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雑誌目次

雑誌文献

病院23巻9号

1964年09月発行

雑誌目次

特集 看護婦不足の現状と対策

看護不足の問題に思う

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.10 - P.11

 病院看護婦の不足の問題について二,三感想を述べてご参考にしよう。わが国では,看護婦の不足の問題が病院界の世論になっている。もちろん厚生省もこの問題の解決には苦慮していることも事実である。しかし看護婦の不足は,いうまでもなく看護婦の需給のアンバランスによって生じてくるものであるから,需要と供給を調整することが根本的な対策でなければならない。供給に対し需要が過大でああるならば需要をおさえ,需要に対して供給が過少ならば供給を促進するということであるが,現状においては第1の問題が忘却されているのではないだろうか。
 すなわち,戦後世界の病院史上無類の病院ブームを呈してきたが,最近はじつに,それが拍車をかけられつつあるのが事実である。毎年2万床の増床の状態が,35年には2万5,000床,36年には3万床,37年には3万5,000床,そして38年にはついに年間4万床の増床が行なわれた。かくのごとく需要は急増しているが,これに対して看護婦の供給が増大して行けるものかどうかが,私には不安になってくる。

女子労働者としての看護婦

著者: 吉田秀夫

ページ範囲:P.12 - P.15

看護婦は労働者であるということ
 いまから3年まえといえば,いわゆる安保条約で,東京を中心に全国いたるところで大へんなさわぎがあった年である。その年の春より翌年にかけて2年ごし,わが国の歴史では稀有にぞくするという病院ストライキが,全国各地で激発していた。その年の秋,私はラジオの放送のゲストによばれて,労働省のO女史という課長さんと30分間「看護婦の現状について」ということで,話をさせられたことがあった。そのときO女史は,私にこういっておられた。これまで,しばしば厚生省や実質的に厚生省が応援している看護婦の集いで話をたのまれてでかけてゆくと,"看護婦は労働者である"といったことはあまりいってくれるなという先制的注文をうけてきたと。こうした,あやまった考え方が,戦後一貫して厚生省の人たちにあったのではないだろうかと。私も同感の意を表明した。これこそ病院ストライキを2年ごし全国的に多発せしめた理由の重大な一つではなかったかと思うからである。
 医療行政を指導する役所が,こういう考え方ならば,病院を経営する人が医師であろうと非医師の団体であろうと,それは公私をとわず前近代的だと批判されてもいたし方ないものが根づよく,長期に存在していたはずである。だからこそ,あの当時マスコミでさえも日本の病院経営は第二近江絹糸ではないかとさえ酷評し,その非近代的労務管理政策の正体をついた。

看護婦不足の制度上の対策

著者: 山田里津

ページ範囲:P.16 - P.20

 終戦直後の混沌とした世相の中で,医療の中の看護問題がようやく浮び上がってきたときから,現在に至るまでの17年間を看護行政一筋にきましたが,この間常に大きな課題として取り上げられたのは看護婦充足問題であり,現在に至るもなお解決をみない大きな課題として残されている。特に地方においては,中央からは想像もつかない不足状態を示しており,これは施設の経営主体,地域差,待遇問題などいろいろの要素により影響されるが,地方で働くこと自体に魅力を感じない若い人たちが,少しでも条件のよい施設を都市に求めていくことにもその原因があると考えられる。現在就業している看護職員数は,毎年1回厚生省でおこなっている全国医療施設調査の結果では第1表のとおりである。
 現行医療法による基準等により算出すると,看護婦等の充足率は約90%程度と推定されているが,実際には施設間の偏在,医療法基準によらない特殊部門勤務などにより,その不足は相当の数になるものと推測され,あいかわらず毎年70%台の充足率に苦しんでいる県が多数あり,地域による格差は著しいものがある。私の前任地の三重県で,最近県下の医療施設(病院のみ)を全部詳細に看護部門について調査したことがあるが,基準看護承認施設が全体の35%あるにもかかわらずその施設の看護要員は1名でも欠けると基準数から外れるものが52%あった。

