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雑誌目次

雑誌文献

病院24巻6号

1965年06月発行

雑誌目次

特集 食事運搬

食事の運搬と病院の建築計画

著者: 伊藤誠 ,   大場則夫 ,   西野範夫 ,   野村東太

ページ範囲:P.15 - P.20

1.患者が食事をする場所
——病棟内の食堂について——
 食事の運搬に関連してまず問題になるのは,入院患者が3度の食事をどこでとるかということであろう。普通には寝ていることを原則とする生活であってみれば,当然ベッドの上もしくはベッドのわきでたべるのが常識とされ,じじつ大部分の病院でもそのようにしているのが現状である。すなわち,食事を各人のまくらもとにまで運ばなければならないのが病院給食に限られた特殊条件であるといえる。
 病院サービスの向上をねがうひとつの目標として,よくホテルがひきあいに出されるが,一部にルームサービスのような制度こそあれ,一般には食堂まで利用者が出向いてくれるホテルとそうはできない病院とでは,この点が著しく異なっている。

食事運搬と温冷食

著者: 福田たづ子

ページ範囲:P.21 - P.25

 国立仙台病院における給食の特色としてあげられることは,500食以上に対して中央盛り付け配膳と中央食器洗滌消毒を実施していることである。

アメリカの病院における食事運搬

著者: 山本麻喜子

ページ範囲:P.26 - P.30

大半が中央配膳
 アメリカの病院における食事運搬について書くようにお話がありましたが,私の実習した病院および見学した11の病院はカリフォルニア,オレゴン,ワシントン州で中部および大西洋岸の病院は見ておりませんので,これから申し上げることがアメリカの病院全体に共通したものでないかも知れませんが,その点あらかじめご了承ください。
 日本では,ちょっと大きい病院になると配膳方法は病棟配膳であるのにくらべて,向こうで私の見た11の病院のうちロスアンゼルスにある3500床を持つカウンティーホスピタルとサンディエゴのグラスモントホスピタルを除いて,患者への1回の給食数300ぐらいの病院でも,そのほとんどが中央配膳でした。もちろん中央配膳するためには,それだけの室の広さと設備がなければなりません。

病棟における食事運搬

著者: 壁島あや子

ページ範囲:P.31 - P.32

 病院における給食は,単調な入院生活をすごしている患者にとっての毎日の楽しみであると同時に,疾病治療上,医師の治療と相まって重要な役割を果たしている。しかし実際には,それらの食事がおいしくないという理由のもとに食べ残されてその効果をあげえないとしたら,給食部門はもとよりわれわれ臨床看護にたずさわる者としても考えなければならない大きな問題であると思う。われわれの病院でも,給食部では患者に嗜好調査やその他いろいろのアンケートを求めたりして患者の声をきいているようであるが,最近の自分の入院生活を通して強く感じたことは,やはりなんといってもあたたかい食事をあたたかいうちに食べたいということであった。あたたかであれば,多少献立が下手でも,おいしくたべられる場合が多い。冷たくなったために,食べ残しが出るということもあり得る。
 温食給食ということはすでに言いつくされた感じがするが,実際にそれを行なうには,まだまだ研究されなくてはならないことが沢山あると思う。もしも患者の食欲が食事の温度によって影響されるとしたら,給食部で調理された食事を患者のところまで運搬するその過程に問題があるのではなかろうか。もちろん,これらのことは給食部で工夫されていることではあるが,私は病棟管理者として,病棟における食事運搬について考えてみたいと思う。

座談会

食事運搬をめぐって……

著者: 吉田幸雄 ,   長井盛至 ,   原素行 ,   石原信吾 ,   宮川哲子 ,   永田優 ,   鈴木八重子

ページ範囲:P.34 - P.49

 食事運搬の目的はいうまでもなく栄養士の企画したものを,企画どおり患者の口に運ぶことにあります。しかし,それにはさまざまな問題が考えられます。そこで,食事運搬に長年頭をひねってこられたベテランの方がたの苦心をきいてみると。

グラビア

食事運搬

ページ範囲:P.5 - P.12

だれが運ぶか
"メシアゲ"という時代から
 陸軍にいた経験のある方は「メシアゲ」という言葉を思い出すだろう。元陸軍病院であった国立病院も,転換当時は「メシアゲ」をしていた。
 看護婦が炊事場に食事を受領に集合した。食事ができるまでの間,あちらこちらから集まってきた看護婦がペチャクチャと"メシアゲ会議"を開いていたのも,ほほえましい風景であった。

