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雑誌目次

雑誌文献

病院24巻13号

1965年12月発行

雑誌目次

特集 病院の増改築に関する諸問題

病院増改築の諸問題

著者: 高野隆 ,   伊藤誠

ページ範囲:P.15 - P.19

はじめに
 過去10年間におけるわが国の病院建築の発展は,まことにめざましいものであった。時に一部では"病院建築ブーム"などという言葉さえ聞かれた。その結果として,とにかく量的には相当に充実したといってもさしつかえあるまい。地域によっては飽和状態もしくは過剰気味なところさえあるといわれる。これから推すと,特殊な病院でもない限り,もはや完全な意味での新設はあまりないのではないかとさえ思われる。しかし,だからと言って,病院における建築家の役目は終わったというわけではない。
 ここにクローズアップされてきたのが増改築の問題である。地域による不均衡の是正は,老朽のまま放置されている病院の改築から始あられねばなるまい。さらに,医療施設の体系的再整備のためには,既存病院の整理統合を必要とし,おのずから何らかの形の増改築をうながすことになる。そのほか,医学の進歩や医療保健制度の改革に伴なって,今日完全といわれる病院でさえ数年のうちにこの問題に直面せざるを得ない。

病院増改築の工費分析

著者: 大場則夫 ,   管野義隆

ページ範囲:P.20 - P.26

 まず標題に対する筆者らの態度についてお断りをしておく。この標題を与えられたとき,これまで幾度か悩ませられた問題が念頭に浮かんだ。つまり「今度既存の建物を改修して病棟にしたいが……」あるいは「取りあえず診療棟は古いほうの○○を改修して使おうと思うが……」一体予算としていくら見込めばよろしいかという類の質問。あるいは非常識な予算だけ先に決められて,その枠内で目的を達するには,どこをどうやったらよろしいかというようなことなどである。この種の質問はわれわれにとっても,きわめて応答困難であり,したがって増改築の企画をされる方がたには一層困難を感じられる問題にちがいない。
 工事費の分析は,その目的によって様々な仕方が考えられるが,本稿では一応増改築の企画または設計計画に対し工事費策定上いくらかでも役に立つような目安を出すことを意図している。しかしながら,以下にも述べるような様々な困難ゆえに,厳密な統計処理とか本格的な原価計算とかにはなっていないことをあらかじめご了承いただきたい。

病院の増改築の実例—済生会境港病院の場合

著者: 西野範夫

ページ範囲:P.27 - P.33

1.増改築のはなし
 ことしの夏,ヨーロッパの医療施設を見学に行ったとき,増改築という点についてきわだった2つの病院があった。
 その1はフランクフルトのNordwest病院で,1963年に完成したこの病院は,病床数は615,すべてがモダンですべてがきっちり完結していた。病院当事者と設計者に「将来増築は?」と質問して見たが,たがいに顔を見合わせて,"Nein"と答えた。そして「必要あればもうひとつ別の病院を建設すればよい」と註釈をつけてくれた。

病院増改築設備工事の問題

著者: 犬塚恵三

ページ範囲:P.34 - P.37

 病院の増改築の設備の問題にふれる場合,2つの意味がある。1つは,病院の建築の増改築に伴う設備の増設,また改造と,1つは病院の建築の増改築に関係なく,設備だけの増設や,改造の意味が含まれている。また,前者の建築の増改築に伴う設備の増設,改造という意味も,いろいろとあり,建築ほど単純には表わせない。それは建築の改造に伴って,設備がその改築部分や,それは関連の付帯部分の改造で終わるものと,建築の改造に伴って,改造部分はもちろんのこと,他の部分の造改築や主要な設備の増設,改造が必要なものがあり,これらは設備の点からみて,単純な造改築と,複雑な造改築といえる。
 たとえば,病室を改造して病室にするとか,病室の増築の面積が少ないとか,設備のエネルギー源,すなわち蒸気,水,ガス,電力などの供給源や,その幹線に変更がない程度の造改築は,設備的に単純なものといえる。

行政からみた病院の増改築

著者: 遠藤保喜

ページ範囲:P.38 - P.43

はじめに
 戦後わが国の病院は,急速に整備が進められ,昭和39年末では,病院数6,848,病床数835,792床に達している。
 しかし,既存病院の中には,戦前および戦中戦後の粗悪資材により建築されたものが多く,また施設の構造においても,近代医療の場としては不十分なものも少なくない実情である。したがって,老朽粗悪のため改築を要するもの,施設設備不備のため改善を要するものを多く含んでいるものと思われる。

座談会

病院の増改築をめぐって

著者: 吉田幸雄 ,   田口正生 ,   高野重文 ,   守屋秀夫 ,   山口寛人 ,   室賀不二男 ,   上林三郎 ,   小山武夫

ページ範囲:P.44 - P.57

毎日,日本のどこかの病院が新築・改築・増築のために工事を行なっているといわれる工事にとりかかってから"予期せぬ出来事"にぶつかったのでは遅いそこで,建築の専門家の体験をきいてみると……