座談会

看護婦不足の実情と対策

著者: 石原信吾 ,   渡辺卓三 ,   鈴木武雄 ,   原俊夫 ,   竹田忠雄 ,   井上清平 ,   夕部講寿見

ページ範囲:P.22 - P.35

頭の痛い看護婦あつめと引きとめ
 石原 きょうのテーマは"看護婦,不足の実情と対策"ということで現在の病院はいろんな悪条件の中で運営していまして,その悪条件の中でも,人不足という問題が,どの病院もみんな頭を悩ましている問題だろうと思います.しかしこれは病院だけではありませんで,現在すべての企業が大企業を含めてこの問題に悩んでおりまして,それが特に中小企業でひどい。病院は中小企業ですから,特にひどい場所にある。それと同時に,病院の従業員の場合,その労働源というのが,非常に閉鎖的になっておりまして,いっそうそういう問題がひどい形でおっかぶさってきている。その中でも,特に看護婦不足という問題は,病院に現実にふりかかっておりまして,病院はこれをどうしていいか途方に暮れているというのが実情だと思うのです。そこで,こういう状況のもとで,各病院でこの看護婦不足の状況がどうなっているか,それをどうしているか,あるいはどうしたらいいかというような問題を,いろいろお伺いしたいと思います。ちょうど病院管理研究所の院長および事務長コースの研修が開かれておりまして,非常にいい機会ですから,いろいろな形の病院やいろいろな地方の実情,その他対策などについてお話しを伺えたらと思います。まず不足の現状について,渡辺先生ひとつ。

グラビア

看護室 Nurse Station

ページ範囲:P.5 - P.8

看護室は病棟活動の中心である。看護室の位置や設備の良否が,診療や看護に大きい影響を与える。看護室は機能を考慮して,配置され,設備されなければならない。
看護室は看護婦がつめているという所ではなく,医師と看護婦がいっしょに仕事をしている場所である。

ある事業所病院の姿—八幡製鉄所病院

ページ範囲:P.61 - P.64

大きい事業所のなかには,その従業員と家族の健康管理のために,自己の病院を持っているものがある。このような病院では軽症のものが早期に受診するために,外来患者の占める率が高く,また診療だけでなく予防衛生面における機能が発達している。
そのひとつの例として八幡製鉄所病院をのぞいてみよう。入院病床500に対して,1日の外来患者数は2,000に及んでいる。このために約12,000m2の外来診療棟(2階建)が新築された。

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一級臨床病理技術士第9回資格認定試験(昭和39年度)実施についての公示

著者: 日本臨床病理学会

ページ範囲:P.21 - P.21

 一級臨床病理技術士資格認定試験は,日本臨床病理学会が,その責任と標準において行なう臨床病理技術士資格認定制度による最高級の試験であって,全科二級ならびに単科二級臨床病理技術士の資格を有するものに対して行なうものである。

病院は誰が建てるか

著者: 守屋博

ページ範囲:P.44 - P.51

患者の負担
 「病院を患者に建てさせるな」の名文句を考え出したのは,武蔵野日赤病院長の神崎氏である。
 たしかに患者は経済的に弱い立場にいるので,少しでも負担を軽くすることは必要である。できれば,医師の給与も,薬代も患者の負担にならぬようになれば,これにこしたことはない。

外来患者の待ち時間に関する分析

著者: 大須賀武夫 ,   菅昌俊

ページ範囲:P.52 - P.55

 病院は,本来,入院患者を治療する場であり,外来診療は,どちらかというと従たるべきものである。
 しかしながら,日本においては,外来診療にかなりのウェイトをおいており,特に,中小病院においては,その傾向が著しいようである。

高茶屋病院におけるソーシャル・ワーカーの仕事—第1報 患者家族に対するP.S.W.のサービスについて

著者: 渡辺朝子 ,   宮崎迪代 ,   藤田愛子 ,   青井光子 ,   白石周子 ,   岡本聰美

ページ範囲:P.56 - P.59

 現在,当病院のSocial Case Workerの行なっている家族へのサービスは,おおよそ6つに分けることができます。
 1)医師が,精神療法をなす場合に,家族の相互関係が障害として前景に出ている場合 2)患者の社会復帰の段階において,家族の協力を必要とする場合 3)外勤患者の家族に対して,受け入れ態勢を調整するために,家族懇談会をもつ場合 4)病棟において看護上,患者の家族に会うことが必要になった場合 5)退院後のafter careにおいて,保健婦との協力による家族へのサービス 6)入院患者,外来患者,およびその家族,あるいは地域社会の人からの相談

医学部学生の病院管理実習について

著者: 永沢滋 ,   高橋政祺

ページ範囲:P.65 - P.76

はじめに
 わが日本大学では,昭和30年9月に病院管理学の講座を設け,昭和31年度より医学部5学年生に対して毎週1時間半,年36時間の講義を行なってきている。始めの頃は,医学部の学生に対してどのような内容をどの程度に限られた時間で学習させるか,いろいろ検討したが,最近は一定の様式の授業が行なわれるようになってきた。開講以来,この学生教育はほとんど講義形式だけで行なってきたのであるが,講義による教育は確かに短時間で大勢の学生に対してたくさんの内容を教えられる利点があるものの,教授者の解釈を押しつけるので,一方交通になり,どうも理解が浅薄になりやすい欠点がある。
 そこで,昭和37年度より実習という方法で,小人数ずつ事例研究をさせたらどうかということを考えた。そしてとりあえず6年(最終学年)のポリクリの時間表に病院管理という時間を入れてもらって,外来患者を対象として研究させることにした。