病院の広場

欧米の病院ところどころ

著者: 小山武夫

ページ範囲:P.13 - P.13

 一昔以上も前の話である。渡米のとき方々の病院を参観したが,とくにニューヨークのコロンビア大学プレスビテリアン・ホスピタル,シカゴやロスアンゼルスのカウンティー・ホスピタルの規模の大きいのには,ただ瞠目するばかりであったが,なかでも,プレスビテリアン・ホスピタルでは,院長のマッキントッシュ教授の厚遇をうけてCPCに列席したり,昼食の接待にもあずかったりして好感を与えられたので,ニューヨーク滞在中毎日のように訪問し,院内のすみずみまで参観し,いろいろの人たちに面接して話をきいた。
 その中でも,同院の企画部長とか宣伝部長といった若い某氏に面接したときの話は,はなはだ興味をひいた。アメリカでは病院は営利事業ではなく赤字経営のものが多いそうだが,当院もその例にもれず,前年度の決算で何十万ドルかの赤字を出し,これを公表したところ,金満家の未亡人などの遺産を含めて赤字に数倍する寄付金が集まって黒字経営に転じたという。病院経営は上手に赤字を出し,これを巧妙に世間に宣伝することが一つのコツであると聞いて,さすがアメリカは違ったものだと感心したものだ。院内ところどころ壁のタイルを剥がし,騒音が廊下にひびきわたっているのを見てきいてみたら,少しでもこわれているところがあれば,こうやって大げさに修理するのが病院の活動ぶりの宣伝になると聞かされた。

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看護高等学校—その設立と現状

著者: 徳平滋

ページ範囲:P.54 - P.58

准看護婦養成の高等学校教育への動き
 准看護婦の養成および教育の内容,教育方法などについての批判が高まる一方,看護要員の不足という大きな問題をかかえ,今までの直接関係者間の批判や改革の意見,努力が蓄積されて改革の動きがはじまった。
 これまでの各種の意見は,看護教育に対する次のような理解の仕方がその根底にあるものと思われる。

病院と交通機関について

著者: 阿久津慎 ,   江端新一

ページ範囲:P.59 - P.68

I.はじめに
 医療機関が自分の診療圏を知っておくことは,病院を管理する上に大切である。もちろん,診療圏を調査しようとする場合に,調査期間を1年とするか,1か月とするかによっていろいろと事情が変わってくると思うが,いずれにしても診療圏の調査は医療機関自体で行なうべきであると思う。
 国民皆保険の現代においては医療機関はその診療費を請求する場合に,診療報酬請求明細書を毎月書いているので,この時に少しく工夫をすることによって,毎月でも診療圏の調査をすることができると思うのである。

複写器利用による診療報酬請求明細書の作成方法について

著者: 真部衛

ページ範囲:P.69 - P.73

はしがき
 医療機関の診療費は,月のはじあに,前月分の診療報酬請求明細書を作成して,審査機関あて提出しなければならないこととなっている関係上,診療費の請求事務を担当している医事課職員は,月末,月はじめに,多くの事務量を短時日に消化しなければならないため,必然的に時間外勤務を余儀なくされている現状である。
 このようなことは,労務管理上からも好ましくないから,これを少しでも緩和したいと考え,国立療養所刀根山病院において,昭和37年度から診療費請求事務の能率化をはかるため,複写器利用による診療報酬請求明細書の作成方法についての研究に着手し,いろいろ検討を重ねた結果,一応の成案を得て,昭和38年4月診療分からこの方法を試験的に実施に移して,多大の成果をあげているものである。

外勤療法におけるGroup Work

著者: 渡辺朝子 ,   十亀光子

ページ範囲:P.74 - P.78

 外勤療法(night hospital)は日本でも多くの病院で行なわれておりますが,当院では昭和32年より始め今日にいたっております。その実際は第1,2,3表のごとくです。今日までの外勤療法の経験がら,今回は,外勤の治療的な意味と,そこで行なってきたGroup Workの意味を考えてみたいと思います。

