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雑誌目次

雑誌文献

病院23巻8号

1964年08月発行

雑誌目次

特集 病院の薬局

病院診療所薬局の人員およびその配置

著者: 上野高正

ページ範囲:P.14 - P.22

 病院診療所薬局の人員といえば,すぐに医療法施行規則の,「調剤数80またはその端数毎に1名」を思い出す人が多いかもしれないが,それは決して「薬局」の人員に関する基準ではなくて,「調剤」に従事する薬剤師の数に関する基準なのである。わが国の病院診療所において,どこででも共通に薬剤師が行なっている業務は「調剤」であるので,それに関してだけ規定したものであろう。現実には,調剤業務のほかに,まだいろいろと薬剤師にやらせた方がその施設として有利となる業務をあわせて,薬剤師を基幹とする編成の一分科に行なわせていて,その分科を通称「薬局」または「薬剤科」などと呼んでいる。そしてこの「薬局」には,今のところ定形はみとめられない。
 およそある部門の所有人員は,その部門へ与えられる業務量と,それについての一人当たりの処理能力との相互関係から決まってくるものであるが,薬局所要人員についても同様である。そこでまず薬局所要人員に影響を及ぼす要素から考えてみることにする。

病院薬局の施設およびレイアウト

著者: 山田益城

ページ範囲:P.23 - P.27

はじめに
 病院薬局業務の合理的な運営に必須の条件は業務量に適応した薬局施設・設備・レイアウトおよび人員配置ということにつきる。
 特に施設(面積・室割り)とレイアウトは基本的なもので,たとえば面積が常識外に狭隘であるならば,人員をいかに増加しても,患者待ち時間などは短縮されない。またこの待ち時間はレイアウトに深い関係をもつ。

病院薬局調剤業務の問題点

著者: 堀岡正義

ページ範囲:P.28 - P.32

調剤業務と薬剤師
 はじめに外来患者処方せんの調剤経路を図示(第1図)してみよう。
 薬剤師は医師と患者の間にあって,医師からの処方を正確に調剤し,患者が正しく服用するよう指導する任務がある。

病院薬局補給業務の問題点

著者: 田中精二

ページ範囲:P.33 - P.38

1.はじめに
 最近病院経営については各所で徹底的な経営診断が行なわれ,その体質改善が大きく叫ばれて,財務,労務,物品などあらゆる面で"ムダ"のない管理が強く要請されている。
 この観点からしても,病院薬局における補給業務の合理化については,いろいろと問題が生じてくるもので,あらゆる角度から十分な検討が加えられるべきである。

治験薬について

著者: 久保文苗

ページ範囲:P.39 - P.42

1.治験薬とは
 総合大病院あるいは特殊の専門病院では,医薬品製造業者からの要請によって,未発売医薬品の臨床試験を引き受けることが少なくない。私どもはこのような医薬品を通常"治験薬"と呼んでいる。それではなぜこのような試験の依頼がなされるかというと,もともと人体に使用する医薬品であるから,発売に先立って薬効の確実性,その適用範囲,副作用,毒性の有無などについて実際に人体に試用してみる必要のあることは当然であり,さらに手続上からも,薬局方に収載されていない医薬品の製造承認(薬事法第14条による厚生大臣の承認)を申請するときには,次のような基準による臨床試験データを添えて申請しなければならないことになっているからである。すなわち,一般の医薬品の製造申請の際には,2か所以上の医療機関(完備した設備を有し,経験ある医師のいる)において60例以上の臨床試験データを,また特に悪性腫瘍,結核などの特殊疾患を対象とする医薬品については,3か所以上の医療機関において100例以上のデータを集めて提出することになっている。このような理由から,医薬品製造業者は新しい医薬品を開発して発売しようと企画したときには,その製造の承認を受けるまでの過程において,適当な病院に治験薬を提供して臨床試験を依頼しているのである。