グラビア

医学の新しい分野のために……—リハビリテーション学院

ページ範囲:P.5 - P.8

 最近医学的リハビリテーションの必要性がにわかに注目されてきたが,そのために必要な技術者とくに理学療法士(P.T.),作業療法士(0.T.)の養成と確保が緊急の問題となっている。今春「理学療法士及び作業療法士法」が制定され,これら療法士の業務や身分などが明確となった。"リハビリテーション学院"(東京都北多摩郡清瀬町)はこの法律にいう養成施設であり,現在わが国でただ1つの施設である。昭和38年5月に開設され,昭和41年3月には第1回の卆業生をだすに至った。

ニユーヨーク大学リハビリテーション研究所

ページ範囲:P.9 - P.12

 New York Universityのリハビリテーション研究所(Institute of Physical Medicine and Rehabilitati-on)は,指導者のH.A.Rusk教授の名とともに,近代的リハビリテーション医学の発祥の地,発展の場として名高い。
研究所は1949年に建設され,16年間つねにアメリカ(少なくとも東部)のリハビリテーションの発展の先頭を切ってきた。大学病院と緊密な連繋のもとに,診療(入院150床,外来),教育,研究,地域でのリハビリテーション活動の推進など,多面的な活動をしてきた。今までは臨床的研究がおもであったが,来年度には国立医学研究所の助成金を得て,動物実験を含む基礎研究のための9階建ての建物を建設する予定であるという。(本文参照)

病院の広場

国立小児病院創設の所感

著者: 尾村偉久

ページ範囲:P.13 - P.13

 11月1日,国立世田谷病院跡に新装なった地上5階,地下1階4,500坪の新病院ビルに,わが国最初の国立小児病院が開設された。
 本年は,昭和20年の終戦に際して,当時わが国大規模病院の大部分を占めていた(大学病院を除き)陸海軍病院が,敗戦という奇しき因縁で一斉に国立病院として転用開放されてから,あたかも満20週年に当たり,さる10月2日東京でその記念式典が盛大に催されたことであったが,わが国医療機関の中において国立病院網が20年間一般病院としての苦年経験を経て,この機会にさらに新たな特長と任務をもって,国民のための施設に発展するためのひとつのモデルとも見られるわけであって,管理者として責任の重大なることを感じている。

院長訪問・6

—救世軍杉並療養所院長—長崎太郎先生

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.59 - P.59

 先生はキリスト教徒の家庭に育ったのであるが,青年の頃にはこれにレジスタンスを感じていた。しかし九大の医学部に昭和22年に入学してから,救世軍のもつ実践的役割に共銘し,やがてこれに身を投ずることになった。
 救世軍といえば,暮の街かどで道行く人に呼びかけている"社会鍋"が思い出されるが,社会のなかに在って,しいたげられ,困っているものの味方となり,それに救いを与えようとする運動がある。したがって,救世軍が病院を持つのも当然である。救世軍はイギリスのメソジスト派の牧師であったブース大将によって1865年に創られた。大将というのはこの組織が軍隊的組織をまねたためであって,長崎先生も大尉の制服を常に身につけている。この運動がわが国にはいったのは明治28年のことであるが,同43年には東京の御徒町に病院が創られた。ここの初代院長が松田三弥という偉い人で,その伝記を読んで長崎先生は大いに心を動かされた。この病院は下層階級のための病院であったので,夜9時頃まで外来をやり,また医師と看護婦が組みになって遅くまで往診を行なっていた。産後退院した患者には,必ず看護婦が家庭訪問して育児指導も行なった。結核患者も多かったので英国のパプアスに似たコロニーを作ることを思いたち,松田院長は東京近郊の諸々方々をさがしたのであるが,結局のところ焼場に近い和田堀村に結核療養所を建設した。これが今の杉並療養所であって50年以前のことである。

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病院の経営診断法について(2)—第2回日本病院管理学会シンポジウムより

著者: 島内武文 ,   吉田幸雄 ,   岩佐潔 ,   一条勝夫 ,   紀伊国献三 ,   石原信吾 ,   清正清 ,   原素行

ページ範囲:P.60 - P.69

 島内 病院は,ただいま申し上げたように,大へんいろいろの面を持っております。ことにそれは,診断となりますと,すべてのことがこれに関連いたしますので,ただいままでいろいろとお話いただき,また,経営診断法を問題にいたしますには,一応この話を申し上げなければなりませんので,こういう長い時間かかったわけでありますが,次の石原さんは,フリーな立場で,この点について,いっそう内容を進めていただきたいと思います。

総合的リハビリテーション・センターの典型—ニューヨーク大学リハビリテーション研究所

著者: 上田敏

ページ範囲:P.72 - P.78

 身体障害者の社会復帰のための医学であるリハビリテーションは,決してまったく新しいものではない。その精神をたどって行けば,医学の起原とともに古いものであるかも知れないし,戦傷者の社会復帰,肢体不自由児の療育などが始められたのは第1次世界大戦後の時代であった。またリハビリテーションの重要な部門をなす義肢はすでに数百年前からの歴史をもっている。しかし一方今次大戦後に主としてアメリカで発達し,最近日本にも導入されはじめた現代的なリハビリテーションが過去のものとはかなり違った姿をもっていることも事実である。では現代のリハビリテーションとは過去のものとどのように異なり,どのような特徴をもっているのか?それをその発展の中心地であったニューヨーク大学リハビリテーション研究所(New York Univ., Institute of Physical Medicine and Rehabilitation: N. Y. U., I. P. M. R.)のあり方を通して紹介してみたい。
 ニューヨーク大学のこの研究所はすでに16年の歴史をもっており,最初から所長のHoward A. Rusk教授によって指導されてきた。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.100 - P.100

