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雑誌目次

雑誌文献

病院24巻4号

1965年04月発行

雑誌目次

特集 PPC計画

米国におけるPPC計画

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.14 - P.17

PPCとは
 PPCとはProgressive Patient Careの略語である。1957年4月に,米国Connecticut州Man-chesterという小都市にあるManchester Memo-rial Hospita1で始められた患者の世話に関する新しい試みのことである。元来は米国でもわが国と同じく近年大きな問題となっている,看護婦の不足と医療費の上昇とが契機となって考えられたらしいが,その後PPCには患者の看護に関する正しい原理,特に看護の質的な向上が意図されているのが認められ,注目をひくようになった。U.S. Public Health Service (以下USPHSと略称)の注目をひき,同年7月には16人からなるRe-search TeamがManchester に送られて,その調査結果がその後報告されている。
 これに類する試みは,本邦でも古く軍病院などにみられ,また現在でも結核療養所などではみられるといわれる。米国にもこれに類した試みは古くから時折みられたらしい。しかし総合病院で科学的な計画とアイデアでもって組織的に実施されたことはなかったようである。

結核病院におけるPPC計画の経験

著者: 大森文子

ページ範囲:P.18 - P.21

 結核の外科的療法が隆盛となった昭和28年頃のわが国の国立結核療養所では,看護要員が6対1と定められているために,手術後患者および重症患者の看護は付添人の手にゆだねられ,しかもその数がかなり増加して,医療保護費の財政面にまで大影響をおよぼす状態となり,一面病院管理上種々の弊害が目立ってきた。厚生省当局においても,広く患者収容の対策をたてるために,この問題の解決にとりくむこととなり,昭和31年度において全国患者同盟という結核患者の団体の猛反対を押し切って,付添人廃止へとふみ切ることになった。
 そこで患者に不自由をかけないで,職員の手によってすべての看護を行なうためには,どのような看護体制をとるかが問題となってきた。もちろん,付添人に相当する人数の看護要員の増員がえられれば,ある程度の解決はつくが,これはほんの申しわけ程度に,その何分の一かの看護助手の増員があったのみで,その他の面での合理化を考慮するということになった。

外科病棟におけるPPCの経験

著者: 成瀬妙子

ページ範囲:P.22 - P.26

はじめに
(1) PPC Systemへの端緒
 昭和37年4月,外科病棟増設に伴い,病床数の病棟に4床の回復室が設けられた。この回復室を当聖路加病院長の示唆により,Intensive Care Unitとしての性格を持つように,またICUを確立してProgressive Patient Careをとり入れるように,方向づけられたことに始まったわけである。

PPCの経済的意味

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.27 - P.30

 患者を医療上のニードに応じて,もっとも適する部門に入院させるというProgressive Patient Care (PPC)は伝統的な病院医療に対する,まったく新しい試みとして,主として米国の病院において試みられ,成果を上げつつある。本稿ではPPCの実験病院としてもっとも長い経験をもつコネティカット州Manchester記念病院における実際の経験を中心に,その経済的側面にふれてみよう。

PPCプログラムと病棟の建築計画

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.31 - P.38

1.PPCプログラムの建築計画的意義
 Progressive Patient Careは,病状と看護の必要度に応じて患者をわけて扱おうとするもので,看護力を段階的に分化して効率よく配分することをひとつの大きなねらいとしている。入院患者を,たとえば診療科別や病種別に縦割りにするのに対して,所要の看護量に従い,①Intensive Care②Intermediate Care③Self Care④Long Term Care⑤Home Careといった,いわば横割りの構成にしようとするもので,狭い意味での看護面からだけでなく,病院サービス全体からみても数多くの利点があるとされている。PPCプログラムの概念そのものは,いうまでもなくアメリカに生まれたものであるが,わが国でも,もともと診療科別区分の成立し得ない単科病院で,似たような方式がかなり前から実施されている。結核療養所で,内科的・外科的な治療手段や患者の病状の軽重(たとえば安静度)に応じた看護単位区分をおこない,看護力をそれぞれの必要に応じて「傾斜配置」しているのなどはその一例であろう。また,精神病院で,入院初期の治療観察病棟,やや陳旧化した慢性患者の病棟,作業その他の日課に従って自主的に行動できる開放病棟,合併症を伴う患者の病棟,老人病棟等々のような病棟構成を採用しているのなどもその例である。

座談会

PPC (Progessive Patient Care)をめぐって

著者: 小野田敏郎 ,   牧野永城 ,   鈴木八重子 ,   小林富美栄 ,   吉田幸雄 ,   藤岡孝子

ページ範囲:P.40 - P.51

 病院が患者に最高の医療を提供しようと苦心していることは,絶対的な事実であります。しかし,病院は,一方では独立採算制という,つまり診療収益で自活してゆかなければならないという,二重構造的性格を背負っております。そこで患者ケアーのひとつとして"PPC"がアメリカで考えられました。この座談会では,"日本での実現性"に主眼をおいて話し合っていただきました。