座談会

病院薬局のあり方—その管理と医療チームの中の役割り

著者: 岩佐潔 ,   上野高正 ,   今村栄一 ,   渡辺茂夫 ,   水野謹爾 ,   幡井ぎん ,   落合勝一郎

ページ範囲:P.44 - P.56

 司会 "薬局のあり方をめぐって"ということで薬局長はもちろん,医師の方,病院長,事務長,総婦長など,各部門の代表の方々にお集まりいただいて,その問題をお話し願いたいと思います。
 戦前は院長,事務長,薬局長が病院の3役だと言われたこともあったのですが,戦後はパラメディカルのいろいろな部門がたくさんふえました関係で,そういったこともなくなりました。それから医薬分業,これは病院では昔から行なわれておりましたけれども,さらに処方箋を外の薬局へ出してしまったらいいのではないか,というような意見さえ戦後一時きかれまして,いくぶん薬局の比重が病院の中で低下したような感じを受けた時代があったわけです。けれども,その後新しい有効な薬もどんどん出て参りまして,薬の重要性ということが見直されて,特に病院における診療は,チームによる診療だということになりますと,その中で薬剤師の方の役割というのがまた見直されてきているのだと思います。それからまた,経営的な面でも,支出に占める薬剤の費用というものが非常に大きくなって,そういう面からも薬局の重要性というのがまた見直されなくてはいけないんじゃないかと思います。そんなことをいろいろ考えて,"新しい病院における薬局のあり方"ということが種々問題になると思いますので,そういった面についてまずお話しを願いたいと思います。

グラフ

薬局のはたらき

ページ範囲:P.5 - P.12

病院薬局は医療機能の担当部門として大きなはたらきをしている.薬局の中に足を踏み入れて,その姿を見ることにしよう.

病院管理講座 理論編・18

病院の組織(ⅩⅤ)—中間管理組織論(その2)—総婦長論

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.65 - P.70

1
 前号においては,主として診療管理の中間管理組織について私見を述べた。本号においては看護系職能群に対する中間管理組織について述べてみよう。
 看護系職能群には,看護そのものの組織と,看護協助機関の組織とがある。

実務編・17

看護要員の勤務と業務の割り当て—聖路加国際病院の例

著者: 相模はつ子

ページ範囲:P.71 - P.76

 病棟の看護業務は,診療補助業務,患者の身のまわりの世話,環境整備,事務的業務その他,多種にわたる仕事を含んでいる。そのうちには,看護婦がぜひ行なうべき業務,すなわち正確な判断,技術を必要とする業務から,単純な補助的業務まで含まれている。各メンバーに,どのように業務を分担させたらよいか,看護補助者に明らかに渡せる仕事もあるが,なかには,同じ仕事であっても,患者の身体的・精神的要求により,看護婦が行なうべき場合と,反対に看護婦補助者に依頼できる場合がある。主任看護婦は,どの職種にどのように仕事を割り当てたらよいか,判断し計画しなければならない。また主任看護婦は,自分の管理する1看護単位における患者の状況を把握し,各メンバーに,よく計画された,適切な勤務割り当てを行なうことにより,患者によい看護が行なわれ,また仕事は能率的に運ばれる。そしてそこに働く人々に満足感を与え,いっそうよい看護が行なえると思う。

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間接レントゲンフィルム管理

著者: 角田信三 ,   上野修

ページ範囲:P.77 - P.79

はじめに
 私どものひとり角田は斎藤,山内と共著で病院第19巻第1号に"レントゲンフィルム管理方法"を発表したが,今回さらに間接レントゲンフィルム管理方法に一考案をいたし効果をあげているので,ここにその管理方法を述べてご批判を得たいと思う。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.92 - P.92

 盛夏です。この暑さのために,日本の病人は身心を弱らせ症状を悪化させている。目の前には全館冷房のデラックスなホテルが林立して行く。オリンピックも大切だが,病人を暑さの中に放置しておく跛行現象は我慢ができない。オリンピックがうまくできることが文化と思っている日本人の文化観は,何とおそまつなものだろうか。毎夏の愚痴……多謝。
 さて本号は「薬局管理」を特集しました。病院薬局が再認識されなければならない時代になってきました。薬物療法は一段と進歩し,調剤数は激増しています。しかし,この薬物療法の新時代にはたして適切な認識が医師側に理解されているのでしょうか。有効な薬品が多くなるにつれ,効果の不確実な薬はもっと淘汰されてしかるべきではないでしょうか。医師が慣習によって使用している医薬品の再検討,新薬の正しい認識がなされるべきでしょう。それには新時代の病院薬剤師は,薬学の専門家としてもっと医師と協力できる体制が助勢されねばならないのではないでしょうか。

Hospital Topics 診療管理

国立病院,療養所に組織細則を制定—医療職Ⅱ—技師らの立場からこれをみる

著者: 佐藤乙一

ページ範囲:P.80 - P.81

 待望久しかった国立病院療養所組織細則準則が本年3月31日付でついに日の目をみた。思い出してみると,この胎動はすでに数年前にさかのぼる。
 国立医療機関(厚生省所管)の中には,昭和26年に制定された国立病院執務準則要領があり,国立療養所もこの準則要領を適用していたが,昭和36年,国立療養所業務基準を制定した。通称これを「業務基準」と呼びならしているのである。