病院の人件費にかんする分析—第2報 人件費率の上昇原因について

著者: 車田松三郎

ページ範囲:P.77 - P.84

 すでに第1報においてみてきたように,人件費率,すなわち売上高(診療収益)に対する人件費の比率が高いとそれだけ赤字になる傾向がみられ,決して望ましい状態ではない。しかし,じっさいはこの人件費率は毎年増加傾向にあり(表を略す)何とかしておさえたいものと考えられているが,なかなかむずかしい。そこで,ここでは,ひとつは人件費の上昇原因について他は収入の面について考察検討をしていくことにしたい。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.98 - P.98

 今年の8月は連日30度を越す猛暑が月末近くまで続き,全国的に水不足の状態を呈した。特にオリンピックを控えた大東京都の水飢饉は政府の問題にまで発展した。東京の病院は水を確保するために苦心さんたんした。献立を変更したり,食器を紙製品にするなどかつてない非常態勢さえとられた。しかし月末の台風14号は干天の慈雨となって,現在で未曽有の豊作を待つばかりになった。
 さて本号は「看護婦不足問題」を特集とした。数年来この問題は叫ばれてきたが,かえって悪化してきたようである。本号のとり上げ方はやや趣きが違っているが,互いに真剣に考えねばならぬ問題でしょう。巻頭にたまたま小生の意見が載せられたが,看護婦養成と病院増床のアンバランスを問題にした。年間4万床の増床がさらに続くならば,看護婦ばかりでなく,医師の不足も深刻になるだろう。今こそ金病院の自粛をうながしたい。この数年間は増床を極端にすべきでないと思う。

病院管理講座 理論編・19

病院の組織(ⅩⅥ)—中間管理者(その3)—事務長論

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.85 - P.89

 前号までは医療業務の中間管理者について私見を述べてきたが,本号においては医療業務以外の業務の中間管理について述べてみよう。

論壇

病室の採色

著者: 有光正敏

ページ範囲:P.90 - P.91

 近代建築の特色は採光,採風,採色の三要素が十分に活用されていることであります。
 住居は人生の縮図ともいわれますが,ふつう住居は陽当りのよく,風通しのよい地形を選び,室内は明るく,しかもたのしい生活ができるように設計されていることは,いまさらいうまでもありません。

Hospital Topics 診療管理

日本小児科学会第67回総会

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.92 - P.92

 日本小児科学会総会が6月19,20,21日の3日間札幌市において行なわれた。今回の総会は,来年わが国ではじめて開かれる国際小児科学会をひかえて,種々の点でその予行的な意図も加えられていたが,病院管理上次の点は注目されてよいであろう。

看護管理

病院の保育所問題

著者: 川島みどり

ページ範囲:P.93 - P.94

病院保育所の現状
 病院に保育所を!の声が高くなってから数年を経るというのに,なぜこうもはかばかしく進まないのであろうか。それは,小さな設備で細々と運営を続けている,私の病院の保育室ですら,見学者があとを断たないのをみても判断できることである。39年5月現在,東京医労連の調査によると,全国で病院内に保育所をもっているのはわずか25病院,しかもそのほとんどは労組の運営によるものである。しかもどの保育施設も数少ない例外をのぞいて,その経営は苦しく設備は貧しい。つまりほとんどの施設がわずかな補助金で独立採算制を余儀なくさせられている。運営資金が保育料を中心としているため,父母の負担の重い割りに,保母の賃金は不当に低いものとなっているのが現状である。
 看護婦不足は,絶対数の不足ではなく,就職者の不足であることは厚生省などの資料からも明らかであり,人間としてめざめた看護婦の結婚数も急激に増加しているとき,育児や家庭と職業を両立させ得る労働条件の確立は,為政者ならびに病院当局者として当然考慮しなければならないポイントであると思われる。つまり,保育所を病院内におくことは今や,その病院に看護婦を確保する一つの条件ともなってきている。しかし,現状は至ってさみしく,前述のとおりであるとすれば,いったい何が病院の保育所づくりを妨げているのであろうか。

霞ガ関だより

公的病院の木造建物保安度および延焼防火度調査について

著者:

ページ範囲:P.96 - P.98

 わが国の病院の建物は,多くの部分が木造建物であり,しかもその設立の時期などから考えると,年々損傷の度をまし,火災その他の災害の危険にさらされているものが多いと考えられる。
 たとえば,わが国の医療施設の出火件数の年次推移をみると,第1表のとおりで,しだいに増加して,昭和35年以降の年間出火件数は200件をこえ,また被害額は昭和37年には3億円を突破し,しかも少なからざる死傷者をだしている。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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