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雑誌目次

雑誌文献

病院24巻10号

1965年10月発行

雑誌目次

特集 病院医師の組織

病院組織における医師団組織の位置づけと管理

著者: 守屋博

ページ範囲:P.15 - P.19

病院の性格と医師の位置
 一口に病院医師といっても,病院の性格および医師個人の地位によって千差万別である。
 もっとも原始的な医療施設は医師個人である。医師は何ら施設の助けを借りなくても,相当の診断および治療を行ない得るのである。しかし,それでは不便なこともあるので,若干の聴診器,検温器,メス鋏を用意するであろう。それらはすべて私費でまかない,専用することになる。その範囲は段々と膨張して,診察室,手術室,場合によれば病室まで具え,専用の看護婦,事務員を雇傭するに至る。これを診療所というのであるが,その大きさは無限に拡がるのでなくて,1人の医師が責任を取り得る大きさで頭うちになるのである。場合によると,その院長は2,3の助手を入れることによって,病院的形態をとることもあるが,あくまで単科であり独裁的組織に止まるであろう。

内科主治医論

著者: 小野田敏郎

ページ範囲:P.20 - P.23

はじめに
 病院においての主治医権だとか主治医責任とかということばは,守屋教授のまえまえからの執念のようなもので,昨年の夏,日本病院協会の診療管理部会のテーマにとりあげようと主唱されたのが守屋教授であったし,同じく,秋の日本病院管理学会に,シンポジウムでこのテーマを掲げて司会の役を買ってでたのも,その守屋教授であった。
 いずこの病院にも多数の医師がいて,なんということなく,入院患者や外来患者の診療をおこなっているが,組織のなかで権限と責任とが,はっきりと示されないで仕事がおこなわれるということは,考えてみれば変なことである。

外科主治医論

著者: 小原辰三

ページ範囲:P.24 - P.27

 わが国の病院では患者と医師との結びつきが一般に不明瞭であって,しばしば受持医というコトバが使用されている。この受持医という医師の中には,いわゆる主治医はもちろん,助手医もふくまれている。さらにこの上に医長があって,医長と受持医の関係も時には主治医と助手医の関係とも考えられる場合が多い。この点病院の医師を組織の上に位置づけることが困難であり,各医師の権限,責任義務が不明確となり,また一方患者の側から見ても,複数の受持医のあり方を理解するのに相当に困難であり,このために種々なトラブルが起こる原因ともなっている。
 医師であれば,すべての医療行為をおこない得るのであるが,患者の診療に当たっては各医師の臨床経験によって一定の格差をつけるのは当然であろう。ことに外科においては,手術という重大な侵襲を加えるのであるから,診断の適確性,患者の状態の把握,手術の適応,術前後の処置のほかに手術手技の熟練など,すべて臨床訓練によって経験を重ね,学理に照らして修練する必要がある。また,外科手術においては介助医師の協力が密接におこなわれなければならない点からも,手術に際しては主治医の責任と義務を明確にしておく必要がある。

病院組織における医師の位置と責任性の問題

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.28 - P.32

1.まえがき
 医師の働きは元来組織にのらないものだとか,のせるべきではないとかいう議論をよく聞く。医師の働きというものの性質が,そういう議論を生む実質をそなえているからであろう。
 しかしながら,わが国の病院ではそのほとんどが組織の中に医師を含んでおり,医師は身分上閉鎖的にそれぞれの病院に所属しているのがふつうである。この,元来組織にのるべからざるものが組織にのせられているところから種々の問題が生ずる。しかも,それらの問題は,大体すべてがすこぶる明確さを欠き,一般に容易に核心がつかめないところにその特徴があるようにみえる。組織の問題自体につきまとう晦冥さや,医師業務本来の特異性などがその原因にあげられようが,一方そこに,わが国の病院組織形成上の沿革的事情が大きく作用していることも否定できない。同時にまた,医師自身の側のこの問題に対する関心や理解の欠如も問題にする必要があろう。たとえば,病院組織における医師の位置やその働きのもつ意味の問題,あるいは主治医権ないしはそれと医長責任との関係の問題などについては,そういう問題があるということすら医師には一般に理解できないのではないかと思われることがしばしばある。それと,もう1つ見のがすことができないのは,医師の側におけるそうした問題への不可解な感情的反発の存在である。そんな問題を提出したということだけで,医師から大いに反撥をうけるというような場合も少なくない。

アメリカにおける病院と医師

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.33 - P.36

 この特集の意図するところを考えて,病院と医師という題を,一般病院における医師団の構造,そして医師間の地位,権限,責任などといった要素に基づく問題と解釈してみよう。
 アメリカにおける病院と医師の立場を語るには,まず病院と医師との関係を述べねばならない。病院と医師との関係は,病院の診療形態のちがいにより多少異なってくる。衆知のごとくアメリカには,いわゆるOpen Hospitalと,Closed Hospitalとがあり,前者は全体の約75%を占め,主にPrivateのVoluntary Hospitalが多く,後者は残りの25%内外を占めて主にGovernmental Hospitalが多い。一般に国家,地方自治体,宗教団体または地域社会の指導者などで作られている理事会によって委嘱された病院管理者によって,病院が経営管理される。ただし,アメリカの病院の経営管理が医師の手をまったく離れているかのごとくいわれるのは誤りで,医師が管理者となっている病院はまだ多数ある。

