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雑誌目次

雑誌文献

病院24巻5号

1965年05月発行

雑誌目次

特集 病院におけるリハビリテーション

わが国の病院におけるリハビリテーションの発達について

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.14 - P.17

1.第二次大戦の生んだ善果の一つ
 1945年日独は降伏した。そして第二次大戦は終結した。勝者も敗者も,永年の戦争による有史以来最大の被害の復旧にとりかかった。そしてそのひとつがこのrehabilitation問題であった。当時世界には何百万人の身体障害者があふれていた。傷痍軍人が多数を占めたことはもちろんであるが,一般市民の中にも多く戦争被害者が存在していた。
 そして1948年には,世界戦争の大悲劇の教訓と悔悟から世界人権宣言が行なわれた。すなわち「すべての人は,自分自身および家族の食料,衣服,住居,医療その他必要な社会的サービスを含む健康と安寧に対して,適切な生活水準にある権利を有し,失業や能力欠損(disability)や寡婦や老年あるいはその他自分ではどうすることもできない生活環境における生活必需品の不足する場合に,生活を安定しうる権利を有する」と。この国際連合憲章の条文の中にとりあげられている能力欠損disabilityのものに対して,できるだけ生活を正常に回復させるための身体的,心理的,社会的処置がrehabilitationである。

病院におけるリハビリテーション—≫第14回日本病院学会専門集会座長報告≪

著者: 近藤駿四郎

ページ範囲:P.18 - P.22

 「病院におけるリハビリテーション」というテーマが与えられまして,私あまり適任ではないのでありますが,その司会者を命ぜられまして,昨日午後1時から4時まで東大の講堂におきまして,非常に熱心な討議が行なわれたわけであります。
 出席なさいました方は,国立療養所東京病院の砂原茂一先生,東大教授の佐野圭司先生,身体障害者更生指導所長の稗田先生,厚生省医務局の佐分利輝彦技官,この4人の方と,さらにただいまWHOから派遣され,日本にこの方面のことで援助,指導に来ておられる2人のアメリカ婦人のP.T.,O.T.の専門家がぜひこの討論に参加したいということを申し出でられましたので,この方々を加えていろいろお話をうかがいました。大体私の受けた印象をお話するというかたちで報告致します。

リハビリテーションの理念と実際

著者: 原武郎

ページ範囲:P.23 - P.29

I.はじめに
 リハビリテーションという言葉は,現在ではそう耳新しくもなくなり,しだいにそのまま日本語化している。しかし公文書でRehabilitationの訳語として更生指導,回復指導,療育ななどが色々使用され同じ事を表現して来た。日本リハビリテーション医学会は正式にこれを「社会復帰」と訳すことに決めた。いずれにしても訳語自体ちぐはぐでピントはずれの感がなきにしもあらずで,リハビリテーション自体が広義の医療という意味を含めた適当な訳語を見出し得ない。また,そう受けとられて訳されるところに問題があるともいえる。
 そこで,ここでリハビリテーション医学(Phy—sical Medicine & Rehabilitation)が診断ならびに治療に直接関係する一つの医学専門部門としての,特に総合病院でのあり方を述べてみたい。

リハビリテーションの総合計画

著者: 稗田正虎

ページ範囲:P.30 - P.34

いとぐち
 病人や負傷者や身体障害者の問題は,その人自体の問題としてよりも,その周辺の家族や社会に影響することがきわめて大きい汎世界的問題で,その程度の差こそあれ,先進国であろうと後進国であろうと共通の問題をもっている。これらの人に対する援助が,社会連帯の責任の概念から,社会保障制度の一環としてのリハビリテーションが,世界的に発展しつつあることは周知のとおりである。
 リハビリテーションはベッドから社会へのかけ橋といわれ,リハビリテーションが発達した段階にある国では,リハビリテーション計画は病弱の全期間を短縮し,収容看護費や疾病給付や障害年金を節減し,されにその上,生産的な雇用もできるような有意義な生活ができるように,病人や負傷者を時期を失わせず回復させることによって,社会経済的に,特に社会保障制度の円滑な健全な運営のため重要であることが強調されている。