第1回京都地方病院学会の印象

著者: 米田豊昭

ページ範囲:P.80 - P.81

 3月21日(日)"京都御所"を少し南へ下がったところにある近代的なビル「ナショナル電化センターホール」で「第1回京都地方病院学会」が開催された。初めての地方学会ではあったが,一般演題23に,特別講演,シンポジウム,特別報告と多彩であり,参会者も200人を越え,大成功であった。
 この学会は「京都私立病院協会」の主催したものである。私立病院は全国の病院の中で施設数で50%以上,入院患者数で30%以上を占める比重を持ちながら,その資金面の弱体,設備の貧困などから医療従業員も不足し,日進月歩の医療の近代化から取り残されんとしている。本会はこうした私立病院が一歩でも向上するように研究会,見学会などを催していたが,こんど,5月京都において"第15回日本病院学会"が開催されるのを期にして,私立病院のささやかな努力を取り上げて,この学会にまでこぎつけたのである。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.96 - P.96

 農村には冷害,都市には不景気といわれながらも,初夏の訪れはおのずから私らに元気を与えてくれます。それにつけても5月の京都の日本病院学会は,陽光にはえた新緑の空気を満喫しながら,3日間の盛大なプログラムを繰り広げ,私らに新たな活力を与えてくれました。不幸にも参加できなかった方々にも追って"学会特集号"でその模様をお伝えしましょう。
 さて,本号は「食事運搬」を特集しました。病院内では多くの物資が間断なく運搬されています。あたかも体内を血液が不断に流れているように……。しかるに,この運搬問題は,従来,あまり管理の問題として焦点を合わせて検討されたことがありませんでした。そこで本号では,運搬問題中最も量と質に重大である食事運搬をとり上げました。

院長訪問・1

東京女子医大病院前院長—榊原 仟先生

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.79 - P.79

はじめに
 われわれ病院管理研究所の医療管理部では,この4月から月に1〜2名ずつ病院長先生を訪問することにした。これはそれを機会に,これまであまり行かなかった病院にも行ってみて,その特長点を拝見するとともに,いろいろなタイプの院長先生方の謦咳に接して,わが国病院長の真の姿を知りたいためである。
 また院長として特に留意している点や困っている点,あるいは管理上自慢できる点や抱負などについてもお尋ねして,院長業務の問題点を整理し,さらには望ましい院長像の作成にも資したい,というのがわれわれのねらいである。もちろん短時間の院長面接からだけで院長業務の実態を理解し,その望ましい姿を見いだすことができるはずのものではない。したがって,これはわれわれの院長業務研究の単なる一歩にすぎないのであるが,せっかく院長先生の方でも,御多用中を無理にさいて応接してくださることではあり,また記録に留めても置きたいので,面接あるいは見学の結果中,一般読者にも興味ありそうな2〜3の点について,簡単な報告記事を書き,ここへ連載することとした。

ホスピタルトピックス 経営

西ドイツの病院数とその規模(1)

著者: 菅谷章

ページ範囲:P.82 - P.82

 1959年末における西ドイツの病院数と病床数(West-Berlinを含む)は第1表のごとくであり,人口1,000当たりの病床数(West-Berlinを除く)は10.7である。
 また西ドイツ統計局の病院報告(ただしWest-Berlinを除く)によれば,1960年末の西ドイツの全病院数は3,451,その病床総数は553,428床である。

診療

救急医療

著者: 佐藤修

ページ範囲:P.83 - P.83

 消防法の改正に伴う救急病院等を定める厚生省令が,昨年4月施行された。自動車の急増や産業規模の大型化から,交通事故や産業災害が激増し,そのための外傷者に対する救急医療が十分でないこと,特に交通事故による頭部外傷死のうち,3分の1が手術により救える可能性があるという剖検報告がだされ,これが省令のきっかけとなったものと考えられる。ところがこの省令は患者の側からみた場合,なかなか立派なもののようにみえるが,現場の実情に合わないと医療関係者にはなはだ評判が悪い。
 なぜ評判が悪いかというと,省令の第1条第1項,有験医師の常時診療従事,第2項,手術,麻酔,X線,輸血などがいつでもやれる態勢,第4項,救急専用病床の常設などの義務規定の項目が大部分であるためである。至極もっともなことが現場の医療機関にとって難問題なのである,ここにも日本の医療制度の乱脈のしわよせがきている感がある。