座談会

医師組織をめぐる諸問題

著者: 吉田幸雄 ,   今村栄一 ,   高橋政祺 ,   岩佐潔 ,   葛谷信貞 ,   森直一

ページ範囲:P.38 - P.52

 病院にとって,医師はいわば心臓のようなもの。したがって,医師をめぐる問題はたいへん難問が多い。一方,現代医療は"組織医療"といわれている。そこで,組織の中の医師の位置をさぐってみると………。

グラビア

戦後20年伝統と進歩の大学病院—<慶応義塾大学病院>

ページ範囲:P.5 - P.8

 慶応義塾大学医学部(東京都新宿区信濃町35)は大正6年(1917年)に創設され,ここに47年の歴史をきざんできた。付属病院は戦災で大半の施設を失ったが,昭和38年に中央管理棟4,000坪を完成し,さらに昭和40年4月に外来棟,病棟4,000坪の落成をみた。診療を中断することなしに,病院の中心をなす大きい部分の改築をなしとげた努力とくふうは,参考となる点が少なくないであろう。

私的病院の活動—<河北病院>

ページ範囲:P.9 - P.12

親子2代の足跡
 病院の近代化<医療・施設・管理>はわが国の病院が通らなければならないハイウエイである。しかも,病院みずからが建設しなければならない困難な事業である。
 公的病院でも容易でないこの事業を,私的病院で実行に移している病院がいくつかある。河北病院(東京都杉並区阿佐ヶ谷4の916)もそのひとつである。河北病院は昭和3年に先代の院長が設立し,戦後一部の増改築をしたが,今回(昭和40年7月)5階建ての内容の整った新しい偉容を現わした。病床数310床,外来数800名余。将来の発展に対して声援を送りたいものである。

病院の広場

精神病院の問題点

著者: 井上正吾

ページ範囲:P.13 - P.13

 われわれの精神病院の運営・管理も,精神衛生法にそって行なわれるのであるが,精神衛生法のみならず,その他の法律により枠をはめられているので,学問的に理想の形ではなかなか運営されがたい。
 6月1日に精神衛生法が改正された。改正以前に衛生審議会の答申があり,その主旨にそった改正ではあったが,ほんの一部が具体化されたにすぎず,それにより,遠い将来への数歩の前進が約束された。

院長訪問・4

—秋田労災病院長—柳沢三男先生

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.53 - P.53

 秋田県の温泉地大滝にある労働福祉事業団の秋田労災病院は,昭和28年に開設された当時はすぐ前を流れる米代川に橋もなく,町の中心からは渡し舟で,職員も患者もかよってゆくという不便きわまりない病院であったが,今では300床の大病院となり,37年から始まった改築工事も完成して,すばらしい近代病院に生まれ変わった。
 院長の柳沢先生は51歳の働きざかり。大学の名誉教授の多い労災病院長のなかで,先生は数少ない労災はえ抜きの院長である。

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われわれは病院に何をのぞむか—第15回日本病院学会パネルディスカッションより

著者: 行天良雄 ,   日高為政 ,   松尾博仁 ,   兼松百合子 ,   林良材

ページ範囲:P.58 - P.72

 司会 ただいまから,パネルディスカッションで「われわれは病院に何をのぞむか」という話し合いをさせていただきます。
 「病院に何をのぞむか」というテーマをいただいたわけでございますけれども,13日からはじまりましたこの学会で,はじめて部外の者が,病院関係の方がたに,いろいろなお話を聞いていただくということにしたいと思っておりますので,その点お含みのうえ,よろしくお願いしたいと思います。

「第15回日本病院学会特別号」のお知らせ

著者: 雑誌

ページ範囲:P.72 - P.72

 本誌では,毎年,日本病院学会を特集し,誌上に再現してまいりましたが,本年より,通常とは別に"第15回日本病院学会特別号"として発行することに致しました。ただいま,10月中旬発行を目標に急ぎ編集中です。
 内容は学会発表の一般演題抄録から特別講演・専門集会など,学会のあらましが,この1冊に集約されている,いわば"学会のすべて"です。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.98 - P.98