身体障害者のリハビリテーション

著者: 児玉俊夫 ,   児玉寛 ,   三浦成昭 ,   高口真一郎 ,   那須亨二

ページ範囲:P.35 - P.41

I.まえがき
 身体障害者のリハビリテーションというと,あまりにも大きな標題である。身体障害者の定義としては,肢体不自由の他に視力障害や聴力障害も含まれる。またリハビリテーションは病気や外傷の後療法から職能療法を経て,社会,あるいは家庭復帰まですべてが含まれ得る。これらにすべて触れることは紙面も足りないし,私たちがその適任とは思っていない。また最近は優れた専門書がわが国でも出版されつつあるので,今回は私たちが実際行なっているところを紹介するに留めたい。
 大学病院については岡大中央物療室主任の児玉(寛)に,肢体不自由児施設については岡山県旭川療育園に最近まで医務部長をし,現在大学に復帰して脳性麻痺グループの研究幹部となっている三浦に,労災病院では香川労災病院のリハビリテーション部長の高口に,身体障害者更生指導所については嘱託の児玉(寛)に,一般病院の整形外科,災害外科については川崎病院災害外科部長の那須に述べてもらった。那須は最近ニューヨーク大学のリハビリテーション科に1年間留学して戻ったばかりなので,アメリカの現状からして日本の私達のことを批判してもらった。以上の内容を児玉(俊)がまとめたもので,ここでいう私とは児玉(俊)のことである。

総合病院におけるリハビリテーション作業のあり方について

著者: 橋本典美 ,   佐藤哲

ページ範囲:P.42 - P.52

はじめに
 いうまでもなく,リハビリテーション作業には,専門の更生指導施設のみならず,診療所,総合病院,専門病院などの,いわゆる診療機関のすべてが,それぞれの立場において参画しなければならないものである1)2)。しかしながら,傷病者の社会復帰がより合理的に,しかもよりすみやかに行なわれるには,現在の日本の病院には改善を要する点が少なくない。そこで,そのうちでももっとも研究テーマに富む総合病院1)3)における作業のあり方について,私どもの見解を述べることにした。本論文中において,リハビリテーション作業とは,社会医学の立場から与えられる定義4)5)6)とおなじく,もっとも広義のリハビリテーションの概念に基づいたものであって,その作業内には,治療作業をも含むものである。したがって,治療とは別個の作業を行なうことを意味するものではなく,総合病院本来の機能たる治療作業が中心となって展開される,患者の合理的社会復帰促進を目標とするすべての作業をさす。そのうちには,むろん機能訓練や,アフターケア,フォローアップなども含まれるが,それらのみをリハビリテーションとよぶ立場はとらない。

病院におけるリハビリテーションサービスとP.T.,O.T.の養成

著者: ,   末永雨香

ページ範囲:P.53 - P.57

 O.T.,P.T.の教育および総合病院におけるPhysical MedicineとRehabilitation (PMR)分野の治療の役割について述べさせていただきます。基磯教育とインターンシップはメディカルおよびパラメディカルな職業に先行するものであるから,これらから話をすすめます。限られた紙面でこの教育について述べる前に,私の置かれた位置について説明する必要を認めます。この宇宙の永遠な時間,または一個人の人生の短い時間に較べても私が東京で過ごしたわずか6ヵ月という期間は私にSchool of Rehabilitation (リハビリテーション学院)で試みられていることが日本の文化に受け入れられているかどうかを判断する事や,ましてそれについて記述する資格があるものかどうかうたがわしく思っています。私は私が一個人として教育者としてまたパラメディカルなひとつのO.T.職業者として育つためにつくして下さった多くの立派な方々に対する限りない感謝をあらたにしながらこの意見を述べさせていただきます。
 私は学生,教師,Therapist,インターン生の実習監督,カリキュラム作成者およびO.T.部長としての探求者の2,3年間に及ぶ豊富な経験をもっとも幸福に味わってきました。この経験のecology(社会生態学)は私立,教会,公立,国立のアメリカとヨーロッパの施設に及んでいます。

座談会

リハビリテーション関係者の理解と協力

著者: 吉田幸雄 ,   稗田正虎 ,   砂原茂一 ,   近藤駿四郎 ,   吉田寿三郎 ,   佐分利輝彦

ページ範囲:P.58 - P.71

 リハビリテーションの問題は,最近とくに各方面で話題になっております。しかし,何よりも大切なことは,リハビリテーション関係者の"理解"であり"協力"であることは申すまでもありません。そこで関係者の意見を聞いてみると……。

