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雑誌目次

雑誌文献

病院24巻12号

1965年11月発行

雑誌目次

特集 外来看護

外来看護のあり方

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.15 - P.20

1.はじめに
 大きな外来部を持っているのが,わが国病院の現状であって,多くの病院では診療面での外来業務は入院業務にあまり劣らない仕事量を持っている。ところで,病院の本来的使命は入院患者のサービスであるから,病院における外来活動はできるだけ制限すべきだという意見が,最近一部に起こっている。もちろん,外来業務の多忙に乱されて,入院業務がおろそかになるようなら,外来活動を制限することも必要であろうが,病院外来部がたくさんの患者を取り扱い活発に活動すること自体は,何ら悪い現象ではない。それどころか医学の進歩,ことに各種検査技術の発達は,あらゆる病気の初期から必要な諸検査を徹底的に行なって適確な診断をつけることを要求するので,初めからこれら検査施設が十分に整った病院外来部に患者が集まることは,当然の成りゆきといわざるを得ない。それゆえ,これまでは比較的小さな外来部しか持たず,とくに病院外来部では,医療的貧困者を主として取り扱う習慣になっていたアメリカなどの病院でも,最近ではその方針を改め,外来部を拡充し必要な患者はすべてその外来部に受け入れる方向に変わりつつある。
 このように病院外来部の重要性が増加するのは世界的趨勢であるので,独りわが国だけが逆行するはずはない。

外来看護の意義

著者: 川島みどり

ページ範囲:P.21 - P.23

はじめに
 外来看護ということばは,病床看護に対比していわれるものであり,その分析が果たして妥当であるかどうかは別としても,外来における看護不在論まである折柄,外来の看護の意義,看護婦の役割などをさぐることは業務の確立の上からも必要なことである。また,総合保健医療の立場からみた外来の看護の位置づけもこれから考えて行かねばならないことではないだろうか。

患者数と人員配置の調整—日本バプテスト病院の場合

著者: 小山和子

ページ範囲:P.24 - P.27

看護助手を活かして
 外来機能の中心は"診療"であるので,外来での看護のあり方は,主として診療の補助ということに限られてくる。
 当病院ではあくまで,外来業務を診療の補助という点にしぼって,診療の世話については看護力を最小に制限し,診療の主体である医師に最大の協力を願っている。

患者数と人員配置の調整—大阪赤十字病院の場合

著者: 長島久子

ページ範囲:P.28 - P.30

 外来部門の看護人員は,その外来における看護量によって適当な数と質を配置することである。看護量は診療の介助,患者の世話ならびに療養中の看護部門の指導を含んでいるので,病院の組織や設備の状況,患者数や患者の状況,医師の数ならびに医師と看護婦との業務の分担のとりきめ,医師の協力体制,診療時間などによって量の多寡が生じてくるし,なお,看護婦が家庭における看護というか療養上の生活管理の指導をどのようにするかにも影響する。したがって,医療法の患者30人に看護婦1人ということは,一口に基準とはいたしがたいと思う。
 また,科によっては指導をくわしくたびたび行なわねばならぬものがあり,看護婦の質を必要としたり,量を要したり曜日など日により調整を必要としたり,季によって患者数に波を生ずる科などがあるので質,量とも弾力性を持ちつつ年間計画をたてて調整する要がある。当院の現状を次のように分けて述べてみたいと思う。

外来婦長の役割

著者: 橋本秀子

ページ範囲:P.31 - P.34

外来婦長の存在
 外来は病院の玄関といわれる。始めて病院を訪れた者は,外来で受けた印象だけでその病院全体のよしあしをおしはかろうとする。特に患者に接触する病院の職員の態度如何で,病院の評価がなされることが多い。広大な建築と近代化された設備は,冷たく感じさせる。その中にあって病院と患者との間の調整をはかる役割は外来婦長である。大きい施設では,外来婦長の存在はぜひ必要であるが,小規模の病院や産院では,ある科の看護の仕事を担任しながら外来婦長の役割を兼ねていることが多い。このように施設の機構や組織によっては,外来婦長の任務が異なってくると思われるから,理想的には次のような施設における外来婦長の存在と役割を考えて見たいと思う。

外来診療における看護業務とその検討

著者: 杉山晴子

ページ範囲:P.35 - P.39

はじめに
 最近,包括医療,総合保健などといわれるが,病院の外来は社会的接触面を最もはば広くもっている。近代化された建築設備の中で,診療体制は専門外来,特殊外来の増加に新しい外来の機能は感じられるが,ここに生じるそれぞれの関係は円滑であり,問題発見とその解決は,外来の運営にともなって前進しているであろうか。
 外来診療は病院の構造,診療科目と内容,受診患者数,診療時間,職員の配置数などにより特徴づけられる。外来診療と看護業務は各病院外来に共通点もあろうかと思われるので,身近な臨床面から問題点を考えてみたい。

