分化し,医学医術の進歩は診療機能を向上させて診療系職能の専門分化を促進し,看護系サービスの向上は民衆の文化や生活の向上が反映して,業務量を増大して行く。そしてこの両要因はからみ合って近代病院の職能分化を目ざましく発展させてきた。

実務編・16

中央検査室業務の実際

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.80 - P.85

 中央検査室は臨床各科の必要とする臨床検査を行なうところで,臨床各科に対するサービス部門ともいうことができる。一定数の人員で,毎日一定量の検査を行ない,いつも正しい検査成績を出すのが中央検査室の任務である。というと検査室業務とは割り合いに単純なもののように聞こえるが,すべての検査成績が一定レベル以上の信頼度を維持するようにするのは,なかなか容易なわざではない。検査成績の良否はちょっと見ただけではわからない。しかし間違った成績であれば,すぐに患者の診療に悪影響を及ぼす。
 医学の進歩に伴って,診療に必要な臨床検査の種類は急激に増加しつつあり,患者1人当たりの検査件数もまた増加の一途をたどっている。ということは,中央検査室はたえず新しい検査種目をふやして行かなければならず,かつ増加して行く作業量に耐える対策を立てなければならないことになる。

Hospital Tiopcs 給食管理

各国の病院栄養士業務<1>

著者: 宮川哲子

ページ範囲:P.86 - P.88

 いよいよ管理栄養士制度が実施されるときがきました。昨年11月17日に学科が,本年2月22,33日に実施試験が施行され,その結果は次のとおりであります。
 全科目受験者2,205名,一部免除受験者2,086名,計4,291名のところ,当日欠席者1,137名のため総数3,154名,その中第1次の合格者が23%であったが,第2次には21.8%という少ない数になった。詳細を第1表に示す。

論壇

看護婦の勤務体制—患者の食事を2回半制とし看護婦の勤務体制を一般サラリーマン化することを提唱する

著者: 友谷鷹雄

ページ範囲:P.92 - P.93

 ここに記すことは,看護婦さんの相談相手を3年間もつづけた結果の思いつきであるが,第三者の言も一興,また何かの参考になろうかとの老婆心から一筆したしだい。あるいは文中無遠慮な言があるかも知れないが,ご寛容のうえご一読賜らば幸甚。
 現在の看護婦さんの勤務は3交替ということになっているが,24時間を3等分のうえ,いずれの8時間も5人ならば5人,あるいは10人ならば10人というふうに,同数が勤務しているのならば,文字どおり3交替といってもさしつかえない。しかし,じじつは準夜,深夜は1単位1人ないし2人であってみれば,まったくその形は何ら当直と異なるところがない。しかもこの準夜,深夜の交替時間が,午前1時ごろというに至っては,それもこれが年に1回とかいうのであればともかく,3交替という制度からくる正規の姿とあっては,交通機関もなくなった草木も眠る丑満時,女性の身で1人とぼとぼ帰宅もならず,やむを得ず家族と別かれ,一定の宿舎で一生独身で過ごさねばならない,特殊勤務体制を前提とした看護婦さんに,衷心同情の念を禁じ得ないとともに,反面この形で看護婦さんの供給を期待する方が無理であり,看護婦希望者のますます減るのも,まったくむべなるかなと思われてならない。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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