グラビア

大学病院の新しい芽《古い歴史に新しい記念》—順天堂大学付属病院

ページ範囲:P.5 - P.8

 学問の殿堂である大学は,医学の進歩発展に多大の寄与をしてきた。しかしながら,医療の行なわれる場である付属病院の設備,運営については,なお不十分な点も少なくない。近年各地の大学病院の新築,改築が進められていることは,医学の発展や医師の教育だけでなく,一般病院の向上に益するところが少なくないと思われる。
 順天堂大学は先に病院管理学の講座を新設し,守屋博氏を教授に迎えたが,今回(昭和39年11月),現在の最高水準をほこる佐藤達次郎記念病棟を新築し,126年の長い伝統の上に新しいいぶきを吹きこむにいたった。

20歳を迎えた国立病院《第15回日本病院学会の開催にあたって》—国立京都病院

ページ範囲:P.9 - P.12

 軍病院の施設を引きついで発足した国立病院は,昭和40年12月で満20年を迎えることになった。全国87の国立病院の中には,老朽に耐え,施設の不備に悩んでいるところもあるが,整備計画は継続され,近代病院の機能をそなえるにいたった病院がある。
 今回,第15回日本病院学会が国立京都病院長萩原義雄先生を会頭として開催されるにあたり,国立京都病院の新しい姿を見ることにしょう。

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病院職員の自覚的疲労

著者: 津田豊和

ページ範囲:P.56 - P.61

 観念論的病院管理から実証的病院管理へと一歩前進させなければならないという思想を基盤として,私は共同研究者とともに,数年前から病院管理に関する諸問題の実証的解明を心がけてきた。本稿はその一端である。

国立岩手療養所における胸部外科手術原価報告

著者: 大峰英雄 ,   小沢ハマ

ページ範囲:P.63 - P.67

はじめに
 最近「病院経営管理の危機」ということが,各方面から大きく取り上げられている。国立療養所のように一般会計の施設にあっては,一般病院経営の場合とは趣きを異にしているが,予算の行使には非常に神経を悩ましている。したがって,胸部外科手術のように診療報酬が大きい診療行為の原価に関心を持ち,国立岩手療養所の場合,どのような結果を示すものであろうかと試算したので,その成績を報告する。ただし,術前・術中・術後の診療行為は除外して,直接手術に対するもののみに絞ってみた。

調理場内にこもる水蒸気雲の除去についての考察

著者: 長内光義

ページ範囲:P.69 - P.75

研究の目的
 食品調理の大半は加熱調理であって,その調理によっていろいろな成分を含んだ水蒸気が調理室に発散し空気中に飽和されている。
 とくに病院給食においては量的にも多く,加熱方法も水を中間体として煮る方法が全調理の70%を占め,そのため釜から蒸発する水蒸気量も莫大なものである。また,加熱する熱源も蒸気熱の利用が病院給食上の常例となっている関係上,直火式加熱と異なり熱処理上において水蒸気に還元されて調理場内に流出することが多い。

国立病院・国立療養所における歯科の現況

著者: 大井一正

ページ範囲:P.77 - P.82

1.国立病院とは
 国立病院の発足は,「国立病院10年の歩み」昭和30年12月1日厚生省医務局編集発行によると,終戦とともに復員傷病兵の処置のために,厚生省が陸海軍と協同して陸海軍の病院運営に当たったのが始まりで,その後昭和20年11月19日,連合軍総司令部が日本政府に指令して陸海軍病院の処理に関する覚書に基づいて同年12月1日厚生省が内務省を通じて,旧陸海軍病院の転換を受け,国立療養所とともに,一般国民を対象とする国直営の医療機関として,厚生省の外局の形で設けられた医療局の所管の下に発足し,翌年11月5日,厚生省の機構改革により,医療局が廃止されて新設の医務局の所管に移り,現在に至っているとあります。
 発足当時の病院数は,本院・分院を合わせて146でありましたが,統廃合および結核対策,医療機関整備などの国の施策に伴い,現在では本院,分院を合わせて87,この中に建設工事進行中の日本では初めての試みである世田谷小児センターおよび温泉を有する特殊な病院12か所が含まれており,他に国立がんセンターが1つあります。