グラビア ころもがえをする国立病院

絵のある病院—国立岡山病院

ページ範囲:P.5 - P.8

 国立岡山病院(岡山市南方301)は旧岡山陸軍病院より新発足をしてから,いち早く近代的病院管理方式を採用して,病院機能の向上にめざましい進歩をとげたが,昭和36年5月22日,市街の中心部に新築移転をし,いよいよ中国四国地域の基幹病院としての機能を発揮するに至った。ひとたび新しい病院内に歩を進めた人は,近代建築の偉容に圧せられるということよりも,院内のそこここの壁に飾られた絵画,たくまず置かれた樹木に心の安らぎを感じるであろう。そこに病院の心がにじみでている。

近代的な温泉地の病院として—国立熱海病院

ページ範囲:P.9 - P.12

 日清,日露の両戦役に陸軍温泉療養所として機能を果たした古い歴史をもっている国立熱海病院(静岡県熱海市熱海)は,昭和20年12月国立東京第一病院熱海分院として再出発し,昭和25年7月に独立したものである。今回新たに鉄筋コンクリート8階建ての新築を行ない,昭和40年2月27日に竣工をみた。まだ実際の利用にはいたっていないが,面目を一新した病院を見学してみよう。

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医者と患者の結びつき—医療の社会化と国民医療

著者: 水野肇

ページ範囲:P.76 - P.83

医者と患者の関係
 日本の医療は,古くは,"くすし"と呼ばれ,くすりを与えることを職業としていた医師によって行なわれ,処方も,すべて漢方によっていた。それが,蘭学の輸入によって,西洋医学の洗礼を受け,明治維新以後は,ドイツ式医学に統一され,漢方医は完全にカゲをひそめ,ドイツ医学万能時代が訪れた。
 明治以後終戦まで,ずっと日本では,開業医中心の医療が行なわれてきた。もちろん一部には,大学病院や大病院もあったが,国民の目からみた場合,医師といえば開業医のことであったし,医師の7割から8割までは開業医であった。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.104 - P.104

 最近になりリハビリテーションの認識がようやく全国的になってきました。そして病院人自体に病院こそがリハビリテーションの中核的役割をはたすものであることが自覚されてきました。しかしこの認識もいまだ正確で具体的なものとなっているとはいえないのではないでしょうか。そこで本号ではまずリハビリテーションそのものについて各権威者に解説を願いました。したがって病院におけるリハビリテーションの具体的あり方の問題については,近い将来にさらに特集致さねばならぬと思っています。
 巻頭には「わが国の病院における発達について」小生の経験から概説してみました。支那事変勃発と同時に東一に召集され,続いて重度脊髄損傷のための箱根療養所の開設に従事し,戦後は創設時代の国立病院の運営に参画,また身体障害者福祉法の制定に参与したなどの経験から,あえて筆をとってみました。昭和26年に渡来したときも,病歴管理,医療社会事業とともにリハビリテーションに関心をもって視察しましたので,この問題は病院管理上私の最も関心を持つ問題の一つでした。したがって本号を企画することも私の念願でありました。

病院管理講座 実務編・21

中央滅菌材料室管理の実際

著者: 平木久子

ページ範囲:P.85 - P.92

はじめに
 わが国における看護は,教育面,管理面,共に戦後,米軍司令部の指導により画期的な改革が行なわれたが,戦前迄はほとんどの病院に存在しなかった中央滅菌材料室(Central supply)(C.S.と略する)の設備運営に関することもこのひとつであろう。
 本院におけるC.S.も戦後直ちに本院にて看護教育と看護管理の指導にあたった米国司令部の中の看護婦の1人であるミス・トームの指導により,昭和21年発足した。

ホスピタルトピックス 経営

減価償却について(2)

著者: 針谷達志

ページ範囲:P.94 - P.94

 一般管理,販売活動のための資産,たとえば,事務用機械,計算器,印刷機などの器具,備品は事務用の建物などの減価を確定するときには,生産に使用される資産の減価を把握するときのような具体的,客観的基準を見つけることが困難である。そこで,こうした資産に適用する耐用年数に客観性を与えるための方法のひとつとして,過去の資料を基礎にした統計的方法を採用することが考えられる。
 統計的方法を利用するときは,一企業で同種の資産が多数使用され,しかもその使用が過去において相当年数にわたっていることや,同一種類の資産が多くの企業で使われていることが資料の確実性を得る点で必要である。したがってその適用の範囲には限界がある。またこれとても,いわば平均的なものであるから,どの資産にも合理的であるとはいえない。耐用年数の決定は,あくまで予想の域を脱し得ない点が多くの議論を可能にしているわけである。