看護管理

ボランタリー病院の病棟主任

著者: 今井敬子

ページ範囲:P.81 - P.82

 アメリカの全病院数(6900)の半数以上をしめるのはボランタリー病院,すなわち利益を目的とせず,収入源を患者,政府よりの寄付,慈善により受けている病院である。全活動看護婦,550,000人のうち59%ののものが短期間の病院に勤務しており,短期間用のベッドを提供しているのは60%のボランタリー病院である。
 私はこのボランタリー病院の一つであるペンシルバニア州のペンシルバニア病院の外科内科病棟の主任をしばらくしていたので,アメリカの一つの病院系体であるボランタリー病院の病棟主任の立場から看護管理を考察してみたい。このために主任はどういうことをして患者のケアーを行なっているかということは,ある1日を例にとってみればよくわかると思う。アメリカのボランタリー病院は他の病院系体に比較して,専門看護婦の数が高いとされているが,それはかならずしも私の勤務したところでは事実ではなく,看護業務にたずさわる者は,専門看護婦をはじめ看護学生,准看,看護助手,オーダリー(男子の看護助手)などで,ふつう一つの病棟(患者15名くらい)看護婦1人につき准看1人あるいは2人,助手1人というような割合である。大きな病棟(患者40名)に行けば,専門看護婦2人に対し准看4人,助手1人ないし2人といったところが標準のようである。それぞれ実習学生は5名とか10名,病棟により異なる。

給食管理

諸外国の栄養士制度・2

著者: 宮川哲子

ページ範囲:P.82 - P.84

英国の栄養士
 大学課程(3年)修了後1年6か月栄養士養成修了,6か月インターン,計5か年後栄養士となる。英国は,米国のシステムによく似た制度をとり入れている。英国のダイティシアンは食事士と栄養士という呼称の二通りになっている。ロンドン大学の栄養士養成所J・ユドキン主任教授との話や施設および栄養士免許に関する文献では,米国と同じような高度な制度になろうとしている。日本の栄養士とは非常な差があり,ホーリングスオーヴ氏などは,世界栄養士界のリーダーとしてF.A.O.などの役員をしたり,英国の食糧計画に参加した諸論文は高く評価されたものばかりで,第3回国際栄養会議々長に推されている女子栄養士である。わが日本栄養士会に対して非常な好意を寄せられ,国際舞台にも出席できるように,つねに連絡をされている。日本では,栄養士の教育課程が低いところに置かれ,日本と英米の栄養士め教養の差を,端的に現わしている。

事務管理

病院費用低減策

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.84 - P.85

 病院費用の高騰は,洋の東西を問わず共通の問題のようである。米国の病院では,過去10年(1953〜1962年)に1日平均1患者当たり費用は,20ドル(7200円)から40ドル(14400円)と上昇している。
 対策としてはさまざまなものがあろうが,実用策として,今年4月のModern Hospital誌が募集した費用低減策のいくつかを紹介してみよう。

特殊病院

結核の長期療養

著者: 柳瀬正之

ページ範囲:P.85 - P.86

 調和のとれた社会的および身体的な条件によって構成された心理的な場の上にpsychological overlayされた健康時の心理状態が,結核の発病によって社会的にも身体的にも破綻し,歪んだ形態をとり,経済,愛情,社会生活の不安に加えて,長期療養による自律神経系の変調が,患者の気分や心理を複雑にする。「男5年,女3年」と患者たちは自嘲する。男なら5年,女なら3年療養していれば,まず離婚されるという意味である。
 1944年にワックスマンがSMを発見してからちょうど20年になるが,今から10年前の国療の治療状況をみると,昭和29年7月1日の「結核の治療指針」改正の前後で,化学療法の適用範囲が大いに異なり29年4月と30年3月をくらべるとPASの使用患者は58179人中13893人(23.9%)が57899人中31938人(55.1%),SMは12034人(20.7%)が19419人(33.5%)INAHは3587人(6.2%)が15150人(26.2%)に増加している。PAS,INAHの二者併用患者がいちじるしく増加し,単独使用は減少の傾向がみられた。

霞ガ関だより

病院経理と病院薬局

著者: 渡辺康

ページ範囲:P.88 - P.91

 病院の院長または事務長,その他病院の経営を行なっておられる方々およびこれらの人々に強い指導力を持っておられる病院経営の専門家中には,病院薬局または病院薬剤師に対し非常に強い誤解と偏見を持っておられる方が多いように思われる。
 このようになってきた原因としては,病院薬剤師側の広い意味における業務不熱心?なことによる場合が多い。たとえば病院薬剤師が自分だけの殻に閉じ込って,病院全体的な立場から遊離した業務および説明を行なってきたり,対薬品問屋,製薬会社などの関係についての思慮が甘く,そのため,他の部門の人びとより侮られたりすることなどが多かっただめと思われる。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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