 とうとうあわただしい月を迎えてしまいました。日韓問題の国会紛争,船員スト,国庫の金ヅマリなど重苦しい空気のただよう12月です。しかし本誌のこの1年は,まず順調な編集をつづけてきました。編集幹事諸氏の努力で毎回の特集も好評をえてきました。特に本年は病院管理の新しい分野も開拓したと自負しています。執筆に協力していただいた諸先生に改あて厚くお礼を申し上げます。
 さて本号は「病院の増改築」を特集しました。戦後病院の増築は目覚ましく,またこの数年は増床が急ピッチでした。しかし明年頃からはこの量の問題よりも質に重点が置かれるようになるのではないでしょうか。もちろん戦後,老朽陳旧の病院の改築も併行して行なわれてきましたが,いまだに老朽建物の多くがそのままになっているものが多く,また戦後応急に作った建築もすでに陳旧化してきました。

「病院」 第24巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

研究と報告【投稿】

新潟地震と病院

著者: 浦良一 ,   西野範夫 ,   伊藤誠

ページ範囲:P.81 - P.87

はじめに
 昨年の6月16日午後1時,新潟地方にマグニチウド7.7の大地震がおそってから,早や1年半の月日がたとうとしている。
 以下ご報告しようとするものは,地震から半年たった時点(1964年12月14〜16日)で私どもが行なった調査結果である。

私の一週間

患者の相談相手—経済問題から家庭関係まで

著者: 上野博子

ページ範囲:P.90 - P.91

 医療社会事業部に持ちこまれる相談はじつにさまざま。夫の素行が気になり落ちつけない入院中の妻。生活苦から妻に去られた長期療養患者。医療費が心配で退院したい老人……など,まさに人生の縮図ともいえるようである。そこが私の職場である。

ホスピタルトピックス 診療

西ドイの医師と医療保険

著者: 佐分利輝彦

ページ範囲:P.92 - P.92

 わが国と同様,戦後の高度経済成長で世界を驚かせ,また世界最古の医療保険制度をもつ西ドイツ医師にも,現在多くの悩みがある。この西ドイツ医師の苦悩を,西ドイツ医師会理事ストックハウゼン博士の論文でみてみよう。

給食

欧米諸国の病院

著者: 宮川哲子

ページ範囲:P.93 - P.94

 第4回国際栄養士会議に出席し,その後欧州各地および米国の病院集団給食場,養老施設,孤児院などを見学したが,ここに病院についてまとめてみる。
全般的に施設に関しては富める国々なので

特殊病院

精神病院の歯科診療

著者: 黒木安俊

ページ範囲:P.94 - P.95

 集団の健康管理には一般内科的検査や,耳鼻科,眼科と並んで,歯科検診が行なわれる。ことに,乳幼児や学童期,鄙村,下層階級には歯科サービスが不可欠とせられる。精神病院は長期在院患者の集団であるから,一般社会と同様の意味で,歯科サービスが要求される。入院患者の大多数は身体的清潔感に乏しく,身辺処理能力が低下しているので,病棟看護職員が歯科衛生面で努力しても,毎食後の歯ブラシ使用はもちろんのこと,口腔内を清潔に保つことすら困難である。
 精神疾患は変質病と考えられた一時期もあるほどなので,変質徴候のひとつとして歯牙異常と精神疾患の関連性が重視されている。したがって,正常人の社会に比べて,歯科サービスの必要性はますます増大する。さらに,精神病院に入院中の患者の大多数は法的にも閉鎖を余儀なくされているし,精神病院は都会から離れているので,閉ざされた集団としての歯科サービスの設置要求はたかまる。

霞ガ関だより

病院会計準則の制定なる

ページ範囲:P.96 - P.99

1.病院会計準則とは
 病院会計準則は,病院の経営成績や財政状態を報告する財務諸表の様式および作成方法などに関する諸原則を明らかにしたものである。
 病院の経営成績や財政状態を把握することは,病院の経営管理者にとってはもちろん,病院経営に直接間接の関係をもつ人びとにとっても重大な関心事であるので,すでに各病院ではそれぞれ会計規則などを作って,会計を処理しており,いまさら病院会計準則を作る必要はあるまいという者もいる。しかし,各種の病院の会計規則はそれぞれ企業会計原則などに則って作成されており,たがいに異なったところがあり,その結果経営比較などが困難になっている。また時には適正を欠く規則が存在する場合もある。したがって,これらの諸規則が準拠すべき諸原則を明らかにするよう各方面から要望されていた。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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