看護

看護婦に看護を!看護婦は不足しているのか

著者: 小牟田清美

ページ範囲:P.84 - P.84

 わが国の医療制度の改善が叫ばれはじめてから久しい。看護分野においても,第2次世界大戦後の混乱期を経て,現在また新しい方向へ歩み始めるために苦悩している。大戦後,新しい教育制度により医師の助手的存在から医療の片腕をになう大切な分野であるとされ,一見地位が向上されたかに見受けられたが,果たして現実は自他ともに看護に対する自覚や認識は低いものであった。
 原因がいろいろ追求され,看護制度および看護教育制度の再検討,看護業務の明確化などが叫ばれているが,さしあたって病院においては,看護業務の明確化とそれにつらなって,組識の中央化が強く望まれるのは周知の通りである。

特殊病院

Day Hosplitalの5型

著者: J.S.

ページ範囲:P.87 - P.88

 疾病の治療は24時間サービスを行なう病院と定められていた。保健所クリニックでは予防衛生的医学処置をするけれども治療は原則的にはしない。病院外来は診療するけれども病院活動の本旨は入院である。入院は即刻24時間単位となる。しかし,現実には少時間の治療で十分であり,症例によっては24時間看護が長期間になると"施設病"をひきおこす。少時間の治療を家族・友人間との接触を保ちながら継続しようとするのがDay Hospital (D. H.と略す)である。夜間は自宅で普通の生活をつづけ,昼間は病院に通院し6〜8時間の医療をうける。in Hospitalよりat Hospitalと変化する。したがって"at Hospital"の疾患はおのずから限定され,精神障害者,老人性退行疾患,リハビリテーション疾患が中心となる。
このD.H.は1946年Marlbo-raughがロンドンで,同年カナダのモントリオールでCameronが創設したもので,以後燎原の火のように波及し,イギリスでは1961年すでに118のD.H.があり,32万人の患者が登録され,年間6,500人の新患が訪れる。(W.A.J.FRAN-DALEの国際病院総会報告より)

建築設備

医療法の建築的な問題点

著者: 大場則夫

ページ範囲:P.88 - P.88

 昨年12月に,病院建築協会の主催で,病院建築関係法規の実際上の問題点について,懇談会が行なわれた。その記録は,いずれ他の紙上に発表されることと思うが,ここではそのうち主要と思われる2,3の問題について触れる。
 病院建築関係法規と一口にいっても,建築一般を規制する諸法規・条令なども一体になってかかわってくるので,その数はかなりのものである。しかし,当日取り上げられた問題点の大部分は,医療法,特にその施行規則中,病院の構造設備の規準を示すものに集中された。

霞ガ関だより

医療費基本問題研究員の報告の概要

著者:

ページ範囲:P.90 - P.92

 医療費基本問題研究員(座長高橋長太郎氏)は,38年8月の第1回会合以来,約1年半にわたって研究をつづけていたが,さる3月27日研究結果をとりまとめ,神田厚相に提出した。
 今回の報告書は,6人の研究員がそれぞれ専門的立場から個々の意見を報告したものであり,全研究員の一致した意見はだされていない。このため,6人の研究員の医療費に対する見解には多少の相違があり,また直ちに行政面に反映できるものではないが,経済,経営学者による医療費,医療保険についての最初の本格的な研究という点から大きな意味をもつものであるので,以下各研究員の報告の概要を紹介しよう。

病院図書館

—James Hogarth著 江間時彦訳—「医師の報酬」/—田中 恒男 著—「看護調査入門」

著者: 川上武

ページ範囲:P.94 - P.95

12か国の医師報酬の体系的研究
 現在の医療問題の混迷の根本原因が低医療費政策にすることは,すでに多くの人によって指摘されているが,さらにすすんで医療費をめぐる具体的問題の検討は,医療費問題が大きな社会問題になっているのにもかかわらず,非常に少ない。
 昨年から本年にかけての中医協の動きをみても,責任あるポストにいる人たちが,医療費問題の内容について案外に無知なのではないかと思われる節がみられた。この事情は,医療費となると口角泡をとばす医師会員にしても同じである。このような変則な事態が横行しているのは,医療費問題のわが国での歴史および現状の研究・啓蒙が立遅れている上に,問題解決の指針を見いだすのに必要な判断の材料を提供する諸外国での経験の科学的紹介が行なわれていなかったところに,その原因の一端がありそうである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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