座談会

外来看護をめぐって

著者: 吉田幸雄 ,   石内しづ ,   森田昌子 ,   黒田幸男 ,   松岡義秋

ページ範囲:P.40 - P.48

 外来の運営の問題や患者の待ち時間の問題が関係各方面で盛んに議論されている。一方,看護婦の中には外来勤希望者が多い。外来の看護とは,どういうことなのだろうか。

グラビア

外来看護

ページ範囲:P.5 - P.8

 看護の本来の姿は入院看護にある。外国の病院では看護とは入院看護のことであるし,戦後のわが国の看護のあり方も,入院患者が対象とされた。
 外国の病院では外来は特殊なものである。しかしわが国の病院は外来から発達したともいえる形態をもっている。外来がこれほど大きい比重を占めている病院形態は,西洋ではみられない。

国際MEショー

ページ範囲:P.9 - P.12

 第6回国際医用電子生体工学(ME,BE)会議が,わが国ではじめて開かれたが,これと併行して国際MEショーがはなばなしく開催された。
 今回のMEショーは,わが国では初めての大規模の国際展示会であり,国内メーカー43社のほか,アメリカ,ドイツ,イタリア,オランダなど外国メーカー14杜の出品もあり,医学と工学のみごとな結びつきと,わが国の水準の高さとを示していた。

病院の広場

病院運営の問題点

著者: 古玉太郎

ページ範囲:P.13 - P.13

 院長に就任して30年,その間25床の当院は,600床の収容力を持つまでに発展した。太平洋戦争中は,医師や物資の不足と戦いながら,定員の2倍の傷病兵を収容し,軍病院としての努めを果たした。戦後数年間はひどい労働攻勢で苦闘した。さらに病院の移転,改築,増築,救急分院の創設など,種々雑多の問題ととりくんだ。その間職員の協力で,大体近代病院としての方向に進んだとはいえるが,なお管理面においては改善を要する点が多々あると思う。小病院から漸次大きくなったのでやむを得ない点もあるが,この点がやがて今後の発展を阻害するようなことにならないかと懸念している。
 近時,国民の医療についての関心が高まり,生活や医療の水準も上昇し,病院の設備は一層の拡充,充実がのぞまれている。しかも物価は遠慮なく高騰する。職員の待遇面においても,定期昇給はもちろん,ベースアップもやらなければならない。かくて病院支出は必然的に著しい増加の傾向にある。これに反し収入の増加は,医療費についての抜本的の改革のないかぎり大きな期待はもてそうもない。そういう次第で,支出の増加に収入がともなわない矛盾は,病院経営をますます困難にする。しかも入院外来患者はともに増加の傾向にある。この人々に快適な療養設備を提供し,行きとどいた診療をすることは,私どもの責務である。この困難な現状の打開にはどうしたらよいか,まったく頭のいたい問題である。

院長訪問・5

—香川県・聖マルチン病院長—曽我部恵美子先生

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.49 - P.49

 坂出市は香川県の高松市の西に隣接し,そのすぐ西には丸亀市が続いている。瀬戸内海を距てて岡山県の児島市と相対し,将来こことの間に橋がかけられるかも知れないという夢がある。ここに220床の聖マルチン病院がある。これはカトリックに属する聖ドミニコ宣教修道女会の経営する病院である。ドミニコ会というのはトラピスト修道会とか聖心修道会などと並ぶカトリックの修道会の1つで約700年前にスペイン人聖ドミニコによりはじめられ,今日では全世界に拡まっている。修道会は男子と女子に分かれ,女子の修道会はさらに多くのグループに分れている。日本全国に10以上の家があり学校や社会施設を経営しそれを通じて神の教えを広めている。
 院長の曽我部恵美子先生はこの病院の実質的な創始者の1人である。先生は香川県出身,昭和16年末東京の女子医大を卒業し医師となった。翌17年に先生はキリスト教を知り深く心を動かされた。

病院管理講座 実務編・23

産科病棟管理の実際

著者: 田中美代子

ページ範囲:P.53 - P.57

 慶応総合病院の中で産科は専門科として1病棟定床40床を有している。

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病院の経営診断法について(1)—第2回日本病院管理学会シンポジウムより

著者: 島内武文 ,   吉川幸雄 ,   岩佐潔 ,   一条勝夫 ,   紀伊国献三 ,   石原信吾 ,   清正清 ,   原素行

ページ範囲:P.58 - P.74

 島内(司会)ただいまから「病院の経営診断法について」のシンポジウムをいたします。
 私が司会を務めさしていただいておりますので,一応初めに少し申し上げたいと思います。私たちも多少病院の経営診断などを頼まれましたことがございますが,なかなかよそのうちのふところ工合というものはわかりにくいものでございまして,個人々々であっても,なかなかこれはむずかしいことで,まして大きな病院でございますと,わずかひとつの部門でさえも,私どもがそこへいすを持ち込んで,1週間ぐらい一緒におりましてもわからないというのが実情でございます。ところがまた,何度も病院を見せていただいておりますと,玄関にはいりまして眺めたところで,多少とも「ははあ,ここはこういう病院じゃないか」というような直感も,何となく働く場合も出て参ります。パーキンソンという人が,産業を男性的産業と女性的産業とにわけまして,それを,パーキンゼー報告として「ライフ」に載せております。そうなりますと,産業にも男性的産業と女性的産業のものがあるというので,私どもはそう思って病院をみておりますと,やはり病院にも男性的病院と女性的病院があるようであります。ある病院に行ってみますと,医者は大ていはりきって患者をみている,ところが裏のほうにまわってみますと,何となく金が流れていってしまう。