 本号は「病院医師の組織」を特集した。病院内の職能集団でもっとも主体的な役割を演ずるものはいうまでなく医師団である。したがって,この医師集団の組織活動は病院組織全体におよぼす影響がもっとも大きい。すなわち病院医師組織論は,病院組織論の基本問題であるだろう。
 戦後,病院管理研修会がいち早く発足した当初から,病院医師論は研修の大きな課題としてとり上げつづけられてきている。しかし,最初はアメリカの病院医師組織の紹介に過ぎなかった。そしてこれから発足してopen system論,専門医制度論が発展して行った。たしかに医療制度上あたらしい波紋をなげかけた。しかしそれは,病院管理の理想と現実を引きはなしたきらいがあった。現実には勤務医をもって構成されるべき医局が厳立している。しかもその医局の組織を反省するならば,組織論的にははなはだ寒心にたえない現実がある。すなわち,まず現実の中から立てなおすことが,現在の病院管理を改善し,将来の理想への階段を築くことになるであろう。そこで心ある人々によりまず主治医論という病院医師組織の基本から思想統一が手がけられた。

研究と報告【投稿】

関東逓信病院における病歴の中央化について

著者: 小川稔

ページ範囲:P.75 - P.81

はじめに
 当院は日本電信電話公社の職域病院として17科あり,病床数は702床,退院患者は年間7,600名(1日平均20名),外来1日平均930名の規模である。
 病歴室の設置は昭和39年8月1日,病歴士は2名による入院病歴を対象として発足した。以下述べることは,今後各病院において,病歴室を設置する際の参考となればと思い,その経緯を記すこととする。

医療社会事業従事者の全国実態調査について

著者: 小林信三 ,   大崎康二

ページ範囲:P.82 - P.86

 患者とくに入院患者の生活指導にあたって,医療ソーシァル・ワーカーの果たす役割は非常に大切である。そして近年,医療社会事業(Medical Social Work)の必要性と,その仕事の重要性はしだいに認められつつあるが,まだ十分といえるほどにはいたっていない。
 日本医療社会事業協会では,M.S.W.の実態を知るために,昭和38年8月,全国の会員903名のうち勤務者850名に対して,いろいろの項目についてアンケートをとってみた。アンケート発送数は850通で,返事のきたものは540通(回収率63.5%)であった。

私の一週間

美しく優しきドラキュラ

著者: 佐川文子

ページ範囲:P.88 - P.90

 どこをどうみても病名診断ができないとき,そこにまわされて,結果を待つこともある。もし不治の病気であったら……。患者にとってはイノチのちじまる思い。"採血"それが私の仕事。その誇りと喜びと悲しみは私だけしかわからない……。

ホスピタルトピックス 特殊病院

ビルマ,タイ,ホンコンの麻薬事情

著者: 岩佐金次郎

ページ範囲:P.94 - P.95

 東南アジア地域の多くの国と同様に,頭書の国内では,阿片を吸煙する。阿片を食べる習慣も残ってはいるが,多くはない。都市の富有階級の人々にも,中毒者はすくなくないが,特に辺境の村落に住んでいる貧農たちや,ホンコンでは苦力たちの中毒者を容易に根絶できないし,新しい中毒者も出ている。椰子酒やどぶろく(Country spirit)で酔った後,出かけていく賭博場(彼らは賭博が大好きである)もなく,娼家もない辺境地では,好奇心も手伝って,Kunbon-pipeと呼ばれる方法で阿片を吸ってみる。ケシの葉を手製の竹パイプで吸うのである。金は一銭もかからない。これで阿片吸煙の味をおぼえると,容易に調整阿片(Prepared opium)を吸煙するようになり,金がある時は阿片煙膏を,手持金のすくない時は阿片煙灰を吸うようになる。後者の一粒は数時間の軽麻酔状態を催すが,煙灰や煙灰からの煙膏は,有毒性が強く,急速に中毒症をひき起す。そして彼らの妻や同胞も,同じように,中毒者になる場合が多い。
 ビルマ,タイ両国の麻薬取り締まりは,最近まで,きわめてゆるやかであった。ビルマでは栽培の規制と運搬の取り締まりを,昨年頃から,やや厳重にやり始めた。治療施設はなく,精神病院への収容も積極的には行なっていない。国連委員会へ出席するようにはなったが(従来はオブザーバーさえ送っていなかった)信頼すべき統計も発表されていない。

霞ガ関だより

集団事故などに対する救急医療対策について

著者: 高平政衛

ページ範囲:P.96 - P.97

 わが国における産業・経済・科学の発展は,国民の生活環境の向上に寄与するとともに,一方では社会事象の複雑化,交通事情の悪化などの諸因による不慮の事故の驚異的な増加をきたし,なかでも,一瞬にして多数の人命を損傷する集団事故--三河島,鶴見の列車衝突事故,川崎市における昭和電工爆発事故,三井鉱山など相つぐ炭鉱爆発事故,等々--の非惨なニュースの数々は,いまだ世人の記憶に新しいところである。
 これらの事故発生時における救急医療活動は平常時の体制では処理できず,臨時に応急の体制をとる関係上,万全の対策がたてられていたとはいいがたく,被害者および治療に従事した医師などから,とかくの批判を受けることも多く,適切な処理が直接の当事者のみでなく,政府にも強く要望されるにいたったのである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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