病院におけるEDPS—電子計算機を中心とした外来医療事務について

著者: 江川寛

ページ範囲:P.83 - P.91

 医学医術の進歩に伴い,病院は診療部門とともに,診療補助部門や事務部門に複雑性を加えてくることは自明である。しかも医療産業の中の企業体として病院を跳めた場合には,各部門は有機的な結合下にコンビナートを形成しているとみることができ,診療部門に対して均衡のとれた体制が要求されてくるはずである。特に事務部門は病院諸業務に対する集約的な地位にあって管理上の重要な役割を演じているので,分掌権限の明確な組織体系の元に,能率的な業務がすすめられることが期待されている。しかし実態はどうであろうか。
 病院合理化のひとつの方向として,医療事務の諸作業を集中化し専門化してゆくこと1),2)は結構であるが,個々の作業内容や諸票の手続系路の実情,病院の将来の計画にもとづく事務機構のあり方などが十分検討された上で進められているかどうかに大きな問題がある。ひとつの理由のみでひとつの作業のみが集中化されたり,自己の職能利益擁護に走ったりして総体的な機能発揮が阻害されることはないであろうか。機能全体をまず考えて各機能を標準化して,相互の関連性の調整をはかり,作業や人員配置の均衡が保たれてこそ合理化の成果があがるものであろう。したがって,分析結果によっては集中化するよりむしろ分散化した方が合理的な場合が当然起こってくる。また,合理化には人員の増減,職能訓練が伴ってくる。一般に病院での新人採用は非常に困難である。

早稲田大学診療所の話

著者: 原素行

ページ範囲:P.92 - P.95

 ここは,単なる傷病治療の場に止まらず,大学の健康センターとして,診療を含む総合活動を行なっている。ここに診療所活動を歴史的に見た物語を書いてみる。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.106 - P.106

 陽春4月は一年の中でもっとも病院中が明るい時である。病室の窓はようやく開かれて,微風と陽光が床頭を訪れる。事務室では新会計年度の出発と共に新しい計画に生気をとり戻し,医局は学会旅行の収獲に話の花が咲き,看護婦さん達は陽光を楽しむピクニックの夢を画く。読者もいよいよ迫った京都の学会の計画に心をはずませておられる今日この頃……。
 さて本号はPPC計画を特集しました。これは昨年小生が提案したところ日本病院学会の専門集会のテーマにとり上げられた問題です。本号はその際発言された方々を主体として御執筆を願いました。まず巻頭には,学会で司会を担当された牧野先生に,PPCの最先端国アメリカの状況を中心に解説を願いました。このPPC計画は,1957年にManchester記念病院ではじめて試みられたもので,いまだ8年にしかなっていませんが今や燎原の火のように拡がり,6年(1963)にしてアメリカでは一般病院の18.1%に達し,1963年に開かれた第13回国際病院会議に発表された国際病院連盟の急性疾患研究委員会の調査結果によると,すでに少なくとも世界の10か国の病院で実施されているようです。

ホスピタルトピックス 経営

固定資産の耐用年数について

著者: 針谷達志

ページ範囲:P.96 - P.96

 今日,会計上の減価償却は,期間損益を計算するために,固定資産の取得原価を期間的に費用として配分する費用の認識・測定のひとつの手続きとして考えられている。ふつう,費用配分説として説明されているものである。ここでは,期間損益を正しく計算することが目的である。減価償却の目的を,資本回収とか,取換資金の準備におく場合と,必ずしも意見が一致するとは考えられない。いろいろな目的に合うような理論を求めることは不可能としても,会計上の減価償却の本質をつかむために,費用配分説と資本回収説を区別し,その関係や相違点を検討してみることは必要であろう。
 減価償却は,取得原価,耐用年数,残存価額の3つを要素として計算される。取得原価や残存価額の吟味はもとより重要であるが,減価償却は,耐用年数による予定計算というところにひとつの大きな特徴がある。この耐用年数をどのように決定しておくかが,期間損益計算に大きな影響を与える。耐用年数を合理的あるいは理論的に決定しようとするとき,減価原因との関係を考えて検討するのが一般である。

特殊病院

ケースワークの効果判定

著者: 柳瀬正之

ページ範囲:P.98 - P.99

 社会事業は,非常に多額の金が要るということと,極めて多くの人びとに関係をもっという点において大きなビジネスであり,合理的に運営するためには,その効果を測定しなければならないが,従来経済外厚生のカテゴリーにあって,公私の企業のように損益勘定ができないとされ,また社会事業活動の背後にある博愛心,人道主義が効果判定をタブーとする風潮さえあった。
 すでに心理療法やカウンセリングにみられた効果判定の研究がケースワークに及んだのは,米国の福祉調査研究所の委員会議長シュワルツが,1942年に「ケースワークの実施方法,経費,成功度を決定せよ」と勧告したのがはじまりで,ワーカーの勘による成功度の評価ではなく,できる限りの標準化,客観化,数量化による計画的,組織的な評価が科学的であるとした。ダラードとハントは,移動尺度方式によってケースワークサービス開始時と終結時における諸変化を6側面について測定した。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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