望まれる病院医療計画の転換—第14回国際病院連盟会議より

ページ範囲:P.93 - P.93

 1月にストックホルムでおこなわれた国際病院連盟会議に関して.連盟事務局よりとくに本誌にこの一文がよせられた。なお,日本病院協会長橋本寛敏博士に翻訳の労をお願いした。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.100 - P.100

 11月号は,学会特別号の増刊に影響され少しく発刊が遅れたことをご了承願いたい。
 さて本号は「外来看護」を特集した。病院の外来事業の性格のいかんをとわず,わが国ではどの病院にとっても重要な機能である。戦後病院看護が強調され,本来の病院看護が向上したことはご同慶に堪えないが,外来看護についてはほとんど論議の対象にならなかったきらいがあった。

研究と報告【投稿】

病院の化学検査室における精度管理

著者: 只野寿太郎

ページ範囲:P.78 - P.83

I.成績管理の必要性
 近年,わが国における中央検査室制度め普及,発達はめざましく,以前医師自身が行なっていた,ほとんど全ての臨床検査が専門的な教育を受けた検査技師によって行なわれるようになった。その結果として,検査室で測定され,提供された資料が,医師の病態解析に基礎をあたえ,診療を合理化する手段として重視されるようになりつつある。このようなことから病院のサービス部門で,しかも診療に密接した検査室の存在がしだいに重視され,多数の病院に中央検査室制度が取り入れられつつあることは自然の成り行きである。それでは病院開設者は立派な検査室を作り,多額の器具その他を購入し,多数の技術員を雇い,それをもって十分診療サービスをつくしたかの感じを抱いて満足してよいであろうか。もちろん,スペースさえも十分検査室に与えられず,その他の条件も満足すべきものではない現状であるが,検査室を作るに当たっては,どのようなことを考慮すべきであるかを考えてみなければならない。この小論では,臨床検査部門のうち,特に化学検査室に主題を求め,化学検査室の理想的な姿を考えてみたい。
 検査器械の性能は年々向上し,技術員も教育を受けたものが増加し,仕事量とバランスのとれた人員器材があれば,検査室の良否は,いかにして信頼できる成績を提供するかという点につきる。

入院患者に対する看護サービスの質的把握に関する研究

著者: 湯槙ます ,   金子光 ,   木下安子 ,   兼松百合子 ,   波多野梗子 ,   矢野正子

ページ範囲:P.85 - P.89

I.研究目的
 近代病院における医療内容の進歩と発展は,従来とみに目覚ましいものがあり,保健医療に従事する医師をはじめ各種の職能者の協力体制が強く要求されている。特に患者を中心とする包括的医療の充実を目指して看護が分担する役割の重要性は増強している。
 看護サービスに関して従来実施されている調査研究は,主としてその業務の分析および費やされた時間の分析であって,いずれの場合も,現状における看護サービスの量的把握を行なったものである。

私の一週間

忙しい病院の"交通整理"

著者: 山田照子

ページ範囲:P.90 - P.92

 玄関をはいってすぐ,病院が社会と話を交わす場所—案内係—がある。いわば病院の"代弁者"。ワンサともち込まれる苦情や相談。なみたいていの心構えでは,とてもとても…。

霞ガ関だより

病院経営管理指導要領の改正について

著者: E.N.

ページ範囲:P.96 - P.97

 厚生省医務局では今回,病院経営管理指導要領の改正を相当大幅に行ない,これを実施することになったが,これについて各病院が積極的に指導をうけるよう要望している。
 この病院経営管理指導要領は,昭和37年度から実施されているもので,その目的は病院の実情を適確に把握したうえ,必要な指導助言を行ない,病院の経営管理の改善に資することにあるが,その指導の対象は医療法の規定による公的医療機関である病院を主としており,その他について施設からの申し出により実施されてきている。指導を担当する者は,原則として都道府県および保健所を設置する市の医療監視員によって行なわれる。

日本病院学会だより

第16回日本病院学会日程決まる—5月18,19,20日・東京渋谷公会堂にて/第16回日本病院学会のスケジュールおよび一般演題募集要項

著者:

ページ範囲:P.98 - P.99

 第16回日本病院学会(会長・関東中央病院長美甘義夫)は,来春5月18,19,20日の3日間にわたって,東京・渋谷公会堂で開催される。本年5月,京都で開催された第15回学会は,一般演題70余題,出席人員1,400人という史上最大の盛況を示したが,年ねん評判の高まった本学会は,来年はさらに盛大になることが予想される。
 したがって,ことしは一般演題の応募が激増することが予想され,学会事務局を心配させている。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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