診療

アメリカのリハビリテーションの印象

著者: 上田敏

ページ範囲:P.95 - P.96

 アメリカのリハビリテーションの実際の場に親しく入っていった場合,日本との違いを痛感させられる点が多い。そのうちリハビリテーションの本質にふれていると思われるものを,ニューヨーク大学での筆者の経験から具体的にのべてみたい。

給食

病院内の約束食事せん(2)

著者: 宮川哲子

ページ範囲:P.96 - P.97

無刺激食1
 午前7時より午後9時まで1時間ごとに各1〜1/2オンスのミルクおよびクリームを与えること。
献立例
8A.M.:小麦のクリームあるいは裏ごしをした穀類,砂糖入ミルク,バターつきトースト

事務

新しい検査伝票

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.97 - P.98

 伝票制度というと,とかく請求もれの防止や,つけ落としの対策としての効果に重点がおかれる場合が多い。しかし伝票制度のねらいは複雑化した病院内での診療行為にかんする情報の流れを,どうすればできるだけ合理的におこなうことができるかにあって,実は正確な料金の記録は一部分にしかすぎないのである。
 たとえば検査伝票は多くの病院では,2連または3連(またはそれ以上)となっており,病棟から検査請求として発行され,1部に結果が記入されて病棟へ返され,3連の場合は1部は医事係の料金算定記入係へ送られ,残りの1部は検査部原簿となる。2連の場合は料金算定記入後検査部へ返されて原簿となる。

特殊病院

重症心身障害児施設

著者: 柳瀬正之

ページ範囲:P.98 - P.99

 1.高度の身体障害があってリハビリテーションが著しく困難であり精神薄弱を伴なうもの。ただし,盲またはろうあのみと精神薄弱が合併したものを除く。
 2.重度の精神薄弱があって,家庭内療育はもとより重度の精神薄弱児を収容する精神薄弱児施設において集団生活指導が不可能と考えられるもの。

霞ガ関だより

ジヨンソン大統領の保健特別教書

著者: T.S.

ページ範囲:P.100 - P.101

 米国歴代大統領は,年頭の議会に保健特別教書を提出することになっている。本年のジョンソン大統領の教書においては,多年の懸案である「老令者の病院保険」の実現に関するなみなみならぬ決意と,心臓病,ガン,脳卒中という国民の3大死因の早期撲滅をはかるための医学研究費の画期的な増額を2本の柱とした新大統領の「偉大な社会」実現に際しての保健政策の具体的な目標が,明確に打ちだされている。そこで,つぎにその要旨を紹介することとしたい。
 われわれの今後の最大関心事は,国民のすべてが,年齢,居住地域,経済状態のいかんにかかわりなく,近代医学の恩恵にあずかれるようにすることである。このためには,医療機関や医療従事者の確保をはかり,国民に対して医療をうける機会を十分に与えなければならない。

病院図書館

—田坂定孝,野上 寿監修 真下啓明,堀岡正義,紺野邦夫,男全精一編—「最新薬剤便覧」/—池見酉次郎編—「精神身体医学の理論と実際 各論I」

著者: 久保文苗

ページ範囲:P.102 - P.103

病院薬局には1册そなえたい本
 本書はそのまえがきの中に「今日の薬剤指針,1961年版」を改訂したものとうたっているが,収載している薬品が最新のものまで包含しているばかりでなく,内容の形式も大きく改変されているから,むしろまったくの新しい編著といってよかろう。
 本文1,078頁を大きく5部に分け,I,医薬品名分類(50音順1〜632頁)II.薬効別分類(日本標準商品分類による分類,633〜678頁) III.適応症候病別分類(A.一般症状から,U.悪性腫瘍までの21項目に分けて引けるようになっている,679〜840頁) IV.一般名別分類(ABCの順で化学構造式の記載もある,841〜1024頁)最後に付録(1025〜1078頁)として,常用量および極量表(付.国際薬局方小児1日量)を初め,血液その他の生化学的正常値,生物学的製剤の標準製品,製薬会社の一覧表など15項目が載せてあり,さらに表紙裏には巻首に万国原子量表(1961年),巻末にラテン略語表まで付けてあるという,たいへんに豊富な内容の書であって,臨床医師,病院や開局の薬剤師にとって座右に備えて利用価値の極めて高い書である。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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